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第5部『Resonant Fate(響命)』
第50話『Oracle of Reverie(幻想の座)』 A Part
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エドル神殿跡に於ける偽の神殿Vsハイエルフ・ベランドナの争い。
無機質に化けられるだけに在らず、ベランドナの行使する精霊術も即時模倣し、反撃へ転ずる危険な相手であった。
だがベランドナが合成精霊術と云うどちらを模倣すべきか相手惑わすハイエルフの真価を発揮した処、一挙形勢逆転。遂に灰色の鬼女の炙り出しに成功した。
「……」
ベランドナ、何時になく蔑みを床に転がり往く鬼女へ叩き付ける。
精霊達は彼女に取って使役する存在だが、大切な友人なのだ。
そもそも精霊と云うのはあらゆる生物や物質を構成する上で欠かせない存在。
エルフ達は、精霊の恵みに対する感謝の気持ちを日々欠かさない。
だから精霊術を盗み取ったこの鬼女へ理屈抜きの深い嫌悪感を抱いたのだ。
荒れた石畳に伏していた鬼女の顔を見るべく無造作に肩を掴み、仰向けにしようとベランドナが手を伸ばした一瞬の出来事。
「ま、Master!?」
それは余りに陳腐な仕掛けであった。変身能力に長けた鬼女。
ベランドナが興味惹かれた人間の男に化ける。ほんの一握り、ベランドナの心を掌握出来れば付け入る隙が生み出せると謀った。
歩く冷静沈着、ベランドナとて充分判り切った事柄。それにも関わらず地面転がる卑劣な敵を反転させた途端、金縁眼鏡の学者が舌を出した。
更なる愚劣がベランドナを包み込む。
ドゥーウェンがよく用いる香水に似た香りと霧が彼女を覆い尽くした。
バタッ!
「べ、ベランドナさんッ!?」
悲鳴に近しいリイナの震撼歪み往く。先程迄独りで無双の活躍見せたベランドナが突然気を失い倒れた。
余りに呆気なさ過ぎる瞬転。
どんな術を使ったにせよ、殆ど抗えずに、あの頼れる強者ベランドナが落ちたのだ。
「やれやれ……流石、亜人族最強。危うく負ける処でした。昔、エルフ族を喰らって本当に良かった」
決してドゥーウェンが言わぬ台詞。スーツの埃を払いながら黒いスーツの男が立ち上がる──かと思いきや、灰色で1本角の鬼女へ返り咲いた。
スッ。
「成程、香の精霊と霧の精霊に依る合わせ技。そしてベランドナ様は、人一倍精霊から受ける影響が強かった」
リイナ・アルベェラータより身体が一回り小柄な少年、ジオーネ・エドル・カスードが歩み出て、リイナを自分の背後へ寄せた。精霊と共感出来るハイエルフ、染み入る耐性弱体過ぎた。
冷静な物言いだが、ベランドナの同胞を喰らい成し得た鬼女の精霊術。少年が沈んだ顔で睨みを効かせた牽制。
ペロリッ
「餓鬼がしゃしゃり出て騎士気取りぃ? 好いよぉ、早く出しなよ君の不死鳥をさぁ。ヴァロウズ6番目の『セイン』お姉ちゃんが可愛らしい君の火の鳥、美味しく喰らってあげる」
あからさまなセインの挑発。
ジオーネ少年の額に触れるほど顔近寄せ、不死鳥召喚をせがむ大胆不敵。
リイナは『ヴァロウズ6番目』と云う言葉に反応し、少女の顔を引き攣らせた。
不死鳥が果たしてどんな能力を秘めているのか未知数だが召喚成した途端、セインが堕ちる可能性を端から否定してるかの言い草であった。
グサッ!
