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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第74話『Blitz of Radiant Steel(独断"閃光"の連撃)』 A Part
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夜の帳深き森をつんざく敵の襲来を受けたジェリド隊。
悠久の森人ベランドナが機転利かせた。
自分達の精気を狙う森の美女達を抑え込むのを止め、なりふり構わず転身させ敵味方構わず襲わせる大混乱を呼び込んだ。
森の美女なぞ本来操る側であるベランドナが、森毎相手取らねばならぬ壮絶なる攻守交代。紙一重で如何にか再び止めたが精魂尽き気絶したベランドナ。
彼女を救い上げた目が赤くて背の低い優男。名を『ファグナレン』と云う。背丈こそ小さいが俊敏な動きが功を奏した。
少々変わり種な名前には訳がある。
フォルデノ王国ではナイフやダガー──即ち短剣を極めた兵士へこの名を継がせる風変わりな風習があるのだ。
処で森の都ラファン側へ山頂から入り、転がる石の様にそのまま逃走劇を続けたジェリド陣営はどうなったか。
何とか落ち着けそうな岩陰をそれぞれみつけ、隠れながら難を逃れ生き延びた。
やがて陽が昇り始めると山道に敵が用意したと思しき石塁が映え、新たな緊張を増した。
何しろ派手に山を下りたジェリドの兵達。敵側は勘づいているに違いない。
然しながら敵は石塁へ籠城を決め込んだのか、飛び出す愚を犯そうとしなかった。
恐らく活きの好い連中が山を駆け登りジェリド達へ夜襲を掛けた。それにも関わらず戻って来たのは何と敵兵ばかり也。これは慎重に成らざるを得ないと云った処か。
偶然だがジェリド隊にとっては渡りに船の展開と言えなくもない。
お陰でジェリド達に取って勝利の女神、ベランドナを休める事が出来たのだ。
「──うっ、うぅ……」
「気が付いたかベランドナ……良かった」
金色の髪を森の大地へ流し込んだベランドナが琥珀色の瞳を虚ろに開く。
眠り姫が目覚めた幸にジェリド総司令が目を細めて喜びを静かに表現。実の娘が起きた朝焼けの様な温かさで出迎えた。
「君が森の美女達に囲まれた時は流石に肝を冷やしたぞ。だがお陰で此方の兵も余り減らずに済んだ、礼を言う」
ジェリドが率いる元フォルデノ王国兵と同じ色した連中の襲撃は、野営に落ちてた自分達を心の芯から冷え切らせた。
濃すぎる森の臭気漂う最中を駆け上がり俄かに信じ難い力を多大に振るわれ命の危険に晒された。
自らの命張ったベランドナの殿がなければ全滅していたやも知れぬのだ。
「え……いえ、当然の事をしただけです」
ベランドナ──友人リイナの父親が笑顔で差し伸べたごつい手を見て、ほんの僅かだが心の火照りを感じた。手を取るのを躊躇う。
ドゥーウェンから依頼された仕事、ましてや森を抜ける作戦なのだ。手抜かりは己が命を死地へ送ろうとも在ってはならぬベランドナの矜恃。
「貴女が危険を冒した時、ジェリド隊長が酷く慌てた。──あんな隊長を見たのは初めてなのです。失礼ながら珍しいものが見れました」
酷くエッジの効いた冗談を仄めかしたのはベランドナを救い出したファグナレンである。
若いが出来る部下の冗談相手に鋭い視線だけで制するジェリドの凄味。
