🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第78話『A bullet that slices through the wind(風を斬り裂く銃弾)』 A Part

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 敵の本拠地へ向かうべく樹々の間隙かんげきう様に騎馬を風の如く走らせた悠久の森人ハイエルフベランドナと連れのロイド少年。そして殿最後を駆けた短剣の使い手ファグナレンの三者。

 肩口迄伸びた銀髪を整え丘陵地きゅうりょうち流れる風に色気をわせたヴァロウズのNo10──。
 発射時の反動を自動小銃Leythemendレイジメンド二丁。
 なぐさみもたらす自分に取って相棒扱いの。空間転移の能力を使い、あらゆる場所から自在に敵を下せる女──レイの襲撃を受けた。

 ルイス・ファルムーンを裏切ったと思われたレイの攻勢。怒りをあらわにしたベランドナからのうったえ。
 全く以て聞く耳持たぬレイの文句。『耳長貴様と殺りてぇ』の一点張りにて口紅ルージュを引いた口角上げた強い女の色情がベランドナをしばる。

 ハイエルフ──。
 人を越えた存在。『相手に取って不足なし』自身の異能でとらえたいレイ。戦う者の本能サガを呼び込んだ結実。

 本来小銃使いとは己の機敏きびんな動きを用い相手が喰って掛かる手前に撃ちくずし命をうばい尽くす。

 だがレイは文字面通りな
 その場を一歩たりとも動かず相棒の拳銃達だけを好きに飛ばして相手に散々さんざん風穴かざあなを開け噴火の如く出血の雨を散らせるのだ。

 レイ──余剰よじょうの笑みを注ぐ。
 敵と認めたベランドナの支度したくが済む迄、恍惚こうこつを絶《た》やさず待ちがれた。

「殺るしかない様ですね──『戦乙女ヴァルキュリア』!」

 遂に温存おんぞんしていた魔力マナを使うベランドナの決意。
 契約した護りの女神ファウナの呪文スペル。被術者の底上げを図れる戦乙女ヴァルキュリアを唱え金色こんじきのレイピアを抜いた。

「おっ! なんか雰囲気変わったな耳長ァエルフ……」

 ベランドナの琥珀色こはくいろの瞳が赤に染まった本気を匂わす仕草に満足げなレイの更なるあおり。

「私の名はベランドナです。なんて知りません」

 ジリッ……。
 飛び道具をもっと遠くへ好きに飛ばせるレイ相手に緊張ただよう顔つき。間合いを詰めるベランドナのつの苛立いらだち。

 主人ドゥーウェンから聞き及んだレイの能力。
 弾倉だんそう装填そうてんさえ終われば何処からでもける銃弾。何とも巫山戯ふざけた話だと思わざるを得ない。

「なら俺様に勝ったらその名をこの胸にきざんでやるよ」

 黒いアンダーウェアにおおわれた胸元膨らみを親指で指したレイのよろこび。おたのしみの時間がこれから始まる。

 ズダダッ! ズダダッ!

 レイ、先ずは様子見日和見と云った処か。
 立ち位置こそ微動びどうだにせずベランドナの目前に出現させたLeythemendレイジメンド二丁の牽制けんせい射撃。

 これは難なく全て防ぎ切るベランドナ。風の精霊達を自らに。銃弾を風にはじかせ防いだ。

 この場合、先攻が不利か判らず終いのベランドナ、憂鬱ゆううつが続く。
 敵に攻守交代の時合が在るのか怪しいものだ。

 兎も角ともかく振り絞った勇気を元手に、レイピアの矛先をレイへ届かせるべく地面を力一杯蹴り飛ばす。

 金色こんじきを散らした長髪がレイの視界をさえぎる実の処ありがちな展開初手
 例え射程しゃていが実質∞だとしても狙いをさだめなければ如何どうにもならぬ常識。

 ズダダッ! ズダダダダッ!

