🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第78話『A bullet that slices through the wind(風を斬り裂く銃弾)』 B Part

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 マーダ直轄ちょっかつ部隊ヴァロウズ10番目のレイが
 狙撃時の反動を簡易的な重力制御を用いて無くしたLeyレイthemendジメンド。これを空間転移で好きに飛ばす無双が成せる巫山戯が過ぎる女。

 人間より高度な知能と精霊達を扱うのにひいでたハイエルフ。ベランドナとの一騎討ちを望んだ。

 レイの視界が届く範囲ならば何時いつ何処どこに敵が居ようが自動小銃レイジメンドが即座に飛び込み狙い撃つ。

 魔力マナを温存したいベランドナ。同じ飛び道具でも弓矢では児戯じぎに等しき不利。
 相性最悪──レイの圧倒的な勝利かと思われた矢先。

 ベランドナのくびれた背中へじかに愛銃を押し当て乱射したにも関わらず、何とベランドナは無傷である理不尽。

 風の精霊術を扱い全身を護りの風でおおい尽くしたとうそぶいたベランドナの秀逸しゅういつ加減。
 したがって金髪Blonde銀髪Platinumを流す女性同士の争いは膠着こうちゃく状態へ転じた。

 ──巫山戯ふっざけんなッ! 弱点がないとか絶対ハッタリに決まってる!

 ベランドナの嘘をなかば見抜いたレイ──理屈無用な女の勘。銀色のロングコートが風に揺さぶられる事すら苛立いらだち覚え大人のRougeを噛んだ。

 ──自動小銃。……弱点は弾倉カートリッジ装填そうてん時のみ。だけどそれすらMasterドゥーウェンの師サイガン様が製造した銃。アテに出来ない。

 深読みするベランドナの慎重さ加減。
 然しレイのLeyレイthemendジメンドは20世紀からつらなる名機『ColtコルトGovernmentガバメント』をベースにカスタマイズした大変旧き存在。
 反動を押さえた以外、重量さえ本物と酷似させたレイこだわりの逸品いっぴん。故に性能は実の処、たかが知れた。

 とは云え──小銃の扱いを極めた女だ。装填そうてんわずかな時間──付け入るのは余程困難に違いない。

 バッ!

 ベランドナ──勢い盛んに己が握る金色こんじきのレイピアを惜しげも無く投げ捨て、後ろにひかえたファグナレンの短剣ダガーあざやかな手際てぎわで盗みをはたらく。

 レイピアの間合いより軽さを活かせる得物武器へ転じてレイの喉元に跳び込める思い切りの良さを選んだ形。

 ファグナレンから強奪ごうだつ果たした短剣を両手に握り締めレイの足元へ滑り込みを狙うベランドナ基本の型。
 走り込む前、地面に転がる石をしたたかに蹴り散らした地味をにおわす牽制けんせい

 上下に攻撃を分かつベランドナの泥臭どろくさただよう攻勢。気品に満ちあふれた彼女とは思えない別人のさま

 驚きおののくレイのくだけを呼び込む。
 やはりこれ迄美しさにじ所作しょさを抱いた演舞えんぶを扱い相手を圧倒した彼女とは思えぬ別人じみた幻影Illusion

 ──此奴意外とやりやがる。──がっ、甘えッ! くだらねえ男に連れ回され不味い安いXiménezペドロ・ヒメネス※を飲まされた気分だ!

