🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第79話『AHuman’s Place(人の在り処)』 B Part

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 空間転移を自在に用い二丁の拳銃を操るヴァロウズのレイを相手に苦戦をいられるベランドナとファグナレンの二人。

 よもや出陣したFortezaフォルテザ市に住まうヒビキとローダから感知されているなど知るよしもなかった。

 それは力不足で加勢かせい適わぬリイナの恋人候補ロイド少年とて同じであった。

 ──クソッ! こんな時に何も出来ないだなんて!

 自身の無力さに歯軋はぎしりするより他なきロイドの苛立いらだち。ほんのわずかでも森の天使リイナに近づきたい男子の本懐下心

 こんな処で足踏みしか成せぬ未だ足りない成長度合。悔やんでも悔やみきれない。

 同時に浮かぶリイナへ対する想いのたけ。強さを求める理由に不釣り合いな不謹慎ふきんしんと心中で闘う押し合うロイド。

 だが下手に自分が動こうものなら足を引っ張る。
 さっきも自分を護る為、ベランドナは随分ずいぶん無理な角度でレイの拳銃をはじいたが故に手首を痛めた。

 然もあのレイと云う大層巫山戯ふざけた女。
 今は自動小銃Leyレイthemendジメンドろくに使わぬ御遊びにきょうじているのだ。
  例えロイドでなくとも腹立たしき現状。完璧に生殺与奪せいさつよだつを銀髪の女レイに握られた形。

 レイが本気のさばきを下せば最後。三人同刻の死刑を執行しっこうされゆく屈辱くつじょくの敗北が戦素人いくさしろうとなロイドのおさなあまさ残るまなこにも容易たやすく浮かんだ。

「二人掛かり──構わねえ。何ならそこの餓鬼ロイドもまとめて面倒みてやるよこのレイ様が!」

 ファグナレンから借りた短剣ダガー二刀を折れた手首ものともせず握り全霊ぜんれいを振るうベランドナ。未だ自分に仕込んだ戦乙女ヴァルキュリアの力は残って宿っている。

 それにも関わらず余裕の笑みをやさず避け続けるレイの機動異常。そしてたまにベランドナの背後へ見せびらかすLeyレイthemendジメンド殺意銃口何時いつ何処どこでも殺れる遊戯戯れの現れ。

 ズダダッ!
 カンッ! カンッ!

 はじけ飛ぶ連射の音を乾いた何かが跳ね返したとどろき。
  顔をしかめたファグナレンが仕込みの小手を自ら差し出し、美しくたおやかなる女性のベランドナの盾になるのを望んだ証。

「ファグナレン!」
「ぐぅッ! 腕に穴が空いたかと思ったぞ!」

 最新式の防具をつらぬかれたがごと錯覚さっかく感じたファグナレンのかいな。ベランドナの鎧はわずかに機動性軽量重視。その実、装甲が薄い。

 ファグナレンは元来なる騎士より強化なカーボン製の鎧の出で立ち。依って何とかLeyレイthemendジメンドから放たれた銃弾の雨霰あめあられを、風の護り抜きの自力で防いだ。

「御婦人同士が殺り合うのは俺のしょうに合わん。だがな、貴女の様な清らかなる女が一方的に殺られる様は、いよいよ以て見るにえんッ!」

 ファグナレンの玉砕ぎょくさい覚悟──両腕の小手を突き出し真正面からレイに飛び込む無謀。
  最早もはや後ろから撃たれるが本望。例え殺されてもレイを押し倒す一矢いっしむくいを欲した。

 300歳越えのから伝わるよどんだ殺意が突如とつじょ勢い盛んな男に入れ替わる変遷へんせんぶり。
 レイがにじます余裕の笑みが初めてかすんだ。

 然しそれでもるがぬ殺しの哲学に手馴てなれたレイの応戦。
 ごく自然──両手につかんだLeyレイthemendジメンド二丁を称賛しょうさんあふれた目前の男ファグナレン鼻面はなづら葬送そうそうなる

 次の刹那せつな勇猛果敢な騎士ファグナレンの命が確実に消え失せると感じたベランドナの絶望。
 有能な戦士からただの心優しき女性へ戻るくじけた心が琥珀色こはくいろに涙にじまし目をそむけた。

