🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部『Resonant Fate(響命)』

第59話『Infinity(無限の火種)』 B Part

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 扉の候補者ローダ・ファルムーンが、意識の壁を一切持たぬヒビキと結託。
 魔神ラウムを遂に封じた成功劇。

 一方ラウムの力を借り受け石の傀儡ストーンゴーレムを大量に生成、戦之女神エディウス軍を相手取る未だ謎めいた敵フィスチノ。
 戦之女神エディウス神の一番弟子賢士けんしルオラを偽ったルシア・ロットレンを相手取り辟易へきえきしていた。

「クッソ、ラウムめ。一体何してやがんだ」

 フィスチノ、使役しえきした悪魔へ歯軋はぎしりし続けたまま文句を垂れる。目前に立ちはだかった化物よルシアり怪物なる女・ロットレンを魔神に任せたいと強く望んだ。

 ジャリッ……。

「ラウムならだ」

 黒マントを羽織った何やら地味な男が見せ付けた白い布地。驚愕きょうがくに目をひんくフィスチノ。探索者風の男が連れて来た白地の布、内側から確かに悪魔ラウムの残り香にじみ出るのを感じ取った。

「き、貴様ッ! 例の男かァッ!」
「──?」

 フィスチノがよだれ垂らし待ちがれた最上級の香りただよわせたい男。此奴ローダを喰らいたくこのときを切望した。されど共連れの女の力ルシアが怪物だった。

 驚倒きょうとうしそうなほど揺らいだ直後、自分ローダを見つけ狂喜乱舞きょうきらんぶしそうな敵の変遷へんせんぶりに首を捻るひねるローダ。よもや自身が最高級A5ランクの肉に分類されていたとは思いも寄らなかった。

 前髪だけ緑のフィスチノが赤い後ろ髪を様に、ローダへ飛ばす。捕縛ほばくの為に用いる真っ赤なロープを思わせた。

 ブチィッ!

 驚喜きょうきに己の力加減がまるで足らぬ事実を置き去りにしたフィスチノの髪を叩き千切ったのは、ローダはおろかルシアですらなかった。

 新月の夜、朱色の棒赤色のチャクラが大いに輝き映えた怒りの僧兵フィエロ・ガエリオ。
 想定外の横槍、やられたフィスチノは当然。助けられたローダや、出番を横取りされたルシアも瞠目どうもくし尽くした。

手前テメェだけは絶対ぜってぇこの俺が赦さねぇッ!」

 棒を突き出し、怒りぶちまけたフィエロ。危うく自分が愛するスオーラを殺す重罪を犯す一歩手前であったのだ。必然の訴えである。

「はぁ"ッ!? ハンッ、雑魚ざこがッ! お前なんかに何が出来んだッ!」

 またしても甘い息を吐いたフィスチノの。無力に思えた僧兵の餓鬼ガキを再び傀儡かいらいに引き摺りずり堕とすつもりだ。

 ──何だ? 如何どうして彼奴フィエロ棒術得物が此処まで届いた?

 再び危機にひんしたフィエロなのだが、独り違う疑問がローダの脳裏をぎる。フィエロが見せた能力ルートチャクラだけでは説明付かない事象に気付いた。

 然し今はそんな疑問よりフィエロを飲み込む甘い息の対策を最速で為せなばならぬ。周囲がそんな考えめぐらすつかの間。フィエロは、己だけで答えを導き出すのだ。

 実に単純明快──棒を両手で回転、巻き起こした風で甘い息を全て弾き飛ばした。

「グゥッ!」
「来ると判ってりゃ効かねえんだよッ!」

 一兵卒いっぺいそつなる若い僧兵相手に狼狽うろたえ冷汗噴き出すフィスチノ。
 その場から一歩たりとも動かず、フィエロは朱色の棒を悪意の根源フィスチノ目掛け振り下ろした。

「馬鹿めッ! 間合いリーチがまるで判っちゃいねえッ!」

 思わず心の声が漏れたフィスチノ淵際ふちぎわ虚勢きょせい
 フィエロの行動も不自然、彼ほどの使い手が自身の間合いを誤る道理がないのだ。

 ジャランッ!

