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第6部『Reunion & Admonition(再会と”最戒”)』
第65話『BeautifulWorld(アイのカタチ)』 B Part
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斯くしてローダ・ファルムーンとルシア・ロットレン。
運命の日が遂に訪れた。
ルシアは窓がない代わり──と云う訳ではないが、鏡面の大きな個室。
椅子に静々腰掛け、ベランドナに金色の髪を丁寧に梳いて貰っていた。
その背後では、結局Fortezaへ呼び出しを受けたルシアの妹分、リイナの姿。
如何にも女の子といった顔立ちで動く事ままならぬルシア御姉様の周りを蝶の様にふわふわ舞って楽しんでいた。
艶やかなる女性の園、まるで多彩な妖精の国を彷彿させる様子。男ならいっそ迷い込み生涯迷走しても幸福の内に逝けるやも知れない。
「──ルシア様」
心の糸、解けた具合なベランドナ。背後からの穏やかなる声掛け。
「ん? ──って言うかいい加減ルシアで良いってばベランドナ」
促すルシアとてどこかぎこちない。彼女も振り向く訳にはゆかないのだ。
「いえ……何か穏やかと云うか吹っ切れた良い表情をなされてると思いまして」
ベランドナ、次こそ親しみ込めて『ルシア』って呼ぶと決めながらも、敬愛する態度を崩す気配がまるでない。
「えっ……私が? ──嗚呼、う、うん、まだ色々あるけどそうかも」
思わず鏡の世界に住まう自分を見つめ、これ迄とこれからの『色々』に想いを馳せるルシア。顔が火照る恥ずかしさ、化粧で誤魔化しホッと息つく。
「ですが……本当にコレで良いのですか? もっと最上級の物を御用意出来たのに」
今日はルシアに取って人生最良の日にすべきベランドナの拘りが声に溢れ出る。
素材の美があればこそ。『鏡の中のルシア』を童話の主人公でなく星座の女神に仕立てたい女性の気分が拭い切れないのだ。
「良いの……私絶対コレでなきゃ嫌なの」
同性として心穏やかなる所感を伝えたベランドナに対し髪が乱れぬ様、緩んだ顔を静かに振るルシアの満ち足りた仕草。
此処で戦友ベランドナに長い銀髪を散らしたリイナが耳打ち。
修道女姿でない彼女は珍しい。
「嗚呼……私余計なことを。ローダ様との初夜──これはどれだけ高額な物より優先でございました。ルシアは彼に似て頑固ですね」
ベランドナ──。
300歳を超えた貴婦人が未だ出来ない心遣い。この辺りが精神的にまだ少女の枠組みを超えられないのだ。
「り、リイナ! んもぅ……」
結局化粧で誤魔化し切れない頬を赤らめ膨らますヒロイン──今日ばかりは英傑を置き去りにするのだ。
この場に居合す三者三様、この時は未だ知らなかった。
ルシアが身に纏う奇跡の色合いを──。
◇◇
一方此方は本日もう独りの主役。
ローダ・ファルムーンがForteza市長代行ドゥーウェン共々、最終準備に追われる喧騒の最中に居た。
「あのうローダさん、今更ですが本当に此処で良かったのですか? やるならもっと豪華絢爛な場所が……」
ドゥーウェン達が居る場所──。
300年の歴史を誇る老舗の洋食屋『三毛猫亭』。Fortezaの港、透き通った地中海の波が流れ込む港に浮かぶ船や造船所を一望出来る5階建ての最上階。
陽が暮れれば港の煌めく夜景が恋人達を紡ぎ合わせる絶好の名所。
然し『それでも』な思惑があるドゥーウェン。
自分達が誇る英傑達の宴だ。華やかにかつ、大々的に世界へ示したき欲が頭を擡げる。
「良いんだ、この場に呼ぶのは半ば身内だけ。お前の好きな外には映像を回す。そういう手筈だろ」
ローダは強く首振り己の主張に固執するのを止めぬ。
ついこの間、この島に渡り着いた彼。呼びたき身内──友人達はこの洋食屋で事足りると信じて疑わないらしい。
ベランドナから100点の提案を受けても揺るがぬルシアに近しい頑固一徹な似た者同士を貫く──揺るがない者が此処に鎮座していた。
兎に角訴え掛ける金髪の学者。やはり本質の足らぬ思考、この間迄と語り口が逆さに回っていた。『英雄ローダは死んだ』を押し通そうとしたのだ。
次は『多大に宣伝しろ』ローダ的には片腹痛い気分に落ちる。
「ふぅ……じゃあこれを見ろ。寧ろ今夜にこの場ですべきだと確信出来る。まあ……俺も知らなかったが」
さも面倒臭げに古びたアルバムらしき物をドゥーウェンに渡すローダ。目が笑っていた。
「こ、これはっ!?」
金縁眼鏡の裏側、目を見張りアルバムのページを捲る学者。食い入る視線、アルバムに顔を貼り付けた。
「さ、300年前この店でファウナ神の生誕祭ぃっ!」
