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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第73話『Those who opened the first salvo(戦端を拓いた者共)』 B Part
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森と精霊、ハイエルフと剣を手に取るまさしく異世界なる争いの只中に居るベランドナと元フォルデノ王国の聖騎士ジェリド・アルベェラータの戦陣。
Forteza市に残り、およそ12mの誇大な玩具と戯れるドゥーウェンこと吉野亮一と彼が尊敬の念を抱く世界で唯一の人間であるサイガン・ロットレン。
如何にして人間の操縦者の力に頼らず、元連合国軍の人型兵器EL・Galestaを戦力と成すかの図り事なのだ。
「──亮一、RaviNeroがこの街を襲撃した時の映像記録は残っておるか?」
SystemEngineerからすっかり工場長の面構えに転じた白髪初老の男。
今日も義理の息子夫婦が宿泊しているHOTELへ顔だけ見せてから、EL97式を整備している格納庫へ顔出す日々を送りゆく。
さも面白くなさげな顔立ちでバルタバザルからFortezaに現れた扉の候補者だけに狙いを定めた体長5mの巨大な黒猫の記録を引き出す亮一。
Fortezaの防御システムをUpdateしてなかった亮一自身の底辺な行いも折り重なり、あの時の思い出は、安っぽいエスプレッソ並みに苦々しい。
だがAI兵器として最も手本にすべき存在だと認めざるを得ないのも事実。まだローダ・ファルムーンだった頃の息子とルシア。
さらに次元転移と発射時の反動を損ねた拳銃『Ley-the-mend』の使い手、ヴァロウズの次点レイを含む三人相手に充分戦えた実績があるRaviNeroなのだ。
「……」
真顔で当時の映像や、それを亮一がデータ化したモニタを交互に比べ見ながら、自ら持ち込んだ黒いノートPCを叩くサイガン先生の一挙手一投足を黙って見やる亮一が居た。
「先生、RaviNeroなら回収した部品類も在りますが」
記録をひたすら覗き見るもよいが、どうせなら本物を触ればどうかと亮一は提案している。
されどサイガン先生は首を強く横に振るのだ。
「とんでもない──。そんな物に触れてみろ。敵側に逆探知されるがオチだ。それに──」
万が一RaviNeroの部品が生きていようものなら、バルタバザルとルヴァエル一派の思う壺だとサイガンは強く否定した。さらに含みを持たせる。
「それにな……あの黒猫の俊敏な動き。誰が設計したのか大体知れた」
椅子に深く座り背もたれを倒し、350年程前の自分に思いを馳せる老人が零す溜息。
「せ、先生っ!? ……あ、そ、それってもしや」
寝て過ごした300年以上前の思い出、吉野亮一とて記憶の引き出しを開けられた。
300年……ましてや冷凍睡眠で過ごした期間だ。
50年位は最早誤差の範疇、サイガンと旧日本人、吉野亮一が冷凍の惰眠から初めて目覚めたのはおよそ350年前。
この刻、世界中の人類へ飛ばして寄生させたAYAME達。人の意識を散々拾い集めて成し得た意志。これを人型アンドロイドへ載せたのが初期型マーダ。
散々語り尽くした話──。
然しこの際、立ち会った人間はサイガンと吉野亮一だけに非ず。サイガンに付き従う独りの女性エンジニアが居たのだ。
「まさか……先生は黒猫の設計者があのリディーナだと言うのですか?」
21世紀から寝て現れた二人と異なる22世紀生まれのシステムエンジニアがリディーナである。
サイガンのAYAME理論に深く感銘し、惜しげもなく22世紀の真新しい技術を二人へ注いだ女性。
然しながら目前のEL・Galestaが活躍したのは、さらに時を積む50年後と云われる。
確かに当時の医療技術なら自分達の知るリディーナがおよそ50年、若さを保ち生き長らえていたとしても不可思議ではないかも知れない。
だが──今はさらに300年後の未来なのだ。リディーナまで冷凍睡眠で未だ生きているとは流石に思えぬ亮一である。
