ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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何かの異変8

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アロンは食堂から逃げるように部屋に帰った。

そのつもりだった。しかし、見事に道に迷い、どこを見ても同じ廊下しか広がっていない迷路じみた作りに少し焦った。

「どこだ…ここ……」

「そこで何をやっている!」

怒鳴り声にアロンがビクッと肩を持ち上げた。

向かって来たのは眉を吊り上げた軍服のアンドロイドである。

「人間か?なぜここにいる。ここは立入禁止区域だ!自分の仕事場へ戻れ!」

「は?」

「いや、待て。その服装はなんだ?軍服はどうした?」

「い、いや……俺ここで働いてないけど」

「働いてない?迷い込んだのか?」

「食堂から出て来たら、迷って……」

「まさか……お前、ライネスの伴侶か?」

「そうだけど」

「なんだ。そうなのか」

相手の態度が幾分和らいだように見え、アロンも少し身構えていた腕を下ろした。

「迷ったなら俺が代わりに道案内をしよう。どこに行きたい?」

「来た時に案内された部屋があって、そこに帰りたい」

「わかった。ついてこい。ちなみに俺のことはエルドと呼べばいい」

アロンが来た道を行きながらエルドはそう言った。

「エルド!?」

「どうした?」

「いや、なんでもない……」

こいつの名前もエルドなのか。

アロンは密かに目の前の軍用アンドロイドとエルドの名前をかけ合わせて軍用エルドと呼ぶことにした。

呼び慣れた人の名前が急に顔も知らない人物と同じなのはどうしても慣れない。

相手について行きながらアロンは自分の顔を叩いてみた。

先ほどライネスの言葉を思い出して泣きそうになったからである。

だが右手首の骨折を忘れてそのまま顔を叩いたせいで鋭い痛みが伝わってきた。

「うっ!!」

涙を浮かべながらアロンが耐えていると、軍用エルドが振り返った。

「どうした?」

「いや、怪我が直ってない手を使ってしまっただけ……」

「ふむ。よかったら俺が手を貸そうか?」

「お前が?いや……あ、おい!」

軍用エルドはアロンに近づき、身を屈めたかと思うと突然アロンの体を持ち上げた。

「おろせ!」

「俺が運ぶ。お前は何もせずに座っていればいい」

「お前なぁ…いきなりすぎだろ」

ここで今日まで接してきたアンドロイド達はアロンに近づくことはあっても触れることはほぼない。

いずれもアロンを怪我させてしまうことを恐れている。しかし、軍用エルドはそうではないらしい。

アロンは思わず他のひととどこか違う軍用エルドに少し警戒心を抱き始めた。

その警戒心に引き起こされるように少しおかしなところにも気づく。

そういえばこいつ、俺のこと知らなかったよな?ここで働く人間だと勘違いしたよな?なのに俺の部屋わかるのか?

そう思い始めるとそのおかしなところが違和感に代わり、警鐘を鳴らすように心臓を早打ちさせた。

こいつ……敵じゃないよな?

グレイシーが何やら他のアンドロイドの体に入れる的なことをできたはず。もしかすると……。

アロンは背中にドッと冷や汗をかきだした。

やはりこいつは怪しい!

「どうした?そんな怖い顔をして」

軍用エルドの言葉にパッと顔を向けると、思わず固まった。

軍用アンドロイドに似合わない歪な笑みを浮かべながら軍用エルドはアロンに顔を近づかせた。

「………っ!?」

「何か恐ろしいことでも考えていたのか?」

「お、お前………」

「そんな恐れる顔も可愛いな」

そう言って軍用エルドは舌なめずりをした。

「お前本当にここのアンドロイドなのか!!」

アロンが素早く逃げ道を確認しようとしたが、周りは相変わらず同じ廊下にしか見えず、かつ周りに人影ひとつすら見当たらなくなっている。

クソッ!やられた!

「違う。そもそも俺はアンドロイドですらない」

「なんだって?」

軍用エルドの目がニッと細められ、顔にある青い蛍光ラインにそってパカッと顔が開いた。

「な……っ!!?」

あまりの光景にアロンは口を開いたまま固まってしまった。

開いた顔のパーツが上に移動し、その下に隠されたものがあらわになった。

赤黒い肉塊のようなものに人間の目玉がはめ込まれ、唇はないのに、肉塊の上には歯並びの悪い歯列があり、その口からニタッと赤紫の分厚い舌がのぞいた。

「う、うわわわわあああっ!!!」

驚いたアロンは慌てて軍用エルドの腕から脱出しようとバタバタと足を蹴り出した。

その反動で床にゴッと落ちると急いで立ち上がって廊下を走った。

「なんだ……鬼ごっこか?楽しそうだな」

「来るなッ!!」

アロンは必死に廊下を走った。だがどう走っても突き当たりには行けない。それどころか曲がり角すら見えない。

なんなんだよこれ!?

走りながら違和感を覚えるも、恐怖にその違和感も覆われてしまった。

















ベッドのうえで汗を浮かばせながら呻くアロンに、集まった面々は重苦しい顔をしていた。

特にアロンから一番近いところに立っているライネスは怒りを耐えるような表情でその様子を見ている。

「……どういう状況だ」

「たぶん旧式カプセルの使い過ぎによる後遺症だね。新型にもないわけではないけど、あちらは性能が優れているから、重症でも基本少ない回数で完治できる。アロンさんの場合、4日間で7回も使っているから、可能性としてはあり得るよ」

ミツはそう言いながら苦しそうにするアロンを見つめた。

ライネスはただ黙ってさらに眉間のシワを深くした。



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