🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

文字の大きさ
101 / 171
第5部『Resonant Fate(響命)』

第46話『A Petal Becoming(和らぎの”華娩”)』 B Part

しおりを挟む
 翌朝──。
 黒騎士マーダ時代、アドノス島から奪われた自由。取り戻すべく静かだが着実な一歩を勇者達が歩み始めた。

 先ず戦之女神エディウス神の司祭級、リイナ・アルベェラータとヴァロウズNo2の学者ドゥーウェンの付添人、ハイエルフのベランドナがFortezaフォルテザから出立した。

 この両者、普段の出で立ちで堂々街道のど真ん中、肩で風切るが如く歩き始めた。
 森の天使と呼ばれるリイナと毎度ながら流麗りゅうれい過ぎるベランドナの凸凹コンビが道歩けば、擦れすれ違う者達の視線を釘付けする必然が始まり往く。

 目指すエドル神殿跡は、マーダルイスが手の内。具体的には不明だが他の地域と比較しても完膚かんぷ無きまでに蹂躙じゅうりんされたのだ。それは正直止むを得ない結実。

 エドルは嘗てかつてレヴァーラ・ガン・イルッゾから異能を得たディスラドが築いた神殿跡以外、観るべき場所在らずな寂しき場所。

 人口も減少の一途いっとを辿り、若い世代は隣接した神の御旗みはた掲げたロッギオネへ職を求め移住した。
 然もディスラドがエトナ火山を噴き飛ばす、およそ人災とは呼べぬ天変地異を起こしたとはいえ、未だ火山の余韻よいん燻りくすぶ続ける危険地帯。

 他の地域でマーダの占領下にされた所には必ず砦が建造された。
 だがこの地域に至っては『要らぬ』とでも云うのだろうか見当たらないのだ。エドル神殿跡を砦代わりにしているといううわさもあるが真意の程は定かでない。

 マーダの膝元、ヴァロウズNo2のドゥーウェンが事実を知らぬ不敵ふてきな場所。ひょっとすると占領下に置く価値なしと切り捨てたやも知れない。

 二人の出立から数時間後、馬車や馬上の者など様々な民衆達が行き交う最中、1台の荷馬車がまぎれるようにゆるりとFortezaフォルテザを後にした。丁度、商人辺りに扮装ふんそうしたていである。

 これがロッギオネ奪還だっかんに向けた英雄二人を運ぶ存在真実
 ついこの間、英雄と持ち上げられた者共とは思えぬ実に寂しさ漂うただよう旅立ちの図式であった。

 さて、先んじたリイナとベランドナである。
 徒歩かちの旅とはいえど、目指すエドルはFortezaフォルテザの南の端。実は隣接した場所お隣さん
 故に旅とはいえ邪魔立てする者さえ出現しなければ随分気楽なものだ。

 然し旅往く二人の気分は反比例。
 初対面こそ初めましてな人類最強種ハイエルフにゾッコンであったリイナだが、ドゥーウェンに普段から付きっ切りな相手。会話を交したことなどなく、同じ女性とはいえはずめずにいた。

 それはベランドナとて同様。
 彼女は特にその辺り、事務的な言葉しか交わした事がなく、殊更ことさらそれで良しとしているきらいがある。

 だが──そんな気分を察したのか。或いあるいは単純にドーナツ空虚な甘味を食べたい欲が先行しただけの偶然なのか。
 ルシアが前日、4人でドーナツ屋を訪れ空気読まずに会話成したことで一応のくさびを打つ形が出来た。

 ──やっぱり綺麗な人、でもルシア御姉様と重なる処がある。

 背丈も高く、歩きも速いベランドナ。自然、リイナは後ろを往く。金色の髪、スラリと伸びた背格好。脚運ぶ都度、金色が光の精霊達を連れ添い、風達も囁くささやくのが聴こえそうな錯覚さっかく呼び込む。

