🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第6部『Reunion & Admonition(再会と”最戒”)』

第66話『Born to Find You Beyond the Door(君に出逢う為に拓いた)』 B Part

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 地球上で唯一生き残った文明を孤独こどくになFortezaフォルテザ──。
 英雄ヒーロー女傑ヒロインをひとつにかなでたチャペルのかねが鳴り響く純潔じゅんけつ

 ローダ・ファルムーンが少し至らぬを捨て、ローダ・ロットレンとしてよそおい新たな人生の門出かどでを祝うかねの音だ。

 同刻──。
 扉の候補者を見定める鍵の女性ルシアが、彼の心をき、自らもを解き放つ誓いの接吻キスで魂から結ばれ、生涯しょうがい伴侶はんりょようやく至れた祝福の風来たる。

 まるでルシアが風そのものと為りて恵みのを降らせた荘厳そうごん。どんな絵師にも決して描けぬ色あざやかな華が──今、咲き誇る。

 バーンッ!

『その婚儀こんぎ、意義有り!』

 不意にチャペルの扉が開かれが吹き込んだ。
 しゃがれた初老の男、想いのたけを必死にぶつけたサイガン・ロットレン。もうこの一言で肺が潰れようとも構いやしない胸中きょうちゅうを明かした。

 だがとき、既に遅かった──。
 ローダとルシアはエリナ・ガエリオ司祭と、もはや血縁より大切な仲間達に見守れ誓いキスを交した。
 サイガンは神前しんぜんで反逆の意志を示す。それはまるで彼の人生そのものと云えた。

 普段サイガン自身が好んで身にまとう黒いスーツ──ではなく、黒のタキシードと純白のネクタイ。

 式の裏側でひそやかに若い二人の門出を祝うつもりでいた雰囲気をかもし出す。
 タキシードの肩が揺れる息使い。

「お前達二人が愛し合うのを最早止めるつもりはないのだ。だが何故ッ! どうして貴様がを名乗るッ!」

 しわが深く血管の浮き出た右人差し指を突き出して最大限の愚直ぐちょくを吐き出す。老練ろうれんを極めた姿がかすんで見えた。

 式場の誰しもが主人公であるべきつぼみ開いたばかりの夫妻でなく、嵐の根源サイガンを見やる
 正式にサイガンの息子と成ったローダが妻ルシアを抱き寄せ真顔で返す。

「俺とルシア二人で決めた。何の問題もない筈だ」

 それは余りに父と似過ぎた、だが正論過ぎる答えであった。

 ガタッ。

「二人共成人を迎えている、確かに何も問題ない。我々が見届けた」

 元フォルデノ王国騎士団、騎士の正式な白装束にその身を包んだ偉丈夫いじょうぶジェリド・アルベェラータから繰り出されるかたまり
 アドノス島に於ける唯一無二な王国の聖騎士。胸に抱くはフォルデノ王国忠義ちゅうぎの証、赤の竜をかたどる紋章。

 騎士抜けした者にもかかわらず如何いかにも王国の見届け人を油断もすきもなき説得力を異端な黒い老人へ向けた。

「ぐっ! し、然しこれは我が一族の問題だ」

「ふぅ……」

 語るに落ちたロットレン家最後の正当な血筋。
 独り娘のルシアをうばうのではなくロットレン家にせきゆずる男相手に何の不満が云えようか。

 ジェリドは語らず溜息ためいきひとつでこれをあしらう。他にも奇異きいあふれた冷たい視線が判らず屋の老人へじかに降り注いだ。

「サイガン・ロットレン様。例え新婦ルシア様の父上と云えど戦の女神の御前ごぜん、司祭として当然容認出来ません」

 毅然きぜんと振舞うエリナ・ガエリオ司祭。夫婦揃って戦之女神エディウス神の信者でこそないが、あずかった結婚式をけがされるいわれはないのだ。

 パンッ、パンッ。

 不意に二拍にはく、掌を叩く音がチャペル内を木霊こだました。皆の視線の行先が変わる。金縁眼鏡きんぶちめがね吉野亮一ドゥーウェンが眼鏡を外してみがいてから掛け直す。

「ローダ御夫妻の結婚は晴れて成立致しました。込み入ったお話は披露宴──『三毛猫亭』にて伺うと云う事でこの場はどうか収めて頂きたい。式をあずかるが責任を以て伺います」

