🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第74話『Blitz of Radiant Steel(独断"閃光"の連撃)』 A Part

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 夜のとばり深き森をつんざく敵の襲来を受けたジェリド隊。
 悠久の森人ハイエルフベランドナが機転きてん利かせた。
 自分達の精気を狙う森の美女ドリュエル達を抑え込むのを止め、なりふり構わず転身させ敵味方構わず襲わせる大混乱を呼び込んだ。

 森の美女ドリュエルなぞ本来操る側であるベランドナが、相手取らねばならぬ壮絶そうぜつなる攻守交代。紙一重で如何どうにか再び止めたが精魂せいこん尽き気絶したベランドナ。

 彼女を救い上げた目が赤くて背の低い優男。名を『ファグナレン』と云う。背丈こそ小さいが俊敏しゅんびんな動きが功をそうした。

 少々変わり種な名前には訳がある。
 フォルデノ王国ではナイフやダガー──すなわち短剣を極めた兵士へこの名を継がせる風変わりな風習があるのだ。

 処で森の都ラファン側へ山頂から入り、転がる石の様にそのまま逃走劇を続けたジェリド陣営はどうなったか。
 何とか落ち着けそうな岩陰をそれぞれみつけ、隠れながら難を逃れ生き延びた。

 やがて陽が昇り始めると山道に敵が用意したとおぼしき石塁せきるいが映え、新たな緊張を増した。

 何しろ派手に山を下りたジェリドの兵達。敵側は勘づいているに違いない。
 然しながら敵は石塁へ籠城ろうじょうを決め込んだのか、飛び出すを犯そうとしなかった。

 恐らく活きの好い連中が山を駆け登りジェリド達へ夜襲を掛けた。それにも関わらず戻って来たのは何と敵兵ばかりなり。これは慎重に成らざるを得ないと云った処か。

 偶然だがジェリド隊にとっては渡りに船の展開と言えなくもない。
 お陰でジェリド達に取って勝利の女神、ベランドナを休める事が出来たのだ。

「──うっ、うぅ……」

「気が付いたかベランドナ……良かった」

 金色の髪を森の大地へ流し込んだベランドナが琥珀色こはくいろの瞳をうつろに開く。

 眠り姫が目覚めたさちにジェリド総司令が目をほそめて喜びを静かに表現。実の娘リイナが起きた朝焼けの様な温かさで出迎えた。

「君が森の美女ドリュエル達に囲まれた時は流石に肝を冷やしたぞ。だがお陰で此方の兵も余り減らずに済んだ、礼を言う」

 ジェリドが率いる元フォルデノ王国兵と同じ色した連中の襲撃は、野営に落ちてた寝ていた自分達を心の芯から冷え切らせた。

 濃すぎる森の臭気しゅうきただよう最中を駆け上がりにわかに信じ難い力を多大に振るわれ命の危険にさらされた。
 自らの命張ったベランドナの殿しんがりがなければ全滅していたやも知れぬのだ。

「え……いえ、当然の事をしただけです」

 ベランドナ──友人リイナの父親が笑顔で差し伸べたごつい手を見て、ほんの僅かだが心の火照ほてりを感じた。手を取るのを躊躇ためらう。

 ドゥーウェンから依頼された仕事、ましてや森を抜ける作戦なのだ。手抜かりは己が命を死地へ送ろうとも在ってはならぬベランドナの矜恃きょうじ

「貴女が危険をおかした時、ジェリド隊長が酷く慌てた。──あんな隊長を見たのは初めてなのです。失礼ながら珍しい面白いものが見れました」

 酷くエッジの効いた冗談をほのめかしたのはベランドナを救い出したファグナレンである。
 若いが出来る部下の冗談相手に鋭い視線だけで制するジェリドの凄味すごみ

「ベランドナ、済まんがこのファグナレンと君が好きに選んだ兵10人位を連れ、そこの塁を突破する穴を穿うがって貰いたい。魔力マナと体力は問題ないな?」

 心配したそばから次は先陣で斬り込めと繰り出すジェリドの容赦無用ようしゃむよう

 ベランドナは、巫山戯ふざけが過ぎる赤目の男へ視線を送ってみる。
 樹木の皮で包み隠していたダガー2本を軽々振るファグナレンのニヤケた面構え。だがやれる男だと即、見込んだ。

