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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第78話『A bullet that slices through the wind(風を斬り裂く銃弾)』 A Part
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敵の本拠地へ向かうべく樹々の間隙を縫う様に騎馬を風の如く走らせた悠久の森人ベランドナと連れのロイド少年。そして殿を駆けた短剣の使い手ファグナレンの三者。
肩口迄伸びた銀髪を整え丘陵地流れる風に色気を這わせたヴァロウズのNo10──。
発射時の反動を損ねた自動小銃Leythemend二丁。
慰みもたらす自分に取って男扱いの彼等。空間転移の能力を使い、あらゆる場所から自在に敵を下せる女──レイの襲撃を受けた。
ルイス・ファルムーンを裏切ったと思われたレイの攻勢。怒りを露わにしたベランドナからの訴え。
全く以て聞く耳持たぬレイの文句。『耳長と殺りてぇ』の一点張りにて口紅を引いた口角上げた強い女の色情がベランドナを縛る。
ハイエルフ──。
人を越えた存在。『相手に取って不足なし』自身の異能で捉えたいレイ。戦う者の本能を呼び込んだ結実。
本来小銃使いとは己の機敏な動きを用い相手が喰って掛かる手前に撃ち崩し命を奪い尽くす。
だがレイは文字面通りな例外。
その場を一歩たりとも動かず相棒の拳銃達だけを好きに飛ばして相手に散々風穴を開け噴火の如く出血の雨を散らせるのだ。
レイ──余剰の笑みを注ぐ。
敵と認めたベランドナの支度が済む迄、恍惚を絶《た》やさず待ち焦がれた。
「殺るしかない様ですね──『戦乙女』!」
遂に温存していた魔力を使うベランドナの決意。
契約した護りの女神ファウナの呪文。被術者の底上げを図れる戦乙女を唱え金色のレイピアを抜いた。
「おっ! なんか雰囲気変わったな耳長ァ……」
ベランドナの琥珀色の瞳が赤に染まった本気を匂わす仕草に満足げなレイの更なる煽り。
「私の名はベランドナです。耳長なんて知りません」
ジリッ……。
飛び道具をもっと遠くへ好きに飛ばせるレイ相手に緊張漂う顔つき。間合いを詰めるベランドナの募る苛立ち。
主人ドゥーウェンから聞き及んだレイの能力。
弾倉の装填さえ終われば何処からでも征ける銃弾。何とも巫山戯た話だと思わざるを得ない。
「なら俺様に勝ったらその名をこの胸に刻んでやるよ」
黒いアンダーウェアに覆われた胸元を親指で指したレイの悦び。お愉しみの時間がこれから始まる。
ズダダッ! ズダダッ!
レイ、先ずは様子見と云った処か。
立ち位置こそ微動だにせずベランドナの目前に出現させたLeythemend二丁の牽制射撃。
これは難なく全て防ぎ切るベランドナ。風の精霊達を自らに施工済。銃弾を風に弾かせ防いだ。
この場合、先攻が不利か判らず終いのベランドナ、憂鬱が続く。
敵に攻守交代の時合が在るのか怪しいものだ。
兎も角振り絞った勇気を元手に、レイピアの矛先をレイへ届かせるべく地面を力一杯蹴り飛ばす。
金色を散らした長髪がレイの視界を遮る実の処ありがちな展開。
例え射程が実質∞だとしても狙いを定めなければ如何にもならぬ常識。
ズダダッ! ズダダダダッ!
