🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部『Resonant Fate(響命)』

第60話『Lovable world(愛すべき世界)』 A Part

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 戦之女神とあがめられるエディウス神の聖地を牛耳ぎゅうじっていたフィスチノ。

 術者のかせを外す『拘束之鎖リミッカテナ
 加えて被術者に於ける生前──罪の重さをはかりにかけ、応じて魂を縛り上げる狂気の術式『魂之束縛アニマカテナ

 何れも生き残りの賢士けんしスオーラ・カルタネラが満身創痍まんしんそういで立て続けにこれらを彼女独りだけで駆使くしした。
 強固な守備ほこるフィスチノのカラダ細切こまぎれに裂いて散らしたのだ。

 ふらり……。
 僧兵フィエロ・ガエリオの心を取り戻した際と同じく、意識を失い今にも卒倒そっとうし掛けたスオーラの危険。

「す、スオーラァァッ!」

 両目に涙たたえながら、愛かたけた彼女を支えるべく駆け寄ろうと地面を蹴ったフィエロ。
 けれどもローダ・ファルムーンが左手挙げ無言の静止を要求、スオーラは倒れなかった。

 賢士けんしルオラふんしたルシア・ロットレンが風の精霊に働き掛け、目に映らぬベッドを創造。スオーラに与えた。気をいっしたまま宙に浮き眠るスオーラの痛々しい姿。

「フィエロ、気持ちは判る……が、今は安静にすべきだ」

 緊張感にじんだローダからの忠告。
 フィエロの母、エリナ・ガエリオ司祭が大層狼狽うろたえ、眠りにいざなわれたスオーラの顔を心配あり気にのぞき込む。

 魂之束縛アニマカテナは、賢士けんしの起こす奇跡の中でも殺傷能力にけた術だ。
 なれど通常の賢士けんしがこれを用いる為には、拘束之鎖リミッカテナで己の心を極限まで高めるのが必須条件。

 扉の候補者、ローダ・ファルムーンは変身に近しい力を己に課し続け、在り得ぬ成長曲線を描いている最中さいちゅうだ。そんな彼だからこそ拘束之鎖リミッカテナはらむ危険性をおのずと知れた。

賢士けんし拘束之鎖リミッカテナを詠唱する時、それは自分の命を魂之束縛アニマカテナのためささげるのと、同義なのです……」

 慟哭どうこくしながら途轍とてつもなき知識を明かすエリナ司祭。
 老いた彼女はこれ迄にも賢士けんし達が同じ死に様をさらした哀しみの記憶を辿り往く。衝撃過ぎて『ほぼ同義』で〆た希望に気が付かない面々。

「なッ、何だとッ!」
「グッ!」

 思わず母エリナへ喰って掛かる息子フィエロの絶望。
 賢士けんしルオラの偽物、歯を食い縛り緑の瞳をらした。

「皆様も御覧になったことでしょう。スオーラ様のカラダから突き出た心の鎖を。あの鎖を対価に相手の鎖を引き出すのです。心のかせを知らないルオラ様だけが、対価不要で魂之束縛アニマカテナを扱えたと聞きます」

 エリナ司祭の語りが真実なら実質、魂之束縛アニマカテナ賢士けんしルオラの専用術式オリジナルスペル。肩震わせ泣き語るエリナの言葉、例え悪気はなくても偽物ルシアの心を深くえぐった。

 戦之女神エディウス神、他の兵達も言葉が出ない。『ルオラ様が殺れば良かったんだ』そんな心無きヤジは飛ばなかったのが幸いだと言えた。

「待ってくれ、彼女はまだ死んだ訳じゃない。わずかだが魔力マナを感じる。此処は俺……そうだ、フィエロ・ガエリオとこのに任せてくれ」

 ヴァサッ!

 黒マントの男、語りながら少し思考へふけった後、マントをぎ捨て堂々と、その姿を世間にさらす。そして自分の左隣で気の早い哀悼あいとうの涙流すフィエロの肩を小突いた。

 右隣には戦之女神エディウス軍の連中。これ迄、見覚えない格好の女子高生姿の少女がたたずむ。不思議を絵に描いた男の存在感。

 そう云えば先程からずっとルオラ様に馴れ馴れしく近寄るこの男は何者なのか? 周囲がおのずとざわつき始めた。

「お、俺……ッスかぁ!?」

 途端とたんに涙れたフィエロ、自分の眉間みけんを指差し驚きの表情をローダに手向たむけた。

「そうだお前だ、お前じゃなきゃ駄目なんだ」

 珍しく勝手に話を進める勢い余分なローダの行為。普段在り得ぬ目の輝きがフィエロの心に突き刺さる。

 共に白地の布で包んだ金色こんじきの塊を皆に見せた。それはローダが倒して封じた魔神ラウムの変わり果てた姿であった。

「それからフィスチノ──残念だが奴は、まだ生きている。この金色ラウムの器残留ざんりゅうしているのが証だ。ルシア・ロットレン、そして修道騎士副長ルッソ・グエディエル殿にお任せしたい!」