 ダンッ!
 されど次に響いた轟音ごうおん──。
 無双むそうなるレイ、命知らずなファグナレン、失意のベランドナ……。

 その何れでもなきしたたかに地面踏み鳴らした足音。やった当人が最も信じ難い顔色を浮かべた。

 ロイド少年が大人同士の間へ割って押し入り、自動小銃を握るレイの両手首をメイスで叩き落としたのだ。

「──ぐっ!?」
「「──なっ!?」」

 ファグナレンへトドメの一撃を決める筈だったレイに取って視界はおろか感覚の範疇外はんちゅうである邪魔なる者。
 両手の痛手に顔をしかめたレイ。不覚にも込めた拳銃を地面へ落とす。

 想定外なのは救われたファグナレンと失意のベランドナとて同類。この争いの渦中かちゅう──最も瞠目どうもくした視界をロイドへ向けた。

 ──な、なんだこのみなぎる力は!?

 メイスを握った己の手や脚を震えた視界でのぞき込むロイドの驚異きょうい

 ──そ、それに何だか知らない人の声意識の叫びが聞こえる?

 まさしく文字通り降って湧いたロイドの見知らぬ力の根源こんげん。どう扱うのが正解なのか当人の気分の方が追い付けない。

ヴァロウズのレイッ! このが相手してやる! もし負けたらの言う事を何でも聞いて貰うぞ!」

 握ったメイスでレイを指しつつ激しき台詞を吐いたロイド自身が茫然自失ぼうぜんじっしつ──は、ハァッ!? ぼ、僕は一体何をぉ?

 ズダダッ! ズダダッ!
 言葉をぶちかまされたレイ──ロイドの足元を撃ち抜く怒りの発砲。

「おぃクッソ餓鬼がきィィッ! 調子こいてんじゃぁねえぞッ!」

 怒髪冠どはつてんかずにいられぬレイの雄叫おたけびを呼び込む必然。
 肩で切りそろえた彼女の銀髪。不意に強まる風になびき、目線が合えば瞬時を以て石にされゆくメドゥーサの形相異形におわした。

『レイは一度マーダを裏切った自由人。意識その辺りを突けば勝手に折れる』
頑張ガンバっ! 今言えないけど訳在って君だけが頼りなの!』

 何やら身勝手にも自分の中へ押し入り叫ぶ若い男女二人の意識。訳の判らぬロイド少年。

 ──然し絶対的な力を欲する若者の我欲がよくを存分に刺激した──

 ブォンッ!

 まさしく別人達が乗り移ったロイドが地面を蹴り、レイへ真正面からへメイスを握り締め飛び掛かる無策。
 されどその目に宿るを燃やす勇猛ゆうもうぶりは本物──人の脚力とは到底思えぬ速度を届ける。

 ──速いッ!? だがッ!

 どれだけ人の脚力を増そうが音速超える銃弾に追いつき越せる訳なき事実。
 レイ──弾倉未だ残るLeyレイthemendジメンドを少年の眉間みけん狙い撃つべく引き金をひこうとした矢先。

『──レイ。貴女は……少なくともあのとき俺達と共に戦った貴女はこんな酷いやり方を望むじゃなかった』

 ──て、手前テメェ? あん時の英雄ヒーロー気取り野郎か!?

 さっきロイドになぐられた手首からレイの脳裏へ伝わる謎の一声。

 忘れない、忘れようがなき激しき戦闘──。
 正邪せいじゃ問わぬいくさにまるで正義の味方が最後は必ず気持ち好い風音かぜおと聞こえた高揚こうよう

 さらにマーダルイスからのタガを自ら外した自由を望んだ争いの記憶。
 相手との力量差など全くかえりみず、好きな者達を護る為のみに命張った心地良さ──好きに振る舞って構わぬとうとさをレイに教えてくれた存在。

 Fortezaフォルテザを襲った外敵ルヴァエルを相手取り、共に命を張った若輩じゃくはい過ぎる英雄──ローダ・ロットレンの叱咤しったに違いなかった。
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