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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第79話『AHuman’s Place(人の在り処)』 A Part
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ヴァロウズ10番目のレイが焦がれたLeythemendが空間を無視しながら人間より優れた存在ハイエルフのベランドナに襲い掛かる命霞む危機。
Forteza市に籍を置くローダ・ロットレンの娘ヒビキが気付き、扉の候補者の胸倉掴み揺らした慟哭。
ヒビキはこの世に生を受ける折、大切な友人ベランドナの扱う精霊術の世話になった恩を忘れてなどいない。
ベランドナ達が目的地──ラファンとフォルデノ王国の境界付近は此処から数百kmは離れた人の意識感じ取るなど決してあり得ぬ距離感。
「──ねえヒビキ。貴女の言う事に間違いなんかないと思うけど如何して判るの?」
母ルシアが膝を屈め愛娘と視線絡ませる優しくも素朴な疑問。
ポンッポンッ……。
「ルシア……それには聞くに及ばない。何しろヒビキには世界中から他人の意識が飛び込んで来るのだから」
夫ローダが妻と娘の肩を愛しさ込めた加減を以て軽く乗せた笑顔。まるで二人の気分を仲立ちする役割帯びた顔立ち。
「あっ……」
ルシア、娘ヒビキの苦悩を思いやり緑煌めく瞳を僅かに曇らせヒビキへ手向けた。
扉を拓いた父と鍵の役目を成す母の間に産み落とされた新人類ヒビキ。
人同士の想いを繋げるべく心の壁を生まれながらに取り払った娘の痛みを思い彼女も心を痛めた。
されどヒビキ──慈愛溢れるママ譲りな緑の瞳。
眼鏡の裏に映えた静かな笑みを湛え、軽く首振る希望を両親へ授ける。
「大丈夫だから……。此処数日の間、沢山流れ込む人の思いから、僕が欲しい分だけを探し当てる事が出来る様になれたよ」
新人類ヒビキ・ロットレン──。
生まれていきなり16歳の多感な気分に甘え部屋に閉じこもる弱さに怯え縋るだけではなかったのだと知れた。
眠る時でさえただの夢なのか、他人の気分が土足で好きに上がり込む邪魔な相手なのか──まるで知れぬ嫌悪に独りうなされ続けた。
それでも好きな人の意識のみ必死に追い求め縋りつく処までなら泣きながらも至れた。
未だ世界総ての思いを繋ぎ留める存在には流石に成れぬ。
然しそれでも自身を保つ人の在り方を構築出来たヒビキの気丈ぶり。
ローダとルシア──我が子ヒビキの強さに心打たれた笑顔を浮かべ夫婦同士、互いを見ながら誇りを抱く。
自慢の娘は己の力に決して溺れず挫けず今出来る全てに努力を積み重ねた。
それに比べひと時の平和に甘んじた自分達の魂を恥じる。生まれたてのヒビキから教えられた不屈の精神。
いつの間にやら理屈を並べた大人に慣れた気分に恥ずべき粗雑を感じた。
兎も角そんな最中、友人ベランドナが抱いた身の危うさを感じ取ったヒビキ奇跡の形。
「ヒビキ……よく頑張ったな」
4つしか離れていないパッパからやはり母譲りの金髪を撫でられたヒビキの恥ずかしさ。歳の近しき父に褒められつい顔を赤らめた。
「そ、そんな事より早くパッパの力を貸してよ!」
赤面しつつ鬼気迫るヒビキの訴えが続いた。
余程の事柄に違いないのだが父ローダは独りくだらぬ思いを今更ルシアへ耳打ち。
「──こんな時に済まない。何故俺だけパッパなんだ?」
緑の瞳を丸く見開き呆気に取られたママ。暫く時間が止まった気分。
次に括れた腹を押さえ不謹慎にも我慢敵わず思わず吹いた。
「そっ…それはねパッパがとっても可愛いからよ」
少し涙混じりなルシアの嗤い過ぎ。
笑い飛ばされた──真顔と腕組みで返すローダの不満。
聞き届けてしまったヒビキ、羞恥転じ怒りで染めた赤ら顔。それ程彼女の大切なお友達は切迫していた。
「だ・か・ら・急いでいるだってばッ! パッパの創造力が今すぐ必要なの!」
腰に手を当て怒り心頭なヒビキ。随分ハッキリとベランドナの状態が見えている様だ。
