🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第3部『Chaos Surrounding the World(世界を取り巻く混沌)』

第19話『Fate of conflicting love(葛藤する恋の行方)』 B Part

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 元を辿ればラオまで人助けに向かうのが真なる目的。
 その上でフォルテザの最新医療を用い、ローダ・ファルムーンの体調管理を依頼すべく此処迄来た若者達。

 気が付けば恋慕れんぼし合う相手と同室で一夜を明かす男女の営みいとなみだけに揺れ動く不謹慎ふきんしん極まる交流。

 殊更ことさらルシアの動揺が激しいかに思えた絵面。
 その実ローダも男なら誰しも抱く妄想を、普段の能面のうめんで押し隠そうとする

「──ルシアッ!?」
「そ、そうよね。あ、貴方ローダは男。恐らくこんな経験女性経験一つ1人二つ2人。当然在るんでしょうね」

 ルシア、自分の声音こわね上擦るうわずるのを抑え切れない。
 声も相手ローダの手首をつかんだ手も震える彼女。初体験の辱めはずかしめに自分だけ追い詰められたと思い込む。

「な、無い……」
「はぁ? 何がぁ!?」

 悪びれた視線を床に落としたまま、ボソッと呟くつぶやく毎度ながらのローダ
 下から覗きのぞき込み更なる圧を掛けようと試みるルシアの動き。キレた方が主導権リードうばえそうな局面。

 グイッ!

「無いものは無い! き、君こそ、他の男と……」
「無いよ! そんなの一度も!」

 次はローダの方が半ば憤慨ふんがい気味でルシアに喰って掛かろうとする。握られた腕を強く振り上げ、彼女の翠眼すいがんに視線を上からかぶせて往く。

 しゅに染まったローダの顔を鋭い目線でルシアは下からはじいた。双方そうほう恥ずかし過ぎるオウム返しなやり取り。

 22歳の女性と20歳の男性、遅咲おそざき気味な恋愛模様もようを互いに暴露ばくろ。二人は苛立ついらだつ気分を暫くしばらく無言でぶつけ合った。

「ふぅ……判った。ふ、二人共思い違いをしてたらしい。良い風呂の在る部屋なんだ。じゃなく折角せっかくだから入らないか? 君が先で構わない」

 溜息吐いたローダが傾きかたむき加減なルシアの身体を引っ張り上げ立たせる。さらに両手を挙げ降参終戦の意志を示す。されどやはり気恥ずかしいのか、再び視線は外した。

「き、聞き耳立てたりしない?」
「何なら廊下に出ていようか?」

 ルシアも赤い顔を背け、自身が先に入浴する状況を想像せずにいられない。

「そ、そこ迄し、しなくても良い……よ。……なんか、ごめん」
「……嗚呼、此方こそ済まん」

 互いの擦れすれ違いを赤面のまま、言い淀みよどみながら謝る二人。

 そしてルシアはローダの提案を聞き入れ、独りには誇大こだい過ぎる脱衣所へ先に足を忍ばせた。
 扉は当然閉じ鍵もきちんと掛けた上で汗流す準備脱衣を始める。見られる覗かれる訳ないのに高鳴りが無駄に留まらない。

 ──ま、まさか私の気分をしないよね?

 自分ルシア嘘寝うそね見破みやぶったローダなのだ。壁越しに今の気分ドキドキかも知れない。過剰かじょうに思うのもを止むを得ない。

 チャプンッ……。
 出来得る限り音立てないよう細心さいしんの注意を払い、足先をゆるりと湯舟に浸けてくルシア。

 当然だが湯に全く以って罪は無く、無駄に緊張した心とからだに染み入り解きほぐしてくれた。

「全く……独りで入るには大きいお風呂浴槽と仲良く並んだ枕。本当ホンット部屋なのよ」

 湯舟に口まで浸かり泡立てながら、感じた羞恥しゅうちをルシアが呟く。同時に『独りには大きい浴槽』にが入る姿を夢想むそう。有り得ない触れ合いが火照りほてりを起こし狼狽うろたえた。

