🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第4部『Spinning world(回る世界)』

第29話『Human System(ヒト成し得た原理)』 A Part

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 旧インド領バラタバザル、BharatIndiaの歴史は数多あまたなる人間達の邂逅かいこう。先住民バラタ族から産声うぶごえ上げ、大英帝国イギリスの支配下に置かれながらもヒンドゥーの教えと自分達の文明を決して絶やさず高き誇りほこりを通した。

 自国取り戻した後、ふところ広く他国の文化・宗教・思想をあふれんばかりに世界の天嶮てんけんヒマラヤのふちに許容した。21世紀初頭、劇的な発展をげ人口世界最上位に伸し上がる。

 悠久ゆうきゅうとき流れるこの大地の人々は、22世紀に至ってなお続く地球温暖化さえも耐え抜いた。
 世界全土を混沌こんとんおとしめた名ばかりの連合国軍が強行した『Purge of星屑達 Stardustの粛清

 旧インド領とて手酷い傷を背負うも比較的文明を残存出来た。
 故に誇り高き先住民達は、名前だけ奪われしいたげられる屈辱くつじょく耐えたえ凌ぐしのぐ

 そんな者共へ若さ滲むにじむはげまし先導する黒髪三つ編みの少女ルヴァエル。
 首から下、機械混じりなのか。或いあるいは機械じみた何かを着装ちゃくそうしているのか。何れにしろ先進都市フォルテザ以外の異国にて有り得ぬと思われていた姿形。

 緑色煌めくきらめく瞳、何より人々の意志揺さぶる圧倒的求心力きゅうしんりょく満ち溢れた。加えて人々の魂を爆弾と成した

「な、何故だ? 貴様はに……300年前を成した存在。血を継ぐ子供さえ……も」

 震え──いな怯えおびえたじろぐ稀有けう黒騎士マーダ葛藤かっとうの一言で決して片付けられぬ。『我を成した』と己が左胸押え、幾度いくども首振る畏怖いふ

「ま、マーダ様?」
「……」

 敬愛けいあい最早もはや溺愛できあいへ転じたフォウ・クワットロにすら、黒い男暗黒神がみせる順応じゅんのうならざる姿に見張るみはる琥珀色こはくいろの瞳。

 対して言葉なく乾いた目で追うだけのサイガン・ロットレン。マーダ瞠目どうもくの理由を把握し得るのか、或いは知識装うよそおう上辺だけの視線か。

 人間へ転化てんか遂げた端緒たんしょのマーダが華開いたのは300年以前の昔。
 例えどれだけ思い入れ感ずる者に似た存在が現れようとも己重ねるは珍妙ちんみょう。彼を此処迄突き動かす少女、ルヴァエルとは──?

 フォルデノ王国平定強奪後、これ迄在り得ぬ戦慄せんりつに王の間自体が揺らぐ激震げきしんを感ずる。地中海に浮かぶ矮小わいしょう島国アドノスより、余程世界を牛耳るぎゅうじる資格匂わせた。

 ◇◇

「ふぅ……」

 丁度同じ頃合い──。
 バラタバザルにて子供とは思えぬ素晴らしき演説を披露した長い黒髪三つ編みを揺らした少女の一息。

「ルヴァエル様? 随分とお疲れの御様子でいらっしゃいますね」

 側近そっきんであろうか。
 空色のサリーを身にまとった20代前半とおぼしき容姿を微笑み以って少女へ敬語で手向たむける。

「エルミュラ? 16の子供少女が生徒会役員じゃなくて国を動かす道化どうけを演じたんだ。溜息のひとつ位赦免しゃめんしてくれ」

 先程の独演とは全く異なる同じ者と思えぬ少女の言い分。
 エルミュラと呼称した茶髪で蒼い目の女性へ軽い文句をぶつけた。言葉通りルヴァエルが相手取ったのは国家を最初に形造かたちづくった先住民の末裔まつえい。息つくのも必然。

