🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第76話『Come On, Rouse the Wild!!(目覚めろ野性)』 B Part

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 ロイド少年──。
 比較的おとなしめな性格。リイナ・アルベェラータの幼馴染おさななじみにして友達以上恋人未満の間柄あいだがら

 不幸にも早く両親を失って以来、心優しいジェリド小父おじさんとホーリィーン小母おばさんから手厚い世話を受けた。その為、ほぼ同い年のリイナとは友情より血縁に近しい繋がり。

 然しだから故、家族同然の枠組みを抜け出し、互いの恋愛へ進む頃合いをつかみ切れずにいた。

 加えてリイナは戦之女神エディウス神の司祭としての勉学を志しこころざしメキメキ頭角とうかくを現す。

 半ば置いて行かれたロイド──特段優れた才能など無きに等しい。
 だからと云って負い目を感じる事はないのだが、リイナの父親ジェリドは屈強くっきょうな騎士の出。母親ホーリィーンは正式でこそないが戦之女神エディウス神の司祭級。

 どうしても隠せぬ苛立いらだちに独り空っぽの中を立ち尽くし、実は両想いであるリイナの気分を知りながらも恋人への一歩を踏み切れなかった。

 やがてリイナ・アルベェラータの名は『森の天使』としてアドノス島全土に知れ渡り、ロイド少年の戸惑とまどいがより加速度を増してゆくあわれな現実。

 ほとんど同じ屋根の下で生活しながら『僕なんか……』余分な手の届かぬ哀愁あいしゅう

 だからリイナが父ジェリドと共にResistance民衆軍側が生き残りをけた漁村エドナへ引っ越す決意を告げた処で何も出来ず終い。黙って見送るだけに終わった。

 あこがれ抱くジェリド小父おじさんの様な体力が自分にはない。

 誰も居なくなった家の倉庫に残されたメイス親の形見。彼の両親は元・聖職者。刀剣を振るえぬ戒律かいりつの中、唯一赦された

 長さも小振りで武器の先端こそ打撃力を高める星型の重りが在るが、これなら誰の教えをわずとも日々の修練しゅうれんだけ欠かさなければ強さが得られた。

 メイスの重心移動をたくみにこなせれば扱う者の腕力を超えた攻勢が得られる。

 何より憧憬どうけい抱くジェリドとリイナに頼らず強さ高めたい密やかに強くなりたいロイド少年の意地と野心。その空回りな天秤バランス戦棍メイスに込めた。

 そしてついにロイド──。
 少年から男へ昇り詰めたい野心解き放つ好機チャンスが訪れる。

 機会を連れて来たのは金色こんじき流した耳長属ハイエルフ。加えてジェリドと同じ色合いの鎧をまとう身軽な男だ。二人共、風切る勢いを以てロイドの前に転がり込んだ。

 息切らしてロイド少年の目前にて足を止めた両者。いずれも身体中に木の葉や藪漕やぶこぎを強行し、枝にやられたに引っ掛けたおぼしき小傷を負っていた。 

 ロイドは馬を10頭連れ沿っていた。山から吹き下ろす風に茶髪を揺らしながらあどけなさ残る首をかしげげた。ジェリドから聞いていた話と違うのだ。

「ロイドです。ジェリドさんから云われた通り馬を御用意しました。──あの……御二人だけですか?」

 ロイドのもっともな疑問──『10騎の騎士が此処へ向かって来るからを調達してくれ』これでは折角用意した馬が余ってしまうのだ。

 ピクンッ。

 ロイドという名を聞いたベランドナ、長い耳が猫の様に反応し動いた。琥珀色こはくいろの視線をロイドの頭から足先迄流し尽くす。あからさまな興味が少年に降り注いだ。

「貴方がロイド君! 成程──リイナから聞いた通り…じゃなくて凛々りりしい少年です!」

 ベランドナが珍しく女性の顔色をのぞかせロイドの差し出した手を両手で握り、幾度いくども上下に振るわす昂ぶりハイテンション

