🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

文字の大きさ
34 / 171
第2部『Candidate selection(候補者の選択)』

第15話『Exciting thoughts(心躍る想い)』 A Part

しおりを挟む
 漢の意地、剣客けんかく執念しゅうねん
 ガロウ・チュウマが全身全霊ぜんしんぜんれいを賭けヴァロウズの8番目、ダークエルフのオットォンを滾るたぎる一撃必殺の刃で倒した一部始終。

 余りに出血が酷過ぎる髭面の侍風情ふぜい折角せっかく敵をほふったのにこれでは命に関わる。
 されどリイナ・アルベェラータ奇跡の御業みわざ輝きの蜃気楼アンチマジックシェルによる効力切れを待つより他ない。
 実の処、もうひとつ手段があるのだが、何れにせよ患者を移送出来なければ如何どうにもならぬ。

 スッ──。

 リイナが背負いのリュックから何やら鋭利えいりな物を取り出した。包帯や糸も在る。気絶しているガロウの傷口を先ず取り出した包帯を用い、容赦無用ようしゃむようで止血し始めた救命行為。

「リイナ? 止血は判るが何故裁縫さいほう道具まで在るんだ?」

 準備が良過ぎるリイナに舌巻くしたまくローダの謎掛け。身悶みもだしそうな答えを半ば知りつつも正答を聞かずにおれない。

「え……決まってるじゃないですか。傷口をい合わせるんです。事は一刻いっこくを争います。ローダさん、ガロウ様を押えて下さい。貴方も身体が御辛いかと思いますが」

「お、俺は構わない」

 僅かわずか躊躇いためらい混じりで頷くうなずくローダの顔色がえない。ガロウの傷口全てを雑巾ぞうきんでも縫うかの如くこの幼気いたいけな少女が縫合ほうごうするのか? 見た目と裏腹なる度胸どきょう

 リイナの言い分は至極しごく真っ当なれど自分が同じ目に合うのを想像すると背筋せすじが凍る思いだ。

 ダークエルフに散々斬られ、穴も穿うがれたガロウだが針刺す痛みだけで半強制的に意識が戻る。そのまま好きに縫われて聞くのも辛い悲鳴を上げた。

 気持ちは額面がくめん通り良く判る。
 然し折角せっかく上げた漢の少女リイナの縫い針ひとつで社会的地位を損失そんしつした。

 トレノとティン・クェンを説き伏せたジェリド・アルベェラータがそんなあわれな場面に合流。
 苦痛でのたうつガロウを「情けない奴だ」と嗤いわらい飛ばす無遠慮。彼とガロウはResistance民衆軍の戦友同士。戦人いくさびととして遠慮はしない。

 ──俺は内側だけで済んで外傷が無くて良かった。

 ローダが気丈きじょうな態度をみせる裏腹うらはらに在る弱気。自分も等しく惨めみじめさらしたに違いない本音。

 ガロウを一通り縫い終えたら、アマン山から下山を始めた一行。
 リイナの起こした奇跡は時間だけでなく効果範囲も存在し得る。逆に圏内を抜け出せれば例の細胞分裂活性化に寄る確実な治癒ちゆ術がほどこせる。

 不貞腐ふてくされたガロウを荷物が如く粗雑そざつに扱うのは中年男ジェリドの役目。泣きっ面にはちな状況だが止むを得ない。
 未だである修道女Sisterじみた美女ルシアを抱えるのは王子ローダ様であるべきなのは百も承知しょうち

 ──んん? な、何かしら? ええっと私確か……。

 自分のからだが何やら不自然に揺れているを感じながら、ルシアがゆるりと意識を取り戻して往く。
 いや、それ以前に背中と両腿りょうももの下。温かみある頼もしきかいなが支えている実感。

 初めて味わう何とも不可思議ふかしぎな気分。

 ──い、一体何が? ……え?

 ジワリと僅かわずかに瞳を開いたルシア唖然あぜん。真上におだやかな片想いローダの顔を見つけ、慌てて再びその目を閉じた。

 ──ええ……こ、これってまさか私ローダに抱きかかえられてお姫様抱っこされて……。視線、合っちゃたかしら。

 だけど心地良い匂いにおいの主をルシアが決して違うたがう

 トクントクントクトクトクトク……。

 もう俄然がぜん気を失ってる場合でないルシアの胸元心臓鼓動こどうが張り裂けんばかりに胸打つを抑え切れない。

 直接自分のからだに彼が触れてる。
 心拍ドキドキか、或いあるいは跳ねるが如く波打つ胸に気付かれた処で何ら不思議じゃない。罪なき金色の十字架ロザリオが胸を舞台に躍り踊り狂う。

 やはりしっかり翠眼緑の瞳を開き、意識が戻ったのを伝えるべきだ。されどこの幸せに浸りひたり尽くしたい修道女姿仮のシスターらしからぬ乙女心欲しがりが首を擡げるもたげる気分とせめぎ合う。

 優しいローダは恐らく好意でなく倒れた自分をただので抱えてるに過ぎない。きっと私でもそうする。

 実際4日前の夜、自身もローダを同じく運んだ。あの時は生命の危機を感じたのも重なり、可笑しな後ろめたい気分など微塵みじんも……。

『ルシア・ロットレン、君は寧ろむしろ。俺は君の寝顔と泣きぼくろをながめていたい』

 ──……あ、ん、うんっ。……えっ??

 不意打ち過ぎるローダの意識介入。相手に伝達するか怪しい想い返事

 然も『君の寝顔と泣きぼくろを眺めていたい』──嬉しい、嬉しいけれどすさまじき羞恥しゅうち。次どんな顔して目を開けば良いのやら。ルシアは想像出来ぬ後始末と幸福の狭間はざまで揺れた。

 ──ローダは私を抱えながら寝顔をずっとのぞいている!? 私の泣き所ウイークポイントをじっと見つめてる!? うんん、待ってぇ!? 今の心根ドキドキさえ見透かされてるの!?

 詳細不明とはいえ、まだローダからのなら構いやしないのだ。よもやルシア自身の意中まで読まれていたなら羞恥処の話で済まない。

 暫くしばらくだんまりを決め込み恋慕れんぼな男に抱かれたままその身を預けあずけ続けたルシア。熱愛の相手へ我が身をささげる幸福に酔いしれ恥じらいを置き去りにした。

 なれど別の感情が沸々ふつふつ湧き出て来た。

 ──昨日の夕方夕暮れもだけど、し過ぎじゃない?

 無口・愚直ぐちょく素朴そぼく
 そんな可愛げにルシアはかれた。けれど美しい夕暮れを肩寄せ共に見つめた抜群ばつぐん駆引きリード

 さらに現在、自分を抱え『寝顔が素敵だそこまでは見ていたい言ってない』サラリッと心で告げた狡いチートな美青年イケメン。言葉無くとも知れた女心を扱うすべ熟知じゅくちしている?

 ローダ・ファルムーン20歳、過去の恋愛疑念ぎねんを抱くルシアであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...