ローダの想像を創造へ変え得る力。速やかに力を貸して欲しいヒビキの在り様にローダの父性が突き動かされた。
「判った、やろう今すぐ。ヒビキの示す先に居るベランドナへ俺の力を注ぐんだな?」
不愛想だが真面目な顔に戻ったいつものローダ。
数百km離れたこの場から直接助けに向かうのではなく、ベランドナが窮地を切り抜けられる能力を自分が与えるのだと決めつけた扉の候補者。
ギュッ。
「それはちょっと違うんだなぁ……」
悪戯じみた解ける笑顔覗かすヒビキ。
男友達の様な父ローダの手を握り絞めたヒビキの閃き。手を繋いでローダの脳裏に見せるベランドナ達の様子。
「味方はベランドナ独りじゃないな。敵は……レイか!?」
ローダ、黒い瞼を閉じた裏側に映る嘗て共闘果たしたレイが今回の敵。先ずそこから目を開かぬ瞠目。
ルシアと共にバルタバザルから来た外敵ルヴァエルを迎え撃った頼もしきレイが敵へ帰した認めたくなき焦燥。
さらにベランドナの背中を見知らぬ兵士が護っているのも見えた。
知りはしないが見覚えある白の鎧。ジェリド・アルベェラータの手の者、自ずと知れた。
「もぅ独り……。多分僕と同じ位の男の子。彼も決して弱い訳じゃないけど敵が余りにも強過ぎて何も出来そうにないの」
ヒビキの云う通り手をこまねいている少年の憤りを感じられたローダ。されどこの少年を一体どう扱うつもりか。
ヒビキの意中は窺えずにいたローダの憤り。そして迂闊にも『僕と同じ位の男の子』の件を聞き遂げ僅かに眉を顰めた。
そんな父娘の不可思議な共闘ぶりを端から見ていたルシア。
この借宿に住んで以来、二人の触れ合う様を碌に見れなかったのだ。
急を要するとは云え、仲睦まじい二人の姿を久し振りに見られた喜びに駆られ思わず笑顔が零れた。
妻ルシアの幸せを知りつつも今は置き去りにしてベランドナ達の支援に尽力しなければならぬローダとヒビキ。
『レイ──如何しても戦うしかないのか』
ローダ、これは大変久しい多大な独り言。
過去、ルシアも幾度か聞き届けたローダの葛藤が勝手に溢れ漏れ出す心音。
今にして思えば心の叫びが自ずと轟く娘ヒビキの能力。
父ローダが心の扉を拓いた後に生じた認識力の拡大に似ていた。
姿形こそ父に似た様相がない感じに思えたヒビキ。
ローダの面影──着実に引き継がれていた。
ヒビキの装い新たな覚醒と再び手を取り合った扉の候補者ローダ。二人のロットレン──一体何を成そうと云うのか。
Forteza市に籍を置くローダ・ロットレンの娘ヒビキが気付き、扉の候補者の胸倉掴み揺らした慟哭。
ヒビキはこの世に生を受ける折、大切な友人ベランドナの扱う精霊術の世話になった恩を忘れてなどいない。
ベランドナ達が目的地──ラファンとフォルデノ王国の境界付近は此処から数百kmは離れた人の意識感じ取るなど決してあり得ぬ距離感。
「──ねえヒビキ。貴女の言う事に間違いなんかないと思うけど如何して判るの?」
母ルシアが膝を屈め愛娘と視線絡ませる優しくも素朴な疑問。
ポンッポンッ……。
「ルシア……それには聞くに及ばない。何しろヒビキには世界中から他人の意識が飛び込んで来るのだから」
夫ローダが妻と娘の肩を愛しさ込めた加減を以て軽く乗せた笑顔。まるで二人の気分を仲立ちする役割帯びた顔立ち。
「あっ……」
ルシア、娘ヒビキの苦悩を思いやり緑煌めく瞳を僅かに曇らせヒビキへ手向けた。
扉を拓いた父と鍵の役目を成す母の間に産み落とされた新人類ヒビキ。
人同士の想いを繋げるべく心の壁を生まれながらに取り払った娘の痛みを思い彼女も心を痛めた。
されどヒビキ──慈愛溢れるママ譲りな緑の瞳。
眼鏡の裏に映えた静かな笑みを湛え、軽く首振る希望を両親へ授ける。
「大丈夫だから……。此処数日の間、沢山流れ込む人の思いから、僕が欲しい分だけを探し当てる事が出来る様になれたよ」
新人類ヒビキ・ロットレン──。
生まれていきなり16歳の多感な気分に甘え部屋に閉じこもる弱さに怯え縋るだけではなかったのだと知れた。
眠る時でさえただの夢なのか、他人の気分が土足で好きに上がり込む邪魔な相手なのか──まるで知れぬ嫌悪に独りうなされ続けた。
それでも好きな人の意識のみ必死に追い求め縋りつく処までなら泣きながらも至れた。