 ──でも……でもよ。ローダって思ってるの……よね。

 湯舟に浮いた自分の髪を弄りいじりながらではない、往復両想いの可能性にようやく感づく。けれどそれはそれで頂点極まるやましさが次々浮かぶ。

 重力のかせから解放された自身の胸元に触れてみる。触るまでもなく波打つ鼓動こどうがさらに激しさを増す。解き放たれた筈の胸がやけに苦しい。

 ──だ、だけどよ。幾らいくら何でも心の準備がなさ過ぎなのよ。大体彼の言葉で本音を聞いてないのだから……。

 ルシア的にローダは狡いずるいと正直押し付けたい。
 常日頃からそうした本音を誤魔化しごまかし続け、な心の声だけ伝える姑息こそく

『ルシア、俺はお前を愛してる』

 ちゃんと自分の鼓膜震わす言葉が聴きたい必然。これは女の自己満足ではないと思いたい。

 ◇◇

 その後ローダも入浴を終え、お互い口数少ないさみしい時間だけ流れ、就寝時刻が訪れた。

「じゃ、最初の約束通り俺は床で……」
「ま、待って。とっても寝心地良さげなベッドなのよ。……せ、折角せっかくだから一緒に寝よ? へ、じゃなくて」

 入浴の後、『折角だから』な折衷案せっちゅうあんが次はルシアから成された。
 されどローダの折衷案せっちゅうあんより遥かはるか敷居ハードルが高いのだ。別々に入るではなく『一緒に寝よ?』は強過ぎやしないか。

「る、ルシアは横になるなら、どちら向きが好みだ?」
「ええと……いて言うなら右向きかしら?」

 ドサッ。

「判った。じゃあ俺は左の壁を向いて寝かせて貰う」

 やはりローダは女性が好きな男性。好意を寄せた女性からの誘いいざない無下むげにしたら格好つかない。
 なれど背中合わせとはいえ同じ寝具の中。今夜は恐らく眠れないと覚悟を決めた。

 ファサ……。

 開き直りなローダに優しく羽布団を掛けたルシア。引き続き自分も潜り込み少し震える手で部屋灯りを消した。
 カーテン越しでもやわらいだ街灯りが部屋に滲んにじんで来る。

 琥珀色こはくいろした都会の夜──。

 深夜を過ぎた日付を跨いだフォルテザは、街灯りの光源を柔らかな火に習慣日常がある。
 自分達の街が誇る最先端技術Technologyだけに頼れば身を滅ぼす歴史を知り尽くした賢きかしこき住民達。夜くらい敢えて自然に頼る帰する300年前から受け継いだ伝統。

 互いに背中だけ触れ合い、進展叶わぬに心だけ先走り。
 穏やかな灯りが若い男女のわだかまりを徐々に溶かし始めた。

「……ほ、本当は斬りたくなかった。き、君を守りたい一心だった」

 いつになく弱気で、けれど普段通りの言葉足らずなローダの一言。
 何の話だが心読めないルシアとて勿論判る。オットォンに自分が殺され掛けた時の気分だ。触れる背中が震えていた。

「ただ兎に角とにかく必死……。だ、だけど奴の肩を斬った瞬間、自分に嫌気いやけが差すのを感じた」

 さらに震え止まらぬローダの懺悔ざんげ。『決して殺りたくなかった。だけど君の命を守るのは俺で在りたかった』恐らく彼は泣きたい本音を必死に抑え込んでいた。

「ローダ、ご、ごめん……。本当にごめんなさい。うん……。そう、だよね」

 ルシア、心の底から湧き出た涙交じりな謝罪の言葉素直な気持ち。後ろ手伸ばすと手探りで恋慕れんぼする男の逞しい優しき指に絡めた。

 ピクリッ──。
 互いに気恥しい感触反応

『今夜は……ね』

 肉声言葉心音こころねさえも不要不問約束繋がり
 何だかんだと取り繕ったつくろった割、自分が境界線ボーダーラインを越える歳上経験故の狡さ進撃瀬戸際せとぎわに於ける女性の度胸。

『愛してる』

 言葉だけの上辺うわべでない彼の本音を。彼の辛さを流したと、恐らく人を初めて殺そうと決意した優しい彼の想いが彼女の心で交錯こうさくした。
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