「グッ!?」
背中に刺さった熱き物に怯むセインの面。背中、腰の付近にベランドナの残した矢尻が突き刺さっていた。
「不死鳥由来の術式がひとつ『操舵』だ。態々召喚せずとも不死鳥と心通わす僕にはこれぐらい、呼吸と同程度の技にも満たない手段だよ」
瞬きひとつせず、御丁寧にも自らの術の根源ひけらかすジオーネの挑発。『貴様如き不死鳥無しで殺れる』を態度で示す。挑発合戦は少年の勝利を思わせた。
──ぐっ! ば、馬鹿にしてぇ……。
人間の子供からコケにされ怒り心頭。
セイン、忽ち霧に姿を変えその場から消え失せた。
次の瞬間、ジオーネとリイナ。二人を包む景色が一変した。
それは活火山であった──。
然も最も危険極まりない噴火口付近。地球の鼓動、更に生物とは比較にならぬ体温感じた両者。飛来する火山弾、リイナは恐怖のあまり、思わず地に身体を伏せた。
◇◇
ロッギオネの中心地アディスティラに掘られた地下施設に於いて、褐色の修道騎士ルッソ・グエディエルは独り震えていた。
仕える女神、戦之女神最初の弟子。ルオラを名乗る声音が、自分だけの耳へ届いた御導き。ルオラが健在だったのは凡そ150年前、ただの人類ならば決して起こり得ない。
──がっ、信心深き人間とは『我こそ神』と御心聞けば、嘘が真に挿げ変わるもの。増してやルッソの様な疚しき者なら猶更響く。
▷▷──よもやあの様な下賤なる者に敗れるとは、修道騎士や賢士達も地に堕ちたもの。エディウス様もさぞやお嘆きであるに違いない。
あくまで声しか届かぬ。なれど首振り肩竦めたルオラ様の悲哀が映る錯覚感じたルッソの卑しき器である。
▷▷──フフッ……そう肩を落とすな。云った筈だ。我の声は選んだ者にしか届かぬとな。ルッソ・グエディエル、貴様の陣頭指揮には未だ期待しているよ。
「──ッ!?」
不意に戦之女神二番目の御使いが艶めかしき女性の声でルッソの魂を優しく触れる。
ルッソ、慌てふためき自分の座を明け渡すべく、椅子から飛び降り、床へ両手を付いて伏せた。
▷▷──総長亡き今、貴様は将として後方より事に当たれ。
「も、勿体なき御言葉ッ!」
地面に額を擦り付けまま、見えぬ神格へ夢馳せる想いのルッソである。
▷▷──あと貴様の剣は勝ちを急ぎ過ぎだ。将を射んとする者は、先ず馬を墜とせと云う。脚を狙い、腕を落とし、首なんぞ末期の添え物と思うが良かろう。
「は、ハハァッ!」
ひたすら平伏で応じるルッソ。
例え総長の代替品とはいえ、此れ迄総長に届かず半ば腐れ切った己へ『貴様が立つのだ』と神の座から直に言い寄られた歓喜。共に芽生えた騎士の品格。
▷▷──また追って沙汰する、我が再び声掛ける迄、軽挙妄動は慎むのだ。良いな。
やがて消え失せたルオラからの御告げ。
ルッソ、歓喜に打ち震え天へ届けとばかりに跳ねながら立つ。仰け反り握った両拳を突き上げた。
「お、俺にだけルオラ様の御啓示が! 選ばれたのだ! 神にぃッ!」
人生最良の刻来たるルッソ。最早手の痛みも、僧兵に負けた事すら些事へと落ちた。だから椅子の上、崩れ逝く木の葉なぞ気に病まなかった。
無機質に化けられるだけに在らず、ベランドナの行使する精霊術も即時模倣し、反撃へ転ずる危険な相手であった。
だがベランドナが合成精霊術と云うどちらを模倣すべきか相手惑わすハイエルフの真価を発揮した処、一挙形勢逆転。遂に灰色の鬼女の炙り出しに成功した。
「……」
ベランドナ、何時になく蔑みを床に転がり往く鬼女へ叩き付ける。
精霊達は彼女に取って使役する存在だが、大切な友人なのだ。
そもそも精霊と云うのはあらゆる生物や物質を構成する上で欠かせない存在。
エルフ達は、精霊の恵みに対する感謝の気持ちを日々欠かさない。
だから精霊術を盗み取ったこの鬼女へ理屈抜きの深い嫌悪感を抱いたのだ。
荒れた石畳に伏していた鬼女の顔を見るべく無造作に肩を掴み、仰向けにしようとベランドナが手を伸ばした一瞬の出来事。
「ま、Master!?」
それは余りに陳腐な仕掛けであった。変身能力に長けた鬼女。
ベランドナが興味惹かれた人間の男に化ける。ほんの一握り、ベランドナの心を掌握出来れば付け入る隙が生み出せると謀った。
歩く冷静沈着、ベランドナとて充分判り切った事柄。それにも関わらず地面転がる卑劣な敵を反転させた途端、金縁眼鏡の学者が舌を出した。
更なる愚劣がベランドナを包み込む。
ドゥーウェンがよく用いる香水に似た香りと霧が彼女を覆い尽くした。
バタッ!
