167 / 171
第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第78話『A bullet that slices through the wind(風を斬り裂く銃弾)』 B Part
しおりを挟む
マーダ直轄部隊ヴァロウズ10番目のレイが愛銃。
狙撃時の反動を簡易的な重力制御を用いて無くしたLeythemend。これを空間転移で好きに飛ばす無双が成せる女。
人間より高度な知能と精霊達を扱うのに秀でたハイエルフ。ベランドナとの一騎討ちを望んだ。
レイの視界が届く範囲ならば何時、何処に敵が居ようが自動小銃が即座に飛び込み狙い撃つ。
魔力を温存したいベランドナ。同じ飛び道具でも弓矢では児戯に等しき不利。
相性最悪──レイの圧倒的な勝利かと思われた矢先。
ベランドナの括れた背中へ直に愛銃を押し当て乱射したにも関わらず、何とベランドナは無傷である理不尽。
風の精霊術を扱い全身を護りの風で覆い尽くしたと嘯いたベランドナの秀逸加減。
従って金髪と銀髪を流す女性同士の争いは膠着状態へ転じた。
──巫山戯んなッ! 弱点がないとか絶対ハッタリに決まってる!
ベランドナの嘘を半ば見抜いたレイ──理屈無用な女の勘。銀色のロングコートが風に揺さぶられる事すら苛立ち覚え大人の唇を噛んだ。
──自動小銃。……弱点は弾倉の装填時のみ。だけどそれすらMasterの師サイガン様が製造した銃。アテに出来ない。
深読みするベランドナの慎重さ加減。
然しレイのLeythemendは20世紀から連なる名機『ColtGovernment』をベースにカスタマイズした大変旧き存在。
反動を押さえた以外、重量さえ本物と酷似させたレイ拘りの逸品。故に性能は実の処、たかが知れた。
とは云え──小銃の扱いを極めた女だ。装填の僅かな時間──付け入るのは余程困難に違いない。
バッ!
ベランドナ──勢い盛んに己が握る金色のレイピアを惜しげも無く投げ捨て、後ろに控えたファグナレンの短剣を鮮やかな手際で盗みをはたらく。
レイピアの間合いより軽さを活かせる得物へ転じてレイの喉元に跳び込める思い切りの良さを選んだ形。
ファグナレンから強奪果たした短剣を両手に握り締めレイの足元へ滑り込みを狙うベランドナ基本の型。
走り込む前、地面に転がる石を強かに蹴り散らした地味を匂わす牽制。
上下に攻撃を分かつベランドナの泥臭さ漂う攻勢。気品に満ち溢れた彼女とは思えない別人の様。
驚き慄くレイの砕けを呼び込む。
やはりこれ迄美しさ滲む所作を抱いた演舞を扱い相手を圧倒した彼女とは思えぬ別人じみた幻影。
──此奴意外とやりやがる。──がっ、甘えッ! くだらねえ男に連れ回され不味いXiménez※を飲まされた気分だ!
※極甘口のデザートワイン。干し葡萄のように濃厚な甘みと、とろりとした質感が特徴。スペイン人は親しみ込めヒメシスと略称を用いる事がある。
300歳を越えた耳長族が愚直に躰を張った攻防。その不可思議な若さに嗤いが込み上げるレイ。
敢えて腰の銃を使わず皮一枚で冷笑浮かべた面構えにて避け続ける。レイは独り争いの最中、生娘だった恥ずべき頃を思い出す。
生娘──。レコンキスタ出身の彼女。
そんな下らぬものサッサと脱ぎ捨てた大人の女に焦がれた少女時代。
如何でもいい男の安酒に付き合い『こんなものか』と捨て台詞と唾を吐きつけた痛々しき寝床の思い出。
このベランドナと云う名の女。300なんてとんでもないクソ婆かと思いきや少女の如き若さ溢れる風を吹かせた。
──ちょっと遊んでやれ。
一時は婚約に至り、子まで宿した相手に裏切られ、世の中全てが『如何でも好い』にて片付けられる自己中極めたレイの悪癖が舌を出すのだ。
フォルデノ王国にて短剣の扱いを極めた者に授けられる称号『ファグナレン』を名乗る男が舌巻くほど冴えたベランドナの短剣術。
それにも関わらず全て笑いで避けるレイの愉悦。
彼女に取っては必然──小銃の使い手は懐に潜られた時の手段をもれなく知り抜いている。
何しろ拳銃──拳がついて回るのだ。拳銃使いはすこぶる優秀な無手の使い手でもあった。
されどちと遊びが過ぎたと感じたレイ。
魅惑の軌跡流れた左腰に差したホルスターからスルリッと勝手に抜けた片割れのLeythemend。
短剣を蛇の頭思わすしなやかな動きでレイを一見追い立てていたベランドナ。
麗しの金髪煌めく後頭部の僅か後ろに突き付けられた宙に浮くLeythemend。血の気が失せゆくベランドナ。
ブンッ!
