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粗悪な動画2
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どう見てもそこに映っているのは自分である。
「これ、俺が今日喧嘩した時の映像か?」
「ああ」
「なんか変に途切れてないか?」
映像の中でアロンが一方的に相手を殴る場面しか映っていない。逃げようとする子どもを引き倒してその頭にパンパンと平手打ちし、許しを乞う相手に馬乗りになって殴るなど、とんでもない場面が映っていた。
アロンはその動画を見て言いしれないものが湧き上がってくるのを感じた。それはどこか怒りに近く、屈辱にも似ている。
「これ、俺が悪いみたいになっているじゃねぇか。あいつらが先に殴ってきたんだ!」
「大丈夫、きみのことを信じているよ!」
エルヴィスにそう言われて頭にきていたアロンが少しばかり冷静になった。
「本当か……?」
「もちろん!この動画は編集されてアロンが悪いように映っているだけ。必ずなんとかするよ」
「………さっき、エルドがあんた名前が出ているみたいなことを言わなかったか?それは……」
「それも大丈夫!私の地位を脅かすほどのことじゃない。それに、アロンを悪意持って傷つけようとするなんて、例え身体的でも精神的でも許さない。…絶対にだ」
最後エルヴィスはやや声を落としていた。いつも元気と過激がありありと存在している目すら暗く見える。
その声と目にアロンが思わず悪寒のようなものが背中を這った気がした。
だがすぐにエルヴィスは怒り心頭の表情で医師を振り返った。
「今後何があっても犯人への治療を拒否するんだ!いいね!」
「おっけー」
医師はまるで任せろと言わんばかりに軽い返答で了承した。
そのせいかアロンは本気にしなかった。
「死にかけで病院の前に立たれたらどうするだよ」
「追い返すか、見捨てるんだよ」
医師は優しい笑みでさとすようにアロンの視線に合わせて言った。
その聖人のような優しい表情と言葉があまりにもアンバランスで、本日二度目の悪寒が背中を走った。
アロンは病み上がりの状態でまだ体調が戻っていないせいにした。
療も終わったので、帰ったあと、ふたたび監禁生活が始まった。
まさかこの流れで外出についてのお願いが何一つ通らないとは思わなかった。病院でエルヴィスがやっぱり外は危ないと言った時点で想像できたことではある。
アロンが部屋の中で悶々としているとふとしばらく使っていないVR体験用のヘルメットを思い出した。
ベッド下からヘルメットを取り出して被るとまたあのキャピキャピした声が響いてきた。
『ご主人様やっと帰ってきてくれたんですね!寂しかったですよぉ~』
「お前ガイドだよな。今暇しているから何か暇つぶしないか?」
『ミニゲームとかいいんじゃないかなって思うんですけどぉ、ご主人様、もっと面白いもの見たくないですか?』
「例えば?」
『ネットニュースとか動画とか。そういう投稿サイトがありまして、ちょうど見れるんですよ!』
「ニュースとか動画とか言われても……ん?」
アロンはふと病院での出来事を思い出した。
「なあ、それってなんでも見れるのか?」
『なんでも、というわけではないですけどぉ、まあ総合的な動画投稿サイトなので割となんでも見れますよ~』
「じゃあエルヴィスのことも見れるのか?」
『市長さんのことですねー、見れますよ』
「じゃあそれを見せてくれ!」
『はぁーい、市長さん関連のことですね~』
「あ、いや」
『ん?どうかしましたぁ?』
「俺とエルヴィスのことが出ている動画はあるか?主に俺が喧嘩している動画だけど」
『え~、ありますかねぇ……ん?うわ、本当にありましたよ!ご主人様喧嘩しているじゃないですかーダメですよ。怪我しちゃうじゃないですか』
「それならもう言うの遅いって。怪我治ったあとだし。それより動画は?」
『はぁーい、今お出ししますねぇ~』
パッと目の前に動画の再生画面が現れた。
『開始~』というかけ声とともに再生ボタンが押された。
動画の初めには男性の声があり、この投稿についての概要説明をしている。
端的にまとめるととある大物の伴侶である人間がこれみよがしに権力を悪用し、子どもを虐待するという内容である。
アロンはそれに思わず眉をしかめた。
やがて説明が終わると問題の動画が映し出された。それが病院で見せてもらった動画そのものである。
動画を見れば見るほどアロンの怒りが湧き上がってきた。
しかも終わったあと、動画の問題場面を映し出し進めながらどれだけ行動が悪烈だとか、道徳感がないだとか批判され、さらにはエルヴィスの写真まで載せられて、アロンがその伴侶だと言い、エルヴィスの批判までし始めた。
それだけでもはや怒りが爆発しそうだというのに、アロンを驚かせたのはこの後のことである。
動画の解説者によるとこの動画の正確性を裏付ける証言者がいるらしい。名前は出せないが、アロンが子どもに虐待をする日、その場に居合わせた人物だという。
その人物はアロンが飢えでお金を欲しがる子どもに一銭も上げないところが、大声をあげて追い返していたと言ったらしい。
そのことでアロンは誰が証言者なのかわかった気がした。
子どもを追い返した時は人通りが多く誰か見ていたかもしれないが、囲まれて殴り返した時は確かその場にユラしかいないはずである。
子ども達のうちの誰かが証言者ならわざわざ「その場に居合わせた」という表現を使わないだろう。
つまり、この証言者はユラである可能性が高い。しかし覚え間違いでなければユラはエルヴィスに好意を抱いていたはずである。こんな相手を貶めるようなことをするのだろうか?
アロンは迷ったあと何か言いかけたガイドを無視してヘルメットを外した。
「エルヴィスに言わないと」
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