「べ、ベランドナさんッ!?」
悲鳴に近しいリイナの震撼歪み往く。先程迄独りで無双の活躍見せたベランドナが突然気を失い倒れた。
余りに呆気なさ過ぎる瞬転。
どんな術を使ったにせよ、殆ど抗えずに、あの頼れる強者ベランドナが落ちたのだ。
「やれやれ……流石、亜人族最強。危うく負ける処でした。昔、エルフ族を喰らって本当に良かった」
決してドゥーウェンが言わぬ台詞。スーツの埃を払いながら黒いスーツの男が立ち上がる──かと思いきや、灰色で1本角の鬼女へ返り咲いた。
スッ。
「成程、香の精霊と霧の精霊に依る合わせ技。そしてベランドナ様は、人一倍精霊から受ける影響が強かった」
リイナ・アルベェラータより身体が一回り小柄な少年、ジオーネ・エドル・カスードが歩み出て、リイナを自分の背後へ寄せた。精霊と共感出来るハイエルフ、染み入る耐性弱体過ぎた。
冷静な物言いだが、ベランドナの同胞を喰らい成し得た鬼女の精霊術。少年が沈んだ顔で睨みを効かせた牽制。
ペロリッ
「餓鬼がしゃしゃり出て騎士気取りぃ? 好いよぉ、早く出しなよ君の不死鳥をさぁ。ヴァロウズ6番目の『セイン』お姉ちゃんが可愛らしい君の火の鳥、美味しく喰らってあげる」
あからさまなセインの挑発。
ジオーネ少年の額に触れるほど顔近寄せ、不死鳥召喚をせがむ大胆不敵。
リイナは『ヴァロウズ6番目』と云う言葉に反応し、少女の顔を引き攣らせた。
不死鳥が果たしてどんな能力を秘めているのか未知数だが召喚成した途端、セインが堕ちる可能性を端から否定してるかの言い草であった。
グサッ!
「グッ!?」
背中に刺さった熱き物に怯むセインの面。背中、腰の付近にベランドナの残した矢尻が突き刺さっていた。
「不死鳥由来の術式がひとつ『操舵』だ。態々召喚せずとも不死鳥と心通わす僕にはこれぐらい、呼吸と同程度の技にも満たない手段だよ」
瞬きひとつせず、御丁寧にも自らの術の根源ひけらかすジオーネの挑発。『貴様如き不死鳥無しで殺れる』を態度で示す。挑発合戦は少年の勝利を思わせた。
──ぐっ! ば、馬鹿にしてぇ……。
人間の子供からコケにされ怒り心頭。
セイン、忽ち霧に姿を変えその場から消え失せた。
次の瞬間、ジオーネとリイナ。二人を包む景色が一変した。
それは活火山であった──。
然も最も危険極まりない噴火口付近。地球の鼓動、更に生物とは比較にならぬ体温感じた両者。飛来する火山弾、リイナは恐怖のあまり、思わず地に身体を伏せた。
◇◇
ロッギオネの中心地アディスティラに掘られた地下施設に於いて、褐色の修道騎士ルッソ・グエディエルは独り震えていた。
仕える女神、戦之女神最初の弟子。ルオラを名乗る声音が、自分だけの耳へ届いた御導き。ルオラが健在だったのは凡そ150年前、ただの人類ならば決して起こり得ない。
──がっ、信心深き人間とは『我こそ神』と御心聞けば、嘘が真に挿げ変わるもの。増してやルッソの様な疚しき者なら猶更響く。
▷▷──よもやあの様な下賤なる者に敗れるとは、修道騎士や賢士達も地に堕ちたもの。エディウス様もさぞやお嘆きであるに違いない。
あくまで声しか届かぬ。なれど首振り肩竦めたルオラ様の悲哀が映る錯覚感じたルッソの卑しき器である。
▷▷──フフッ……そう肩を落とすな。云った筈だ。我の声は選んだ者にしか届かぬとな。ルッソ・グエディエル、貴様の陣頭指揮には未だ期待しているよ。
「──ッ!?」
不意に戦之女神二番目の御使いが艶めかしき女性の声でルッソの魂を優しく触れる。
ルッソ、慌てふためき自分の座を明け渡すべく、椅子から飛び降り、床へ両手を付いて伏せた。
▷▷──総長亡き今、貴様は将として後方より事に当たれ。
「も、勿体なき御言葉ッ!」
地面に額を擦り付けまま、見えぬ神格へ夢馳せる想いのルッソである。
▷▷──あと貴様の剣は勝ちを急ぎ過ぎだ。将を射んとする者は、先ず馬を墜とせと云う。脚を狙い、腕を落とし、首なんぞ末期の添え物と思うが良かろう。
「は、ハハァッ!」
ひたすら平伏で応じるルッソ。
例え総長の代替品とはいえ、此れ迄総長に届かず半ば腐れ切った己へ『貴様が立つのだ』と神の座から直に言い寄られた歓喜。共に芽生えた騎士の品格。
▷▷──また追って沙汰する、我が再び声掛ける迄、軽挙妄動は慎むのだ。良いな。
やがて消え失せたルオラからの御告げ。
ルッソ、歓喜に打ち震え天へ届けとばかりに跳ねながら立つ。仰け反り握った両拳を突き上げた。
「お、俺にだけルオラ様の御啓示が! 選ばれたのだ! 神にぃッ!」
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