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第4部『Spinning world(回る世界)』
第29話『Human System(ヒト成し得た原理)』 B Part
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バラタバザルに於けるルヴァエル一派の決起。
冷笑が真顔というべきマーダさえも震え上がらせた余りに似過ぎた彼女の面影。
一方、フォルテザにて候補者最大手と思しきローダを調査しているドゥーウェンとリイナ。そんな情報届かぬ不可思議。
ドゥーウェンの雇い主が敢えて隠蔽。これはドゥーウェンに限らず、フォルデノ城王の間にて兵士から報告を受けた輩以外、伝達せず極秘とした。
例え情報希薄な社会といえど、マーダ直属配下ヴァロウズには自ずと知れよう。これは雇い主に対する不信感生む短慮な隠し事。
冷笑だらけの暗黒神がこれ程迄焦燥し切っていたのだ。現人神の眷属名乗るルヴァエルとは一体……。
▷▷──Master、火急の要件がございます。
「ベランドナ?」
風の精霊術『言の葉』を用いて己が主へ緊急報告を送ったベランドナの焦り。森の天使との至福の密談を敢えて邪魔された彼女の行動、付き合い長いドゥーウェンすら驚かせた。
バラタバザルに於ける決起集会の一部始終をつぶさに報告したベランドナ。
金縁眼鏡の中に潜む細い瞳が大きく見開かれた驚異。『外敵』は思い掛けぬ場所から想像以上の迅速込めて出現した事実を深刻な重大事と受け止めた。
「──ドゥーウェン様?」
同室の隣で冷汗垂らす学者風情な男の狼狽に気付くリイナの顔色も吊られた如く如実に変化した。明らかに異常な様だと知れた。
ベランドナから報告を聞き終えたドゥーウェン。熟考の末、重い口を開く。
「あ、後で詳細はお話します。これは皆様へ連携必須な内容です」
何れは皆も知るのだろうが現状は目前に居る英雄候補の安堵が最優先課題。「ローダさんの件、皆様へお伝えする際はくれぐれも慎重に」それだけ言い残して学者は天才司祭を解放した。
「り、リイナ……ど、どうなのローダの身体は」
繰り返すが何とも不吉なやり口にルシアが動揺を隠さない。
ローダ当人は元より、寄り添う愛を感ずる彼女にも検査結果を伏せられたまま。
これではまるで不治の病に犯された患者と、何れ遺族と化す家族へ伝え方を悩む藪医者の様な関係。
──希望ならまだある、此処に。
廊下で独り結果待ち侘びるルシア御姉様の淀みなき緑の瞳を見つめる白衣姿のリイナの願い。
なお患者の体であるローダ・ファルムーン、全身麻酔の眠りから未だ意識戻らずにいた。
「な、何?」
妹分の蒼き瞳が真っ直ぐルシアを正面から見据え、ガシリッと両肩すら掴む誇張を示す。
「私の大好きなルシア御姉様、ローダさんの体調は今直ぐどうこう語る状況ではありません。ですが……」
「ん、んん?」
昨夜は二人、リイナの部屋で彼氏の打ち明け話を普段と異なるフランクな感じで聞き及んだばかり。今日のリイナ別段異なる堅物顔で迫るのだ。
「これからあの方の未来は貴女次第なのです!」
真面目過ぎるリイナの視線、瞬きさえ自分に赦さずルシアと目で語り合いを要求。
この発言に深い趣旨は全く以ってないのだ。リイナは敬愛する御姉様に自分らしく居続け恋焦がれ続けて欲しい。
飾り気なきルシアの純粋な愛をローダへ手向け続ける事こそ寛容。
これは俗に言う女の勘。女の思い込みは、時として事実さえも捻じ曲げるもの也。
ガバッ!