「ベランドナ、済まんがこのファグナレンと君が好きに選んだ兵10人位を連れ、そこの塁を突破する穴を穿って貰いたい。魔力と体力は問題ないな?」
心配した傍から次は先陣で斬り込めと繰り出すジェリドの容赦無用。
ベランドナは、巫山戯が過ぎる赤目の男へ視線を送ってみる。
樹木の皮で包み隠していたダガー2本を軽々振るファグナレンのニヤケた面構え。だがやれる男だと即、見込んだ。
「Master、彼と私だけで充分です。──『戦乙女』」
ジェリドへ語りながら戦意高揚の術式、戦乙女をファグナレンに授けたベランドナの気軽さ。
「おおっ」
血が自ずと滾るのを感じたファグナレン、これから不意を打つという傍から思わず声が溢れ出そうになるのを如何にか抑え込む。
「ベランドナ殿、作戦は?」
「さく……せん」
ファグナレンより殿と敬称で呼ばれ『作戦は?』と尋ねられたベランドナ。心なしかこれ迄見知らぬ気持ちの良さを感じ取る。
「そう……ですね。──私に遅れず着いて来れたら判ります」
それだけ言い残し突如、岩陰を飛び出したベランドナのノリの良き加減。珍しく片目を瞑った挑発。
金色の風を残留させ先を越されたファグナレンが思わず「ほぅ!」と感嘆の声。
だがファグナレンとて負けず劣らず、投擲用のナイフを敵が潜む石塁目掛け真っ直ぐ投げ込む。
彼が思った以上にナイフが伸びて塁の隙間を縫い先制を与えた。
凄まじきベランドナの駆ける速さ、まるでファグナレンがナイフを投げ入れるのを見透かした様子。ナイフを盾に追い縋るとレイピアを抜刀。
ファグナレンのナイフが起こした敵の軽い壊乱。長い金髪を見て女だと舐めたらしき敵兵が迂闊にも塁を飛び出し、槍を突き出そうした矢先。
電光石火──稲妻が如きレイピアの突きをベランドナが繰り出し愚かな敵の首元を一閃で抜いた。
「御婦人の後ろを追うのは性に合わないのだが!」
石塁に潜んでいた敵兵達──。
向かって来たのは女と短剣の兵の二人だけと知るや、辛抱溜まらず餌に喰らい付く肉食魚の様に各々武器を手に血を滾らせ、殺る勢いで山道へ跳ね出す。
ファグナレン──何を思ったのか短剣を1本空へ放り投げる。
それにほんの一瞬気を奪われた敵兵、静止した刻を持ってゆかれた。
2刀目の短剣を伸ばすかに思われたファグナレン、敵兵が宙へ視線を向けた最中を見計らい滑り込んで足払いを繰り出す。倒した所、首裏に膝を落とし勝ち星2つ目を難なく挙げた。
背丈の小さいファグナレンを組みやすしと思ったか、更なる敵兵。次は両手剣、岩も砕きそうな大男とのミスマッチ。
されど何とも哀れな大男──。
先ほど宙へお手玉の如く放った短剣を軽いジャンプで受けた止めたファグナレン。そのまま空から敵の脳天目掛け振り下ろし、剣を交える暇すら与えず命散らした。
横目でファグナレンの戦いぶりを見やるベランドナ、ファグナレンの赤い目が未だ薄暗い山中で紅色の軌跡を描く乱舞に関心を抱いた。
そんなベランドナにも次なる不幸な敵が襲い来る。片手剣の兵と石塁から顔出し弓矢を放つ二人の敵。
然し風の精霊で既に見えぬ防護柵を張り終えていたベランドナへ矢は届かず空しくも弾かれるのみ。
美し過ぎる盾、弓矢は全て自分が受け持つ体現。
片手剣の兵士が繰り出した突きはベランドナが脅威を抱くほど鋭く風を裂いた。
やはり森の美女達の客引きを腕力だけで抜けてきた敵軍の異常さを肌で感じる。
だが散らした金髪がまるで光の精霊が揺らぎを思わすベランドナの流麗。
腕力に物言わす相手の攻撃を避ければ剣を直ぐには戻せぬ隙が生まれるもの。
