🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部『Resonant Fate(響命)』

第58話『COME ON OUR EMOTION(取り戻せ私達の魂)』 B Part

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 戦之女神エディウス神に仕えし僧兵フィエロ・ガエリオ。
 敵の首領フィスチノが吐いた、きな臭い息を嗅ぎ、人の品性を喪失そうしつし掛け、意識無き怨霊おんりょうが如く賢士けんしスオーラ・カルタネラに襲い掛かった。

 然しフィエロの魂の火種、ほんの僅かであるが消え掛けの蝋燭ろうそくが如く揺らいだままくすぶっていた。
 スオーラが己の愛を賭け、フィエロの意識取り戻すべく、顔から飛び縋るすがる接吻目覚めを呼び込んだ。

「はぁ…はぁ…」

 人類の品格失った男共、ルシア・ロットレンが賢士けんしルオラとして天誅てんちゅうを下した者以外を決死で葬りほうむり散らせたスオーラ。地面へ押し倒したフィエロの胸上で息切らす。

 何しろ初めて人を殺めたスオーラ。
 然も執拗しつこいが元味方がほとんどである。体力よりも心の消耗しょうもういちじるしいのは明白。
 容姿も血塗れまみれかつ泥をられた底辺に堕ちた。やがて両腕に宿やどした心之剣クオレスパーダも消え失せた。

「こ、これは!?」

 完全に息を吹き返えしたフィエロ、気が付けば心手向たむける女性がの上。
 横たわる奇異きい過ぎる様。緑を紅色鮮血浸らひたらせた長き髪が、荒れ狂う大河を成す。肩で息する彼女をのぞき込んだ。

 からだの重ね合わせと、唇に残存する確かな感触。此方も口紅が血の色、自分に注いだ生の証を震える手でぬぐった。

「よ、良かっ……た」

 首すら力が入らぬスオーラ、紫の瞳のみ上目遣いうわめづかい微笑。仰天ぎょうてんするフィエロの顔色うかがったのち、ガクッと気を失い彼を枕に寝落ちした。

「スオーラッ!」

 気をいっしたの名を叫ぶフィエロ、いつの間にやら涙がにじむ。徐々じょじょにこれ迄の経緯いきさつが脳裏を過ぎり始めた。

 ──俺が愛する彼女スオーラ、ずっと……ずっと諦めない視線を向けてくれた!

 男子フィエロ、泣いている場合じゃない。己を叱咤激励しったげきれいしながら、如何どうにも止まぬ涙雨慟哭。ゆっくり身体を起こしてスオーラを抱きかかえた。

 ──無論、目方重さの話にあらず。

 彼女が己の器にともした命の炎──好きだと告白ぶつけた感情。あの時彼は、愛の本質知らな過ぎた。
 好きな女を腕に抱くも、腐りかけた男の欲望、かなぐり捨てた。

 魂の奥でぜた熱愛のほむら
 心地よく、うるわしく沈む命の重さ。若者は漸くようやく知り得た──これぞ、まことの愛だ。

「済まない、待っていてくれ。俺も必ず

 少しでも綺麗な地面を探し当てゆるやかに……そして名残なごり惜しみその場へ寝かせた。
 勇ましく戦場げんじつを振り返り、漢の顔に返り咲いた。

「す、スオーラ様ッ! フィエロッ! これは一体どうした事ッ!」

 大層取り乱した格好でフィエロの母、司祭エリナ・ガエリオが眠り疲労に落ちたスオーラの元へ駆け寄る。
 血だらけの顔を拭きながら息子を睨むにらむ糾弾きゅうだん。何しろあからさまに棒で殴打おうだされた痕跡こんせきが在るのだ。

「済まない母さん、話は後だ。回復、宜しく頼む」

 背中で語り戦場へ赴くおもむく息子。
 涼やかに、されど肩怒らせスオーラの治癒ちゆを任せた。声音が落ち着き払った成長ぶりを、母の耳に残した。

 ◇◇

 フィスチノ石造りの砦、木っ端微塵こっぱみじんに砕いたものが生物の様にうごき無数の塊を成して往く。
 やがて人型へ転じた。石の傀儡ストーンゴーレム、並みの兵士よりひと回り巨躯きょくからだが群れ成した。

 フィスチノが首から下げた金属の板をいじった途端とたん、成し得た結果。
 恐らくフィスチノ自身が石の人形ストーンゴーレム錬成れんせいした訳ではあるまい。魔神ラウムの力を借り受けたに違いない。

「成程ね……ただのじゃなかった訳だ」

 魔神、人を操る女の次は、石人形ゴーレムの兵隊達。ルシア、サーカスでも見物してる気分に思わず溜息しながら、たわわな胸支える肩を『やれやれ』とばかりに叩いた。

 彼女自身、石くれ如き遊び相手にもならぬ。問題なのは、戦之女神エディウス神の兵士達。特に剣が主兵装の修道騎士辺り、平凡な剣士に『石を斬れ』とは流石に云えぬ。

 ▷▷──どうかしたか?