 これまた途方なき事柄ことがら言い出した黒髪の一件地味な男。
 これ迄散々『目立つな』とルシアを言いくるめ続けた彼氏英雄彼女女傑品格氏名、身勝手にも公表したのだ。

「は、はぁッ!? あッ! 手前テメェあの時のッ!」

 何だかとても良い感じに煽動せんどうされたルッソ、数日前にフィエロと密談交した男だと思い出す。偃月刀シミター

「ろ、? 貴方一体何を考えて?」

 最早頭を抱える気さえ失せたルシア。
 例の初夜、あのときの行動力を彷彿ほうふつさせるローダから男をせられ語彙力ごいりょく喪失そうしつ

 魔神ラウムは、これ迄ずっとローダとヒビキだけで相手していた。故に周囲の者共は、悪魔ラウムの存在自体よく知らぬのだ。ルシアだけが反応、然も口をに滑らせた。

 けれどルシア、直ぐにいい加減、嫌気の差す気配を感じ取った。
 飛び散ったフィスチノの破片肉片、各個が息づく気色の悪さを

 ヴァサッ!

「もぅ──こうなったらやるしかないよね。、本物の実力を存分に見せつけてあ・げ・るッ!」

 賢士けんしルオラも一肌脱いだ。藍染あいぞめ六芒星攻勢の星を脱ぎ捨て、普段通りな白地に赤い刺繍ししゅうが入るヒラッヒラした妖しき天女姿を此方も存分晒した。

 加えて後の第一声『あ・げ・る』と共に臓物ぞうもつが如くうごめいたフィスチノの一部を無遠慮にも踏み潰した。そして『宜しくね』とルッソを向き、片目つぶって愛想を寄越よこした。

「良いかフィエロ、お前はスオーラが持つ無限の可能性に依って救われた。今度はお前が彼女に──いや、ちょっと違うな。彼女とお前だけの未来を見せてやる番だ」

 ローダ、変身処か中身が入れ替わったが如き目の覚めた顔つき。
 驚き慄くおののくフィエロの両手を真心込めてつかみ、その心意気を躊躇ためらいなく伝えたのだ。

 ◇◇

 此処はヴァロウズのNo2、学者を気取きどったドゥーウェンが仕切る街Fortezaフォルテザ市。今時分、世界で最も美しい世界である。

 一足先に任務を終えたハイエルフのベランドナ、戦之女神エディウス神の天才司祭リイナ・アルベェラータが無事帰還きかんを果たした。

 リイナは、エドル神殿跡から不死鳥フェニックスの能力を持ち帰った。

 さらに旧不死鳥フェニックスの申し子、ジオーネ・エドル・カスードを仮死状態ながら救出。
 ジオーネ少年は、冷凍睡眠装置コールドスリープにて静かな眠りに付いていた。

「嗚呼ッ! 堂々と生きてるってバラしてどうするんですかァッ!?」

 英雄ローダが生きていた真実──。
 堂々名乗り出た映像をドゥーウェンが、金髪をきむしり、大いに荒れた。

 ローダ・ファルムーンは、兄ルイスとの対決に於いて死したと世界へ報じた。
 ロッギオネ奪還の争いは、世界に中継している訳ではない。

 されど人前に戸を建てる無意味ナンセンスを知り尽くした情報屋の彼である。直に世界が知る未来なぞ想像するのも馬鹿げていた。

 死んだ筈の英雄ヒーローが実の処生きていた。
 これを知った世界は確かに黙認もくにんする訳がない。然も敢えて隠した理由も問われるに決まっているのだ。

 大層あらぶるドゥーウェンの後ろ側、苦笑を突き合わせるベランドナとリイナが居た。

「まあ、ローダさんとルシア御姉様らしいんじゃないですか?」

 やれやれと云った態度で肩すくめるリイナである。

 隣のベランドナ、無言だが緩んだ顔で共にうなずく。命けずる戦いを共に過ごした両者、すっかり気心きごころ知れた間柄あいだがらに進展していた。

 ──あの派手な二人が隠密おんみつ行動……。

 ──無茶ぶりが過ぎたのですよMasterドゥーウェン

 言葉を交わす迄もない結実を見た気分のリイナとベランドナであった。
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