Masterジェリド、彼と私だけで充分です。──『戦乙女ヴァルキュリア』」

 ジェリドへ語りながら戦意高揚こうようの術式、戦乙女ヴァルキュリアをファグナレンにさずけたベランドナの気軽さ。

「おおっ」

 血が自ずとたぎるのを感じたファグナレン、これから不意を打つという傍から思わず声があふれ出そうになるのを如何どうにか抑え込む。

「ベランドナ殿、作戦は?」

「さく……せん」

 ファグナレンより殿と敬称で呼ばれ『作戦は?』とたずねられたベランドナ。心なしかこれ迄見知らぬ気持ちの良さを感じ取る。

「そう……ですね。──私に遅れず着いて来れたら判ります」

 それだけ言い残し突如とつじょ、岩陰を飛び出したベランドナのノリの良き加減。珍しく片目をつぶった挑発ウインク。 
 金色こんじきの風を残留ざんりゅうさせ先を越されたファグナレンが思わず「ほぅ!」と感嘆かんたんの声。

 だがファグナレンとて負けずおとらず、投擲とうてき用のナイフを敵が潜む石塁目掛け真っ直ぐストレートで投げ込む。
 彼が思った以上にナイフが伸びて塁の隙間すきまい先制を与えた。

 凄まじきベランドナの駆ける速さ、まるでファグナレンがナイフを投げ入れるのを見透かした様子。ナイフを盾に追いすがるとレイピアを抜刀。

 ファグナレンのナイフが起こした敵の軽い壊乱かいらん。長い金髪を見てだとめたらしき敵兵が迂闊うかつにも塁を飛び出し、やりを突き出そうした矢先。

 電光石火──稲妻が如きレイピアの突きをベランドナが繰り出し愚かな敵の首元を一閃いっせんで抜いた。

「御婦人の後ろお尻を追うのはしょうに合わないのだが!」

 石塁に潜んでいた敵兵達──。
 向かって来たのは女と短剣の兵の二人だけと知るや、辛抱溜まらずえさに喰らい付く肉食魚の様に各々武器を手に血をたぎらせ、殺る勢いで山道へ跳ね出す。

 ファグナレン──何を思ったのか短剣ダガーを1本空へ放り投げる。
 それにほんの一瞬気をうばわれた敵兵、静止したときを持ってゆかれた。

 2刀目の短剣ダガーを伸ばすかに思われたファグナレン、敵兵が宙へ視線を向けた最中を見計らい滑り込んで足払いを繰り出す。倒した所、首裏に膝を落とし勝ち星2つ目を難なく挙げた。

 背丈の小さいファグナレンを組みやすしと思ったか、更なる敵兵。次は両手剣グレートソード、岩もくだきそうな大男とのミスマッチ。

 されど何とも哀れな大男──。
 先ほど宙へお手玉の如く放った短剣ダガーを軽いジャンプで受けた止めたファグナレン。そのまま空から敵の脳天目掛け振り下ろし、剣を交えるいとますら与えず命散らした。

 横目でファグナレンの戦いぶりを見やるベランドナ、ファグナレンの赤い目が未だ薄暗い山中で紅色の軌跡を描く乱舞に関心を抱いた。

 そんなベランドナにも次なるが襲い来る。片手剣ロングソードの兵と石塁から顔出し弓矢を放つ二人の敵。

 然し風の精霊で既に見えぬを張り終えていたベランドナへ矢は届かずむなしくもはじかれるのみ。
 美し過ぎる盾、弓矢は全て自分が受け持つ体現たいげん

 片手剣ロングソードの兵士が繰り出した突きはベランドナが脅威きょういを抱くほど鋭く風をいた。

 やはり森の美女ドリュエル達のを腕力だけで抜けてきた敵軍の異常さを肌で感じる。

 だが散らした金髪がまるで光の精霊が揺らぎを思わすベランドナの流麗りゅうれい
 腕力に物言わす相手の攻撃を避ければ剣を直ぐには戻せぬすきが生まれるもの。
 地面へかたむいた首筋目掛けレイピアで突き刺す強力なを相手へ届けた。

 ファグナレンとベランドナ、今回が始めての二人組ツーマンセル。余りに美しき戦端を開き、落葉樹に訪れた冬が如く敵の命を枯葉の様に散らし始めた。
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