 ※極甘口のデザートワイン。干し葡萄ぶどうのように濃厚な甘みと、とろりとした質感が特徴。スペイン人は親しみ込めヒメシスと略称を用いる事がある。

  300歳を越えた耳長族エルフ愚直ぐちょくカラダを張った攻防。その不可思議な若さにわらいが込み上げるレイ。

 敢えて腰の銃を使わず皮一枚で冷笑浮かべた面構つらがまえにてけ続ける。レイは独り争いの最中、生娘処女だった恥ずべき頃を思い出す。

 生娘きむすめ──。レコンキスタ旧スペイン領出身の彼女。
 そんな下らぬものサッサと大人の女にがれた少女時代。

 如何どうでもいい男の安酒に付き合い『こんなものか』と捨て台詞とつばを吐きつけた痛々しき寝床スラム街の思い出。

 このベランドナと云う名の女。300なんてとんでもないクソババアかと思いきや少女生娘ごとき若さあふれる良さを吹かせた。

 ──ちょっと遊んでやれ。

 一時は婚約に至り、子まで宿やどした相手に裏切られ浮気され、世の中全てが『如何どうでもい』にて片付けられる自己中極めたレイの悪癖あくへきが舌を出すのだ。

 フォルデノ王国にて短剣の扱いを極めた者にさずけられる称号しょうごう『ファグナレン』を名乗る男が舌巻くほどえたベランドナの短剣術。

 それにも関わらず全て笑いでけるレイの愉悦ゆえつ
 彼女に取っては必然──小銃の使い手はふところに潜られた時の手段をもれなく知り抜いている。

 何しろ──こぶしがついて回るのだ。拳銃使いはすこぶる優秀なの使い手でもあった。

 されど遊びが過ぎたと感じたレイ。
 魅惑みわく軌跡ライン流れた左腰に差したホルスターからスルリッと勝手に抜けたLeyレイthemendジメンド

 短剣ダガーを蛇の頭思わすしなやかな動きでレイを一見追い立てていたベランドナ。
 うるわしの金髪BlondeHairきらめく後頭部のわずか後ろに突き付けられた宙に浮くLeyレイthemendジメンド。血の気が失せゆくベランドナ。

 ブンッ!

 ファグナレン──黙って見ていられず投擲とうてき用のナイフを風がいななく速度で投げる。
 まさに一触即発いっしょくそくはつ──かろうじてレイの愛銃を弾き飛ばす。
 さらに投げたナイフと等しき速度を以てベランドナの背中に張り付いた。

「ファグナレン!?」
「貴女の様な御婦人が他の御婦人から好きにやられる。正直どちらも俺のに合わん!」

 レイ相手から一騎討ちを所望しょもうされたベランドナの不服ふふく
 構わずベランドナの背中を護る役目覚悟を決めたファグナレン。『俺の趣味に合わない』ベランドナの覚悟を嗜好しこうの一言で片づけた。

「へッ! 耳長ァ……。手前テメェ今、おびえたな!」

 全身をおおい尽くしたと啖呵たんかを切ったベランドナの風の護り。
 つい今しがた腰に近しい背中を密着状態にて銃弾を浴びせた状態より明らかに距離隙間が在ったにも関わらず末路感じた顔を見せた。

 口元がける程口角上げたレイ至高のよろこび。
 やはりこの耳長族エルフは噓つきだと知り喜悦きえつが天まであふれる思い。死神のかま背負せおった。

 ◇◇

 Fortezaフォルテザ市──。
 世界中で最も栄えた街にそびえ建つHOTELのSweetRoomを仮住まいにしているローダ・ロットレン一家。
 普段自部屋に閉じこもるヒビキが何かを感じリビング代わりの部屋へ駆けた。

 バァンッ!

「ひ……ヒビキ?」
「ヒビキ──。一体どうしたの?」

 リビングにてくつろいでいたローダとルシア。周囲からに押されたおしどり夫婦。息切らした我が娘ヒビキの血相けっそう変えた顔つきに驚きを抱いた。

「パッパ! ベランドナさんが危ないの! お願いだから力を貸してぇッ!」

 ヒビキの鬼気ききせまる勢い──。
 偽りの平和にひたり切った父ローダの胸倉むらぐらを半泣きでつかみ訴えるヒビキ。

 仕事に従事じゅうじしてる訳でもないが白のYシャツにそでを通し、少しでも父の威厳いげんたもとうしているローダの心がざわついた。

「──何だかなつかしいなこの感じ」

 緊迫感を必死に娘ヒビキの慟哭どうこく
 不謹慎ふきんしんにも程あるローダ・ロットレン──よみがえる英雄の記憶

「いや済まない──。ロッギオネで魔神ラウムと戦ったとき、ヒビキから同じ事されたのを思い出したよ」
「あっ……」

 大好きな父親パッパ胸倉むなぐらつかんですごむ不良めいた自分に羞恥しゅうちを感じたヒビキ。父をおどす手を離し眼鏡曇った視線をらした。

 おだやかな笑顔をたたえたローダ。
 争いの場から離れた途端とたん、何を成せば良いのか判らず幸福の最中──彷徨さまよい続けた男の品格に火種を受けた心地好さに駆られた。
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