 師サイガンと相反そうはんする余裕の笑みと口振り。 マーダ第二の徒『ドゥーウェン』と名乗らず本名で

 しわで細かった目を見開き弟子をにらみつけるサイガンと、笑みを絡ませる亮一の図式。如何いかにも『総て整った正式な婚儀です』声を聞かずとも知れた。

「──僭越せんえつながら森の女神ファウナ神御加護ごかごを受けたこの、ベランドナもその口述こうじゅつ伺わせて頂きたく存じます」

 吉野亮一ドゥーウェンかたわらでひかえていたハイエルフのベランドナも美麗びれいかつ迫力秘めた琥珀色こはくいろ添えた向けた

「サイガン殿、祝いの席だ。新郎のである僕の顔も立ててくれると嬉しい」

 まさしくこれ以上ない四面楚歌しめんそか──。
 一応サイガンの背中を押しても良い立場であるマーダことルイス・ファルムーンが笑顔で〆た。

 ──何を伺うつもりだ亮一! 私の語る口を完璧につぶしおった!

 師をさげすむ逆転の視線を黙認もくにんしか出来ぬサイガン。「ふんっ」と身をひるがえしてその場を後にせざるを得なかった。

「……」

 ルシアが無言の揺らぎをローダに送る上目遣いうわめづかい。やはりどうあってもサイガン・ロットレンは彼女の親なのだ。

 妻ルシアの不安を受け留めたローダ穏やかな微笑をたたえ、全てを胸に抱く決意を改めて固める。辛くはない──彼女を取り巻く全部を自分が受ける幸福。

「大丈夫だルシア……ヒビキも、そして君のも俺が必ず護り抜く」

「──ッ!」

 改めて夫ローダに唇をルシア。
 夫の言葉にその身が震え再び化粧をくずす涙目。

 ルシアに取ってローダ・ロットレンは、英雄の座から昇格した救世主メシアに思え、その身も心も魂さえもゆだねる。その場所が余りに居心地良く溶けてしまうかに思えた。

 ガッ!

「良か……良か門出かどでじゃ! 良か青年にせんなった!」

 新郎新婦の空気を敢えて読まないガロウ・チュウマが、ローダの首元を腕でガシリッと絞めた荒っぽい祝福。後に続けとばかりにローダの黒頭を叩く仲間達。

「ルシア・──本当に心から御祝い申し上げます」

 いつもの甘えた御姉様呼びでないリイナから妻ルシアへの祝詞のりと。銀色の少女が肩震わせ心の底から涙を伝えた。

 女性陣も『リイナに続け』とばかりにルシアから幸せのお裾分すそわけを強請ねだるべくドレスのすそ上げ次々と押し寄せる。

 まるで触れたら願いの叶う御神体ごしんたい、女性達がルシアの空いた場所をみつけ続々握り振り回す。
 この後花嫁ルシアは幸福ブーケを投げるのだが、彼女達もやはり待てなかった。
 
 この後、披露宴ひろうえん会場へ移動する一同。
 店毎貸切った『三毛猫亭』まで祝福を伝えるのを我慢がまんし切れなかったローダとルシアを心底したう気の早い

 その様子を存在自体が影と云うべき兄ルイスが「クスリツ」──柔らかい笑みを思わずのだ。

『パッパ、そしてママ……やっぱり僕…う、生まれたい……よ! 皆の場所に!』

 ──ヒビキッくぅっ

 母ルシアが命の器の中、式中の間、心を閉ざしたヒビキ。天照大御神アマテラスの様に皆の呼び出しに応じ、ローダとルシアの魂を震わす。
 ルシアが娘の名を心で叫び、今度はローダが涙こらえ切れず顔をゆがめて手で目を隠した。

 やはりローダとルシアが護ると誓った家族とはであった。
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