🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第2部『Candidate selection(候補者の選択)』

第16話『The wise men's choice(賢者達の選択)』 B Part

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 もはや自分が鍵だとか忘却ぼうきゃく彼方かなたへ置き去りに恋路こいじを往きたいルシア・ロットレン。
 自分の知らぬ前に英雄ヒーロー担ぎかつぎ出されたローダ・ファルムーン。

 されどそんな二人の周囲を暗躍あんやくする多大な黒い影。
 恋愛にうつつを抜かせる場合ではない。そんな世知辛いせちがらい現実をルシアとて充分理解していた。

 二度に渡るマーダとそれにくみする者共に確実な一太刀を浴びせた事変。アルベェラータ父娘に限らずアドノス各地からエドナ村へアリ集るたかる様にResistance民衆軍を名乗る者共が結集けっしゅうしつつあった。

 中には正義の味方面しつつ報酬ほうしゅうと権利のみを欲する偽物さえ出現した。
 その上何しろ兵共つわものどもが多過ぎる故、これ迄通り教会での一時受け入れを諦め、民家に居候いそうろうさせた。
 当然の代価として下宿先を最優先で守るべし。また一定額の家賃を必ず収めるべしと御触れおふれを出した。

 アルベェラータ父娘にしても娘リイナは保育士兼修道女シスター
 父ジェリドは村の復興ふっこうだけに留まらず、頑強がんきょうな村造りに尽力じんりょくしている。ラファン出身者山に即した連中は地力が強い。

『これでエドナ村の護りがより強固に為る』

 手放しで喜ぶほど村人達は愚かおろかではない。寧ろむしろよりこの村に脅威きょういが訪れる前兆ぜんちょうだと理解した。民はありふれた平穏へいおんを欲していた。

 暗黒神マーダが起こした天変地異アディシルドは、村の大半を飲み干した。避難を進めていたので人的被害こそ少ないが、今後も恐怖に慄きおののきながらの生活をいられるのは不本意なのだ。

「──俺に漁の仕事を?」

 漁村エドナに流れ着いて飛び込んで10日目。未だ仕事ないニートなローダに仕事を斡旋あっせんする勝手な兄貴分ガロウ・チュウマ。

「村男手共の大半漁師じゃ。ワイお前も男やったらだったらおいと船乗らんか?」

 ガロウ先輩から当然の押し付け。
 ローダは本来探し人ルイスを求めて来た身分なれど、今や村の枠組みを超えた英雄扱い。
 おいそれと独りで兄捜しさがしを続けられず悶々もんもんとした日々を送っていた。

 例え仮住まいとはいえ、何か稼ぎ生計を立てなければ、英雄が金集りかねたかりの汚名を着せられても何ら不思議でない。
 おまけに流れとはいえ、村一番の美女ルシアからやしなって貰う言わばヒモ状態。

 ローダ程でないにしてもルシアとてエドナ村に越して幾許いくばくもない。
 金髪翠眼すいがんで顔立ちは勿論、身体の流れボディラインも非の打ち所がない。これ迄のエドナ村に存在し得なかった女性タイプ
 増してや子供の面倒見が良く、料理も熟すとあっては独り身の淋しい男共が、この現状を黙認もくにん出来る訳がないのだ。

 コトッ──。
 ローダの部屋を来訪らいほうしたガロウへ珈琲コーヒーを出すルシアの何気なにげない気遣いきづかい
 こんな訳ない生活の一部を切り取っただけでも余計なうわさが広がる一因いちいんに繋がるのが道理。因みちなみにルシア、近頃部屋着すら

「それも引き受けて構わない。だが俺はルシアの仕事を手伝いたい」
「「えっ?」」

 揺るがないローダのボソッとした語り口。
 聞いたガロウとルシアが思わず驚いた顔見合わせる。ルシアの仕事は語る迄もなく託児所。

 この歩く無愛想ぶあいそうに似合いの仕事とは全く思えず、ルシアすらも苦笑い。想い人と同じ職場の喜びあれど適職てきしょくとは到底とうてい思えやしない。

「た、確かに男手があるのは嬉しいけど。子供達やその両親とも話が出来なきゃ……」

 自然、言い淀むよどむルシア。嬉しい、そりゃあ大層嬉しいに決まってる。『それでも』と言わなきゃならないもどかしさ。

「わ、判ってるつもりだ。……俺、もっと他人ひとかかわらないと駄目だ。だから漁師も保育も望まれたら何でもやるつもりだ。上手く言えないが此処アドノスに来て以来そう思えた」

 ローダ自身、流石にガロウとルシアの心配に気付いていた。下手な会話を如何どうにか紡ぎつむぎ出す。

「ほぅ……」
「ど、どうして?」

 生活環境の変化は人の意識に作用さようするもの。ガロウはローダの変化をその程度の考えで落着させる。
 ルシアは好きな人が思う心境の変化に対しもっと深掘りしたい興味が湧いた。

「済まない、あくまで感覚何となくに過ぎないんだ。いて言うなら俺はこれまで兄を慕いしたい、捜すことだけ馬鹿みたいに考えてた。でも、兄離れしてもっと自分自身を……だな」

 視線を二人に合わせられないローダの何とも拙いつたない自己主張。
 改めて顔見合わすガロウとルシアの顔が思わず綻ぶほころぶ。弟の成長過程を見守る気分だ。『自分なりに頑張ってる』言葉要らずで伝心でんしんした。

 だがローダには決して誰にも言い難い裏腹うらはらなる思いが在るのだ。

『も、もしマーダがルシアの敵を続けるのなら、俺も兄を絶つたつ覚悟を持たなきゃ駄目だ』

 ──え? ま、また声が?

 ハッとするが気付かぬふりをすべく敢えてローダの方を見ないルシアの仕草。
 いだかれた時にも聞いたローダの心根こころね
 ルシアに取って空耳とは思えない心の声。

『ルシアを護る為には兄頼みな自分を卒業しないと駄目だ』

 身勝手にも人の思いを要約ようやくしてみる。またしてもルシアの想い好きが加速して目尻めじりの下が自然なナチュラル赤みチークを帯びる。思わずさとられない様、顔をそむけた。

 ピピピッ……。

「え、知らない(人からの)メッセージ……。──ッ!?」

 ローダへ恋寄せる想いを吹き飛ばす無粋ぶすいで異常な内容メッセージにルシアはスマホを落としそうになった。

「……ルシア?」
「ど、どげんどうした?」

 豹変ひょうへんしたルシアを問い質すただすローダとガロウに震える手で、スマホの画面をルシアは無言で見せた。

『フォルテザの学者からお伝えしたいことがあります。ラオの街が巨人らしきの襲撃を受けております(Message from a Forteza scholar.The city of Lao is under attack by giant-like beings.)』

 確かにあり得ぬ者から俄かにわかに信じ難い内容が書かれていた。
 然も御丁寧ごていねいに『巨人らしき』の写真さえ届いていた。確かに人型なのだが巨人族に見合う筈のない鎧らしき物をまとった不可思議ふかしぎなる絵面えづら

 フォルテザの学者と言えば、マーダの肝煎りきもいりなる手下、No2の学者ドゥーウェンに違いない。『ラオ』はフォルテザよりさらに東に位置する海に関わる観光資源で栄える街。

 敵が何故態々わざわざこんなものを寄越よこしたのか? 誰かの悪質な悪戯いたずらだと思いたい一同であった。

 ──第2部『Candidate selection(候補者の選択)』 Fin──
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