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第5部『Resonant Fate(響命)』
第45話『Traveling(移ろう旅路)』 B Part
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地元ラファンへ置き去りにしたうだつの上がらぬ彼氏ロイドへ想い馳せ、ローダ達を後にしたリイナ・アルベェラータ。
奇行過ぎる幸せに堕ちた扉の正候補者ローダ・ファルムーンと最早鍵を彼氏に委ねたルシア・ロットレン。
そして二人繋がった証、愛の結晶ヒビキ。
加えてアドノスに在らずな人々の巨大な意志の渦、行先異なる必然。
それぞれの旅路が幕開けようとしていた。
翌朝──。
Forteza空虚の代行者、ドゥーウェンが、いの一番に協議したのは英雄の復活劇。
黒の候補者に敗北したが『生き返った』酷いにも程あるゴシップ記事である。
取り合えず伏せる事に決めた。然し、整った舞台用意しようと画策したのだ。
「──と、云う訳で死んじゃった英雄さんと、女傑さんにはロッギオネ奪還の任に当たって頂きます」
カチャカチャカチャカチャ……。
手軽な口調、さらに片時もPCから目を離さぬ無愛想で退院したての男と、胎児成したばかりの女へ任務押し付ける尊大告げたドゥーウェンの呆れた様。
「ま、また軽飛行機で飛ぶのか?」
ローダ、不死の巨人を倒すべく刹那な旅路を思い出す。自分は良いのだ、そこいらに転がってる言い訳にもならぬ病み上がりとは訳が異なる。だが愛するルシアは身軽な身重なのだ。
「いえいえ、だって英雄は死んじゃったんですよ。そんな派手な真似させられません」
ドゥーウェン、何とも容赦なき様。
ルシアの懐妊、加えた飛び過ぎなヒビキの現存を伝えていなかった。
前者は冷やかしで済むやも知れぬ。されど後者──Internet垂れ流す口の軽さを好きに操るこの学者面へ真実語る行動を危険視したのだ。
ロッギオネ──リイナが最年少で司祭級の座を与えられた戦之女神の聖地である。
「あの場所、流石所謂神格ぅ? 頭のお堅い連中ばかりでして軍を寄越すと幾ら伝えても耳を貸さないのです。なので御二人だけ、隠密して頂きます」
カチャカチャ……。
実の処、人付き合い苦手な金髪の学者。PCへ音声認識届けるかの如く冷たい口調を継続し続けた。
──確かに言ってない。だが此奴には響かなかったのか?
死人思しき自分が感じた、ヒビキの名に宿る品格。その狭間に、人の感性を持たぬ憐れが滲んだ。
「そしてリイナさん、貴女にはエドル神殿跡へ出向いて頂きます」
「え……?」
何とも逆位置感じたリイナの疑問符、思い吹き抜ける。
ロッギオネには10歳の頃、司祭の勉学勤しむべく若過ぎた独り暮らしを過ごした思い出の地。
地理的にもエドル神殿跡の方が近しいのだ。ルシア御姉様を徒歩で向かわせる理不尽を感じた。
「あ、問題ございません。リイナさんには私のベランドナを連れとして寄越します」
ペコリッと無言で14歳の少女へ頭を下げる300歳越え、鞍替えの忠誠。ドゥーウェンの気遣い、全く以って的外れ甚だしき歪んだ凄味流れた。
「で、ですが──」
ルシア御姉様の御身、心痛めたリイナが口挟もうとした次の刻──そのルシアが、穏やかな顔。割って入り、リイナの愛らしい肩を掴み首振り制した。
「判った、巧くやってみせるよ。英雄の復活劇、精々派手に演出して来るわ」
ルシア、此処に至ってなお、公式なる候補者の演出者匂わす大胆不敵。英雄が咲かす奇跡の薔薇、誰にも譲らぬ思い轟かせた。
▷▷──多分、この人にはひびかないのよ。
木の葉がリイナの肩とローダの掌へ舞い降り語る風の精霊術『言の葉』
悪戯じみた気分、二人へ心の便り届けた。
「じゃあ話はこれで終わりね、出立は明日にさせて貰うよ。徒歩の旅とか久しぶりぃ。処で私お腹空いちゃった。川沿いに出来たドーナツ屋行かない? ベランドナさんは?」
