🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

文字の大きさ
165 / 171
第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第77話『Phantom Outline(幻の輪郭)』 B Part

しおりを挟む
 ジェリド・アルベェラータ率いる元・フォルデノ王国の騎士部隊。
 対するは同じ白の鎧をまとう元・フォルデノ王国の部隊という何たる皮肉かつ骨肉の争い。

 黒騎士マーダと彼が率いる各人が一騎当千いっきとうせんなるヴァロウズの連中に殺された筈の相手。然も何故か殺られた以前より強固へ転じていた理不尽。

 石塁せきるいに護られていた状況も重なり苦戦をいられたジェリドの部隊。
 されどこの山のふもと付近に位置するラファンで最も栄えた林業の街。
 ディオルから山を密かに登り出現した山男達の手助けを借り形勢は一挙逆転した。

「──よくぞ来てくれた。だが……随分ずいぶん遅かったのではないか?」

 白い歯を見せたジェリド・アルベェラータの容赦ようしゃなき軽口。生きる乾坤一擲けんこんいってきを届けてくれた地元の友へ浴びせる。
 互いにグローブの様な厚い手をはじいて叩き合い健闘をたたえた。

「ジェリド──お前がもし負ければ全部まとめて俺様の指揮下へ入る。ならばいっそ少し寝てしまえと魔が差したのだ」

 ディオルから助け舟を届けた親しき友人からの心にもない皮肉。そして厚い胸板を張り合い剛毅ごうきわら竹馬ちくばの友情。

 他にも騎士達がたじろぐ程の屈強くっきょうな戦士達が多数並んだ。からだよろいな漢達の群れ。

 そんな最中──たった独りだけ、やけに浮いた少女の姿をみつけたジェリド。丁度愛娘まなむすめリイナと同じ位の年齢に思えた。
 薄い緑の長き髪を背中に流した少女。男にまみれた中、勝気そうな笑顔をやさない。
 右手に握る杖と白を基調にした丈の短い簡易的なローブが神に仕える者を彷彿ほうふつさせた。

 ──はて? 何処かで見た気がするのだが……。

 少女の正体をつかめずにいたジェリドであるが特段気に留めるのを止めた。友人の子供なぞ数年も経てば別人へ変わりゆくものだ。

 それにしても心身辛きに渡る争いであった。
 見知った顔を斬らねばならぬ苦痛にえ忍びながらも終わってみればジェリド隊&ラファンに居残りしていたResistance民衆軍の圧勝にて幕を閉じた。

「──ジェリド隊長……此奴等」

 敵の検死をせずにいられぬ隊士の面々。
 皆、けわしき顔つきを浮かべ仲間だった連中の死体を逐一ちくいち調べては両手を合わせ一様に顔をせる。

「……少し休め」

 味方が敵に寝返った切なさには敢えて触れず、今日こんにちの部下を言葉少なめにねぎらうジェリド隊長。
 フォルデノ王国在籍時には騎士団長であった男だ。此処に居る誰よりも手に掛けた者共の顔と名前を見知っていた。

 然しながら戦時に於ける正邪なんぞうつろうもの。
 自分達とてFortezaフォルテザと云うる意味から出陣した異端な身柄イレギュラーなのだ。

 さりとてどれだけ此方が声を掛けた処で耳すら貸さなかった旧友や元同僚の命を斬り裂いた。心中さっして余りある。

 けれどもこの争いで疲労困憊こんぱい──。
 肩を以て息する大切な仲間に『敵兵をとむらう墓を掘れ』などと口が裂けても命令出来ないジェリドの優しさ難しさ

「隊長、この先も潜伏せんぷくしていると思われますか?」

 とある隊員の独りが青ざめた顔色を抱いてジェリドへ問いを投げ掛けた。『また味方殺しをせねばならぬのか?』気分がにじみ出ている。

「用心するに越したことはない。──だがな…俺の知り得る顔は、もう余り残ってない筈だ」

 ジェリドが元騎士団長としての意見を部下へ返す気休め。
 昨晩森の精霊達ドリュエル達に精気を吸い尽くされた顔色と、この場で斬ったやからを足せば元同僚達は残りわずかと云った計算なのだ。

