163 / 171
第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第76話『Come On, Rouse the Wild!!(目覚めろ野性)』 B Part
しおりを挟む
ロイド少年──。
比較的おとなしめな性格。リイナ・アルベェラータの幼馴染にして友達以上恋人未満の間柄。
不幸にも早く両親を失って以来、心優しいジェリド小父さんとホーリィーン小母さんから手厚い世話を受けた。その為、ほぼ同い年のリイナとは友情より血縁に近しい繋がり。
然しだから故、家族同然の枠組みを抜け出し、互いの恋愛へ進む頃合いを掴み切れずにいた。
加えてリイナは戦之女神の司祭としての勉学を志しメキメキ頭角を現す。
半ば置いて行かれたロイド──特段優れた才能など無きに等しい。
だからと云って負い目を感じる事はないのだが、リイナの父親ジェリドは屈強な騎士の出。母親ホーリィーンは正式でこそないが戦之女神の司祭級。
どうしても隠せぬ苛立ちに独り空っぽの中を立ち尽くし、実は両想いであるリイナの気分を知りながらも恋人への一歩を踏み切れなかった。
やがてリイナ・アルベェラータの名は『森の天使』としてアドノス島全土に知れ渡り、ロイド少年の戸惑いがより加速度を増してゆく憐れな現実。
殆ど同じ屋根の下で生活しながら『僕なんか……』余分な手の届かぬ哀愁。
だからリイナが父ジェリドと共にResistanceが生き残りを賭けた漁村エドナへ引っ越す決意を告げた処で何も出来ず終い。黙って見送るだけに終わった。
憧れ抱くジェリド小父さんの様な体力が自分にはない。
誰も居なくなった家の倉庫に残されたメイス。彼の両親は元・聖職者。刀剣を振るえぬ戒律の中、唯一赦された鈍器。
長さも小振りで武器の先端こそ打撃力を高める星型の重りが在るが、これなら誰の教えを請わずとも日々の修練だけ欠かさなければ強さが得られた。
メイスの重心移動を巧みに熟せれば扱う者の腕力を超えた攻勢が得られる。
何より憧憬抱くジェリドとリイナに頼らず強さ高めたいロイド少年の意地と野心。その空回りな天秤を戦棍に込めた。
そして遂にロイド──。
少年から男へ昇り詰めたい野心解き放つ好機が訪れる。
機会を連れて来たのは金色流した耳長属。加えてジェリドと同じ色合いの鎧を纏う身軽な男だ。二人共、風切る勢いを以てロイドの前に転がり込んだ。
息切らしてロイド少年の目前にて足を止めた両者。いずれも身体中に木の葉や藪漕ぎを強行し、枝にやられたと思しき小傷を負っていた。
ロイドは馬を10頭連れ沿っていた。山から吹き下ろす風に茶髪を揺らしながらあどけなさ残る首を傾げた。ジェリドから聞いていた話と違うのだ。
「ロイドです。ジェリドさんから云われた通り馬を御用意しました。──あの……御二人だけですか?」
ロイドの尤もな疑問──『10騎の騎士が此処へ向かって来るから足を調達してくれ』これでは折角用意した馬が余ってしまうのだ。
ピクンッ。
ロイドという名を聞いたベランドナ、長い耳が猫の様に反応し動いた。琥珀色の視線をロイドの頭から足先迄流し尽くす。あからさまな興味が少年に降り注いだ。
「貴方がロイド君! 成程──リイナから聞いた通りかわ…じゃなくて凛々しい少年です!」
ベランドナが珍しく女性の顔色を覗かせロイドの差し出した手を両手で握り、幾度も上下に振るわす昂ぶり。
友人リイナが地元に残した彼氏を初めて出逢えた喜悦──迂闊にも第一印象そのまま『可愛い』と言い掛けた台詞を飲み込んだ。
ロイド、どう返すのが正解のなのか判らず大いに戸惑う色を隠せなかった。日本人の男性が金髪流した美女に絡まれ何も成せぬ態度に似ていた。
「済まん。このおてんばなベランドナ嬢から『二人で充分』と唆かされ、たった二人で山を降りてしまった。──ロイド君。隊長から話は聞いている」
騎士の礼儀──。
年下の少年へ深々と頭を下げるファグナレンだが、ベランドナを悪者に仕立て上げ、立てた親指を指す巫山戯も忘れない。
お高くとまった悠久の森人がとても緩んだ笑顔をロイドへ手向けた態度が実に面白かったのである。
驚きと困惑の色が滲み出るロイドの表情。
たった二人で敵の包囲網を潜り抜けたこの両者。戦は素人なロイドでさえ、途方もない実力者だと知れた。
されど折角連れて来た騎馬を2頭だけ渡し自分はディオルへ帰宅の途につかねばならぬのか。
但しファグナレンが吐いた言葉『隊長から聞いている』には俄然興味が沸いた。