「お、御姉様ぁッ!?」
次はリイナが驚く時間が突然降り掛かる。ルシアが椅子を蹴り立ち上がると勢いそのまま白衣のリイナをギュッと抱き締めた。女性特有の香りとは異質な何かが少女を包む。
「判ってる、判ってるつもりよ私。私が彼を導く、初めて逢ったあの日から……ね」
──あ、嗚呼……やっぱり凄いよこの女。
ルシアから滾々と湧き出る泉が如き温かみがリイナを包み込む。理屈を超越した処から流れ出流形容出来ぬ優しみ。
「そ、そりゃあ不安あるわよ。彼にいずれ愛想尽かされるかも知れない。……でもね、それでも私は生涯寄り添いたいのよ。例え他人に成ろうとも」
あくまで寵愛なるローダへ手向けたルシアの言葉。
自然と涙溢れるリイナ、声にならない心音。
この人、私から言われる迄もなく知り尽くしていたのだと思い知らされた。
ローダと共に歩みたい旅路──。
ルシアはローダと拳交えた初夜から心さえも決めていた。その後、彼と言葉で語り、触れ合い……辿り着いた確信。
例えこれからどんな苦難が待ち受けようとも燦然と煌めき放つ笑顔で受け止める幸福の意志が金色煌めく髪色を成しているとさえ思える様。
候補者が敵と争う折、相手の潜在意識と会話を遂げる。ルシア自身も彼程ではないが成し得ていた。
愛と命繋ぎ留めたい本能から躰の繋がり合いこそ至上の悦びと信じ疑わぬ人の恋愛模様。
なれど鍵は扉を開け放ち、それすら遥かに凌駕した密接なる絆を刻み付けていた。
平常なら女の揺れる心を開くのは男ではないか──?
それは非常に古臭く身勝手な当て付けに過ぎぬ。
不完全な躰の繋がりなんぞ後回しで構わないのだ。人の在り様はひとつして同じモノは在り得ない。
言葉も触れ合いすら要らぬ無償の愛──既に彼女は終えていた。『何も心配要らない』聴こえぬ心の声音が穏やかに、揺れ動く少女の心を支える。
『この女性の胸内は既にあの男性への一途な恋心で溢れて零れ落ちそう。線路の様に曲がらない愛なのね』
男と女──英雄と女傑。
仮に揃いで肩並べれば男が上位? 一体誰が定めた戯言なのか?
ルシア・ロットレンは、主人公さえ越えた空から微笑み絶やさぬ陽光を愛する者へ注ぐのだ。
冷笑が真顔というべきマーダさえも震え上がらせた余りに似過ぎた彼女の面影。
一方、フォルテザにて候補者最大手と思しきローダを調査しているドゥーウェンとリイナ。そんな情報届かぬ不可思議。
ドゥーウェンの雇い主が敢えて隠蔽。これはドゥーウェンに限らず、フォルデノ城王の間にて兵士から報告を受けた輩以外、伝達せず極秘とした。
例え情報希薄な社会といえど、マーダ直属配下ヴァロウズには自ずと知れよう。これは雇い主に対する不信感生む短慮な隠し事。
冷笑だらけの暗黒神がこれ程迄焦燥し切っていたのだ。現人神の眷属名乗るルヴァエルとは一体……。
▷▷──Master、火急の要件がございます。
「ベランドナ?」
風の精霊術『言の葉』を用いて己が主へ緊急報告を送ったベランドナの焦り。森の天使との至福の密談を敢えて邪魔された彼女の行動、付き合い長いドゥーウェンすら驚かせた。
バラタバザルに於ける決起集会の一部始終をつぶさに報告したベランドナ。
金縁眼鏡の中に潜む細い瞳が大きく見開かれた驚異。『外敵』は思い掛けぬ場所から想像以上の迅速込めて出現した事実を深刻な重大事と受け止めた。
「──ドゥーウェン様?」
同室の隣で冷汗垂らす学者風情な男の狼狽に気付くリイナの顔色も吊られた如く如実に変化した。明らかに異常な様だと知れた。
ベランドナから報告を聞き終えたドゥーウェン。熟考の末、重い口を開く。
「あ、後で詳細はお話します。これは皆様へ連携必須な内容です」
