🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第77話『Phantom Outline(幻の輪郭)』 A Part

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 ラファンの山林に潜む敵勢力をたった二人だけで切り抜けた猛者もさ悠久の森人ハイエルフベランドナと元・フォルデノ王国短剣ダガーの達人ファグナレン。

 山を駆け下りた先に待って居たのはリイナ・アルベェラータの幼馴染おさななじみロイドと彼が連れた騎馬であった。

 森の臭気濃過ぎるラファンの山林真っ只中ただなかを抜けるのは森の美女達ドリュエル気取けどられ精気を吸われる可能性大。

 されど下山出来れば敵地の砦までなだらかな丘陵きゅうりょう地帯を行ける抜け道が在る。

 何より徒歩だけでは余りに距離があり過ぎた。だからロイドに依頼し馬を用意させたジェリド・アルベェラータ総司令。

「──ただでさえ少ない10騎が僕を含めても3騎。これだけで本当に大丈夫なのですか?」

 少年ロイドから至極しごくもっともな質問が大人達へ飛ぶ。
 第一ジェリド隊が例え少数とはいえ約100騎程の軍だと事前に聞いた。10騎ですら正直心もとない。

「それが何故か問題ないようだ。何ならこのベランドナじょう独りでもな」

 半ばあきれた態度を以てロイドに応じたファグナレンの軽口。投擲とうてき用のナイフ、残り数を確認しつつ己の騎馬を最後尾に着けて行く。

「え……」

 驚きおののくロイド──先頭に於いて風切る金髪を流すハイエルフベランドナを見やるのだ。
 美しさ際立きわだつ女性の何処にそんな力を潜ませてるのか皆目かいもく見当もつかなかった。

 ベランドナはまるで気にする仕草みせぬまま黙々もくもくと馬を走らせるだけ。丘陵地帯といえど樹々が生い茂る道無き道を強行するのに変わりはなかった。

 地元ラファン出身のロイドさえ知らぬ道を全く迷う様子をにじませずに駆ける。気を抜けば置いてゆかれるのはむしろ自分の方だと思えた。

 実の処ベランドナ当人も初めての道筋。
 けれども風や森の精霊達へ行き先をたずねながら突き進む。彼女的には当たり前の手順に過ぎなかった。

 真ん中に力危ういロイドを置き、殿しんがりには戦力的に申し分ないファグナレンを付けた静寂せいじゃくの進軍。

 ベランドナの本音──。
 背中をあずけられる者が独り居れば良かった。10騎もの隊列雑兵を連れ山林を抜けるのは、かえって邪魔に思えたのだ。

 ファグナレンは思いの外、ベランドナの期待に存分応えてくれていた。そして旅の連れ添いに加わった可愛いロイド少年。

 ただの任務仕事であった旅に花咲く甘美かんび経緯いきさつを感じたベランドナの心は戦にも関わらずおだやかに流れていた。

 ◇◇

 一方ラファン山中に設けられた敵の石塁せきるいを相手取り奮闘ふんとうしていたジェリド隊の面々。

 挟撃きょうげきが成せる幸運にめぐまれ勝利を決めるかに思えたが敵軍も決死の覚悟で立て直しをはかる。

 やはり一騎同士の実力差だけなら向こうが一枚上手。武器をまじえる度、腕にしびれが走り抜けるジェリド隊。 
 また一騎当千いっきとうせんの実力者であるベランドナとファグナレンの抜けた穴は多大。

 ジェリド隊長御自おんみずか巨大な斧バトルアックスを振るい続ける先発を退く訳にはゆかぬジリ貧に落ちゆく。
 ジェリド・アルベェラータ──二人が抜けた穴を埋める秘策のアテは果たしてあるのか。

 ──それにしても死兵であった筈のこの者達の強靭狂人ぶりは一体なんだ?

 元々味方であった連中を寡黙かもくに枝葉でも仕草を以て斬り倒し続けた顔には決して浮かべぬジェリドの憂鬱ゆううつ

 黒騎士マーダがフォルデノ王国を強襲きょうしゅうしたおり、逃げ遅れた王国元味方の兵士達は無念の戦死をげたと聞いた。

 然し今時分じぶん──ジェリド達の進軍を邪魔する彼等はまごう事なき死んだと聞いた連中なのだ。

 それも黄泉よみへ行けず地上を彷徨さまよい歩く不死アンデッドたぐいあらず。着実に息した人間達。

 しかばねさらした筈の同僚どうりょうを再び黄泉送りにせねばならぬ底辺返り血

 森の臭気が成した幻想Mirageであって欲しい至極しごく残念な願い。

 そろいの白き鎧が襲い掛かるのを仕方なく狩り続け、やるせない気分から失われつつある騎士の品格。

 さりとて騎士の矜恃きょうじまで捨てた様子は微塵みじんも見せぬ偉丈夫いじょうぶなジェリドの態度。
 先日愛娘まなむすめのリイナが不死鳥フェニックスの力を借り受けヴァロウズのNo6鬼女オーグリスのセインと繰り広げた死闘。

 太陽から立ち昇るプロミネンスの揺らぎ思わすたくみな動きでセインからの攻撃をかわし自らの反撃を加える進化をげた一戦。

 父ジェリドは見た目の揺らぎを全く見せぬ動かざること山のごとし。森の民ラファン出身の意地を体現たいげん
 やはり父は偉大いだい──仁王におうの如き絶大ぶりを味方へ示し無言の鼓舞こぶをし続ける。

 ──ムッ?

 そんなジェリドが突如とつじょみせた変遷へんせん
 敵が出て来るであろう石塁せきるいの入口付近をに巨大な斧バトルアクスの先にある矛先ほこさきを以て派手に幾度いくども突き相手へ泥を浴びせた後、きびすを返した。

 味方のジェリド隊とて同様の動き、折角せっかく攻め立てた兵を自ら退かせた。
 攻め込んでいた相手が下がれば我先かんと攻守交代が始まる結実。返す波の様な敵側の攻勢を呼び込む。

 ジェリド隊長が掘り起こした地面に足をとらわれながらも勝気にあせるカーヴァリアレの息が掛かった敵軍。

 ドスッ! グサッグサッ!

 山側へ逃げた形のジェリド隊を攻め滅ぼさんと塁を飛び出した敵兵力。
 何故か背後から投槍ジャベリンや弓矢の不意打ちをまともに喰らい、ドミノの様に倒れ始めた。

 ──よく来てくれた山の仲間達よ。

 ジェリド、中年の顔をほころばせた。石塁へ潜んだ敵には見えぬ狼煙合図が上がったのを見つけたのだ。
 山のふもと側から姿潜ませジワリと押し寄せていたディオルに住むジェリドをした屈強くっきょうな山男の一陣であった。

 木こりの斧、なた、熊やイノシシを狩る為の槍など手に握る得物武器が点でバラバラな漢達。
 されどジェリドはこれ以上なき援軍えんぐんを得た気分。鬱屈うっくつした思いがようやく晴れ渡る隆盛りゅうせいへ転じた。

 自然を相手にからだきたえ上げた頼り甲斐がいある地元の味方が敵軍を背後から突く。

 そして再び山側から攻め手に戻りジェリド隊。真実の挟撃きょうげきが今此処に成す。

 ジェリド達を邪魔する連中の終焉しゅうえんは今度こそ時間の問題。
 白き同じ鎧を着る者達のむなしき同士討ち──山岳をおおかくす霧の様な夢幻ゆめまぼろしに変わり消え失せる手前と化した。
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