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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第75話『Beloved Planet(愛しの惑星)』 B Part
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腹違いの弟ローダが鍵の本命ルシア・ロットレンへ婿入りし、扉の候補者と造られし者の女性が互いに心身重ね成した娘ヒビキが無事、生誕果たした事柄。
アドノス島唯一の国家で在りながら、先端都市Fortezaに届かぬフォルデノ王国に居を構えたマーダこと、中身はルイス・ファルムーンにも話は打電されていた。
普段、ゆとりを帯びた嘲笑が真顔なルイスだが、弟ローダに置いてゆかれた気分。流石に笑ってなどいられなかった。
自ら野に放ったとはいえ、やはりローダ側へ当然の如く寝返り打ったサイガン・ロットレンも失った腹立たしき結実。
近頃は愛慕し尽くしたヴァロウズの4番目──フォウ・クワットロへ女の慰みを求める行為も減りつつある。
決してフォウとの間柄に不穏な空気が漂った訳ではない。現状維持の毎日に飽きていた。
元・フォルデノ国王が座っていた古代な玉座に腰掛け肘つき、実につまらぬ日々を過ごしていたルイス。
然も現在、Resistance側と形ばかりとはいえ休戦協定の只中。
島外から外敵でも降って来ない限り、いよいよやる事皆無の手持ち無沙汰。のうのうと送る日々。
コンコンッ……。
遠慮した感じのノック音が国王の間に木霊した。
「フォウ・クワットロでございます」
尋ね人の正体は、ルイスが唯一心も躰さえも開け放った存在。愛焦がれたフォウの謙虚がちな声であった。
「フォウ、君だけはノックなど不要だよ。好きな刻に出入りすれば良いんだ」
和らいだ声を以て歓待するルイス。彼に取ってフォウは最早妻に等しき存在。自宅を自由に闊歩して構わないのだ。
ギィッ……。
重い観音開きの扉を開けフォウが普段の黒い出で立ちで現れルイスの面前にゆるりと膝をつき恭順の意を取った。
「──?」
いつになくよそよそしいフォウの態度から不審を感じ取るルイス。物事に動じぬ男が首を捻らせた。暫し訪れた気まずい雰囲気。
落ち着いていられぬルイス、玉座を離れフォウの袂に出向き自らも床の上。直に座り気になるフォウと視線を合わせ込む。
フォウ──これは失態とばかりに琥珀色の瞳を泳がす動揺。
目前に命さえ惜しくない男が此方を心配ありげに覗き込むのだ。最早正直に語ろうと決めた。
「あ、あの……る、ルイス…様」
「んっ……如何したんだい僕のフォウ」
フォウの声音が何時になく上擦る──抑え切れない気恥ずかしさ。フォウがもどかしくすればする程、彼女がこよなく愛するルイスの愛しさが滲み溢れた。
言葉にならぬ黒い女性の切なさ。
フォウは心底想い、心揺らぐのを止められない。
マーダ様がルイス様に変わられて以来、尖った様子が形を潜め少年の様なあどけなさが己の好意を誘い出すのだ。
ギュッ。
フォウ──いっそ開き直った覚悟を決め、ルイスの女性より清らかな白い手を握り力を込めた。
「る、ルイス様……で、出来ました」
真っ赤に染まった顔を背け、主語も説明まで足りぬフォウの告白。
まるで要領を得ないルイス様、増々首を捻らせ関節が音を立てた朴念仁。
カーテンから零れた月灯りが照らす影。二人をひとつに重ね合わせた。蒼い月の方が余程フォウの揺れる気分を判ってくれた。
「ルイス様……貴方の子供が出来ました」
欠けた月影がフォウに一欠片の勇気を与えてくれた。
愛するルイスの手を取り自身の器にあてがい、紅色の顔を正面切って伝えた母性の成せる度胸。暗黒神──神の世継ぎが出来た報告を如何にか熟せた。
漸くフォウの告白を飲み込めたルイスの喫驚。半ば涙を浮かべたフォウの目を黙って見つめ、やがて彼女の手を握り返した。
「い、何時から? ま、間違いじゃないのかい?」
流石に落ち着いていられぬルイスの驚く様。
このまま接吻を交わしそうな程、フォウの赤らめた顔に自身の表情を存分寄せた。
「じ、実は……」
フォウ・クワットロ──。
実の処、2か月程前から体調の変遷ぶりに気づきながらも切り出せずにいたのだ。
ルイスが喜んでくれる自信が全くなかった。
それに妊娠したとなれば戦えぬ自分は、ヴァロウズNo4の座を追われるかも知れない。だからこれ迄ひた隠しにしていた。
ルイスが近頃フォウから女の慰みを受けてなかった真実。フォウの方が避けていた結実であった。
「フォウッ!」
月灯りと照明がフォウの黒く長い髪の毛を煌めかせ、天使の輪を創造する。その頭を優しみ込め胸に抱いたルイスの感涙──咽び泣く。
──ルイス様が歓喜していらっしゃる!
