🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第80話『Freedom&Justice(奔放なる正義)』 A Part

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 変身した様に際立きわだ強靭きょうじんさを突然引き出したロイド相手に、よもやよもやな苦戦をいられるヴァロウズのレイ。

 ロイドのメイスに依って叩き落とされた両手首へ走る激痛。実の処、ベランドナと同様。彼女の方も折れていた。

 だが──そんな痛みすら吹き飛ばしたレイへ侵入果たした意識の波風。
 実に甘っちょろい英雄ヒーロー女傑ヒロインに思えたローダとルシアの存在。その片割れ成す男の気分がレイの中に潜む正義の魂を大いに揺さぶる。

 ガシャンッ!

「な、何故手前英雄気取りが此処に居やがる!」
「──ッ?」

 落とした拳銃を拾うことも異空間へ飛ばす操舵そうだ何れも間に合わぬと咄嗟とっさに判断下したレイは、銀色のコートの裏側に隠し持った護身用のを振り出す。
 
 ロイドが本来持つ力をはるかに凌駕りょうがした振り下ろすメイスの一閃いっせん如何どうにかしのいだ。

 折られても未だ繋がり迄は失ってなかった手首がいよいよ引き千切ちぎられたと感じたレイの錯覚さっかく。歯を喰い縛り痛みにあらがう。

 されど相対あいたいするロイドやベランドナ、ファグナレンの注意を引いたのはレイの吐いた台詞だ。『何故此処に居る?』とはどうした事か。

 ロイドへこの力をで貸した相手は語る迄もないローダ・ロットレンの想像を創造へ転化てんか成せる具現ぐげん
 かつてローダはレイと共同戦線を張ったおり、彼女の異能を測って覚えておいた。

 すなわちローダはあの時の経験値から、対レイ戦に於ける対抗策を見出みいだせる存在。その経験則けいけんそくを今だけロイドへ余す処なく注ぎ込んだ。

 この大層便利でかつ大変親切なをロイド少年へ紹介してを繋いだ──力を欲しがる世界中にはおろか巨万でも足りぬ存在人間の意識をにするヒビキに他ならぬ。

 さらにローダから借りた力を以て負債抱えた手首折られた脆弱な穴セキュリティホールにも父ローダの意志をれ流したヒビキ天性魔性の力。

 今やレイ最大の敵は目の前に居る3名ではなく、数百Km離れた街Fortezaフォルテザにて精神メンタルのみ取り扱い、身体フィジカルは一切張らぬロットレン父娘。
 加えてこの両者が半ば無理矢理引き出したレイ過去の歴史思い出──彼女本来の正義感なのだ。

 ◇◇

 旧スペイン領──られた他国を。スペイン大航海時代の繁栄を欲し名付けられた『レコンキスタ』生まれのレイ。

 Leyと云う名前は今時分の名付け。当時はエメリアと云う如何いかにも女性らしさあふれる本名であった。

 貧民街スラムで生まれ育った彼女の父親は警察官。任務の最中、不幸にも命を落とす殉職じゅんしょく

『馬鹿みたい……。護った処で一銭いっせんにもならない貧乏人を助ける為、死ぬだなんて』

 少女──もとい処女の内に失われたエメリアの父性。その後、一刻も早く大人生娘になりたかったを捨てたかったくだりは既に語った通り。

 なれど血は争えぬものなり──。
 母は足りぬ生活費をかせぐべく売女バイタへ身をついやす。一番身近に居る者が犯罪灰色に近しい……。そんな様子を普段から取り巻けば他の道が見えなかったのだ。

 もうひとつ──エメリアだった頃の彼女が信頼寄せた物。それは銃器。
 正義の在り処が常に揺らぐ他人──引き金は当てさえすれば決して自分を裏切らない。だから合法的にも銃を人へ向けられる警官を望んだ。
 
 エメリアの拳銃に対する愛が成した御業みわざか──。
 いは犯罪仕事が一向に減らぬ貧民街スラムに依る必然なのか。
 警察官──。法にじゅんじたエメリアはわびしき出世街道を直向ひたむきに昇りつめ、ただの警官が刑事まで駆け上がる。 
 