歴史的遺産を発掘した昂ぶり、ドゥーウェンの心持ちが逆回転する。耳に届いた周囲の人々から動揺を引き出した。
『Buon 18esimo compleanno, Fauna del Foresta!』
着飾った女性しかいない如何にも楽しげな写真。ローマ語で『ファウナ・デル・フォレスタ、18歳の誕生日おめでとう! 』と寄せ書き。
真ん中に映る金髪で蒼き瞳を湛えた女性とその隣、赤ワインを転がす黒ドレスの大人びた女性が一際目立っていた。
これだけでも充分仰天に値するのだが、添えられた日時すら300年前の同刻を指していた奇跡。
「わ、判りました! もぅ何も言いません! やはり貴方は奇跡を呼び込む御人です!」
吉野亮一、蒼き薔薇が呼び込んだ思いがけぬ事柄相手に染めた金髪を深々と下げた。
着々と準備が進む最中、Fortezaの街並みが祭りの様な賑わいをみせ始める。
Forteza市民だけに在らず、外からの訪問客も今宵、世界に新たな祝日が刻まれる幸せからお零れを頂戴したく浮かれていた。
やがて都会を照らす陽が沈み、人の造りし灯りと入れ替える。
特に今夜は、蒼一色の色合いに揃えられた。
三毛猫亭は二次会、今宵の式典を最初に開く主役の建物に来賓客が列を成し始める。
その中にはResistanceのリーダー格として、梃でも漁村エドナの守りを譲らなかった髭面。ガロウ・チュウマの姿や、ローダ達がつい先日解放した戦之女神の賢士スオーラ・カルタネラ。付き従う僧兵フィエロ・ガエリオの姿もあった。
特にガロウとフィエロは慣れぬ紳士服に辟易しており、共にFortezaを訪れた仲間達の笑顔を誘った。
ローダ、少々考えが回らなかった──。
自身の友達だけでも充分多かった人誑しである自分の交友関係を。
また独り、今夜の主役──チャペルの前に降りる中年女性。
彼女も見覚えある存在、フィエロ・ガエリオの母親。戦之女神の司祭、エリナ・ガエリオ。聖書片手に司祭の正装で現れた。
パイプオルガンの荘厳な音色とチャペルの鐘が幸福を都会の街並みへ雪の様に散らした。
夜も深まり間もなく23時。ローダとルシアが初めて結ばれた夜に見上げた南十字星がチャペルの十字架と重なり輝く奇跡が、訪れた者達の歓声を呼んだ。
もう語らずとも知れたであろう──。
今宵の式典は、ローダ・ファルムーンとルシア・ロットレンの結婚式と披露宴。
遂に舞台は整った。後は本日の主役二人が訪れるのを心から待ち望んだ人々の気分でごった返すのだ。
運命の日が遂に訪れた。
ルシアは窓がない代わり──と云う訳ではないが、鏡面の大きな個室。
椅子に静々腰掛け、ベランドナに金色の髪を丁寧に梳いて貰っていた。
その背後では、結局Fortezaへ呼び出しを受けたルシアの妹分、リイナの姿。
如何にも女の子といった顔立ちで動く事ままならぬルシア御姉様の周りを蝶の様にふわふわ舞って楽しんでいた。
艶やかなる女性の園、まるで多彩な妖精の国を彷彿させる様子。男ならいっそ迷い込み生涯迷走しても幸福の内に逝けるやも知れない。
「──ルシア様」
心の糸、解けた具合なベランドナ。背後からの穏やかなる声掛け。
「ん? ──って言うかいい加減ルシアで良いってばベランドナ」
促すルシアとてどこかぎこちない。彼女も振り向く訳にはゆかないのだ。
「いえ……何か穏やかと云うか吹っ切れた良い表情をなされてると思いまして」
ベランドナ、次こそ親しみ込めて『ルシア』って呼ぶと決めながらも、敬愛する態度を崩す気配がまるでない。
「えっ……私が? ──嗚呼、う、うん、まだ色々あるけどそうかも」
思わず鏡の世界に住まう自分を見つめ、これ迄とこれからの『色々』に想いを馳せるルシア。顔が火照る恥ずかしさ、化粧で誤魔化しホッと息つく。
「ですが……本当にコレで良いのですか? もっと最上級の物を御用意出来たのに」
今日はルシアに取って人生最良の日にすべきベランドナの拘りが声に溢れ出る。
素材の美があればこそ。『鏡の中のルシア』を童話の主人公でなく星座の女神に仕立てたい女性の気分が拭い切れないのだ。
「良いの……私絶対コレでなきゃ嫌なの」
同性として心穏やかなる所感を伝えたベランドナに対し髪が乱れぬ様、緩んだ顔を静かに振るルシアの満ち足りた仕草。
此処で戦友ベランドナに長い銀髪を散らしたリイナが耳打ち。
修道女姿でない彼女は珍しい。
「嗚呼……私余計なことを。ローダ様との初夜──これはどれだけ高額な物より優先でございました。ルシアは彼に似て頑固ですね」
ベランドナ──。
300歳を超えた貴婦人が未だ出来ない心遣い。この辺りが精神的にまだ少女の枠組みを超えられないのだ。