「ぐぅッ!?」
先程より長めに続いた銃声。ベランドナの背後に回ったLeythemendの二人組。
レイピアの矛先を主人レイに向けたベランドナの背中を撃ちながら後押しする狂人ぶりを思う存分披露するのだ。
背中を撃たれ吐血したベランドナの何とも痛々しき様。
目の前にてやはり一歩も動じず冷笑を浮かべ続けたレイの異常。結局の処、撃たれレイピアを支え切れなかったベランドナだけが一方的に倒れた。
「ベランドナ嬢!」
「ベランドナ様ぁッ!」
これ迄どんな苦境に立たされても無双を繰り出し続けたベランドナの何とも味気ない敗北。
レイの目前、前のめりで倒れたベランドナへ叫ぶファグナレンとロイド少年二人の男子。
されどレイ相手に何を成せば良いのか判らずただひたすら敵を睨むだけに過ぎない悔しさ滲んだ。
「おぃ耳長ぁぁ……。お前意外と馬ッ鹿なんじゃねえの? 視界を潰された処で手前が其処に居るなら俺毎狙えば済むんだぜ」
地面に転がる耳長族最上位の死に様を蹴り飛ばそうと脚を振るったレイ。何故か空振りに終わる不思議。
「か……勝手に終わらせないで頂けます…か」
血反吐塗れでも立ち上がったベランドナ不屈の精神。
確かに背中をLeythemendで強かに撃たれた。然も銃口を背中に括り付けたゼロ射撃。
それでも風の精霊達に依る献身的な護りは撃ち崩せなかった。
「レイ様──ひとつ良い事を教えて差し上げます。私が張る風の護りは全周囲。穴はひとつもないのです」
ベランドナが苦痛に顔を歪めながらも何とか成し得た挑発。御丁寧にも敬称を略さず警鐘を敢えて鳴らした。
地団駄踏んで悔しがるレイの憤怒を引き出す。
ベランドナが悠々語った『風の護りに穴は皆無』これは虚偽──実の処、弱点は存在する。敵の怒りを買えば多少は優位を保てる。
試合巧者だけならばベランドナの方が上位かも知れぬ雰囲気を醸し出した。
「ハァンッ!? じゃあその風の護りって奴は手前の全身に密着した防弾チョッキみたいなもんってか!」
この場に於いて始めて眉間に皺を寄せたレイの不愉快。ベランドナの守備力が拳銃使い的に酷過ぎた。
確かに吐血した割、ベランドナの背中に風穴がひとつたりとも開いていない。吐血の理由は恐らく内臓を直に揺らし傷を負わせたのだと思い知る。
語る迄もなく小型銃器とは一点突破に優れた兵器。その最たるダメージが穿孔──穴を穿つ事だ。
大口径の銃でなければ相手に穴を開けずに高い攻撃力──致命傷を負わせるのが過酷になる必然がレイの脳裏を過る。
よもや密着状態から弾倉が空になるまで撃ち尽くしたにも関わらずこの耳長族を貫けなかった事実。
痛恨事と思わざるを得ないレイ──怒りの歯軋り。
自ら風の護りをひけらかすベランドナの煽動。未だ伏せてる種も仕掛けも在るのだ。
先ず炭素繊維を使い製造した鎧。これに自然な色調──なめし革の様な色彩に変える塗装を施してある。
ベランドナの鎧は全身を覆ってなどいない。先程レイに撃たれた箇所は偶然にも隠れた防御性能が活きたに過ぎない。
風の護りは全身に及ぶ──言葉巧みに直情的なレイを騙したベランドナの狡猾。
さらに唇から血が滴り落ちるよう敢えて口内を強めに噛む策を講じた。
ベランドナ──美しい容姿から誰も想像赦さぬ泥臭さを用いる強靭ぶりを秘めていた。
──然しこれからどうする?
今後の戦に対する準備の為にも魔力の行使は極力控えたいベランドナの苦慮。
一方──最大火力が初っ端に防がれたレイの苦渋。
暫く相手の出方を互いに窺う張り詰めた静寂が二人の敏腕な女戦士を包み込んだ。
肩口迄伸びた銀髪を整え丘陵地流れる風に色気を這わせたヴァロウズのNo10──。
発射時の反動を損ねた自動小銃Leythemend二丁。
慰みもたらす自分に取って男扱いの彼等。空間転移の能力を使い、あらゆる場所から自在に敵を下せる女──レイの襲撃を受けた。
ルイス・ファルムーンを裏切ったと思われたレイの攻勢。怒りを露わにしたベランドナからの訴え。
全く以て聞く耳持たぬレイの文句。『耳長と殺りてぇ』の一点張りにて口紅を引いた口角上げた強い女の色情がベランドナを縛る。
ハイエルフ──。
人を越えた存在。『相手に取って不足なし』自身の異能で捉えたいレイ。戦う者の本能を呼び込んだ結実。
本来小銃使いとは己の機敏な動きを用い相手が喰って掛かる手前に撃ち崩し命を奪い尽くす。
だがレイは文字面通りな例外。
その場を一歩たりとも動かず相棒の拳銃達だけを好きに飛ばして相手に散々風穴を開け噴火の如く出血の雨を散らせるのだ。
レイ──余剰の笑みを注ぐ。
敵と認めたベランドナの支度が済む迄、恍惚を絶《た》やさず待ち焦がれた。
「殺るしかない様ですね──『戦乙女』!」
遂に温存していた魔力を使うベランドナの決意。
契約した護りの女神ファウナの呪文。被術者の底上げを図れる戦乙女を唱え金色のレイピアを抜いた。
「おっ! なんか雰囲気変わったな耳長ァ……」
ベランドナの琥珀色の瞳が赤に染まった本気を匂わす仕草に満足げなレイの更なる煽り。
「私の名はベランドナです。耳長なんて知りません」
ジリッ……。
飛び道具をもっと遠くへ好きに飛ばせるレイ相手に緊張漂う顔つき。間合いを詰めるベランドナの募る苛立ち。
主人ドゥーウェンから聞き及んだレイの能力。
弾倉の装填さえ終われば何処からでも征ける銃弾。何とも巫山戯た話だと思わざるを得ない。
「なら俺様に勝ったらその名をこの胸に刻んでやるよ」
黒いアンダーウェアに覆われた胸元を親指で指したレイの悦び。お愉しみの時間がこれから始まる。
ズダダッ! ズダダッ!
