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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第77話『Phantom Outline(幻の輪郭)』 A Part
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ラファンの山林に潜む敵勢力をたった二人だけで切り抜けた猛者。悠久の森人ベランドナと元・フォルデノ王国短剣の達人ファグナレン。
山を駆け下りた先に待って居たのはリイナ・アルベェラータの幼馴染ロイドと彼が連れた騎馬であった。
森の臭気濃過ぎるラファンの山林真っ只中を抜けるのは森の美女達に気取られ精気を吸われる可能性大。
されど下山出来れば敵地の砦までなだらかな丘陵地帯を行ける抜け道が在る。
何より徒歩だけでは余りに距離があり過ぎた。だからロイドに依頼し馬を用意させたジェリド・アルベェラータ総司令。
「──ただでさえ少ない10騎が僕を含めても3騎。これだけで本当に大丈夫なのですか?」
少年ロイドから至極尤もな質問が大人達へ飛ぶ。
第一ジェリド隊が例え少数とはいえ約100騎程の軍だと事前に聞いた。10騎ですら正直心許ない。
「それが何故か問題ないようだ。何ならこのベランドナ嬢独りでもな」
半ば呆れた態度を以てロイドに応じたファグナレンの軽口。投擲用のナイフ、残り数を確認しつつ己の騎馬を最後尾に着けて行く。
「え……」
驚き慄くロイド──先頭に於いて風切る金髪を流すハイエルフを見やるのだ。
美しさ際立つ女性の何処にそんな力を潜ませてるのか皆目見当もつかなかった。
ベランドナはまるで気にする仕草みせぬまま黙々と馬を走らせるだけ。丘陵地帯といえど樹々が生い茂る道無き道を強行するのに変わりはなかった。
地元ラファン出身のロイドさえ知らぬ道を全く迷う様子を滲ませずに駆ける。気を抜けば置いてゆかれるのは寧ろ自分の方だと思えた。
実の処ベランドナ当人も初めての道筋。
けれども風や森の精霊達へ行き先を尋ねながら突き進む。彼女的には当たり前の手順に過ぎなかった。
真ん中に力危ういロイドを置き、殿には戦力的に申し分ないファグナレンを付けた静寂の進軍。
ベランドナの本音──。
背中を預けられる者が独り居れば良かった。10騎もの隊列を連れ山林を抜けるのは、かえって邪魔に思えたのだ。
ファグナレンは思いの外、ベランドナの期待に存分応えてくれていた。そして旅の連れ添いに加わった可愛いロイド少年。
ただの任務であった旅に花咲く甘美な経緯を感じたベランドナの心は戦にも関わらず穏やかに流れていた。
◇◇
一方ラファン山中に設けられた敵の石塁を相手取り奮闘していたジェリド隊の面々。
挟撃が成せる幸運に恵まれ勝利を決めるかに思えたが敵軍も決死の覚悟で立て直しを図る。
やはり一騎同士の実力差だけなら向こうが一枚上手。武器を交える度、腕に痺れが走り抜けるジェリド隊。
また一騎当千の実力者であるベランドナとファグナレンの抜けた穴は多大。
ジェリド隊長御自ら巨大な斧を振るい続ける先発を退く訳にはゆかぬジリ貧に落ちゆく。
ジェリド・アルベェラータ──二人が抜けた穴を埋める秘策のアテは果たしてあるのか。
──それにしても死兵であった筈のこの者達の強靭ぶりは一体なんだ?
元々味方であった連中を寡黙に枝葉でも刈る仕草を以て斬り倒し続けた顔には決して浮かべぬジェリドの憂鬱。
黒騎士マーダがフォルデノ王国を強襲した折、逃げ遅れた王国の兵士達は無念の戦死を遂げたと聞いた。
然し今時分──ジェリド達の進軍を邪魔する彼等は紛う事なき死んだと聞いた連中なのだ。
それも黄泉へ行けず地上を彷徨い歩く不死の類に非ず。着実に息した人間達。
屍を晒した筈の同僚を再び黄泉送りにせねばならぬ底辺。
森の臭気が成した幻想であって欲しい至極残念な願い。
揃いの白き鎧が襲い掛かるのを仕方なく狩り続け、やるせない気分から失われつつある騎士の品格。
さりとて騎士の矜恃まで捨てた様子は微塵も見せぬ偉丈夫なジェリドの態度。
先日愛娘のリイナが不死鳥の力を借り受けヴァロウズのNo6鬼女のセインと繰り広げた死闘。
太陽から立ち昇るプロミネンスの揺らぎ思わす巧みな動きでセインからの攻撃を躱し自らの反撃を加える進化を遂げた一戦。
父ジェリドは見た目の揺らぎを全く見せぬ動かざること山の如し。森の民ラファン出身の意地を体現。
やはり父は偉大──仁王の如き絶大ぶりを味方へ示し無言の鼓舞をし続ける。
──ムッ?