 友人リイナが地元に残した彼氏を初めて出逢えた喜悦きえつ──迂闊うかつにも第一印象そのまま『可愛い』と言い掛けた台詞を飲み込んだ。

 ロイド、どう返すのが正解のなのか判らず大いに戸惑とまどう色を隠せなかった。日本人の男性が金髪ブロンド流した美女にからまれ何も成せぬ態度に似ていた。

「済まん。このなベランドナから『二人で充分』とそそのかされ、たった二人で山を降りてしまった。──ロイド君。隊長ジェリドから話は聞いている」

 騎士の礼儀──。
 年下の少年へ深々と頭を下げるファグナレンだが、ベランドナを悪者に仕立て上げ、立てた親指を指す巫山戯ふざけも忘れない。

 お高くとまった悠久の森人ハイエルフがとても緩んだ笑顔をロイドへ手向たむけた態度が実に面白かったのである。

 驚きと困惑こんわくの色がにじみ出るロイドの表情。
 たった二人で敵の包囲網を潜り抜けたこの両者。戦は素人しろうとなロイドでさえ、途方とほうもない実力者だと知れた。

 されど折角せっかく連れて来た騎馬を2頭だけ渡し自分はディオルへ帰宅の途につかねばならぬのか。
 但しファグナレンが吐いた言葉『隊長から聞いている』には俄然がぜん興味がいた。

 森の臭気が濃いドリュエル達が多大な山中を強行したジェリド隊は徒歩行軍。

 だから山を降った処で騎馬を借り受ける為、事前から地元のラファンへ伝えておいたのだ。ジェリドも、よもやあのロイドがその役目をになっているのは恐らく知らぬ。

 当然なのだ──。
 この役目をかって出たのが誰でもないロイド当人。

 焦がれたリイナからこれ以上置いて行かれるのは男子として容認し難く、どんな形でも自身を絡ませ世界へ飛び出し鬱屈うっくつからのがれたかった。

「ぼ、僕も……」

 うつむきながらも握った拳へ振り絞る勇気を込めたロイドの決心。馬は余っている。このままただの運び屋のみで終われば未練みれんが必ず残る。

「ん?」
「……?」

 ベランドナとファグナレン、声ふるわすロイド少年の言葉を待った。

「僕も敵地へ同行するのをどうか赦して下さい! 決して足手まといにはなりません!」

 ガバッと頭を下げたロイドの茶髪がれ下がる。次はベランドナとファグナレンの両者が困る判断を問われる番が訪れた。

 ロイドの仕草──認めてくれる迄、馬は貸さない。何より自分は此処から一歩たりとも動くつもりがない。そんな決意みなぎる感覚がおびただしくただって来た。

 ロイドが背負った二本両親分のメイスをベランドナが見つめる。
 線こそ細いが重いメイスを背負ってもからだを起こせる体幹たいかんと、何より意固地いこじな態度に思わずほくそ笑む。

 ベランドナ、──。
 親友リイナが彼へ好意を寄せたのは、ただ可愛くて護りたいだけではない。

 ロイドの全身から意地の修練を積み重ねたたくましさ。さらにリイナに対する愚直ぐちょくな迄の愛情が伝わり、自分も彼と性別を越えた友情を成せそうな気持ち良さを感じ取る。

 ファグナレンが「、先ずは頭を挙げてくれ。これでは会話も出来ない」君付けを止めた男扱いにて願い出る。流石あのジェリドが認めた男子娘との交際を認めた男だと見つめ直した。

 人生の先輩に云われるがまま身体を起こしたロイドの真っ直ぐな目線。二人をとらえ決して離さない。

 好きな女の子リイナから認められたい……それだけではない剛毅ごうきを見た大人二人。苦笑しつつも心地良さが胸に染み入る。

 ポンッ。

「判った──だが絶対生き残れよ。どんなにみじめな形でもだ。それだけは約束しろ」

 若さあふれるロイドの肩を叩き激励げきれい込めたファグナレンなのだが余計な行為と存分知れた。

「はいッ!」

 ベランドナが扱う激励の術式『戦乙女ヴァルキュリア』より余程効いた空気震わす錯覚返答むし此方大人達が勇気を分け与えられた。
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