 ◇◇

 一方、敵の本拠地──。カーヴァリアレ・カルベロッソが待ち受ける砦を目指すベランドナ達の行方。これ迄の処、順調に流れていた。

 樹々が生い茂る中、ベランドナが操る騎馬は速歩はやあし駆歩かけあし※の中間と云った処か。
 ※速歩が時速13~15km。駆歩が時速20~30km。

 邪魔な物が多く足元をすくわれそうな危険を感じた際は緩やかに速度を落とし、駆けられると判断すれば途端とたんに速さへ転じる。

 柔軟じゅうなんけたベランドナの馬さばき。
 馬を連れて来たロイド少年や騎士であるが故、人より馬術に長けたファグナレンでも全く以て気が抜けなかった。

 まるで今日の内に敵地へなぐり込みを掛ける様な勢いあるベランドナの進軍。然しいくら何でも騎馬が持たぬのだ。
 このペースを維持して走り続ければ精々40km。これ以上無理をいれば馬が壊れる。何故これ程急いでいるのかもくして語らぬベランドナ。

 間もなく陽が落ちる時刻がせまる。『今日は此処で休む』とは一言も切り出さない。まさか馬が壊れるまで夜通し駆けて敵地へ辿り着くつもりなのか。
 
 ──ッ!?

 森と風の精霊に依る案内頼みにてひたすら駆け続けたベランドナの背後。おかしな風の動きを感じ取る。
 先述せんじゅつした通りベランドナの背後を行くのは少年ロイドだ。ロイドの目前──何もなき所から突如とつじょ出現したのは何と自動小銃。

 引き金を引く役目を帯びた主人は何処にもみえない不思議と戦慄せんりつ。余りに不意で速過ぎたが故、ロイドは気取けどる事すら敵わない。

「危ないッ!」

 ベランドナ、我ながら迂闊うかつが過ぎるも他の手立てが思いつかなかった。
 背後に現れた拳銃の射撃を止めるべく、つかに納刀し腰へ差したレイピアを柄毎拳銃目掛け突き出す。完全に天運任せの行動。

 バーンッ!

 次元を急にはみ出た自動小銃へレイピアの柄が偶然にも到達とうたつ
 これぞまさに間一髪かんいっぱつ、銃口がわずかに外れロイドは九死に一生を得られた。

「ぐぅッ!」

 けれども銃口の先を無理矢理変えたベランドナが手首を痛める羽目におちいった。美麗びれい眉間みけんしわを寄せるベランドナ。
 何しろ在らぬ向きへ剣を向けた上、銃のを無理矢理じ曲げた。引き換えに手首の骨へヒビが入ったやも知れない。

 加えて騎馬の手綱たづなを握れなくなり、危うく落馬し掛ける。ファグナレンが身をていしてベランドナの方へ飛び込み転がりながら守り抜いた。

 ──あ、危なかった。RaviNeroラヴィネロ戦を観てなければロイドを殺られていた。

 自らの怪我を心配するよりロイド少年の安堵あんど如何どうにか得られた方から気に掛けるベランドナの仕事に於ける責任感。

「──おぉッ! まさか今の避けるか。やっぱ耳長女ハイエルフ半端はんぱねえなぁ」

 丘の向こう側。銀色のコートと銀髪を風になびかせた好い女。二丁の拳銃が手懐てなずけた鳥の如く手元へ帰りゆく異常。
 ニヒルな笑いを浮かべ「半端ねえ」と吐いた裏腹の楽し気な気分を敢えてさらした。 

「ヴァロウズのレイ! 貴女マーダルイスを裏切ったのではなかったの!」

 立腹の思いを遠慮なく大声に乗せたベランドナの珍しき怒りのさま
 反動を忘れた自動小銃『Leyレイ-the-mendメンド』の使い手。ヴァロウズ次点のレイへ訴え掛けた。

 バルタバザル旧インド領からFortezaフォルテザ市を掃討そうとうしに来た外敵『ルヴァエル』との一戦。
 英雄ヒーローローダと女傑ヒロインルシア側にくみし、本来の主人であるべきルイスマーダにも歯向かいその後、姿をくらましたレイ。

 ローダ側のベランドナ達を相手取り、今さら銃口を向ければ疑問をいだかれる必然を呼び込んだ。

「ア"ア"ッ!? 誰が手前テメェ等へ尻尾しっぽを振るってェッ!? 俺様がLey! 楽しそうな方に俺は付く! 耳長ァッ! 俺は貴様と殺りてぇんだ!」

 自由人過ぎるレイの遠吠えがラファンの山岳に木霊こだました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...