地面へ傾いた首筋目掛けレイピアで突き刺す強力な二番煎じを相手へ届けた。
ファグナレンとベランドナ、今回が始めての二人組。余りに美しき戦端を開き、落葉樹に訪れた冬が如く敵の命を枯葉の様に散らし始めた。
悠久の森人ベランドナが機転利かせた。
自分達の精気を狙う森の美女達を抑え込むのを止め、なりふり構わず転身させ敵味方構わず襲わせる大混乱を呼び込んだ。
森の美女なぞ本来操る側であるベランドナが、森毎相手取らねばならぬ壮絶なる攻守交代。紙一重で如何にか再び止めたが精魂尽き気絶したベランドナ。
彼女を救い上げた目が赤くて背の低い優男。名を『ファグナレン』と云う。背丈こそ小さいが俊敏な動きが功を奏した。
少々変わり種な名前には訳がある。
フォルデノ王国ではナイフやダガー──即ち短剣を極めた兵士へこの名を継がせる風変わりな風習があるのだ。
処で森の都ラファン側へ山頂から入り、転がる石の様にそのまま逃走劇を続けたジェリド陣営はどうなったか。
何とか落ち着けそうな岩陰をそれぞれみつけ、隠れながら難を逃れ生き延びた。
やがて陽が昇り始めると山道に敵が用意したと思しき石塁が映え、新たな緊張を増した。
何しろ派手に山を下りたジェリドの兵達。敵側は勘づいているに違いない。
然しながら敵は石塁へ籠城を決め込んだのか、飛び出す愚を犯そうとしなかった。
恐らく活きの好い連中が山を駆け登りジェリド達へ夜襲を掛けた。それにも関わらず戻って来たのは何と敵兵ばかり也。これは慎重に成らざるを得ないと云った処か。
偶然だがジェリド隊にとっては渡りに船の展開と言えなくもない。
お陰でジェリド達に取って勝利の女神、ベランドナを休める事が出来たのだ。
「──うっ、うぅ……」
「気が付いたかベランドナ……良かった」
金色の髪を森の大地へ流し込んだベランドナが琥珀色の瞳を虚ろに開く。
眠り姫が目覚めた幸にジェリド総司令が目を細めて喜びを静かに表現。実の娘が起きた朝焼けの様な温かさで出迎えた。
「君が森の美女達に囲まれた時は流石に肝を冷やしたぞ。だがお陰で此方の兵も余り減らずに済んだ、礼を言う」
ジェリドが率いる元フォルデノ王国兵と同じ色した連中の襲撃は、野営に落ちてた自分達を心の芯から冷え切らせた。
濃すぎる森の臭気漂う最中を駆け上がり俄かに信じ難い力を多大に振るわれ命の危険に晒された。
自らの命張ったベランドナの殿がなければ全滅していたやも知れぬのだ。
「え……いえ、当然の事をしただけです」
ベランドナ──友人リイナの父親が笑顔で差し伸べたごつい手を見て、ほんの僅かだが心の火照りを感じた。手を取るのを躊躇う。
ドゥーウェンから依頼された仕事、ましてや森を抜ける作戦なのだ。手抜かりは己が命を死地へ送ろうとも在ってはならぬベランドナの矜恃。
「貴女が危険を冒した時、ジェリド隊長が酷く慌てた。──あんな隊長を見たのは初めてなのです。失礼ながら珍しいものが見れました」
酷くエッジの効いた冗談を仄めかしたのはベランドナを救い出したファグナレンである。
若いが出来る部下の冗談相手に鋭い視線だけで制するジェリドの凄味。
「ベランドナ、済まんがこのファグナレンと君が好きに選んだ兵10人位を連れ、そこの塁を突破する穴を穿って貰いたい。魔力と体力は問題ないな?」
心配した傍から次は先陣で斬り込めと繰り出すジェリドの容赦無用。
ベランドナは、巫山戯が過ぎる赤目の男へ視線を送ってみる。
樹木の皮で包み隠していたダガー2本を軽々振るファグナレンのニヤケた面構え。だがやれる男だと即、見込んだ。