未だ世界総ての思いを繋ぎ留める存在には流石に成れぬ。
然しそれでも自身を保つ人の在り方を構築出来たヒビキの気丈ぶり。
ローダとルシア──我が子ヒビキの強さに心打たれた笑顔を浮かべ夫婦同士、互いを見ながら誇りを抱く。
自慢の娘は己の力に決して溺れず挫けず今出来る全てに努力を積み重ねた。
それに比べひと時の平和に甘んじた自分達の魂を恥じる。生まれたてのヒビキから教えられた不屈の精神。
いつの間にやら理屈を並べた大人に慣れた気分に恥ずべき粗雑を感じた。
兎も角そんな最中、友人ベランドナが抱いた身の危うさを感じ取ったヒビキ奇跡の形。
「ヒビキ……よく頑張ったな」
4つしか離れていないパッパからやはり母譲りの金髪を撫でられたヒビキの恥ずかしさ。歳の近しき父に褒められつい顔を赤らめた。
「そ、そんな事より早くパッパの力を貸してよ!」
赤面しつつ鬼気迫るヒビキの訴えが続いた。
余程の事柄に違いないのだが父ローダは独りくだらぬ思いを今更ルシアへ耳打ち。
「──こんな時に済まない。何故俺だけパッパなんだ?」
緑の瞳を丸く見開き呆気に取られたママ。暫く時間が止まった気分。
次に括れた腹を押さえ不謹慎にも我慢敵わず思わず吹いた。
「そっ…それはねパッパがとっても可愛いからよ」
少し涙混じりなルシアの嗤い過ぎ。
笑い飛ばされた──真顔と腕組みで返すローダの不満。
聞き届けてしまったヒビキ、羞恥転じ怒りで染めた赤ら顔。それ程彼女の大切なお友達は切迫していた。
「だ・か・ら・急いでいるだってばッ! パッパの創造力が今すぐ必要なの!」
腰に手を当て怒り心頭なヒビキ。随分ハッキリとベランドナの状態が見えている様だ。
ローダの想像を創造へ変え得る力。速やかに力を貸して欲しいヒビキの在り様にローダの父性が突き動かされた。
「判った、やろう今すぐ。ヒビキの示す先に居るベランドナへ俺の力を注ぐんだな?」
不愛想だが真面目な顔に戻ったいつものローダ。
数百km離れたこの場から直接助けに向かうのではなく、ベランドナが窮地を切り抜けられる能力を自分が与えるのだと決めつけた扉の候補者。
ギュッ。
「それはちょっと違うんだなぁ……」
悪戯じみた解ける笑顔覗かすヒビキ。
男友達の様な父ローダの手を握り絞めたヒビキの閃き。手を繋いでローダの脳裏に見せるベランドナ達の様子。
「味方はベランドナ独りじゃないな。敵は……レイか!?」
ローダ、黒い瞼を閉じた裏側に映る嘗て共闘果たしたレイが今回の敵。先ずそこから目を開かぬ瞠目。
ルシアと共にバルタバザルから来た外敵ルヴァエルを迎え撃った頼もしきレイが敵へ帰した認めたくなき焦燥。
さらにベランドナの背中を見知らぬ兵士が護っているのも見えた。
知りはしないが見覚えある白の鎧。ジェリド・アルベェラータの手の者、自ずと知れた。
「もぅ独り……。多分僕と同じ位の男の子。彼も決して弱い訳じゃないけど敵が余りにも強過ぎて何も出来そうにないの」
ヒビキの云う通り手をこまねいている少年の憤りを感じられたローダ。されどこの少年を一体どう扱うつもりか。
ヒビキの意中は窺えずにいたローダの憤り。そして迂闊にも『僕と同じ位の男の子』の件を聞き遂げ僅かに眉を顰めた。
そんな父娘の不可思議な共闘ぶりを端から見ていたルシア。
この借宿に住んで以来、二人の触れ合う様を碌に見れなかったのだ。
急を要するとは云え、仲睦まじい二人の姿を久し振りに見られた喜びに駆られ思わず笑顔が零れた。
妻ルシアの幸せを知りつつも今は置き去りにしてベランドナ達の支援に尽力しなければならぬローダとヒビキ。
『レイ──如何しても戦うしかないのか』
ローダ、これは大変久しい多大な独り言。
過去、ルシアも幾度か聞き届けたローダの葛藤が勝手に溢れ漏れ出す心音。
今にして思えば心の叫びが自ずと轟く娘ヒビキの能力。
父ローダが心の扉を拓いた後に生じた認識力の拡大に似ていた。
姿形こそ父に似た様相がない感じに思えたヒビキ。
ローダの面影──着実に引き継がれていた。
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