🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第2部『Candidate selection(候補者の選択)』

第14話『Garou(我狼)』 B Part

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 一撃必殺のやいば──。
 要は力で捻じねじ伏せる戦い方だと思われていたガロウ・チュウマが森の自然を用いて戦闘を優位に運ぶ。意外に繊細せんさいで頭の切れる男であった。

 対するヴァロウズNo8のダークエルフ、オットォンは自らの能力に全振りしがちな戦う様を随所ずいしょに見せる。リイナ奇跡の御業みわざ輝きの蜃気楼エフェスタ精霊召喚サモナーの道が閉ざされた。

 本来精霊自然を味方にするのはエルフ族の十八番おはこであろう。
 彼は精霊達を恐らく味方でなく隷属れいぞく扱いしてるに違いない。

 然し彼とてこの手段でこれ迄戦場を生き抜いた確固かっこたる自負じふが在るのだ。

 バシュッバシュッバシュ!

 ガロウに投げ飛ばされながら薄暗い森の虚空こくうを見上げ、これ迄より強力な赤い熱線花火じみたものを連続的に打ち上げる。加えて左腕で地面を叩き受け身の体勢を整えた。

 だが間髪かんぱつ入れずガロウが刀を拾い上げ、腐葉土ふようど積もる地面でのたうつ予定の敵へトドメとばかりに逆手で握った剣を振り上げ伸し掛かった。

「ガロウッ! 乗せられては駄目だッ!」
「──ッ!?」

 此処で突然無口なローダが悲痛に叫ぶ。
 ガロウ、正直ローダの指摘が解せない。『乗っては駄目』これがダークエルフの誘いだと言うのか?

「グハッ!?」

 突如とつじょガロウを襲った背中から腹まで穿つうがつ熱き攻撃。
 腹を穿れうがれ吐血を余儀よぎなくされるガロウ。他にも左肩に右太腿みぎふとももとて同様の穴が開き血が噴き出す。

 オットォンが空へ打ち上げたは、闇色の空で楕円だえんを描いて髭面ひげづら剣客けんかくを背中から撃ち抜く奈落ならくへ転じた。

 何故ローダ・ファルムーンだけがオットォンの謀略ぼうりゃくに気付いたのか定かさだかでない。
 兎に角とにかく一挙形勢逆転、ガロウが窮地きゅうちに追い込まれた──誰しも絶望視した次の瞬間。

「これで終いだっ! 喰らえェッ、 滅殺めっさつッ!!」

 オットォンが機械仕掛けオートメイルの左腕をんで引っ張る。
 絶望に追打ちを掛ける仕込みの剣が出現、ガロウの首を目掛け愉悦ゆえつの顔で振り下ろす。彼に取って正に至福のとき

 ザクッ!

「なッ!?」
「──ッ!」

 周囲の取り巻き達が予期せぬ事象が巻き起こる。事象の発案者である当人ガロウだけの必然事項。
 何とガロウ、右腕利き腕ひじを限界迄折り曲げ、仕込み刀の根元に押し当て最低限の負傷で防いだ。

 満身創痍まんしんそういを描き尽くしたガロウの姿。
 血みどろで深手を負ったからだを用い、未だオットォンへ伸し掛かる剣筋を諦めてない執念しゅうねんかたまり

 ──俺の勝ちだ、このくず野郎。

 血塗れちまみれ髭面ひげづらが笑った。
 これは侍風情ふぜいが演出した状況。下劣げれつなダークエルフが気付いたのと同刻どうこく

 天誅に訪れた──。

「カハッ!?」

 左逆手に握ったガロウの滾るたぎる刃がオットォンの脳天を分かつ意地のを成した。

 自らの命にだけは周到しゅうとうな守りを秘めていた。頭蓋ずがいの上に腕と同質の金属を埋め込んでいたにも関わらず、総てを叩き割るガロウの刃が打ち勝った。

 相手が下段からの剣を全力で振るった故、カウンターじみたのか?
 或いあるいはガロウが秘めた能力者の力が何らかの理由で底上げされたか?

 そんな小賢こざかしい屁理屈へりくつ自体をガロウの意地が斬り伏せた。

 余りの異常事態。
 己の顔が首まで真っ二つに裂かれた状況を飲み込めぬまま、オットォンは地獄巡りめぐりへ旅立つ。

 ようやく『うぜらしくない五月蝿くない』ただの黒ずくめな遺体と化した上へ生死危ういガロウが倒れ込んだ。

「が、ガロウッ!!」
「ガロウ様ッ!」

 身体の痛みを放り投げ、ガロウへ駆け寄るローダ。
 悲壮感ひそうかん漂うただよう表情で同じくリイナも詰め掛ける。

「じ、示現我狼じげんがろう──『櫻……華おう……か』」

 我狼とは我流を極め己の剣と成した意味で名付けた。
 ガロウ・チュウマの地元東洋の国、桜陽おうひで語った真実の名ではない。
 然も必殺の技を語るには余りにさびしい結末。本来なら天までとどろかせたかったものだ。地元で華開く火山の様に。

「──ッ!」
「す、凄いです!」

 若者達の心配を他所よそに、ガロウは漢の信念をげた剣を掴むつかむ左の拳を突き上げ自らの命脈めいみゃくを主張する姿で意識を喪失そうしつした。

 ◇◇

「──判らぬ。を選び、そして男は同じを愛し守りたいが故、力に目覚めた」

 モニターに映る外界のみ周囲を照らす暗闇。他は総てを包み隠す世界で独り、白髪初老の男性が釈然しゃくぜんとしない心中を呟くつぶやくのだ。

 凡そおよそ300年、このときを待ち望み仕組んだ……筈であった。
 然し平凡な男女の営み恋愛だけを突き付けられては承諾しょうだく出来る訳がない。

「愛を知り得ない私には到底理解が及ばん。これを人類同士判り合えたと解釈かいしゃくするのは早計そうけい過ぎる」

 白髭を触りながらこれ迄の幸薄いさちうすい人生を思い返す老人。
 身勝手な人間に絶望した故、新たなる人類を創生そうせいする気狂いきぐるいな夢を描き舞台を整えた。

 老人の思い描く思しきおぼしき人物それは……ローダ・ファルムーンでなく、もう独りの候補者が適任てきにん……今こうして現状を突き付けられても確信は揺るがない。

……本当にその男で良いのか?」
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