ルイスが喜びに打ち震える感覚──自ずと伝わったフォウも溜めた涙を堪え切れず流して想い人へ注いだ。
「よ、喜んで下さるのですか……?」
「と、当然じゃないか! こ、こんなに嬉しい事はない!」
ルイスの胸内、目線だけ上げ涙ながらに確認するフォウの自意識。
愛するフォウへ感涙を無遠慮に降らせたルイス、涙混じりの返事を寄越した。
「フォウ……ぼ、僕の周りの人間達は皆。僕自身じゃなく僕の才能へ期待を賭けるだけだった。お、親さえも!」
ハイデルベルク時代のルイス・ファルムーン──。
立国して以来の若さで近衛騎士に任命され、将来を期待され続けた。同じ騎士の父ラムダは無論、弟ローダですら兄の非凡ぶりに諸手を挙げ喜んだ。
それがルイスに取って決して折れる訳にいかぬ抑圧と化していた。
なれどこの女──フォウは違った。
まさしく無償の愛を惜しみなく捧げてくれた。
初めの内は扉の鍵であるルシア・ロットレンに半ば見限られ行きずりの情欲を欲しがっただけかも知れない。
だがこのフォウは、悦びを直向きに与え続けてくれたのだ。自分とそんなフォウの間に子供が出来た。
──これを喜べないのなら……僕は一体何に嬉しさを抱けば良いのか判らないよ。
扉の候補者──。
鍵の存在──。
そんな御託なぞ、すべからく捨てて構わない。二人で創れた愛のカタチを心底欲する想いに駆られたルイス。
愛、溢れ焦がれたフォウを抱き締め、ただひたすら涙に明け暮れるただの人間に堕ちたい衝動がルイスの乾いた心を突き動かした。
アドノス島唯一の国家で在りながら、先端都市Fortezaに届かぬフォルデノ王国に居を構えたマーダこと、中身はルイス・ファルムーンにも話は打電されていた。
普段、ゆとりを帯びた嘲笑が真顔なルイスだが、弟ローダに置いてゆかれた気分。流石に笑ってなどいられなかった。
自ら野に放ったとはいえ、やはりローダ側へ当然の如く寝返り打ったサイガン・ロットレンも失った腹立たしき結実。
近頃は愛慕し尽くしたヴァロウズの4番目──フォウ・クワットロへ女の慰みを求める行為も減りつつある。
決してフォウとの間柄に不穏な空気が漂った訳ではない。現状維持の毎日に飽きていた。
元・フォルデノ国王が座っていた古代な玉座に腰掛け肘つき、実につまらぬ日々を過ごしていたルイス。
然も現在、Resistance側と形ばかりとはいえ休戦協定の只中。
島外から外敵でも降って来ない限り、いよいよやる事皆無の手持ち無沙汰。のうのうと送る日々。
コンコンッ……。
遠慮した感じのノック音が国王の間に木霊した。
「フォウ・クワットロでございます」
尋ね人の正体は、ルイスが唯一心も躰さえも開け放った存在。愛焦がれたフォウの謙虚がちな声であった。
「フォウ、君だけはノックなど不要だよ。好きな刻に出入りすれば良いんだ」
和らいだ声を以て歓待するルイス。彼に取ってフォウは最早妻に等しき存在。自宅を自由に闊歩して構わないのだ。
ギィッ……。
重い観音開きの扉を開けフォウが普段の黒い出で立ちで現れルイスの面前にゆるりと膝をつき恭順の意を取った。
「──?」
いつになくよそよそしいフォウの態度から不審を感じ取るルイス。物事に動じぬ男が首を捻らせた。暫し訪れた気まずい雰囲気。
落ち着いていられぬルイス、玉座を離れフォウの袂に出向き自らも床の上。直に座り気になるフォウと視線を合わせ込む。
フォウ──これは失態とばかりに琥珀色の瞳を泳がす動揺。
目前に命さえ惜しくない男が此方を心配ありげに覗き込むのだ。最早正直に語ろうと決めた。
「あ、あの……る、ルイス…様」
「んっ……如何したんだい僕のフォウ」