そんな生きた塁壁ジェリドが突如みせた変遷。
敵が出て来るであろう石塁の入口付近をに巨大な斧の先にある矛先を以て派手に幾度も突き相手へ泥を浴びせた後、踵を返した。
味方のジェリド隊とて同様の動き、折角攻め立てた兵を自ら退かせた。
攻め込んでいた相手が下がれば我先征かんと攻守交代が始まる結実。返す波の様な敵側の攻勢を呼び込む。
ジェリド隊長が掘り起こした地面に足を捉われながらも勝気に焦るカーヴァリアレの息が掛かった敵軍。
ドスッ! グサッグサッ!
山側へ逃げた形のジェリド隊を攻め滅ぼさんと塁を飛び出した敵兵力。
何故か背後から投槍や弓矢の不意打ちをまともに喰らい、ドミノの様に倒れ始めた。
──よく来てくれた山の仲間達よ。
ジェリド、中年の顔を綻ばせた。石塁へ潜んだ敵には見えぬ狼煙が上がったのを見つけたのだ。
山の麓側から姿潜ませジワリと押し寄せていたディオルに住むジェリドを慕う屈強な山男の一陣であった。
木こりの斧、鉈、熊や猪を狩る為の槍など手に握る得物が点でバラバラな漢達。
されどジェリドはこれ以上なき援軍を得た気分。鬱屈した思いが漸く晴れ渡る隆盛へ転じた。
自然を相手に躰を鍛え上げた頼り甲斐ある地元の味方が敵軍を背後から突く。
そして再び山側から攻め手に戻り征くジェリド隊。真実の挟撃が今此処に成す。
ジェリド達を邪魔する連中の終焉は今度こそ時間の問題。
白き鎧を着る者達の虚しき同士討ち──山岳を覆い隠す霧の様な夢幻に変わり消え失せる手前と化した。
山を駆け下りた先に待って居たのはリイナ・アルベェラータの幼馴染ロイドと彼が連れた騎馬であった。
森の臭気濃過ぎるラファンの山林真っ只中を抜けるのは森の美女達に気取られ精気を吸われる可能性大。
されど下山出来れば敵地の砦までなだらかな丘陵地帯を行ける抜け道が在る。
何より徒歩だけでは余りに距離があり過ぎた。だからロイドに依頼し馬を用意させたジェリド・アルベェラータ総司令。
「──ただでさえ少ない10騎が僕を含めても3騎。これだけで本当に大丈夫なのですか?」
少年ロイドから至極尤もな質問が大人達へ飛ぶ。
第一ジェリド隊が例え少数とはいえ約100騎程の軍だと事前に聞いた。10騎ですら正直心許ない。
「それが何故か問題ないようだ。何ならこのベランドナ嬢独りでもな」
半ば呆れた態度を以てロイドに応じたファグナレンの軽口。投擲用のナイフ、残り数を確認しつつ己の騎馬を最後尾に着けて行く。
「え……」
驚き慄くロイド──先頭に於いて風切る金髪を流すハイエルフを見やるのだ。
美しさ際立つ女性の何処にそんな力を潜ませてるのか皆目見当もつかなかった。
ベランドナはまるで気にする仕草みせぬまま黙々と馬を走らせるだけ。丘陵地帯といえど樹々が生い茂る道無き道を強行するのに変わりはなかった。
地元ラファン出身のロイドさえ知らぬ道を全く迷う様子を滲ませずに駆ける。気を抜けば置いてゆかれるのは寧ろ自分の方だと思えた。
実の処ベランドナ当人も初めての道筋。
けれども風や森の精霊達へ行き先を尋ねながら突き進む。彼女的には当たり前の手順に過ぎなかった。
真ん中に力危ういロイドを置き、殿には戦力的に申し分ないファグナレンを付けた静寂の進軍。
ベランドナの本音──。
背中を預けられる者が独り居れば良かった。10騎もの隊列を連れ山林を抜けるのは、かえって邪魔に思えたのだ。
ファグナレンは思いの外、ベランドナの期待に存分応えてくれていた。そして旅の連れ添いに加わった可愛いロイド少年。
ただの任務であった旅に花咲く甘美な経緯を感じたベランドナの心は戦にも関わらず穏やかに流れていた。
◇◇
一方ラファン山中に設けられた敵の石塁を相手取り奮闘していたジェリド隊の面々。
挟撃が成せる幸運に恵まれ勝利を決めるかに思えたが敵軍も決死の覚悟で立て直しを図る。
やはり一騎同士の実力差だけなら向こうが一枚上手。武器を交える度、腕に痺れが走り抜けるジェリド隊。
また一騎当千の実力者であるベランドナとファグナレンの抜けた穴は多大。
ジェリド隊長御自ら巨大な斧を振るい続ける先発を退く訳にはゆかぬジリ貧に落ちゆく。
ジェリド・アルベェラータ──二人が抜けた穴を埋める秘策のアテは果たしてあるのか。
──それにしても死兵であった筈のこの者達の強靭ぶりは一体なんだ?