 まるで読心したかの様なローダの声、木の葉風の便りを通じて、ルシアの心をまたもや飛び上がらせた。

 ルシアは、こそりと状況をローダへ説明。
 処でこの場にヒビキ心の声が届かぬのは、何か意味が在るのだろうか。
 未だ赤子にも満たない子供。力使い果たして母の胎内たいない安寧回復養ってはかっているのかも知れない。

 ▷▷そうか……風の護りを兵士達に与えたよな? 

 ローダが風の精霊術『言の葉風の便り』を通じ、穏やかな口調で語る『風の護り』とはルシアが戦之女神エディウス神の兵士達へ与えた風の精霊達。

 先程フィスチノが投げた焔玉ほむらだまを散らしたあの風だ。100名近い兵、総てにルシアがさずけた風の精霊。本物のハイエルフですらこんな力業ちからわざ、果たして出来るのか?

 パチンッ!

 ▷▷ルシア、に非ずだ。させろ、君なら出来る。

 指を鳴らしたローダ、いつになくはずんだ声を彼女へ届けた。

「もぅ……手軽に言ってくれんじゃないのよ」

 愛傾あいかたむけたローダから届いた頼み事。金色揺らして散らして珍しく僅かに漏らした文句。それはルシアとローダ、心の歩幅がまた歩み寄った結実と云えよう。

 すぅぅぅ……。
 ルシア、大きな胸へ新鮮な空気を注ぐべく深呼吸。
 これからまたもや偽りにじんだ奇跡を為さねばならぬ。

 ──風の精霊達よ、あの者等に真空の刃をささげ!

「デエオ・ラーマ、戦之女神エディウス神よ! 我がルオラに宿りし言の刃ことのはを貴女様の子供等へさずけよ! ──『魂之刃アニマスパッダ』!」

 心中と口から吐いた嘘の同時詠唱。100名近い生き残りへ既に付与したエンチャントした風の精霊。与えた目的、すべからく逆転させた。本家の精霊術師さえ驚異に跳ねる御業みわざこなす。

「こ、これは……」
「俺の剣が光を……」

 至る所から上がる驚きの反響。
 戦之女神エディウス側兵士達のざわめきが巻き起こり渦を成した。

 バァンッ!

 史上最上級の賢士けんし、ルオラが風に拳を石の人形へ頭上から叩き込む。石の人形ストーンゴーレム──粉々に弾け砕け散った。

「勇気ある戦之女神エディウス神の子等よッ! 恐れることなかれッ! お前達の剣は、矢尻やじりは、岩をも砕くッ!」

 ルオラ・ロッギオネ・ルマンド、戦之女神エディウス神の一番弟子が現世の子供達へ女神の言伝ことづけを与えた。

 その御告げたるや、能力の向上だけに在らず。最上級の勇気、命さえ女神にささげると今生こんじょうに誓いを立てた者共の沸点を大いに湧かせた。

 ◇◇

 ルシアが渡してくれた木の葉風の精霊術からあふれ出た気の早い勝どきの声。聞き及んだローダ・ファルムーン、毎度な仏頂面ぶっちょうづらに笑顔の陽だまり

『風の精霊、護りの術式を反転させろ。君なら出来る』

 提案したのは自分、さりとてその効力たるや想像の遥か先を往かれた。女神の偽物なる器、壊された天啓てんけい抱く者達へ、よもや此処までとどろくとは思わなかった。

「さてヒビキ──俺達もそろそろやるぞ。彼奴ラウムを止める」

 寝た子ヒビキを起こす父親の身勝手、意識だけの娘へ響いた。

 漆黒に燃えた魔神ラウムの両腕、己を護り抜く為だけに用いた炭化タングステンの刃。
 刃の只中ただなか、ガロウの技を掠めかすめ取り、さらにたぎらせ振り抜く準備を整えた。

 例え魔族へ堕ちようとも、相手は魔神だ。所詮しょせん人の枠に過ぎぬローダ、ヒビキの力を借り受け悪魔退治デーモンスレイヤー、見事達成出来るのか?
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