「で、ですがリディーナさんは先生の在り方に賛同してくれた人です。何故今さら扉の候補者や異能者達を付け狙うのです?」
亮一も一目置いていたリディーナの技術力。そこにサイガンが流し込んだ人工知性IRISの理論が加わり彼女の人生は実に華|華やいでいたのだ。
「判らんよ、所詮他人の考え方なんぞ。だが私を尊敬していたのでなく、技術だけを盗みたかった。高みに立つ技術者は大抵エゴイストではないか? 我々の様にな」
未だ背もたれを倒したまま弟子へ横目を送りつける大層嫌な顔をしたサイガン。
己や亮一の方が世界を敵に回した異端者だと告げる。技術進化とは常に人のエゴ──例え味方の生き目を抜く最悪を成そうとも突き進めて然るべき。
「それにだ──人は死せども技術は消さなきゃ残る。このEL・Galesta? 出来が良過ぎるのだよ。量産機? 馬鹿を云うな、この黒い機体は無塗装であろ? 専用機に決まっておるわ」
椅子をギシギシ鳴らしながら、吉野亮一が拾ったボディがカーボン素材のEL・Galestaを顎で指すサイガンの狡猾。
EL97式の総重量5480㎏──この機体はさらにそれを下回る。
第一拾って直しただけの機械が、こうも機敏に動ける異常。改造は愚か、ほぼ再設計の専用機に違いないとサイガン先生の細い目は結論づけた。
「リディーナは私達の古めかしい技術より、我等の狂気が生んだマーダ辺りに付いたのではないか? ならば300年後に誕生する新人類は天敵じゃよ」
両腕をダラリと垂らし350年前の夢と、その後二度寝をした自分達を他所に落とし子マーダをリディーナは大いに推した。
「──ッ!」
サイガンの語る話の辻褄が時計の歯車より噛み合い過ぎて、金色に染めた固い頭を亮一が抱え込む。
そもそも今を生きるマーダ──今はルイスと名乗る男。ただのアンドロイドがどうやって他人へ取り憑く力を得たのか。誰かの支援なくして不可能だと知れた。
ギシィッ!
サイガン・ロットレン──此処まで語り尽くすと突如倒した椅子を勢い良く起こし鳴かせた。
「見事だリディーナ──だがのう、良き手本を残してくれた。それは汚点だ。何しろ我等は生きておる。お前と違ってな、ふふっ……」
サイガン先生──独りほくそ笑んだ。
どれだけ年齢を重ねようが果て無き欲望の怨嗟。回し切れれば官軍に至れる革新を漏らした。
Forteza市に残り、およそ12mの誇大な玩具と戯れるドゥーウェンこと吉野亮一と彼が尊敬の念を抱く世界で唯一の人間であるサイガン・ロットレン。
如何にして人間の操縦者の力に頼らず、元連合国軍の人型兵器EL・Galestaを戦力と成すかの図り事なのだ。
「──亮一、RaviNeroがこの街を襲撃した時の映像記録は残っておるか?」
SystemEngineerからすっかり工場長の面構えに転じた白髪初老の男。
今日も義理の息子夫婦が宿泊しているHOTELへ顔だけ見せてから、EL97式を整備している格納庫へ顔出す日々を送りゆく。
さも面白くなさげな顔立ちでバルタバザルからFortezaに現れた扉の候補者だけに狙いを定めた体長5mの巨大な黒猫の記録を引き出す亮一。
Fortezaの防御システムをUpdateしてなかった亮一自身の底辺な行いも折り重なり、あの時の思い出は、安っぽいエスプレッソ並みに苦々しい。
だがAI兵器として最も手本にすべき存在だと認めざるを得ないのも事実。まだローダ・ファルムーンだった頃の息子とルシア。
さらに次元転移と発射時の反動を損ねた拳銃『Ley-the-mend』の使い手、ヴァロウズの次点レイを含む三人相手に充分戦えた実績があるRaviNeroなのだ。
「……」
真顔で当時の映像や、それを亮一がデータ化したモニタを交互に比べ見ながら、自ら持ち込んだ黒いノートPCを叩くサイガン先生の一挙手一投足を黙って見やる亮一が居た。
「先生、RaviNeroなら回収した部品類も在りますが」
記録をひたすら覗き見るもよいが、どうせなら本物を触ればどうかと亮一は提案している。
されどサイガン先生は首を強く横に振るのだ。