森の臭気が濃い山中を強行したジェリド隊は徒歩行軍。
だから山を降った処で騎馬を借り受ける為、事前から地元のラファンへ伝えておいたのだ。ジェリドも、よもやあのロイドがその役目を担っているのは恐らく知らぬ。
当然なのだ──。
この役目をかって出たのが誰でもないロイド当人。
焦がれたリイナからこれ以上置いて行かれるのは男子として容認し難く、どんな形でも自身を絡ませ世界へ飛び出し鬱屈から逃れたかった。
「ぼ、僕も……」
俯きながらも握った拳へ振り絞る勇気を込めたロイドの決心。馬は余っている。このままただの運び屋のみで終われば未練が必ず残る。
「ん?」
「……?」
ベランドナとファグナレン、声震わすロイド少年の言葉を待った。
「僕も敵地へ同行するのをどうか赦して下さい! 決して足手纏いにはなりません!」
ガバッと頭を下げたロイドの茶髪が垂れ下がる。次はベランドナとファグナレンの両者が困る判断を問われる番が訪れた。
ロイドの仕草──認めてくれる迄、馬は貸さない。何より自分は此処から一歩たりとも動くつもりがない。そんな決意漲る感覚が夥しく漂って来た。
ロイドが背負った二本のメイスをベランドナが見つめる。
線こそ細いが重いメイスを背負っても躰を起こせる体幹と、何より意固地な態度に思わずほくそ笑む。
ベランドナ、惚れ直す──。
親友リイナが彼へ好意を寄せたのは、ただ可愛くて護りたいだけではない。
ロイドの全身から意地の修練を積み重ねた逞しさ。さらにリイナに対する愚直な迄の愛情が伝わり、自分も彼と性別を越えた友情を成せそうな気持ち良さを感じ取る。
ファグナレンが「ロイド、先ずは頭を挙げてくれ。これでは会話も出来ない」君付けを止めた男扱いにて願い出る。流石あのジェリドが認めた男子だと見つめ直した。
人生の先輩に云われるがまま身体を起こしたロイドの真っ直ぐな目線。二人を捉え決して離さない。
好きな女の子から認められたい……それだけではない剛毅を見た大人二人。苦笑しつつも心地良さが胸に染み入る。
ポンッ。
「判った──だが絶対生き残れよ。どんなに惨めな形でもだ。それだけは約束しろ」
若さ溢れるロイドの肩を叩き激励込めたファグナレンなのだが余計な行為と存分知れた。
「はいッ!」
ベランドナが扱う激励の術式『戦乙女』より余程効いた空気震わす錯覚。寧ろ此方が勇気を分け与えられた。
比較的おとなしめな性格。リイナ・アルベェラータの幼馴染にして友達以上恋人未満の間柄。
不幸にも早く両親を失って以来、心優しいジェリド小父さんとホーリィーン小母さんから手厚い世話を受けた。その為、ほぼ同い年のリイナとは友情より血縁に近しい繋がり。
然しだから故、家族同然の枠組みを抜け出し、互いの恋愛へ進む頃合いを掴み切れずにいた。
加えてリイナは戦之女神の司祭としての勉学を志しメキメキ頭角を現す。
半ば置いて行かれたロイド──特段優れた才能など無きに等しい。
だからと云って負い目を感じる事はないのだが、リイナの父親ジェリドは屈強な騎士の出。母親ホーリィーンは正式でこそないが戦之女神の司祭級。
どうしても隠せぬ苛立ちに独り空っぽの中を立ち尽くし、実は両想いであるリイナの気分を知りながらも恋人への一歩を踏み切れなかった。
やがてリイナ・アルベェラータの名は『森の天使』としてアドノス島全土に知れ渡り、ロイド少年の戸惑いがより加速度を増してゆく憐れな現実。
殆ど同じ屋根の下で生活しながら『僕なんか……』余分な手の届かぬ哀愁。
だからリイナが父ジェリドと共にResistanceが生き残りを賭けた漁村エドナへ引っ越す決意を告げた処で何も出来ず終い。黙って見送るだけに終わった。
憧れ抱くジェリド小父さんの様な体力が自分にはない。
誰も居なくなった家の倉庫に残されたメイス。彼の両親は元・聖職者。刀剣を振るえぬ戒律の中、唯一赦された鈍器。
長さも小振りで武器の先端こそ打撃力を高める星型の重りが在るが、これなら誰の教えを請わずとも日々の修練だけ欠かさなければ強さが得られた。
メイスの重心移動を巧みに熟せれば扱う者の腕力を超えた攻勢が得られる。
何より憧憬抱くジェリドとリイナに頼らず強さ高めたいロイド少年の意地と野心。その空回りな天秤を戦棍に込めた。
そして遂にロイド──。
少年から男へ昇り詰めたい野心解き放つ好機が訪れる。
機会を連れて来たのは金色流した耳長属。加えてジェリドと同じ色合いの鎧を纏う身軽な男だ。二人共、風切る勢いを以てロイドの前に転がり込んだ。