んんーーっと背伸びしたルシア、女性の食欲欲しがる様。つまらぬ男の話など早々に切って捨てた。
「え……ど、ドーナツ。わ、私もですか?」
珍しきこと、指名受け素っ頓狂な声上げたハイエルフ。
ドーナツ……未知の存在を感じ思わず揺らいだ。旅立ちは明日──にも関わらずドーナツ屋で人間の若者達と御茶会する自分を想像、縁遠き旅行思わせた。
ルシア、皆の背中を押しつつ「さ、行こ行こ」と皆を煽り、上っ面な学者を置き去りにする遊びへ跳ねた。
◇◇
ザーッ……。
グリモア、窓の外は降りしきる雨粒。石畳の道を鳴らした。
自分の居場所へ戻れたアデルハイド・ヴェルナー。女性の私服に浸り切り、窓流れる雨造りし川面を虚しさかまけて眺めていた。
今日は主人の鏡像思わす赤い貴族服に非ず。灰色のふわりと緩いワンピース姿。髪色さえ灰色、赤はウィッグに依る変装に他ならぬ。
されど心に降り積もるのは紅色のイカれた帽子屋、他は要らない。だが切なきかな、決して振り向かむ灰色なる気分に独り揺らいだ。
彼女の名前、本名ではない。元々名乗り知らぬ寂しき世捨て人。まるで男性の様な氏名、与え授けたのはミヒャエルである。
女性で在る事を捨てた名前、姿形を限りなく敬愛する主人へ寄せた理由。
力無き自分があの御方に捧げる唯一無二、替え玉に成るべく男性の名前を冠した。それさえ周りに余分居れば決して明かさぬ影命。表に居る刻、裏の名を語るのだ。
ミヒャエル・レイモンド──。
愛する妻を失って以来、生娘は不要。実体亡き依存へ瀕した男。依ってアデルハイドが入る余地なき必然知り尽くしている。
だが──神出流島に於いて彼に寄り添う夢思しき力の発現、行かれ、そして見つけた。『神住まう島は楽しかったかい?』と聞かれたアデルハイド、『何も……』と嘯いたのだ。
哀しき自明の理。彼が欲しがるものは己自身ではない。
力振るう自分を要求するであろう結実が見え透いていた。主人が着る血染めの如く……。壊したい衝動、狩られた。
奇行過ぎる幸せに堕ちた扉の正候補者ローダ・ファルムーンと最早鍵を彼氏に委ねたルシア・ロットレン。
そして二人繋がった証、愛の結晶ヒビキ。
加えてアドノスに在らずな人々の巨大な意志の渦、行先異なる必然。
それぞれの旅路が幕開けようとしていた。
翌朝──。
Forteza空虚の代行者、ドゥーウェンが、いの一番に協議したのは英雄の復活劇。
黒の候補者に敗北したが『生き返った』酷いにも程あるゴシップ記事である。
取り合えず伏せる事に決めた。然し、整った舞台用意しようと画策したのだ。
「──と、云う訳で死んじゃった英雄さんと、女傑さんにはロッギオネ奪還の任に当たって頂きます」
カチャカチャカチャカチャ……。
手軽な口調、さらに片時もPCから目を離さぬ無愛想で退院したての男と、胎児成したばかりの女へ任務押し付ける尊大告げたドゥーウェンの呆れた様。
「ま、また軽飛行機で飛ぶのか?」
ローダ、不死の巨人を倒すべく刹那な旅路を思い出す。自分は良いのだ、そこいらに転がってる言い訳にもならぬ病み上がりとは訳が異なる。だが愛するルシアは身軽な身重なのだ。
「いえいえ、だって英雄は死んじゃったんですよ。そんな派手な真似させられません」
ドゥーウェン、何とも容赦なき様。
ルシアの懐妊、加えた飛び過ぎなヒビキの現存を伝えていなかった。
前者は冷やかしで済むやも知れぬ。されど後者──Internet垂れ流す口の軽さを好きに操るこの学者面へ真実語る行動を危険視したのだ。
ロッギオネ──リイナが最年少で司祭級の座を与えられた戦之女神の聖地である。
「あの場所、流石所謂神格ぅ? 頭のお堅い連中ばかりでして軍を寄越すと幾ら伝えても耳を貸さないのです。なので御二人だけ、隠密して頂きます」
カチャカチャ……。
実の処、人付き合い苦手な金髪の学者。PCへ音声認識届けるかの如く冷たい口調を継続し続けた。
──確かに言ってない。だが此奴には響かなかったのか?
死人思しき自分が感じた、ヒビキの名に宿る品格。その狭間に、人の感性を持たぬ憐れが滲んだ。
「そしてリイナさん、貴女にはエドル神殿跡へ出向いて頂きます」
「え……?」
何とも逆位置感じたリイナの疑問符、思い吹き抜ける。
ロッギオネには10歳の頃、司祭の勉学勤しむべく若過ぎた独り暮らしを過ごした思い出の地。
地理的にもエドル神殿跡の方が近しいのだ。ルシア御姉様を徒歩で向かわせる理不尽を感じた。
「あ、問題ございません。リイナさんには私のベランドナを連れとして寄越します」
ペコリッと無言で14歳の少女へ頭を下げる300歳越え、鞍替えの忠誠。ドゥーウェンの気遣い、全く以って的外れ甚だしき歪んだ凄味流れた。
「で、ですが──」
ルシア御姉様の御身、心痛めたリイナが口挟もうとした次の刻──そのルシアが、穏やかな顔。割って入り、リイナの愛らしい肩を掴み首振り制した。
「判った、巧くやってみせるよ。英雄の復活劇、精々派手に演出して来るわ」
ルシア、此処に至ってなお、公式なる候補者の演出者匂わす大胆不敵。英雄が咲かす奇跡の薔薇、誰にも譲らぬ思い轟かせた。
▷▷──多分、この人にはひびかないのよ。
木の葉がリイナの肩とローダの掌へ舞い降り語る風の精霊術『言の葉』
悪戯じみた気分、二人へ心の便り届けた。
「じゃあ話はこれで終わりね、出立は明日にさせて貰うよ。徒歩の旅とか久しぶりぃ。処で私お腹空いちゃった。川沿いに出来たドーナツ屋行かない? ベランドナさんは?」
んんーーっと背伸びしたルシア、女性の食欲欲しがる様。つまらぬ男の話など早々に切って捨てた。
「え……ど、ドーナツ。わ、私もですか?」
珍しきこと、指名受け素っ頓狂な声上げたハイエルフ。
ドーナツ……未知の存在を感じ思わず揺らいだ。旅立ちは明日──にも関わらずドーナツ屋で人間の若者達と御茶会する自分を想像、縁遠き旅行思わせた。
ルシア、皆の背中を押しつつ「さ、行こ行こ」と皆を煽り、上っ面な学者を置き去りにする遊びへ跳ねた。
◇◇
ザーッ……。
グリモア、窓の外は降りしきる雨粒。石畳の道を鳴らした。
自分の居場所へ戻れたアデルハイド・ヴェルナー。女性の私服に浸り切り、窓流れる雨造りし川面を虚しさかまけて眺めていた。
今日は主人の鏡像思わす赤い貴族服に非ず。灰色のふわりと緩いワンピース姿。髪色さえ灰色、赤はウィッグに依る変装に他ならぬ。
されど心に降り積もるのは紅色のイカれた帽子屋、他は要らない。だが切なきかな、決して振り向かむ灰色なる気分に独り揺らいだ。
彼女の名前、本名ではない。元々名乗り知らぬ寂しき世捨て人。まるで男性の様な氏名、与え授けたのはミヒャエルである。
女性で在る事を捨てた名前、姿形を限りなく敬愛する主人へ寄せた理由。
力無き自分があの御方に捧げる唯一無二、替え玉に成るべく男性の名前を冠した。それさえ周りに余分居れば決して明かさぬ影命。表に居る刻、裏の名を語るのだ。
ミヒャエル・レイモンド──。
愛する妻を失って以来、生娘は不要。実体亡き依存へ瀕した男。依ってアデルハイドが入る余地なき必然知り尽くしている。
だが──神出流島に於いて彼に寄り添う夢思しき力の発現、行かれ、そして見つけた。『神住まう島は楽しかったかい?』と聞かれたアデルハイド、『何も……』と嘯いたのだ。
哀しき自明の理。彼が欲しがるものは己自身ではない。
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