フォウの声音が何時になく上擦る──抑え切れない気恥ずかしさ。フォウがもどかしくすればする程、彼女がこよなく愛するルイスの愛しさが滲み溢れた。
言葉にならぬ黒い女性の切なさ。
フォウは心底想い、心揺らぐのを止められない。
マーダ様がルイス様に変わられて以来、尖った様子が形を潜め少年の様なあどけなさが己の好意を誘い出すのだ。
ギュッ。
フォウ──いっそ開き直った覚悟を決め、ルイスの女性より清らかな白い手を握り力を込めた。
「る、ルイス様……で、出来ました」
真っ赤に染まった顔を背け、主語も説明まで足りぬフォウの告白。
まるで要領を得ないルイス様、増々首を捻らせ関節が音を立てた朴念仁。
カーテンから零れた月灯りが照らす影。二人をひとつに重ね合わせた。蒼い月の方が余程フォウの揺れる気分を判ってくれた。
「ルイス様……貴方の子供が出来ました」
欠けた月影がフォウに一欠片の勇気を与えてくれた。
愛するルイスの手を取り自身の器にあてがい、紅色の顔を正面切って伝えた母性の成せる度胸。暗黒神──神の世継ぎが出来た報告を如何にか熟せた。
漸くフォウの告白を飲み込めたルイスの喫驚。半ば涙を浮かべたフォウの目を黙って見つめ、やがて彼女の手を握り返した。
「い、何時から? ま、間違いじゃないのかい?」
流石に落ち着いていられぬルイスの驚く様。
このまま接吻を交わしそうな程、フォウの赤らめた顔に自身の表情を存分寄せた。
「じ、実は……」
フォウ・クワットロ──。
実の処、2か月程前から体調の変遷ぶりに気づきながらも切り出せずにいたのだ。
ルイスが喜んでくれる自信が全くなかった。
それに妊娠したとなれば戦えぬ自分は、ヴァロウズNo4の座を追われるかも知れない。だからこれ迄ひた隠しにしていた。
ルイスが近頃フォウから女の慰みを受けてなかった真実。フォウの方が避けていた結実であった。
「フォウッ!」
月灯りと照明がフォウの黒く長い髪の毛を煌めかせ、天使の輪を創造する。その頭を優しみ込め胸に抱いたルイスの感涙──咽び泣く。
──ルイス様が歓喜していらっしゃる!
ルイスが喜びに打ち震える感覚──自ずと伝わったフォウも溜めた涙を堪え切れず流して想い人へ注いだ。
「よ、喜んで下さるのですか……?」
「と、当然じゃないか! こ、こんなに嬉しい事はない!」
ルイスの胸内、目線だけ上げ涙ながらに確認するフォウの自意識。
愛するフォウへ感涙を無遠慮に降らせたルイス、涙混じりの返事を寄越した。
「フォウ……ぼ、僕の周りの人間達は皆。僕自身じゃなく僕の才能へ期待を賭けるだけだった。お、親さえも!」
ハイデルベルク時代のルイス・ファルムーン──。
立国して以来の若さで近衛騎士に任命され、将来を期待され続けた。同じ騎士の父ラムダは無論、弟ローダですら兄の非凡ぶりに諸手を挙げ喜んだ。
それがルイスに取って決して折れる訳にいかぬ抑圧と化していた。
なれどこの女──フォウは違った。
まさしく無償の愛を惜しみなく捧げてくれた。
初めの内は扉の鍵であるルシア・ロットレンに半ば見限られ行きずりの情欲を欲しがっただけかも知れない。
だがこのフォウは、悦びを直向きに与え続けてくれたのだ。自分とそんなフォウの間に子供が出来た。
──これを喜べないのなら……僕は一体何に嬉しさを抱けば良いのか判らないよ。
扉の候補者──。
鍵の存在──。
そんな御託なぞ、すべからく捨てて構わない。二人で創れた愛のカタチを心底欲する想いに駆られたルイス。
愛、溢れ焦がれたフォウを抱き締め、ただひたすら涙に明け暮れるただの人間に堕ちたい衝動がルイスの乾いた心を突き動かした。
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