「なッ! ウグヮァッ!!」

 再び明快シンプル過ぎる正答を寄越よこしたフィエロの棒術。フィスチノの脳天を直撃、両目が飛び出た錯覚さっかく。それほどの激痛がフィスチノの全身を走り抜けた。

 フィエロの得物、朱色の棒が
 随分間抜けな語りに思えるだろう。彼の棒は三節混さんせつこん、内に鎖を潜ませていた。三節混の鎖分が伸び切り、フィスチノの脳天をとらえたのだ。

 フィエロは、第一のチャクラ混じる渾身こんしんを叩き付けた。
 本来ならどんな化物モンスターでも頭蓋ずがいを割られた衝撃を受ける会心の一撃へ跳ねるべき処。
 なんとフィスチノ、痛がるだけで終わる巫山戯ふざけた結果を見せ付けたのだ。仕掛けたフィエロに驚き、やられたフィスチノに舌巻く思いの一同。

 フィスチノ脅威きょういの防御力──この布陣で打撃力最強を自称するルシアですら未だ洗髪出来ぬ金髪をかきむしりたい衝動苛立ち駆られた。

「──デエオ・ラーマ、戦之女神エディウスよッ!」

 如何いかにしてこの頑強がんきょう過ぎるフィスチノを叩きつぶすか?
 そんな悩みに心とらわれ掛けた連中、違う向きから異質な激震げきしん駆け抜けた。

 声張り上げた賢士けんし、これぞまさしくの詠唱。戦場全体をおおい尽くす。
 血に濡れた六芒星攻撃色、既に己の全力を使い果たした筈のスオーラ。

 最早詠唱の枠組み超越した絶叫、彼女にこれ以上はないと思い込んだ仲間。スオーラ・カルタネラは、真の無限を手中に収めたと皆に思わす。

 戦之女神エディウス神の司祭級エリナがスオーラの脚にしがみ付いていた。
 回復の奇跡プリマベラをスオーラへほどこしたに相違そういあるまい。

 さりとて魔力マナは戻っていないのだ──。
 この世界軸、魔力マナの完全枯渇こかつは脳死に直結する。故にエリナは、全力以ってスオーラを引き留めているのだ。

「──我を拘束こうそくする心之鎖リミッターを解き放つ! その鎖をかの者へ捧ぐ! さあッ、縛りあげよ! ──『拘束之鎖リミッカテナ』!」

 如何どうやら賢士けんしの御業が完結をみたらしい。詠唱通り、スオーラの胸内から無数の鎖が現れフィスチノに届き拘束すべくツタの様に絡みゆく。

「……心之鎖リミッターを解く?」

 詠唱を聴き終えたローダの顔色、外れて欲しい想像浮かび色を失う。

「何だこんな物ォッ!」

 うざったいと感じた鎖を振り解こうと、フィスチノが全身をじり藻掻もがいた。何とも無念だがこの勢い、スオーラの放った鎖が今にも千切れそうに思えた。

 打撃に依る防御だけでなく、魔法防御もやはり桁外れの強固に違いない。

「デエオ・ラーマッ! 戦之女神エディウスよぉッ! 地獄の番犬ケルベロスの鎖を以ってッ!」
「な、く、鎖ィッ!? まだ次があんのかよッ!?」

 よもやな度重なるスオーラ、詠唱を腹から咆哮ほうこう。またしても。 

 流石のフィスチノも顔面蒼白。この詠唱、明らかに先程の上を圧倒感に満ちあふれていた。

「……かの者に潜む罪悪の鎖を具現化せよッ! その身、自らの罪に縛られる運命を呪うがいいッ! ──『魂之束縛アニマカテナ』!」」 

 魂を銃弾の如く積め込めた詠唱が遂に決した。スオーラが右手の指だけを目一杯広げ、悪の権化フィスチノへ向けた。少しずつ指を曲げ始める。見えぬ何かを握りつぶそうとしてる仕草。

「う、うぅ……ば、馬鹿なッ!? こ、こんなものでェッ! ば、馬鹿ッ! よ、止せッ!」

 初めにスオーラが絡めた鎖は姿をくらます。フィスチノのカラダに沈んで失せた。
 スオーラが、さらに右手に力を込める全身全霊。

 拘束之鎖リミッカテナ──。
 先ず詠唱通り術者の能力値を最大値に引き上げる為、心の枷を外した挙句。その鎖を敵へ投げ込む。

 対為ついな魂之束縛アニマカテナ──。
 拘束之鎖リミッカテナで投げた鎖すらかてに、相手の罪深さをはかりにかけ、魂縛るげにおぞましき術式。

 何物も受け付けなかったフィスチノがきたす焦燥しょうそう、息荒げて苦しむ様。これ迄なき震撼しんかん、誰の目にも明らかであった。

「ウグッ! ぐわぁぁッ!」

 断末魔、胸押えたフィスチノの心肺機能が停止。
 完全に動きを止めたかと思いきや、全身を巨大な手で握り潰されたかの如く『グシャッ!』

 大層嫌な残響ざんきょう、生卵の様に潰れはじけた。だが語る迄もなく彼女は卵に在らず。弾けた物は、フィスチノの肉片と血飛沫ちしぶき。地獄が絶叫と共に砕け散った。
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