ファグナレン──黙って見ていられず投擲用のナイフを風が嘶く速度で投げる。
まさに一触即発──辛うじてレイの愛銃を弾き飛ばす。
さらに投げたナイフと等しき速度を以てベランドナ嬢の背中に張り付いた。
「ファグナレン!?」
「貴女の様な御婦人が他の御婦人から好きにやられる。正直どちらも俺の趣味に合わん!」
レイから一騎討ちを所望されたベランドナの不服。
構わずベランドナの背中を護る役目を決めたファグナレン。『俺の趣味に合わない』ベランドナの覚悟を嗜好の一言で片づけた。
「へッ! 耳長ァ……。手前今、怯えたな!」
全身を覆い尽くしたと啖呵を切ったベランドナの風の護り。
つい今しがた腰に近しい背中を密着状態にて銃弾を浴びせた状態より明らかに距離が在ったにも関わらず末路感じた顔を見せた。
口元が裂ける程口角上げたレイ至高の悦び。
やはりこの耳長族は噓つきだと知り喜悦が天まで溢れる思い。死神の鎌を背負った。
◇◇
Forteza市──。
世界中で最も栄えた街にそびえ建つHOTELのSweetRoomを仮住まいにしているローダ・ロットレン一家。
普段自部屋に閉じこもるヒビキが何かを感じリビング代わりの部屋へ駆けた。
バァンッ!
「ひ……ヒビキ?」
「ヒビキ──。一体どうしたの?」
リビングにてくつろいでいたローダとルシア。周囲から推しに押されたおしどり夫婦。息切らした我が娘ヒビキの血相変えた顔つきに驚きを抱いた。
「パッパ! ベランドナさんが危ないの! お願いだから力を貸してぇッ!」
ヒビキの鬼気迫る勢い──。
偽りの平和に浸り切った父ローダの胸倉を半泣きで掴み訴えるヒビキ。
仕事に従事してる訳でもないが白のYシャツに袖を通し、少しでも父の威厳を保とうしているローダの心がざわついた。
「──何だか懐かしいなこの感じ」
緊迫感を必死に響かせた娘ヒビキの慟哭。
不謹慎にも程あるローダ・ロットレン──蘇る英雄の座。
「いや済まない──。ロッギオネで魔神ラウムと戦った刻、ヒビキから同じ事されたのを思い出したよ」
「あっ……」
大好きな父親の胸倉を掴んで凄む不良めいた自分に羞恥を感じたヒビキ。父を脅す手を離し眼鏡曇った視線を逸らした。
穏やかな笑顔を湛えたローダ。
争いの場から離れた途端、何を成せば良いのか判らず幸福の最中──彷徨い続けた男の品格に火種を受けた心地好さに駆られた。
狙撃時の反動を簡易的な重力制御を用いて無くしたLeythemend。これを空間転移で好きに飛ばす無双が成せる女。
人間より高度な知能と精霊達を扱うのに秀でたハイエルフ。ベランドナとの一騎討ちを望んだ。
レイの視界が届く範囲ならば何時、何処に敵が居ようが自動小銃が即座に飛び込み狙い撃つ。
魔力を温存したいベランドナ。同じ飛び道具でも弓矢では児戯に等しき不利。
相性最悪──レイの圧倒的な勝利かと思われた矢先。
ベランドナの括れた背中へ直に愛銃を押し当て乱射したにも関わらず、何とベランドナは無傷である理不尽。
風の精霊術を扱い全身を護りの風で覆い尽くしたと嘯いたベランドナの秀逸加減。
従って金髪と銀髪を流す女性同士の争いは膠着状態へ転じた。
──巫山戯んなッ! 弱点がないとか絶対ハッタリに決まってる!
ベランドナの嘘を半ば見抜いたレイ──理屈無用な女の勘。銀色のロングコートが風に揺さぶられる事すら苛立ち覚え大人の唇を噛んだ。
──自動小銃。……弱点は弾倉の装填時のみ。だけどそれすらMasterの師サイガン様が製造した銃。アテに出来ない。
深読みするベランドナの慎重さ加減。
然しレイのLeythemendは20世紀から連なる名機『ColtGovernment』をベースにカスタマイズした大変旧き存在。
反動を押さえた以外、重量さえ本物と酷似させたレイ拘りの逸品。故に性能は実の処、たかが知れた。
とは云え──小銃の扱いを極めた女だ。装填の僅かな時間──付け入るのは余程困難に違いない。
バッ!
ベランドナ──勢い盛んに己が握る金色のレイピアを惜しげも無く投げ捨て、後ろに控えたファグナレンの短剣を鮮やかな手際で盗みをはたらく。
レイピアの間合いより軽さを活かせる得物へ転じてレイの喉元に跳び込める思い切りの良さを選んだ形。
ファグナレンから強奪果たした短剣を両手に握り締めレイの足元へ滑り込みを狙うベランドナ基本の型。
走り込む前、地面に転がる石を強かに蹴り散らした地味を匂わす牽制。
上下に攻撃を分かつベランドナの泥臭さ漂う攻勢。気品に満ち溢れた彼女とは思えない別人の様。
驚き慄くレイの砕けを呼び込む。
やはりこれ迄美しさ滲む所作を抱いた演舞を扱い相手を圧倒した彼女とは思えぬ別人じみた幻影。
──此奴意外とやりやがる。──がっ、甘えッ! くだらねえ男に連れ回され不味いXiménez※を飲まされた気分だ!
