🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

文字の大きさ
30 / 171
第2部『Candidate selection(候補者の選択)』

第13話『Angel's miracle(天使が呼んだ奇跡)』 A Part

しおりを挟む
 ダークエルフ、オットォンに対するガロウ・チュウマ怒り心頭しんとう
 されど目指す敵は真下から見上げても生い茂るおいしげる枝葉に隠れ、位置特定すらままならない。

 自力で宙に浮く。そんなふざけた御業みわざ、真っ直ぐな髭面侍風情には持ち合わせなど在りはしない。
 だからであるローダ・ファルムーンに御膳立ておぜんだてを依頼した。

 この際実力差は関係ない。
 ガロウ・チュウマはエドナ村を守護する任を負ったResistance反乱分子上長リーダーは言う事を聞く以外の選択肢など在りはしないのだ。

 ザクッ!!

「うぉッ!?」

 足掛かりにしてた太い枝をローダに両断され、地面に落ち往くしか能のないオットォン。運悪いことに落下地点には頭より巨大な岩が転がっていた。

 バシュッ!

 すかさずオットォン、赤い左眼から例の熱線を放出。瞬時に岩をも溶かす恐るべき熱量。さらに巨木のみきを蹴って軌道修正。脚から無事地面へ着地を果たした。

「き、貴様等ァッ! 調子くれてんじゃねぇぞッ!!」

「成程、その熱線は目から撃つのか器用なものだな。処でが出ていないか?」

 怒髪天どはつてんオットォンダークエルフを他所に置き、口調が荒々しく変わったのを煽りあおり立てるローダの余裕。岩を溶解ようかいさせた熱線の威力に敢えて触れずに怒気どきを誘発させた。

「アアッ!? あったま悪いんじゃぁねえか手前テメェ等よォッ! 俺様の描いた魔法陣は未だ健・在ッ! 馬鹿でも言ってる意味判るよなぁ……」

 味方二人に見限みかぎられ、連れて来た犬属共コボルト族は行方知れず。
 それでもオットォン、自分の優位性が下がったとは毛程も感じぬ。目前に居る敵は魔法を使えぬ力任せなただの剣士共。

 詠唱のいとまさえ稼げば、再び蜘蛛之糸ラグナテーラを行使すれば済む話。先程は金髪女ルシアだけ生命を奪ううばう慢心まんしんおかした。次こそ無遠慮に全員まとめてにすれば良い。

 オットォン、冷笑をたたえつつ早速後方へ蹴り入れ跳び下がる。
 取り乱しすぐさま後を追うローダ、重力解放ヴァレディステラ駆使くしすれば追いすがれると信じたい。
 されどオットォン、生い茂る樹々の最中へその身を隠す。そして間髪かんぱつ入れずを再度唄ううたうのだ。

「コンテジオネス、インラメガラ。暗黒神ヴァイロの名に於いて命ずる。蜘蛛くもが如き拘束こうそくの糸よ。此処にそのかせを成せ」

 狡猾こうかつなる闇の賢者ダークエルフ
 駆けながら詠唱、追い付いたと思った若造ローダを再び絶望のふち貶めるおとしめる。地面が赤い輝きを帯びた恐怖の誘い。

 後は呪文名スペルを言い放たれば蜘蛛の巣くものす地獄が召喚しょうかん出来る。

 形勢再逆転、ローダ歯軋りはぎしりせずにいられない。
 命を失い掛けたルシアが再び呼吸すら出来ぬどん底へ気を失ったまま落とされる。次こそ生命の危機。容認出来る道理がないのだ。

 されど何故だかガロウは独り、落ち着き払っていた。

 ズサッ。

「我が信ずる戦の女神エディウスよ! その偉大なる御業みわざで悪しき力を全て封じよ──『輝きの蜃気楼エフェスタ』!」

 ──この声ッ!

 突如とつじょ甲高く若々しい少女の早口が漆黒しっこくの森にとどろく。ローダにも聞き覚えある声の主。

 さらに神々こうごうしい輝きが巨大な盾の様な形を成して、オットォンが身を隠した樹々毎貫いたつらぬいた
 色彩豊かな小鳥達がざわめき光共々空へ奔るはしる流麗りゅうれいぶりに華を添えた。

 先程迄ダークエルフが昇っていた巨木に匹敵ひってきする程の莫大ばくだいな光の帯。森の暗がりを昼間へ導く多大な光量。

 少女が生んだ光の盾。特に何かを壊す訳でもなく、ただ圧倒的に進撃すると、星屑ほしくずの如くきらめきながら消え失せた。

「死ねぇッ! ──『蜘蛛之糸ラグナテーラ』!」

 未だ健在な左手を払い拘束の糸ラグナテーラの再現を夢見るオットォンの愚かなおろかな行い。
 魔導を扱う術を知り得ながら現状を理解せず行使する憐れあわれなる様。エルフ族の末端まったん失格の烙印らくいんを受けても止む無き。

 全く以って何も発現はつげんしない様子に継ぎ接ぎつぎはぎだらけの黒い顔をしかめた。

「も、もしやさっきの光! 絶対魔法防御アンチマジックシェルたぐいかッ!」

「おぃおぃ、今さらか? にぶすぎやせんかじゃないかエルフ癖に」

 ガロウは天才司祭がこの場に追い着いた状況を認識していた。寄って二度目の蜘蛛之糸ラグナテーラ詠唱時、何も動じなかった。

「結果が示す通りでございます。流石にもうお判りでしょう?」

 白い司祭服の少女にも挑発されたオットォンの自尊心じそんしんは、彼の顔同様ズタズタに斬り裂かれた。

「正直まだ覚えたて何ですけどね。巧くいって正直ホッとしています。私の奇跡でルシア御姉様方を護れて心から嬉しいです」

 リイナは現着するのに遅れた挨拶あいさつを忘れてた事に気づき、会釈えしゃくしてからやわらいだ笑顔をローダ達へ手向たむけた。

 長い銀髪、綺麗な白い肌、大きな青い瞳、真っ白なエディウス神の司祭の法衣。14歳のうら若き乙女から溢れあふれ出す荘厳そうごんさ。

 別名『ラファンの森の天使』リイナ・アルベェラータ。彼女はルシア御姉様の言付けことづけ通り、託児所の子供達などを避難誘導した上で今、この場に至る。

 ──遅れた?

 寧ろむしろ少女の脚力的に速過ぎる位だとローダは思う。森の天使は森での生活に慣れ親しんでいた。森を制する愛する者がまたひとり。

「魔法を封じたァァッ!? それじゃ司祭なんか来た処で意味ねぇだろうがッ! 俺様はなぁ……魔法が無くても戦えんだよォッ!」

 先程から蜘蛛之糸ラグナテーラで全て葬りほうむり去る気概きがいしかなかったオットォンのとんだ掌返てのひらがえし。
 確かに赤い熱線は魔力マナの気配を感じない。恐らく他にも爪を隠している。

「──うぜらしいやかましいッ!!」

 声を荒らげつばを吐き出すガロウ・チュウマ。彼の怒りが最もうるさかったのは語る迄もない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...