「ぐぅッ!?」

 先程より長めに続いた銃声。ベランドナの背後に回ったLeythemendレイジメンド
 レイピアの矛先を主人レイに向けたベランドナの背中を撃ちながら後押しする狂人ぶりを思う存分披露ひろうするのだ。

 背中を撃たれ吐血とけつしたベランドナの何とも痛々しきさま
 目の前にてやはり一歩も動じず冷笑を浮かべ続けたレイの異常。結局の処、撃たれレイピアを支え切れなかったベランドナだけが一方的に倒れた。

「ベランドナ嬢!」
「ベランドナ様ぁッ!」

 これ迄どんな苦境に立たされても無双を繰り出し続けたベランドナの何とも味気あじけない敗北。
 レイの目前、前のめりで倒れたベランドナへ叫ぶファグナレンとロイド少年二人の男子。
 されどレイ相手に何を成せば良いのか判らずただひたすら敵をにらむだけに過ぎない悔しさにじんだ。

「おぃ耳長ぁぁ……。お前意外と馬ッ鹿なんじゃねえの? 視界をつぶされた処で手前テメェ其処そこに居るなら俺毎狙えば済むんだぜ」

 地面に転がる耳長族最上位の死に様を蹴り飛ばそうと脚を振るったレイ。何故か空振りに終わる不思議。

「か……勝手に終わらせないで頂けます…か」

 血反吐ちへどまみれでも立ち上がったベランドナ不屈ふくつの精神。

 確かに背中をLeythemendレイジメンドしたたかに撃たれた。然も銃口を背中にくくり付けたゼロ射撃。

 それでも風の精霊達に依る献身的けんしんてきな護りは撃ちくずせなかった。

「レイ──ひとつ良い事を教えて差し上げます。私が張る風の護りは全周囲。穴はひとつもないのです」

 ベランドナが苦痛に顔をゆがめながらも何とか成し得た挑発。御丁寧ごていねいにも敬称けいしょうを略さずを敢えて鳴らした。
 地団駄じだんだ踏んで悔しがるレイの憤怒ふんぬを引き出す。

 ベランドナが悠々ゆうゆう語った『風の護りに穴は皆無』これは虚偽きょぎ──実の処、弱点は存在する。敵の怒りを買えば多少は優位を保てる。
 
 試合巧者しあいこうしゃだけならばベランドナの方が上位かも知れぬ雰囲気をかもし出した。

「ハァンッ!? じゃあその風の護りって奴は手前テメェの全身に密着した防弾チョッキみたいなもんってか!」

 この場に於いて始めて眉間みけんしわを寄せたレイの不愉快ふゆかい。ベランドナの守備力が拳銃使い的に酷過ぎたチート過ぎた

 確かに吐血した割、ベランドナの背中に風穴がひとつたりとも開いていない。吐血の理由は恐らく内臓をじかに揺らし傷を負わせたのだと思い知る。

 語る迄もなく小型銃器とは一点突破に優れた兵器。その最たるダメージが穿孔せんこう──穴を穿うがつ事だ。

 大口径の銃でなければ相手に穴を開けずに高い攻撃力──致命傷ちめいしょうを負わせるのが過酷になる必然がレイの脳裏をよぎる。

 よもや密着状態から弾倉が空になるまで撃ち尽くしたにも関わらずこの耳長族ベランドナつらぬけなかった事実。
 痛恨事つうこんじと思わざるを得ないレイ──怒りの歯軋はぎしり。

 自ら風の護りをひけらかすベランドナの煽動せんどう。未だせてる種も仕掛けも在るのだ。

 先ず炭素繊維カーボンを使い製造した鎧。これに自然な色調──なめし革の様な色彩に変える塗装をほどこしてある。

 ベランドナの鎧は全身をおおってなどいない。先程レイに撃たれた箇所は偶然にも隠れた防御性能が活きたに過ぎない。

 風の護りは全身に及ぶ──言葉巧みに直情的なレイをだましたベランドナの狡猾こうかつ

 さらに唇から血がしたたり落ちるよう敢えて口内を強めにむ策を講じた。
 ベランドナ──美しい容姿から誰も想像赦さぬ泥臭さを用いる強靭きょうじんぶりを秘めていた。

 ──然しだがこれからどうする撃つ

 今後の戦に対する準備の為にも魔力マナ行使こうしは極力ひかえたいベランドナの苦慮くりょ
 一方──最大火力が初っ端しょっぱなに防がれたレイの苦渋くじゅう

 しばらく相手の出方を互いにうかがう張り詰めた静寂せいじゃくが二人の敏腕びんわんな女戦士を包み込んだ。
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