「大変御立派であらせられました。彷彿ほうふつさせる大変見事な演説。私大層敬服けいふく致しました」

 誉めほめ言葉と余分な敬語けいご折り重なるエルミュラの魅惑みわくあふれる声音こわね。相手が異性でなくとも性別無関係で落ちて身勝手な情愛勘違い呼び込み湧き上がらせそうな風体ふうてい
 褐色かっしょくの肌色にきらびやかな民族衣装の組合せ。BharatIndiaでサリーを発案した人間、天賦てんぶの才を殊更ことさら感ずる。

「御世辞なんか要らない──例のモノ、本当に大丈夫? 私とエルミュラの能力……それに御飾りな試作機TYPE-ZEROだけじゃとんだ恥晒はじさらしだよ」

 着装ちゃくそうした機械混じりのからだへやれやれと首すくめるルヴァエル。
 彼女達の隣に佇むたたずむ黒い影。体長5m程ありそうな黒豹くろひょうに近しき四脚の機械Machine。これもバラタ族を煽動せんどうすべく用意させた急増品。一応動ける代物しろものだがそれ以上ない見掛け倒しプロパガンダに過ぎぬのだ。

「はい、全く以って抜かりなく。初代様のが残した遺産が秀逸しゅういつ過ぎます。材料すらにお隠しなされていたのですから」

 精神面メンタルが疲労困憊こんぱいなのを隠す気ないルヴァエルを尻目しりめにひたすら愛想あいそ振り撒くエルミュラの美麗びれい。『黒い海』とは文字面通り『黒海』を示すのか。

「はぁ……あの、頭がおかしい。データファイルにせず紙に残した図面落書きの様な絵と、虫の鳴き声を偽りいつわり音声で情報説明伝達リークするだなんて」

 三つ編みと共に首を存分振りつつ初代現人神あらひとがみが随分頼りにした友人叔母さんの鬼才ぶりを呆れ果てるルヴァエルの憂鬱ゆううつ
 特殊な異能持たぬ人間の女が周囲を誤魔化ごまかしし守り抜いた残影遺産。此処迄出し抜けるものかと感銘かんめい突き抜けた軽蔑けいべつなる不快感。

 ルヴァエルの語る叔母おばとは嘗てかつて消された先代の代わりに技術提供平和協定という名目で生き残り残りカスの連合国ににえとしてささげられた。

 叔母独り分の技術力──。
 形だけでも漸くようやくひとつ一国を成した連合国が彼女の頭脳欲しさにとは言い難き世界大戦を勃発ぼっぱつさせても何ら違和感なき存在。

 もっとも軍部を粗方あらかた喪失そうしつした連合国なぞ翼がれた烏合うごうしゅう。戦乱招くまねく力はおろか、やがて消え逝く運命定め抗えあらがえなかった。

 それ故叔母は上辺だけの技術提供を惜しみなく与えた傍らかたわら、真に要求された分を隠匿いんとくし続けられた。

 されどお陰では見事成された。これなら世界を傍若無人ぼうじゃくぶじんに率いるあのふざけ切った島へ仕置き果たせるというもの。

 バラタ族の無念晴らす捲土重来けんどちょうらい──実の処それはていの良い言い訳に過ぎぬのだ。
 そもそも混ざり合い薄まった血の脈絡みゃくらく、有史以前の恨み辛みうらみつらみをとやかく叫ぶ気なぞ最初ハナから在り得ぬ。世界を背後味方に付ける正当化。

 ルヴァエル達の真なる目的──。
 300年前現人神レヴァーラ神森の女神ファウナ神と世界を席巻せっけんしたにもかかわらず、黒い輩マーダ取られたアドノス世界の天辺を我が物へ取り戻す事。

『世界揺るがした連合国軍をファウナと共に潰した真の救世主が弾きはじき散らされた無念を晴らす。マーダ、貴様に慙愧ざんきの念を我がさずけようぞ』
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