ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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式場の様式

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その日の夕方、クラックと部屋の中でトランプをしていたアロンのもとへエルヴィスが現れた。

部屋に入ってくるが、後ろ手に何かを隠し持っているようで、いつもよりさらにニコニコとした笑顔で近寄ってくる。

「な、なんだよ……」

「アロン、きみにこれをあげる!」

エルヴィスは後ろに隠した何かをパッとアロンの前にさらけ出した。

それは分厚い本である。いつも電子書類しか扱わないエルヴィスにしては珍しい。

「これ、なんだ?」

「これはだね、式場様式の本だよ!結婚式をやり直すならアロンの好きにしてあげたいって言ったと思うけど、きみの好みがわからないから、こうしてサンプルを持ってきたんだ」

つまり、この分厚い本は電子機器の扱いに慣れていないアロンのために持ってこられたらしい。

分厚いため、アロンが受け取った際、その重さに思わず腕が沈んだ。

「本当に重いな……」

「愛の重みですよ!アロンさん!」

クラックがやけに興奮した表情で言った。

アロンが恥ずかしさまぎれに本を開くと、そこにはいろんな式場の例があり、注目箇所が拡大表示で説明文が添付されていた。読めないが。

「すげぇな……豪華なものばかりだ」

「アロンの一番気に入った様式があれば教えてね!」

「やっぱりみんな白ばかりだな。白色が基本なんだな」

「好きなら別の色でもいいよ。言ったでしょう?アロンの好きにしてほしいって」

アロンはページをめくるたびに、これがいい、こっちのほうがいい、となりなかなか決められずにいた。

「どれもいいな……全然決められない。お前達で何かやりたい感じなのはあるか?」

「んー、特にないかな。きみの“やりたい”が私達のやりたいだよ」

そう言ってエルヴィスは手をアロンの頬にそえた。

「アロンは本当に可愛いな。私達のことなんか気にせず、好きなように選べばいい」

エルヴィスの目がどこかうっとりと細められた。

「きみがほしいと思うものは全部集めてあげるから、気にせず、好きなように、思うがままにすればいい」

その目線といい、頬をなでてくる手といい、アロンはとてつもない恥ずかしさを覚えた。

手を振り払ってじとっとした目を向ける。

「俺に任せるとどんな様式になるかわからないぞ」

「構わない!きみが満足しなければ結婚式をやり直す意味がない!きみの結婚式はもっと盛大に、華やかに、あのユラさんよりも祝なければならない!あ、でもできれば私達だけでいいかな。アロンの晴れ着姿をそんな大勢の人に見せたくないんだ」

「な、なんでだ……?」

まさか見せられないほど酷いのか、と思ったが、どうやら違うようである。

「だって他の人がきみの良さに気づいたら奪いにくるかもしれないじゃないか。きみはこんなにも素晴らしく、愛くるしい。誰が見ても手に入れたいよきっと」

あまりに良すぎる評価にアロンが顔をそらして赤面した。

「そう思うの…お前らだけだぞ」

「まさか!そんなことない!そうでしょ、ライネス!」

ライネス!?とアロンが驚いた顔でエルヴィスの振り返った先を見た。ドアのそばからライネス本人が顔を出した。

なんで外に立っていて入ってこないんだ?

「そうだな」

あまり感情のこもった声には聞こえない。

「ほら、ライネスもそう言っているじゃないか!」

「だからお前らだけだって……それよりライネス、入ってこないのか?」

「ダメだ!」

意外にもエルヴィスがダメ出しをした。

「私は今非常に怒っている!ライネスには入らせない!」

「何があったんだ……?」

「ライネスはデータ保存に賛成なんだ!」

「データ保存?ウイルスの件なのか?」

「そうだ!私はもちろん反対だ!期間付きとはいえ、アロンを1人残すなんて心配すぎる!」

「だが俺達までウイルス感染すれば終わりだ。清掃システムを導入して全てのウイルスが片付けられれば俺達はまた行動できる。アロンの前で暴走する心配もない」

「ぐぬ……だが、その間に何かあればどうする?言ったはずだよ。クロードという人間がいること」

「データ保存前にそいつをなんとかして始末すればいいだろ」

「だが私達は人間に手を出せないよ」

「俺に任せろ。方法ならある。ひとまず殺して罰は後から受ければいい」

「いや、それ方法じゃないよな!?」

アロンが思わず突っ込んだ。

だが、ライネスはなんてことない顔で続ける。

「安心しろ。俺は支配階級だ。そう重い罰にはならない。なったとしても大した問題はない」

「とりあえずそれ、最終手段にとっておかないか?………あのさ、本当にお前達データ保存されなければいけないのか?」

「それが今のところ一番いい選択だ」

アロンは何か言いたげに口をもごもごとさせたが、結局何も言い出せずにいた。

「お前のそばには守れる人間を置くつもりだ」

それでもなお、アロンはひかえめな視線で何か言おうと口を開いたが、迷った末、小さく笑うにとどめた。

それを見てエルヴィスが痛ましそうな顔で言う。

「大丈夫だよ、アロン。1人にはしない」

だが、ライネスは顔をしかめながら反対した。

「言ったはずだ。今のままだと俺達が一番アロンにとって危険だと」

「別の案が出てこなければそれしかないだろうけど、今は別の道を探ってみよう」

「………勝手にしろ」

ライネスが離れようとするのを察して、アロンは反射的に呼び止めた。

「待ってくれ!」

「……なんだ」

「そっちは、何か希望はあるのか?その、式場の……」

ライネスの目がアロンの手もとにある分厚い本を見た。

「ああ、それか。お前が好きなようにすればいい」

「そっか……」

今だ。ライネスに取った失礼な態度を謝らないと。

「あのさーー」

「どっちの俺に出てほしい」

「へ?」

「今の俺か、記憶があるほうの俺か。どっちだ」

「………」

アロンは思わず質問の内容に固まった。

どうやって選べばいい?そもそも選ぶものなのか?




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