何れは皆も知るのだろうが現状は目前に居る英雄候補の安堵が最優先課題。「ローダさんの件、皆様へお伝えする際はくれぐれも慎重に」それだけ言い残して学者は天才司祭を解放した。
「り、リイナ……ど、どうなのローダの身体は」
繰り返すが何とも不吉なやり口にルシアが動揺を隠さない。
ローダ当人は元より、寄り添う愛を感ずる彼女にも検査結果を伏せられたまま。
これではまるで不治の病に犯された患者と、何れ遺族と化す家族へ伝え方を悩む藪医者の様な関係。
──希望ならまだある、此処に。
廊下で独り結果待ち侘びるルシア御姉様の淀みなき緑の瞳を見つめる白衣姿のリイナの願い。
なお患者の体であるローダ・ファルムーン、全身麻酔の眠りから未だ意識戻らずにいた。
「な、何?」
妹分の蒼き瞳が真っ直ぐルシアを正面から見据え、ガシリッと両肩すら掴む誇張を示す。
「私の大好きなルシア御姉様、ローダさんの体調は今直ぐどうこう語る状況ではありません。ですが……」
「ん、んん?」
昨夜は二人、リイナの部屋で彼氏の打ち明け話を普段と異なるフランクな感じで聞き及んだばかり。今日のリイナ別段異なる堅物顔で迫るのだ。
「これからあの方の未来は貴女次第なのです!」
真面目過ぎるリイナの視線、瞬きさえ自分に赦さずルシアと目で語り合いを要求。
この発言に深い趣旨は全く以ってないのだ。リイナは敬愛する御姉様に自分らしく居続け恋焦がれ続けて欲しい。
飾り気なきルシアの純粋な愛をローダへ手向け続ける事こそ寛容。
これは俗に言う女の勘。女の思い込みは、時として事実さえも捻じ曲げるもの也。
ガバッ!
「お、御姉様ぁッ!?」
次はリイナが驚く時間が突然降り掛かる。ルシアが椅子を蹴り立ち上がると勢いそのまま白衣のリイナをギュッと抱き締めた。女性特有の香りとは異質な何かが少女を包む。
「判ってる、判ってるつもりよ私。私が彼を導く、初めて逢ったあの日から……ね」
──あ、嗚呼……やっぱり凄いよこの女。
ルシアから滾々と湧き出る泉が如き温かみがリイナを包み込む。理屈を超越した処から流れ出流形容出来ぬ優しみ。
「そ、そりゃあ不安あるわよ。彼にいずれ愛想尽かされるかも知れない。……でもね、それでも私は生涯寄り添いたいのよ。例え他人に成ろうとも」
あくまで寵愛なるローダへ手向けたルシアの言葉。
自然と涙溢れるリイナ、声にならない心音。
この人、私から言われる迄もなく知り尽くしていたのだと思い知らされた。
ローダと共に歩みたい旅路──。
ルシアはローダと拳交えた初夜から心さえも決めていた。その後、彼と言葉で語り、触れ合い……辿り着いた確信。
例えこれからどんな苦難が待ち受けようとも燦然と煌めき放つ笑顔で受け止める幸福の意志が金色煌めく髪色を成しているとさえ思える様。
候補者が敵と争う折、相手の潜在意識と会話を遂げる。ルシア自身も彼程ではないが成し得ていた。
愛と命繋ぎ留めたい本能から躰の繋がり合いこそ至上の悦びと信じ疑わぬ人の恋愛模様。
なれど鍵は扉を開け放ち、それすら遥かに凌駕した密接なる絆を刻み付けていた。
平常なら女の揺れる心を開くのは男ではないか──?
それは非常に古臭く身勝手な当て付けに過ぎぬ。
不完全な躰の繋がりなんぞ後回しで構わないのだ。人の在り様はひとつして同じモノは在り得ない。
言葉も触れ合いすら要らぬ無償の愛──既に彼女は終えていた。『何も心配要らない』聴こえぬ心の声音が穏やかに、揺れ動く少女の心を支える。
『この女性の胸内は既にあの男性への一途な恋心で溢れて零れ落ちそう。線路の様に曲がらない愛なのね』
男と女──英雄と女傑。
仮に揃いで肩並べれば男が上位? 一体誰が定めた戯言なのか?
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