レイ、先ずは様子見と云った処か。
立ち位置こそ微動だにせずベランドナの目前に出現させたLeythemend二丁の牽制射撃。
これは難なく全て防ぎ切るベランドナ。風の精霊達を自らに施工済。銃弾を風に弾かせ防いだ。
この場合、先攻が不利か判らず終いのベランドナ、憂鬱が続く。
敵に攻守交代の時合が在るのか怪しいものだ。
兎も角振り絞った勇気を元手に、レイピアの矛先をレイへ届かせるべく地面を力一杯蹴り飛ばす。
金色を散らした長髪がレイの視界を遮る実の処ありがちな展開。
例え射程が実質∞だとしても狙いを定めなければ如何にもならぬ常識。
ズダダッ! ズダダダダッ!
「ぐぅッ!?」
先程より長めに続いた銃声。ベランドナの背後に回ったLeythemendの二人組。
レイピアの矛先を主人レイに向けたベランドナの背中を撃ちながら後押しする狂人ぶりを思う存分披露するのだ。
背中を撃たれ吐血したベランドナの何とも痛々しき様。
目の前にてやはり一歩も動じず冷笑を浮かべ続けたレイの異常。結局の処、撃たれレイピアを支え切れなかったベランドナだけが一方的に倒れた。
「ベランドナ嬢!」
「ベランドナ様ぁッ!」
これ迄どんな苦境に立たされても無双を繰り出し続けたベランドナの何とも味気ない敗北。
レイの目前、前のめりで倒れたベランドナへ叫ぶファグナレンとロイド少年二人の男子。
されどレイ相手に何を成せば良いのか判らずただひたすら敵を睨むだけに過ぎない悔しさ滲んだ。
「おぃ耳長ぁぁ……。お前意外と馬ッ鹿なんじゃねえの? 視界を潰された処で手前が其処に居るなら俺毎狙えば済むんだぜ」
地面に転がる耳長族最上位の死に様を蹴り飛ばそうと脚を振るったレイ。何故か空振りに終わる不思議。
「か……勝手に終わらせないで頂けます…か」
血反吐塗れでも立ち上がったベランドナ不屈の精神。
確かに背中をLeythemendで強かに撃たれた。然も銃口を背中に括り付けたゼロ射撃。
それでも風の精霊達に依る献身的な護りは撃ち崩せなかった。
「レイ様──ひとつ良い事を教えて差し上げます。私が張る風の護りは全周囲。穴はひとつもないのです」
ベランドナが苦痛に顔を歪めながらも何とか成し得た挑発。御丁寧にも敬称を略さず警鐘を敢えて鳴らした。
地団駄踏んで悔しがるレイの憤怒を引き出す。
ベランドナが悠々語った『風の護りに穴は皆無』これは虚偽──実の処、弱点は存在する。敵の怒りを買えば多少は優位を保てる。
試合巧者だけならばベランドナの方が上位かも知れぬ雰囲気を醸し出した。
「ハァンッ!? じゃあその風の護りって奴は手前の全身に密着した防弾チョッキみたいなもんってか!」
この場に於いて始めて眉間に皺を寄せたレイの不愉快。ベランドナの守備力が拳銃使い的に酷過ぎた。
確かに吐血した割、ベランドナの背中に風穴がひとつたりとも開いていない。吐血の理由は恐らく内臓を直に揺らし傷を負わせたのだと思い知る。
語る迄もなく小型銃器とは一点突破に優れた兵器。その最たるダメージが穿孔──穴を穿つ事だ。
大口径の銃でなければ相手に穴を開けずに高い攻撃力──致命傷を負わせるのが過酷になる必然がレイの脳裏を過る。
よもや密着状態から弾倉が空になるまで撃ち尽くしたにも関わらずこの耳長族を貫けなかった事実。
痛恨事と思わざるを得ないレイ──怒りの歯軋り。
自ら風の護りをひけらかすベランドナの煽動。未だ伏せてる種も仕掛けも在るのだ。
先ず炭素繊維を使い製造した鎧。これに自然な色調──なめし革の様な色彩に変える塗装を施してある。
ベランドナの鎧は全身を覆ってなどいない。先程レイに撃たれた箇所は偶然にも隠れた防御性能が活きたに過ぎない。
風の護りは全身に及ぶ──言葉巧みに直情的なレイを騙したベランドナの狡猾。
さらに唇から血が滴り落ちるよう敢えて口内を強めに噛む策を講じた。
ベランドナ──美しい容姿から誰も想像赦さぬ泥臭さを用いる強靭ぶりを秘めていた。
──然しこれからどうする?
今後の戦に対する準備の為にも魔力の行使は極力控えたいベランドナの苦慮。
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