元々味方であった連中を寡黙に枝葉でも刈る仕草を以て斬り倒し続けた顔には決して浮かべぬジェリドの憂鬱。
黒騎士マーダがフォルデノ王国を強襲した折、逃げ遅れた王国の兵士達は無念の戦死を遂げたと聞いた。
然し今時分──ジェリド達の進軍を邪魔する彼等は紛う事なき死んだと聞いた連中なのだ。
それも黄泉へ行けず地上を彷徨い歩く不死の類に非ず。着実に息した人間達。
屍を晒した筈の同僚を再び黄泉送りにせねばならぬ底辺。
森の臭気が成した幻想であって欲しい至極残念な願い。
揃いの白き鎧が襲い掛かるのを仕方なく狩り続け、やるせない気分から失われつつある騎士の品格。
さりとて騎士の矜恃まで捨てた様子は微塵も見せぬ偉丈夫なジェリドの態度。
先日愛娘のリイナが不死鳥の力を借り受けヴァロウズのNo6鬼女のセインと繰り広げた死闘。
太陽から立ち昇るプロミネンスの揺らぎ思わす巧みな動きでセインからの攻撃を躱し自らの反撃を加える進化を遂げた一戦。
父ジェリドは見た目の揺らぎを全く見せぬ動かざること山の如し。森の民ラファン出身の意地を体現。
やはり父は偉大──仁王の如き絶大ぶりを味方へ示し無言の鼓舞をし続ける。
──ムッ?
そんな生きた塁壁ジェリドが突如みせた変遷。
敵が出て来るであろう石塁の入口付近をに巨大な斧の先にある矛先を以て派手に幾度も突き相手へ泥を浴びせた後、踵を返した。
味方のジェリド隊とて同様の動き、折角攻め立てた兵を自ら退かせた。
攻め込んでいた相手が下がれば我先征かんと攻守交代が始まる結実。返す波の様な敵側の攻勢を呼び込む。
ジェリド隊長が掘り起こした地面に足を捉われながらも勝気に焦るカーヴァリアレの息が掛かった敵軍。
ドスッ! グサッグサッ!
山側へ逃げた形のジェリド隊を攻め滅ぼさんと塁を飛び出した敵兵力。
何故か背後から投槍や弓矢の不意打ちをまともに喰らい、ドミノの様に倒れ始めた。
──よく来てくれた山の仲間達よ。
ジェリド、中年の顔を綻ばせた。石塁へ潜んだ敵には見えぬ狼煙が上がったのを見つけたのだ。
山の麓側から姿潜ませジワリと押し寄せていたディオルに住むジェリドを慕う屈強な山男の一陣であった。
木こりの斧、鉈、熊や猪を狩る為の槍など手に握る得物が点でバラバラな漢達。
されどジェリドはこれ以上なき援軍を得た気分。鬱屈した思いが漸く晴れ渡る隆盛へ転じた。
自然を相手に躰を鍛え上げた頼り甲斐ある地元の味方が敵軍を背後から突く。
そして再び山側から攻め手に戻り征くジェリド隊。真実の挟撃が今此処に成す。
ジェリド達を邪魔する連中の終焉は今度こそ時間の問題。
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