※極甘口のデザートワイン。干し葡萄のように濃厚な甘みと、とろりとした質感が特徴。スペイン人は親しみ込めヒメシスと略称を用いる事がある。
300歳を越えた耳長族が愚直に躰を張った攻防。その不可思議な若さに嗤いが込み上げるレイ。
敢えて腰の銃を使わず皮一枚で冷笑浮かべた面構えにて避け続ける。レイは独り争いの最中、生娘だった恥ずべき頃を思い出す。
生娘──。レコンキスタ出身の彼女。
そんな下らぬものサッサと脱ぎ捨てた大人の女に焦がれた少女時代。
如何でもいい男の安酒に付き合い『こんなものか』と捨て台詞と唾を吐きつけた痛々しき寝床の思い出。
このベランドナと云う名の女。300なんてとんでもないクソ婆かと思いきや少女の如き若さ溢れる風を吹かせた。
──ちょっと遊んでやれ。
一時は婚約に至り、子まで宿した相手に裏切られ、世の中全てが『如何でも好い』にて片付けられる自己中極めたレイの悪癖が舌を出すのだ。
フォルデノ王国にて短剣の扱いを極めた者に授けられる称号『ファグナレン』を名乗る男が舌巻くほど冴えたベランドナの短剣術。
それにも関わらず全て笑いで避けるレイの愉悦。
彼女に取っては必然──小銃の使い手は懐に潜られた時の手段をもれなく知り抜いている。
何しろ拳銃──拳がついて回るのだ。拳銃使いはすこぶる優秀な無手の使い手でもあった。
されどちと遊びが過ぎたと感じたレイ。
魅惑の軌跡流れた左腰に差したホルスターからスルリッと勝手に抜けた片割れのLeythemend。
短剣を蛇の頭思わすしなやかな動きでレイを一見追い立てていたベランドナ。
麗しの金髪煌めく後頭部の僅か後ろに突き付けられた宙に浮くLeythemend。血の気が失せゆくベランドナ。
ブンッ!
ファグナレン──黙って見ていられず投擲用のナイフを風が嘶く速度で投げる。
まさに一触即発──辛うじてレイの愛銃を弾き飛ばす。
さらに投げたナイフと等しき速度を以てベランドナ嬢の背中に張り付いた。
「ファグナレン!?」
「貴女の様な御婦人が他の御婦人から好きにやられる。正直どちらも俺の趣味に合わん!」
レイから一騎討ちを所望されたベランドナの不服。
構わずベランドナの背中を護る役目を決めたファグナレン。『俺の趣味に合わない』ベランドナの覚悟を嗜好の一言で片づけた。
「へッ! 耳長ァ……。手前今、怯えたな!」
全身を覆い尽くしたと啖呵を切ったベランドナの風の護り。
つい今しがた腰に近しい背中を密着状態にて銃弾を浴びせた状態より明らかに距離が在ったにも関わらず末路感じた顔を見せた。
口元が裂ける程口角上げたレイ至高の悦び。
やはりこの耳長族は噓つきだと知り喜悦が天まで溢れる思い。死神の鎌を背負った。
◇◇
Forteza市──。
世界中で最も栄えた街にそびえ建つHOTELのSweetRoomを仮住まいにしているローダ・ロットレン一家。
普段自部屋に閉じこもるヒビキが何かを感じリビング代わりの部屋へ駆けた。
バァンッ!
「ひ……ヒビキ?」
「ヒビキ──。一体どうしたの?」
リビングにてくつろいでいたローダとルシア。周囲から推しに押されたおしどり夫婦。息切らした我が娘ヒビキの血相変えた顔つきに驚きを抱いた。
「パッパ! ベランドナさんが危ないの! お願いだから力を貸してぇッ!」
ヒビキの鬼気迫る勢い──。
偽りの平和に浸り切った父ローダの胸倉を半泣きで掴み訴えるヒビキ。
仕事に従事してる訳でもないが白のYシャツに袖を通し、少しでも父の威厳を保とうしているローダの心がざわついた。
「──何だか懐かしいなこの感じ」
緊迫感を必死に響かせた娘ヒビキの慟哭。
不謹慎にも程あるローダ・ロットレン──蘇る英雄の座。
「いや済まない──。ロッギオネで魔神ラウムと戦った刻、ヒビキから同じ事されたのを思い出したよ」
「あっ……」
大好きな父親の胸倉を掴んで凄む不良めいた自分に羞恥を感じたヒビキ。父を脅す手を離し眼鏡曇った視線を逸らした。
穏やかな笑顔を湛えたローダ。
争いの場から離れた途端、何を成せば良いのか判らず幸福の最中──彷徨い続けた男の品格に火種を受けた心地好さに駆られた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