「Master、彼と私だけで充分です。──『戦乙女』」
ジェリドへ語りながら戦意高揚の術式、戦乙女をファグナレンに授けたベランドナの気軽さ。
「おおっ」
血が自ずと滾るのを感じたファグナレン、これから不意を打つという傍から思わず声が溢れ出そうになるのを如何にか抑え込む。
「ベランドナ殿、作戦は?」
「さく……せん」
ファグナレンより殿と敬称で呼ばれ『作戦は?』と尋ねられたベランドナ。心なしかこれ迄見知らぬ気持ちの良さを感じ取る。
「そう……ですね。──私に遅れず着いて来れたら判ります」
それだけ言い残し突如、岩陰を飛び出したベランドナのノリの良き加減。珍しく片目を瞑った挑発。
金色の風を残留させ先を越されたファグナレンが思わず「ほぅ!」と感嘆の声。
だがファグナレンとて負けず劣らず、投擲用のナイフを敵が潜む石塁目掛け真っ直ぐ投げ込む。
彼が思った以上にナイフが伸びて塁の隙間を縫い先制を与えた。
凄まじきベランドナの駆ける速さ、まるでファグナレンがナイフを投げ入れるのを見透かした様子。ナイフを盾に追い縋るとレイピアを抜刀。
ファグナレンのナイフが起こした敵の軽い壊乱。長い金髪を見て女だと舐めたらしき敵兵が迂闊にも塁を飛び出し、槍を突き出そうした矢先。
電光石火──稲妻が如きレイピアの突きをベランドナが繰り出し愚かな敵の首元を一閃で抜いた。
「御婦人の後ろを追うのは性に合わないのだが!」
石塁に潜んでいた敵兵達──。
向かって来たのは女と短剣の兵の二人だけと知るや、辛抱溜まらず餌に喰らい付く肉食魚の様に各々武器を手に血を滾らせ、殺る勢いで山道へ跳ね出す。
ファグナレン──何を思ったのか短剣を1本空へ放り投げる。
それにほんの一瞬気を奪われた敵兵、静止した刻を持ってゆかれた。
2刀目の短剣を伸ばすかに思われたファグナレン、敵兵が宙へ視線を向けた最中を見計らい滑り込んで足払いを繰り出す。倒した所、首裏に膝を落とし勝ち星2つ目を難なく挙げた。
背丈の小さいファグナレンを組みやすしと思ったか、更なる敵兵。次は両手剣、岩も砕きそうな大男とのミスマッチ。
されど何とも哀れな大男──。
先ほど宙へお手玉の如く放った短剣を軽いジャンプで受けた止めたファグナレン。そのまま空から敵の脳天目掛け振り下ろし、剣を交える暇すら与えず命散らした。
横目でファグナレンの戦いぶりを見やるベランドナ、ファグナレンの赤い目が未だ薄暗い山中で紅色の軌跡を描く乱舞に関心を抱いた。
そんなベランドナにも次なる不幸な敵が襲い来る。片手剣の兵と石塁から顔出し弓矢を放つ二人の敵。
然し風の精霊で既に見えぬ防護柵を張り終えていたベランドナへ矢は届かず空しくも弾かれるのみ。
美し過ぎる盾、弓矢は全て自分が受け持つ体現。
片手剣の兵士が繰り出した突きはベランドナが脅威を抱くほど鋭く風を裂いた。
やはり森の美女達の客引きを腕力だけで抜けてきた敵軍の異常さを肌で感じる。
だが散らした金髪がまるで光の精霊が揺らぎを思わすベランドナの流麗。
腕力に物言わす相手の攻撃を避ければ剣を直ぐには戻せぬ隙が生まれるもの。
地面へ傾いた首筋目掛けレイピアで突き刺す強力な二番煎じを相手へ届けた。
ファグナレンとベランドナ、今回が始めての二人組。余りに美しき戦端を開き、落葉樹に訪れた冬が如く敵の命を枯葉の様に散らし始めた。
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