 エメリア──気がつけば決して創らぬと決めていた子供を仕事の出来る同僚『バラッド』と成し、あろうことか籍まで入れた。

 けれどもこのバラッド『捜査そうさだ』といつわり出掛け、身籠みごも色欲しきよく満たせぬエメリアの代わりを外に

 またしても身内からの裏切り、見限みかぎられたエメリアの正義。
 泥棒猫相手の女を撃ち自身も果てようと決めた矢先。バラッドが身を挺してそのを救う皮肉を呼んだ。

 以来エメリアは、祖国も身籠みごもった我が子も死産の別れ。
 己の名前人生すら投げ捨て『好きに生きる』をつらぬいた──つもりでいたのだ。
 
 生きて神を名乗るマーダの傘下に入り『何しろ神──次こそ』とどのつまり、生き方を変えられずアドノス島にて自由をうそぶき生き長らえた。

 ◇◇

 ──Maldito bastardo(クッソ野郎)! 何が英雄だッ! 絶対の正義なんか何処にもありゃしねえッ! 

 結局の処、Leyレイthemendジメンドと自信をLeyえる以外に彼女の正義に対するうずきをめるすべはないとさだめた。

 ローダなんて未だケツの青そうな若者から『レイ──お前の正義は何処に在る?』腹立たしきごみに等しい質問を魂へ投じられた屈辱くつじょく

 加えてそれを目の前で体現たいげんしながら借り物の正義を振りかざす若過ぎるロイド少年。

 手首を折られた激痛──。
 レイの中で揺られ続ける正義の在り方──。

 そんなものが折り重なり彼女は空間転移なんて類稀たぐいまれなる異能を扱えぬ底辺にちた。

「親ぁッ! 愛ぃッ! 仕事の同僚ぉッ! そして世界ッ! 総てに裏切られたんだ俺はァァッ!」

 例えローダの力を借りたとはいえ子供に近しい少年相手。もぅ忘れ去りたいがまさかな最後の頼み
 天上から振り下ろされたロイドのメイスと交えながらもジリジリと押され始める。悔し涙が血涙けつるいへ転じた。最早心の声を咆哮ほうこうへ乗せたレイ。

「何故だッ! は正義が欲しかっただけなのにぃッ! おぃ英雄気取り野郎ォォッ! 手前テメェなら──お前にけば絶対に辿り着けるのかァッ!」

 ローダとヒビキが加勢した途端とたん、命危うかったベランドナやファグナレンでさえレイの堕天だてんぶりを見ていられぬ気分に落ちた。

『いや、それはない。──レイ、お前の正義は自分の中に在る。それこそ世界唯一の絶対だ』

 レイの余りに痛々しき訴えを冷静な言葉ひとつで片付けるローダ

『もし俺がお前に正義を強要すれば、それはマーダと同じだ』
「──ッ!」

 レイの魂だけに響き渡るローダの発言。
 疲れ果て、下げた銀髪に埋もれていたレイの細い目が一挙見開き、陽が落ち始めた夕どきの暗がり、希望をみつけた光を放つ。

『レイ……。俺はお前が正直うらやましかった。俺の兄貴ルイスへ堂々云った言葉『俺がLeyだ』──好いじゃないか最後までつらぬけよ。アレこそ本物の正義だ』

 冷たかったローダの言葉に温かみが入り混じるのを確実に感じ取ったレイ、肩の震えが始まるのを止められない恥辱ちじょく

 俺が法──。
 アレは単なる強がりと好きに在りたい己への言い訳に過ぎなかった。

「──ローダさんでしたか。僕はもうこの女性を殴れません。僕が信じるしたがいます」 
「なん…ですってぇ」

 借り物の声ではないロイド自身が起こした行動。
 弱り切った敵の女性を攻め続ける事──それは聖職者であった両親から習った正義に反すると云うロイドの主張。

 そして何を置いても自分の力じゃないものにすがって勝敗を決める。ロイド──漢の意地プライドが赦さなかった。

 ドサッ……。
 ひざからくずれ落ちたレイの敗北。正直ローダの言葉よりも俄然がぜん届いたロイドが説いた正義のことわり

 レイ──。
 血のにじんだ涙が透明で清らかなものへと生まれ変わった。
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