 ──ハイエルフと云えば……。

 リイナ、気掛かりな内容を思い切って伺う決心固めた。やはり昨日の雑談、極僅かといえ溶け合う切欠きっかけ成した。少し早足でベランドナに追い縋るすがる

「あ、あのベランドナ…さん」

「ん? 何か御用でしょうか?」

 リイナ、少し言い淀みよどみ胸元心臓跳ねながらも、自由と好奇心抱く思い馳せ、ベランドナを呼び止める勇気整えた。
 歩みを止めずに普段通りの事務的な応対を貫くつらぬくベランドナである。

「る、ルシア御姉様の(躰の)こと、知ってらっしゃるんですか?」

 ピクリッ──。
 完全に歩みを止めた訳ではない。されど明らかにベランドナ周囲の空気、変化する様子が滲みにじみ出た。

「ええ、何しろサイガン様へ余命幾許いくばくもない同胞同種族を紹介したのは、誰でもないこの私ですから……」

 美麗過ぎて人形の様なベランドナの顔色、僅かに曇り空を帯びる人間味を引き出した。

 ◇◇

 一方、凡庸ぼんような商人ふんした馬車。陽が陰り出した頃合い。
 馬車のみエドルへ向かう道を辿り、普段と異なる庶民の旅装姿で馬車から降りた英雄二人。

 目指すロッギオネは辺境エドルを南へ横断した先にあるのだ。
 漸くようやく本来の目的、そしてと語って差し支えない水入らずな旅路が始まった。

 徒歩で暗がり増す道を進むは愚の骨頂ぐのこっちょう。だがルシアには例の瞳孔どうこうを自由に変化させ夜目を効かすすべがある。とはいえ未だ往来ある最中、夜道を進めば危うき強行に映らなくもない。

 そこで一旦歩みを止め、旅行者が夕食を取る姿を偽装ぎそうすると決めた。往来途切れる夜中を待つ算段を取るのだ。
 ローダ、バックパックから取り出したのは固形燃料を主とした簡易的なコンロ。手際てぎわ鮮やかに食料等も取り出す。流石独りでハイデルベルク旧ドイツ領から独り旅を続けただけのことはある。

 なお、二人が羽織はおる迷彩色のマントも彼の発案。
 軽量かつ雨風しのげる材質であり、ロープで樹々と結べば簡易テントになる優れもの。

 品物自体、特段凄いものではないが、選択肢と扱いの手慣れた様は2年間もの最中、野営し尽くした経験値を存分活かしていた。

 ルシアの分まで駄賃オマケとばかりにシェラカップと珈琲を用意した。未来の旦那様、頼り甲斐ある様子にルシアは惚れ惚れほれぼれした。

 簡単な夕飯とれて貰った珈琲を飲みつつ心地、馬車に揺られ凝りこり固まった身体を揺すり解したルシア。心の方も幾分いくぶん晴れやかに滑る。
 心地良き虫の鳴き声、灯油ランプの灯りが僅かな風で揺れ動く。頼れる彼氏のお陰で、夜の静寂せいじゃくと何処までも拡がりみせる星空が自由を授けてくれた気分に浸れた。

 もし自分独りきりだったなら──守る壁さえなき22歳の女の子らしい不安が、自由を呑み干す暗闇へ化け、目の前に広がる絶望感で包み込まれたやも知れぬ。

 一度はてのひらから零れこぼれ落ちた願いローダ。ヒビキと取り戻せた幸福に胸膨らむ気分、夜空の星々へ気持ち手向けた。

焚火たきびじゃないんだ?」
「目立つからな、それに火起こしのあとを消すのは面倒だし手間が掛かる」

 ローダには、自由と身勝手を履き違えぬ理想がある。
 それは、彼の旅と選択に根差している信念であり、焚火を避ける判断にもその芯が見え隠れした

 野営経験がないルシア──否、ルシア・ロットレンとして頃合いの経験値。実の処、あらゆる分野が欠落していた。

 だからこそ、初体験を大好きなローダと経験値へ転出来る喜びがにじんでいた。ラオで戦士達を葬送した葬った折、彼氏が語った焚火と星々の神話語りを思い出した。

 ──が、ベランドナと二人きりでエドル神殿跡へ向かった妹分、リイナの方へ気を回した。
 自分の躰は元来ハイエルフ、人間に限りなく近しい亜人族だ。
 ルシア自身が語らなかった事柄をリイナが聞く状況、透けて見える気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...