「り、リイナ! んもぅ……」
結局化粧で誤魔化し切れない頬を赤らめ膨らますヒロイン──今日ばかりは英傑を置き去りにするのだ。
この場に居合す三者三様、この時は未だ知らなかった。
ルシアが身に纏う奇跡の色合いを──。
◇◇
一方此方は本日もう独りの主役。
ローダ・ファルムーンがForteza市長代行ドゥーウェン共々、最終準備に追われる喧騒の最中に居た。
「あのうローダさん、今更ですが本当に此処で良かったのですか? やるならもっと豪華絢爛な場所が……」
ドゥーウェン達が居る場所──。
300年の歴史を誇る老舗の洋食屋『三毛猫亭』。Fortezaの港、透き通った地中海の波が流れ込む港に浮かぶ船や造船所を一望出来る5階建ての最上階。
陽が暮れれば港の煌めく夜景が恋人達を紡ぎ合わせる絶好の名所。
然し『それでも』な思惑があるドゥーウェン。
自分達が誇る英傑達の宴だ。華やかにかつ、大々的に世界へ示したき欲が頭を擡げる。
「良いんだ、この場に呼ぶのは半ば身内だけ。お前の好きな外には映像を回す。そういう手筈だろ」
ローダは強く首振り己の主張に固執するのを止めぬ。
ついこの間、この島に渡り着いた彼。呼びたき身内──友人達はこの洋食屋で事足りると信じて疑わないらしい。
ベランドナから100点の提案を受けても揺るがぬルシアに近しい頑固一徹な似た者同士を貫く──揺るがない者が此処に鎮座していた。
兎に角訴え掛ける金髪の学者。やはり本質の足らぬ思考、この間迄と語り口が逆さに回っていた。『英雄ローダは死んだ』を押し通そうとしたのだ。
次は『多大に宣伝しろ』ローダ的には片腹痛い気分に落ちる。
「ふぅ……じゃあこれを見ろ。寧ろ今夜にこの場ですべきだと確信出来る。まあ……俺も知らなかったが」
さも面倒臭げに古びたアルバムらしき物をドゥーウェンに渡すローダ。目が笑っていた。
「こ、これはっ!?」
金縁眼鏡の裏側、目を見張りアルバムのページを捲る学者。食い入る視線、アルバムに顔を貼り付けた。
「さ、300年前この店でファウナ神の生誕祭ぃっ!」
歴史的遺産を発掘した昂ぶり、ドゥーウェンの心持ちが逆回転する。耳に届いた周囲の人々から動揺を引き出した。
『Buon 18esimo compleanno, Fauna del Foresta!』
着飾った女性しかいない如何にも楽しげな写真。ローマ語で『ファウナ・デル・フォレスタ、18歳の誕生日おめでとう! 』と寄せ書き。
真ん中に映る金髪で蒼き瞳を湛えた女性とその隣、赤ワインを転がす黒ドレスの大人びた女性が一際目立っていた。
これだけでも充分仰天に値するのだが、添えられた日時すら300年前の同刻を指していた奇跡。
「わ、判りました! もぅ何も言いません! やはり貴方は奇跡を呼び込む御人です!」
吉野亮一、蒼き薔薇が呼び込んだ思いがけぬ事柄相手に染めた金髪を深々と下げた。
着々と準備が進む最中、Fortezaの街並みが祭りの様な賑わいをみせ始める。
Forteza市民だけに在らず、外からの訪問客も今宵、世界に新たな祝日が刻まれる幸せからお零れを頂戴したく浮かれていた。
やがて都会を照らす陽が沈み、人の造りし灯りと入れ替える。
特に今夜は、蒼一色の色合いに揃えられた。
三毛猫亭は二次会、今宵の式典を最初に開く主役の建物に来賓客が列を成し始める。
その中にはResistanceのリーダー格として、梃でも漁村エドナの守りを譲らなかった髭面。ガロウ・チュウマの姿や、ローダ達がつい先日解放した戦之女神の賢士スオーラ・カルタネラ。付き従う僧兵フィエロ・ガエリオの姿もあった。
特にガロウとフィエロは慣れぬ紳士服に辟易しており、共にFortezaを訪れた仲間達の笑顔を誘った。
ローダ、少々考えが回らなかった──。
自身の友達だけでも充分多かった人誑しである自分の交友関係を。
また独り、今夜の主役──チャペルの前に降りる中年女性。
彼女も見覚えある存在、フィエロ・ガエリオの母親。戦之女神の司祭、エリナ・ガエリオ。聖書片手に司祭の正装で現れた。
パイプオルガンの荘厳な音色とチャペルの鐘が幸福を都会の街並みへ雪の様に散らした。
夜も深まり間もなく23時。ローダとルシアが初めて結ばれた夜に見上げた南十字星がチャペルの十字架と重なり輝く奇跡が、訪れた者達の歓声を呼んだ。
もう語らずとも知れたであろう──。
今宵の式典は、ローダ・ファルムーンとルシア・ロットレンの結婚式と披露宴。
遂に舞台は整った。後は本日の主役二人が訪れるのを心から待ち望んだ人々の気分でごった返すのだ。
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