息切らしてロイド少年の目前にて足を止めた両者。いずれも身体中に木の葉や藪漕ぎを強行し、枝にやられたと思しき小傷を負っていた。
ロイドは馬を10頭連れ沿っていた。山から吹き下ろす風に茶髪を揺らしながらあどけなさ残る首を傾げた。ジェリドから聞いていた話と違うのだ。
「ロイドです。ジェリドさんから云われた通り馬を御用意しました。──あの……御二人だけですか?」
ロイドの尤もな疑問──『10騎の騎士が此処へ向かって来るから足を調達してくれ』これでは折角用意した馬が余ってしまうのだ。
ピクンッ。
ロイドという名を聞いたベランドナ、長い耳が猫の様に反応し動いた。琥珀色の視線をロイドの頭から足先迄流し尽くす。あからさまな興味が少年に降り注いだ。
「貴方がロイド君! 成程──リイナから聞いた通りかわ…じゃなくて凛々しい少年です!」
ベランドナが珍しく女性の顔色を覗かせロイドの差し出した手を両手で握り、幾度も上下に振るわす昂ぶり。
友人リイナが地元に残した彼氏を初めて出逢えた喜悦──迂闊にも第一印象そのまま『可愛い』と言い掛けた台詞を飲み込んだ。
ロイド、どう返すのが正解のなのか判らず大いに戸惑う色を隠せなかった。日本人の男性が金髪流した美女に絡まれ何も成せぬ態度に似ていた。
「済まん。このおてんばなベランドナ嬢から『二人で充分』と唆かされ、たった二人で山を降りてしまった。──ロイド君。隊長から話は聞いている」
騎士の礼儀──。
年下の少年へ深々と頭を下げるファグナレンだが、ベランドナを悪者に仕立て上げ、立てた親指を指す巫山戯も忘れない。
お高くとまった悠久の森人がとても緩んだ笑顔をロイドへ手向けた態度が実に面白かったのである。
驚きと困惑の色が滲み出るロイドの表情。
たった二人で敵の包囲網を潜り抜けたこの両者。戦は素人なロイドでさえ、途方もない実力者だと知れた。
されど折角連れて来た騎馬を2頭だけ渡し自分はディオルへ帰宅の途につかねばならぬのか。
但しファグナレンが吐いた言葉『隊長から聞いている』には俄然興味が沸いた。
森の臭気が濃い山中を強行したジェリド隊は徒歩行軍。
だから山を降った処で騎馬を借り受ける為、事前から地元のラファンへ伝えておいたのだ。ジェリドも、よもやあのロイドがその役目を担っているのは恐らく知らぬ。
当然なのだ──。
この役目をかって出たのが誰でもないロイド当人。
焦がれたリイナからこれ以上置いて行かれるのは男子として容認し難く、どんな形でも自身を絡ませ世界へ飛び出し鬱屈から逃れたかった。
「ぼ、僕も……」
俯きながらも握った拳へ振り絞る勇気を込めたロイドの決心。馬は余っている。このままただの運び屋のみで終われば未練が必ず残る。
「ん?」
「……?」
ベランドナとファグナレン、声震わすロイド少年の言葉を待った。
「僕も敵地へ同行するのをどうか赦して下さい! 決して足手纏いにはなりません!」
ガバッと頭を下げたロイドの茶髪が垂れ下がる。次はベランドナとファグナレンの両者が困る判断を問われる番が訪れた。
ロイドの仕草──認めてくれる迄、馬は貸さない。何より自分は此処から一歩たりとも動くつもりがない。そんな決意漲る感覚が夥しく漂って来た。
ロイドが背負った二本のメイスをベランドナが見つめる。
線こそ細いが重いメイスを背負っても躰を起こせる体幹と、何より意固地な態度に思わずほくそ笑む。
ベランドナ、惚れ直す──。
親友リイナが彼へ好意を寄せたのは、ただ可愛くて護りたいだけではない。
ロイドの全身から意地の修練を積み重ねた逞しさ。さらにリイナに対する愚直な迄の愛情が伝わり、自分も彼と性別を越えた友情を成せそうな気持ち良さを感じ取る。
ファグナレンが「ロイド、先ずは頭を挙げてくれ。これでは会話も出来ない」君付けを止めた男扱いにて願い出る。流石あのジェリドが認めた男子だと見つめ直した。
人生の先輩に云われるがまま身体を起こしたロイドの真っ直ぐな目線。二人を捉え決して離さない。
好きな女の子から認められたい……それだけではない剛毅を見た大人二人。苦笑しつつも心地良さが胸に染み入る。
ポンッ。
「判った──だが絶対生き残れよ。どんなに惨めな形でもだ。それだけは約束しろ」
若さ溢れるロイドの肩を叩き激励込めたファグナレンなのだが余計な行為と存分知れた。
「はいッ!」
ベランドナが扱う激励の術式『戦乙女』より余程効いた空気震わす錯覚。寧ろ此方が勇気を分け与えられた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる