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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第79話『AHuman’s Place(人の在り処)』 B Part
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空間転移を自在に用い二丁の拳銃を操るヴァロウズのレイを相手に苦戦を強いられるベランドナとファグナレンの二人。
よもや出陣したForteza市に住まうヒビキとローダから感知されているなど知る由もなかった。
それは力不足で加勢適わぬリイナの恋人候補ロイド少年とて同じであった。
──クソッ! こんな時に何も出来ないだなんて!
自身の無力さに歯軋りするより他なきロイドの苛立ち。ほんの僅かでも森の天使リイナに近づきたい男子の本懐。
こんな処で足踏みしか成せぬ未だ足りない成長度合。悔やんでも悔やみきれない。
同時に浮かぶリイナへ対する想いの丈。強さを求める理由に不釣り合いな不謹慎と心中で闘うロイド。
だが下手に自分が動こうものなら足を引っ張る。
さっきも自分を護る為、ベランドナは随分無理な角度でレイの拳銃を弾いたが故に手首を痛めた。
然もあのレイと云う大層巫山戯た女。
今は自動小銃Leythemendを碌に使わぬ御遊びに興じているのだ。
例えロイドでなくとも腹立たしき現状。完璧に生殺与奪の剣を銀髪の女レイに握られた形。
レイが本気の裁きを下せば最後。三人同刻の死刑を執行されゆく屈辱の敗北が戦素人なロイドの幼い甘さ残る眼にも容易く浮かんだ。
「二人掛かり──構わねえ。何ならそこの餓鬼もまとめて面倒みてやるよこのレイ様が!」
ファグナレンから借りた短剣二刀を折れた手首ものともせず握り全霊を振るうベランドナ。未だ自分に仕込んだ戦乙女の力は残っている。
それにも関わらず余裕の笑みを絶やさず避け続けるレイの機動。そして偶にベランドナの背後へ見せびらかすLeythemendの殺意。何時、何処でも殺れる遊戯の現れ。
ズダダッ!
カンッ! カンッ!
弾け飛ぶ連射の音を乾いた何かが跳ね返した轟き。
顔を顰めたファグナレンが仕込みの小手を自ら差し出し、美しく嫋やかなる女性の盾になるのを望んだ証。
「ファグナレン!」
「ぐぅッ! 腕に穴が空いたかと思ったぞ!」
最新式の防具を貫かれたが如き錯覚感じたファグナレンの腕。ベランドナの鎧は僅かに機動性重視。その実、装甲が薄い。
ファグナレンは元来なる騎士の出で立ち。依って何とかLeythemendから放たれた銃弾の雨霰を、風の護り抜きの自力で防いだ。
「御婦人同士が殺り合うのは俺の性に合わん。だがな、貴女の様な清らかなる女が一方的に殺られる様は、いよいよ以て見るに堪えんッ!」
ファグナレンの玉砕覚悟──両腕の小手を突き出し真正面からレイに飛び込む無謀。
最早後ろから撃たれるが本望。例え殺されてもレイを押し倒す一矢の報いを欲した。
300歳越えの小娘から伝わる淀んだ殺意が突如勢い盛んな男に入れ替わる変遷ぶり。
レイが滲ます余裕の笑みが初めて霞んだ。
然しそれでも揺るがぬ殺しの哲学に手馴れたレイの応戦。
ごく自然──両手に掴んだLeythemend二丁を称賛溢れた目前の男の鼻面へ葬送なる手向け。
次の刹那、勇猛果敢な騎士の命が確実に消え失せると感じたベランドナの絶望。
有能な戦士からただの心優しき女性へ戻る挫けた心が琥珀色に涙滲まし目を背けた。
ダンッ!
されど次に響いた轟音──。
無双なるレイ、命知らずなファグナレン、失意のベランドナ……。
その何れでもなき強かに地面踏み鳴らした足音。やった当人が最も信じ難い顔色を浮かべた。
ロイド少年が大人同士の間へ割って押し入り、自動小銃を握るレイの両手首をメイスで叩き落としたのだ。
「──ぐっ!?」
「「──なっ!?」」
ファグナレンへトドメの一撃を決める筈だったレイに取って視界はおろか感覚の範疇外である邪魔なる者。
両手の痛手に顔を顰めたレイ。不覚にも愛込めた拳銃達を地面へ落とす。
想定外なのは救われたファグナレンと失意のベランドナとて同類。この争いの渦中──最も瞠目した視界をロイドへ向けた。
──な、なんだこの漲る力は!?
メイスを握った己の手や脚を震えた視界で覗き込むロイドの驚異。
──そ、それに何だか知らない人の声が聞こえる?
まさしく文字通り降って湧いたロイドの見知らぬ力の根源。どう扱うのが正解なのか当人の気分の方が追い付けない。
「元ヴァロウズのレイッ! この俺が相手してやる! もし負けたら俺の言う事を何でも聞いて貰うぞ!」
握ったメイスでレイを指しつつ激しき台詞を吐いたロイド自身が茫然自失──は、ハァッ!? ぼ、僕は一体何をぉ?
ズダダッ! ズダダッ!
言葉をぶちかまされたレイ──ロイドの足元を撃ち抜く怒りの発砲。
「おぃクッソ餓鬼ィィッ! 調子こいてんじゃぁねえぞッ!」
怒髪冠を衝かずにいられぬレイの雄叫びを呼び込む必然。
肩で切り揃えた彼女の銀髪。不意に強まる風になびき、目線が合えば瞬時を以て石にされゆくメドゥーサの形相を匂わした。
『レイは一度マーダを裏切った自由人。意識を突けば勝手に折れる』
『頑張っ! 今言えないけど訳在って君だけが頼りなの!』
何やら身勝手にも自分の中へ押し入り叫ぶ若い男女二人の意識。訳の判らぬロイド少年。
──然し絶対的な力を欲する若者の我欲を存分に刺激した──
ブォンッ!
まさしく別人達が乗り移ったロイドが地面を蹴り、レイへ真正面からへメイスを握り締め飛び掛かる無策。
されどその目に宿る勇猛ぶりは本物──人の脚力とは到底思えぬ風抜く速度を届ける。
──速いッ!? だがッ!
どれだけ人の脚力を増そうが音速超える銃弾に追いつき越せる訳なき事実。
レイ──弾倉未だ残るLeythemendを少年の眉間狙い撃つべく引き金をひこうとした矢先。
『──レイ。貴女は……少なくともあの刻俺達と共に戦った貴女はこんな酷いやり方を望む女じゃなかった』
──て、手前? あん時の英雄気取り野郎か!?
さっきロイドに殴られた手首からレイの脳裏へ伝わる謎の一声。
忘れない、忘れようがなき激しき戦闘──。
正邪問わぬ戦にまるで正義の味方が最後は必ず決める気持ち好い風音聞こえた高揚。
さらにマーダからのタガを自ら外した自由を望んだ争いの記憶。
相手との力量差など全く顧みず、好きな者達を護る為のみに命張った心地良さ──好きに振る舞って構わぬ尊さをレイに教えてくれた存在。
Fortezaを襲った外敵ルヴァエルを相手取り、共に命を張った若輩過ぎる英雄──ローダ・ロットレンの叱咤に違いなかった。
よもや出陣したForteza市に住まうヒビキとローダから感知されているなど知る由もなかった。
それは力不足で加勢適わぬリイナの恋人候補ロイド少年とて同じであった。
──クソッ! こんな時に何も出来ないだなんて!
自身の無力さに歯軋りするより他なきロイドの苛立ち。ほんの僅かでも森の天使リイナに近づきたい男子の本懐。
こんな処で足踏みしか成せぬ未だ足りない成長度合。悔やんでも悔やみきれない。
同時に浮かぶリイナへ対する想いの丈。強さを求める理由に不釣り合いな不謹慎と心中で闘うロイド。
だが下手に自分が動こうものなら足を引っ張る。
さっきも自分を護る為、ベランドナは随分無理な角度でレイの拳銃を弾いたが故に手首を痛めた。
然もあのレイと云う大層巫山戯た女。
今は自動小銃Leythemendを碌に使わぬ御遊びに興じているのだ。
例えロイドでなくとも腹立たしき現状。完璧に生殺与奪の剣を銀髪の女レイに握られた形。
レイが本気の裁きを下せば最後。三人同刻の死刑を執行されゆく屈辱の敗北が戦素人なロイドの幼い甘さ残る眼にも容易く浮かんだ。
「二人掛かり──構わねえ。何ならそこの餓鬼もまとめて面倒みてやるよこのレイ様が!」
ファグナレンから借りた短剣二刀を折れた手首ものともせず握り全霊を振るうベランドナ。未だ自分に仕込んだ戦乙女の力は残っている。
それにも関わらず余裕の笑みを絶やさず避け続けるレイの機動。そして偶にベランドナの背後へ見せびらかすLeythemendの殺意。何時、何処でも殺れる遊戯の現れ。
ズダダッ!
カンッ! カンッ!
弾け飛ぶ連射の音を乾いた何かが跳ね返した轟き。
顔を顰めたファグナレンが仕込みの小手を自ら差し出し、美しく嫋やかなる女性の盾になるのを望んだ証。
「ファグナレン!」
「ぐぅッ! 腕に穴が空いたかと思ったぞ!」
最新式の防具を貫かれたが如き錯覚感じたファグナレンの腕。ベランドナの鎧は僅かに機動性重視。その実、装甲が薄い。
ファグナレンは元来なる騎士の出で立ち。依って何とかLeythemendから放たれた銃弾の雨霰を、風の護り抜きの自力で防いだ。
「御婦人同士が殺り合うのは俺の性に合わん。だがな、貴女の様な清らかなる女が一方的に殺られる様は、いよいよ以て見るに堪えんッ!」
ファグナレンの玉砕覚悟──両腕の小手を突き出し真正面からレイに飛び込む無謀。
最早後ろから撃たれるが本望。例え殺されてもレイを押し倒す一矢の報いを欲した。
300歳越えの小娘から伝わる淀んだ殺意が突如勢い盛んな男に入れ替わる変遷ぶり。
レイが滲ます余裕の笑みが初めて霞んだ。
然しそれでも揺るがぬ殺しの哲学に手馴れたレイの応戦。
ごく自然──両手に掴んだLeythemend二丁を称賛溢れた目前の男の鼻面へ葬送なる手向け。
次の刹那、勇猛果敢な騎士の命が確実に消え失せると感じたベランドナの絶望。
有能な戦士からただの心優しき女性へ戻る挫けた心が琥珀色に涙滲まし目を背けた。
ダンッ!
されど次に響いた轟音──。
無双なるレイ、命知らずなファグナレン、失意のベランドナ……。
その何れでもなき強かに地面踏み鳴らした足音。やった当人が最も信じ難い顔色を浮かべた。
ロイド少年が大人同士の間へ割って押し入り、自動小銃を握るレイの両手首をメイスで叩き落としたのだ。
「──ぐっ!?」
「「──なっ!?」」
ファグナレンへトドメの一撃を決める筈だったレイに取って視界はおろか感覚の範疇外である邪魔なる者。
両手の痛手に顔を顰めたレイ。不覚にも愛込めた拳銃達を地面へ落とす。
想定外なのは救われたファグナレンと失意のベランドナとて同類。この争いの渦中──最も瞠目した視界をロイドへ向けた。
──な、なんだこの漲る力は!?
メイスを握った己の手や脚を震えた視界で覗き込むロイドの驚異。
──そ、それに何だか知らない人の声が聞こえる?
まさしく文字通り降って湧いたロイドの見知らぬ力の根源。どう扱うのが正解なのか当人の気分の方が追い付けない。
「元ヴァロウズのレイッ! この俺が相手してやる! もし負けたら俺の言う事を何でも聞いて貰うぞ!」
握ったメイスでレイを指しつつ激しき台詞を吐いたロイド自身が茫然自失──は、ハァッ!? ぼ、僕は一体何をぉ?
ズダダッ! ズダダッ!
言葉をぶちかまされたレイ──ロイドの足元を撃ち抜く怒りの発砲。
「おぃクッソ餓鬼ィィッ! 調子こいてんじゃぁねえぞッ!」
怒髪冠を衝かずにいられぬレイの雄叫びを呼び込む必然。
肩で切り揃えた彼女の銀髪。不意に強まる風になびき、目線が合えば瞬時を以て石にされゆくメドゥーサの形相を匂わした。
『レイは一度マーダを裏切った自由人。意識を突けば勝手に折れる』
『頑張っ! 今言えないけど訳在って君だけが頼りなの!』
何やら身勝手にも自分の中へ押し入り叫ぶ若い男女二人の意識。訳の判らぬロイド少年。
──然し絶対的な力を欲する若者の我欲を存分に刺激した──
ブォンッ!
まさしく別人達が乗り移ったロイドが地面を蹴り、レイへ真正面からへメイスを握り締め飛び掛かる無策。
されどその目に宿る勇猛ぶりは本物──人の脚力とは到底思えぬ風抜く速度を届ける。
──速いッ!? だがッ!
どれだけ人の脚力を増そうが音速超える銃弾に追いつき越せる訳なき事実。
レイ──弾倉未だ残るLeythemendを少年の眉間狙い撃つべく引き金をひこうとした矢先。
『──レイ。貴女は……少なくともあの刻俺達と共に戦った貴女はこんな酷いやり方を望む女じゃなかった』
──て、手前? あん時の英雄気取り野郎か!?
さっきロイドに殴られた手首からレイの脳裏へ伝わる謎の一声。
忘れない、忘れようがなき激しき戦闘──。
正邪問わぬ戦にまるで正義の味方が最後は必ず決める気持ち好い風音聞こえた高揚。
さらにマーダからのタガを自ら外した自由を望んだ争いの記憶。
相手との力量差など全く顧みず、好きな者達を護る為のみに命張った心地良さ──好きに振る舞って構わぬ尊さをレイに教えてくれた存在。
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