🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第75話『Beloved Planet(愛しの惑星)』 B Part

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 腹違いの弟ローダがルシア・ロットレンへ婿むこ入りし、扉の候補者と造られし者の女性が互いに心身重ね成した娘ヒビキが無事、生誕果たした事柄。

 アドノス島唯一の国家で在りながら、先端都市Fortezaフォルテザに届かぬフォルデノ王国に居を構えたマーダこと、中身はルイス・ファルムーンにも話は打電されていた。

 普段、ゆとりを帯びた嘲笑ちょうしょうなルイスだが、弟ローダに置いてゆかれた気分。流石に笑ってなどいられなかった。

 自らに放ったとはいえ、やはりローダ側へ当然のごとく寝返り打ったサイガン・ロットレンも失った腹立たしき結実。

 近頃は愛慕あいぼし尽くしたヴァロウズの4番目──フォウ・クワットロへ女のなぐさみを求める行為も減りつつある。
 決してフォウとの間柄あいだがら不穏ふおんな空気がただよった訳ではない。現状維持の毎日にきていた。

 元・フォルデノ国王が座っていた古代誇大な玉座に腰掛けひじつき、実につまらぬ日々を過ごしていたルイス。

 然も現在、Resistance民衆軍側と形ばかりとはいえ休戦協定の只中だだなか
 島外から外敵でも降って来ない限り、いよいよやる事皆無の手持ち無沙汰ぶさた。のうのうと送る日々。

 コンコンッ……。
 遠慮した感じのノック音が国王の間に木霊こだました。

「フォウ・クワットロでございます」

 たずね人の正体は、ルイスが唯一心もからださえも開け放った存在。愛がれたフォウの謙虚けんきょがちな声であった。

「フォウ、君だけはノックなど不要だよ。好きなときに出入りすれば良いんだ」

 やわらいだ声を以て歓待するルイス。彼に取ってフォウは最早妻に等しき存在。を自由に闊歩かっぽして構わないのだ。

 ギィッ……。
 重い観音開きの扉を開けフォウが普段の黒い出で立ち4番目の魔導士姿で現れルイスマーダの面前にゆるりとひざをつき恭順きょうじゅんの意を取った。

「──?」

 いつになくよそよそしいフォウの態度から不審ふしんを感じ取るルイス。物事に動じぬ男が首をひねらせた。しばし訪れた気まずい雰囲気。

 落ち着いていられぬルイス、玉座を離れフォウのたもとに出向き自らも床の上。じかに座り気になるフォウと視線を合わせ込む。

 フォウ──これは失態しったいとばかりに琥珀色こはくいろの瞳を泳がす動揺どうよう
 目前に命さえ惜しくない男が此方を心配ありげにのぞき込むのだ。最早もはや正直に語ろうと決めた。

「あ、あの……る、ルイス…様」
「んっ……如何どうしたんだい

 フォウの声音が何時になく上擦うわずる──抑え切れない気恥ずかしさ。フォウがもどかしくすればする程、彼女がこよなく愛するルイスの愛しさがにじあふれた。

 言葉にならぬの切なさ。
 フォウは心底想い、心揺らぐのを止められない。
 マーダ様がルイス様に変わられて以来、とがった様子がなりを潜め少年の様なあどけなさが己の好意をさそい出すのだ。

 ギュッ。
 フォウ──いっそ開き直った覚悟を決め、ルイスの女性より清らかな白い手を握り力を込めた。

「る、ルイス様……で、

 真っ赤に染まった顔をそむけ、主語も説明まで足りぬフォウの告白。
 まるで要領ようりょうを得ないルイス増々ますます首をひねらせ関節が音を立てた朴念仁ぼくねんじん

 カーテンからこぼれた月灯りが照らす影。二人をひとつに重ね合わせた。蒼い月の方が余程フォウの揺れる気分を判ってくれた。

「ルイス様……貴方の子供が出来ました」

 月影がフォウに一欠片ひとかけらの勇気を与えてくれた。
 愛するルイスの手を取り自身の下腹にあてがい、紅色の顔を正面切って伝えた母性の成せる度胸どきょう。暗黒神──神の世継よつぎが出来た報告を如何どうにかこなせた。

 ようやくフォウの告白を飲み込めたルイスの喫驚きっきょう。半ば涙を浮かべたフォウの目を黙って見つめ、やがて彼女の手を握り返した。

「い、何時いつから? ま、間違いじゃないのかい?」

 流石に落ち着いていられぬルイスの驚く様。
 このまま接吻キスを交わしそうな程、フォウの赤らめた顔に自身の表情を存分寄せた。

「じ、実は……」

 フォウ・クワットロ──。
 実の処、2か月程前から体調の変遷へんせんぶりに気づきながらも切り出せずにいたのだ。

 ルイスが喜んでくれる自信が全くなかった。
 それに妊娠したとなれば戦えぬ自分は、ヴァロウズNo4の座を追われるかも知れない。だからこれ迄ひた隠しにしていた。

 ルイスが近頃フォウから女のなぐさみを受けてなかった真実理由。フォウの方が避けていたであった。

「フォウッ!」

 月灯りと照明がフォウの黒く長い髪の毛をきらめかせ、天使の輪授かった命創造想像するさせる。その頭を優しみ込め胸に抱いたルイスの感涙かんるい──むせび泣く。

 ──ルイス様が歓喜かんきしていらっしゃる!

 ルイスが喜びに打ち震える感覚──自ずと伝わったフォウも溜めた涙をこらえ切れず流して想い人へ注いだ。

「よ、喜んで下さるのですか……?」
「と、当然じゃないか! こ、こんなに嬉しい事はない!」

 ルイスの胸内、目線だけ上げ涙ながらに確認するフォウの自意識。
 愛するフォウへ感涙を無遠慮に降らせたルイス、涙混じりの返事を寄越よこした。

「フォウ……ぼ、僕の周りの人間達は皆。僕自身じゃなく僕の才能へ期待をだけだった。お、親さえも!」

 ハイデルベルク旧ドイツ領時代のルイス・ファルムーン──。
 立国して以来の若さで近衛騎士このえきしに任命され、将来を期待され続けた。同じ騎士の父ラムダは無論、弟ローダですら兄の非凡ひぼんぶりに諸手もろてを挙げ喜んだ。

 それがルイスに取って決して折れる訳にいかぬ抑圧よくあつと化していた。
 なれどこの女──フォウは違った。
 まさしく無償むしょうの愛を惜しみなくささげてくれた。

 初めの内は扉の鍵であるルシア・ロットレンに半ば見限みかぎられ行きずりの情欲を欲しがっただけかも知れない。
 だがこのフォウは、よろこびを直向ひたむきに与え続けてくれたのだ。自分とそんなフォウの間に子供が出来た。

 ──これを喜べないのなら……僕は一体何に嬉しさをいだけば良いのか判らないよ。

 扉の候補者──。
 鍵の存在──。

 そんな御託ごたくなぞ、すべからく捨てて構わない。二人で愛のカタチを心底欲する想いに駆られたルイス。
 愛、あふがれたフォウを抱き締め、ただひたすら涙に明け暮れるただの人間に衝動がルイスの乾いた心を突き動かした。
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