「とんでもない──。そんな物に触れてみろ。敵側に逆探知されるがオチだ。それに──」
万が一RaviNeroの部品が生きていようものなら、バルタバザルとルヴァエル一派の思う壺だとサイガンは強く否定した。さらに含みを持たせる。
「それにな……あの黒猫の俊敏な動き。誰が設計したのか大体知れた」
椅子に深く座り背もたれを倒し、350年程前の自分に思いを馳せる老人が零す溜息。
「せ、先生っ!? ……あ、そ、それってもしや」
寝て過ごした300年以上前の思い出、吉野亮一とて記憶の引き出しを開けられた。
300年……ましてや冷凍睡眠で過ごした期間だ。
50年位は最早誤差の範疇、サイガンと旧日本人、吉野亮一が冷凍の惰眠から初めて目覚めたのはおよそ350年前。
この刻、世界中の人類へ飛ばして寄生させたAYAME達。人の意識を散々拾い集めて成し得た意志。これを人型アンドロイドへ載せたのが初期型マーダ。
散々語り尽くした話──。
然しこの際、立ち会った人間はサイガンと吉野亮一だけに非ず。サイガンに付き従う独りの女性エンジニアが居たのだ。
「まさか……先生は黒猫の設計者があのリディーナだと言うのですか?」
21世紀から寝て現れた二人と異なる22世紀生まれのシステムエンジニアがリディーナである。
サイガンのAYAME理論に深く感銘し、惜しげもなく22世紀の真新しい技術を二人へ注いだ女性。
然しながら目前のEL・Galestaが活躍したのは、さらに時を積む50年後と云われる。
確かに当時の医療技術なら自分達の知るリディーナがおよそ50年、若さを保ち生き長らえていたとしても不可思議ではないかも知れない。
だが──今はさらに300年後の未来なのだ。リディーナまで冷凍睡眠で未だ生きているとは流石に思えぬ亮一である。
「で、ですがリディーナさんは先生の在り方に賛同してくれた人です。何故今さら扉の候補者や異能者達を付け狙うのです?」
亮一も一目置いていたリディーナの技術力。そこにサイガンが流し込んだ人工知性IRISの理論が加わり彼女の人生は実に華|華やいでいたのだ。
「判らんよ、所詮他人の考え方なんぞ。だが私を尊敬していたのでなく、技術だけを盗みたかった。高みに立つ技術者は大抵エゴイストではないか? 我々の様にな」
未だ背もたれを倒したまま弟子へ横目を送りつける大層嫌な顔をしたサイガン。
己や亮一の方が世界を敵に回した異端者だと告げる。技術進化とは常に人のエゴ──例え味方の生き目を抜く最悪を成そうとも突き進めて然るべき。
「それにだ──人は死せども技術は消さなきゃ残る。このEL・Galesta? 出来が良過ぎるのだよ。量産機? 馬鹿を云うな、この黒い機体は無塗装であろ? 専用機に決まっておるわ」
椅子をギシギシ鳴らしながら、吉野亮一が拾ったボディがカーボン素材のEL・Galestaを顎で指すサイガンの狡猾。
EL97式の総重量5480㎏──この機体はさらにそれを下回る。
第一拾って直しただけの機械が、こうも機敏に動ける異常。改造は愚か、ほぼ再設計の専用機に違いないとサイガン先生の細い目は結論づけた。
「リディーナは私達の古めかしい技術より、我等の狂気が生んだマーダ辺りに付いたのではないか? ならば300年後に誕生する新人類は天敵じゃよ」
両腕をダラリと垂らし350年前の夢と、その後二度寝をした自分達を他所に落とし子マーダをリディーナは大いに推した。
「──ッ!」
サイガンの語る話の辻褄が時計の歯車より噛み合い過ぎて、金色に染めた固い頭を亮一が抱え込む。
そもそも今を生きるマーダ──今はルイスと名乗る男。ただのアンドロイドがどうやって他人へ取り憑く力を得たのか。誰かの支援なくして不可能だと知れた。
ギシィッ!
サイガン・ロットレン──此処まで語り尽くすと突如倒した椅子を勢い良く起こし鳴かせた。
「見事だリディーナ──だがのう、良き手本を残してくれた。それは汚点だ。何しろ我等は生きておる。お前と違ってな、ふふっ……」
サイガン先生──独りほくそ笑んだ。
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