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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第80話『Freedom&Justice(奔放なる正義)』 A Part
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変身した様に際立つ強靭さを突然引き出したロイド相手に、よもやよもやな苦戦を強いられるヴァロウズのレイ。
ロイドのメイスに依って叩き落とされた両手首へ走る激痛。実の処、ベランドナと同様。彼女の方も折れていた。
だが──そんな痛みすら吹き飛ばしたレイへ侵入果たした意識の波風。
実に甘っちょろい英雄と女傑に思えたローダとルシアの存在。その片割れ成す男の心がレイの中に潜む正義の魂を大いに揺さぶる。
ガシャンッ!
「な、何故手前が此処に居やがる!」
「──ッ?」
落とした拳銃を拾うことも異空間へ飛ばす操舵何れも間に合わぬと咄嗟に判断下したレイは、銀色のコートの裏側に隠し持った護身用の警棒を振り出す。
ロイドが本来持つ力を遥かに凌駕した振り下ろすメイスの一閃を如何にか凌いだ。
折られても未だ繋がり迄は失ってなかった手首がいよいよ引き千切られたと感じたレイの錯覚。歯を喰い縛り痛みに抗う。
されど相対するロイドやベランドナ、ファグナレンの注意を引いたのはレイの吐いた台詞だ。『何故此処に居る?』とはどうした事か。
ロイドへこの力を無利息で貸した相手は語る迄もないローダ・ロットレンの想像を創造へ転化成せる具現。
嘗てローダはレイと共同戦線を張った折、彼女の異能を測って覚えておいた。
即ちローダはあの時の経験値から、対レイ戦に於ける対抗策を見出せる存在。その経験則を今だけロイドへ余す処なく注ぎ込んだ。
この大層便利でかつ大変親切な金貸しをロイド少年へ紹介して振込先を繋いだ巨大銀行──力を欲しがる世界中に五万はおろか巨万でも足りぬ存在の意識を顧客にするヒビキに他ならぬ。
さらにローダから借りた力を以て負債抱えた脆弱な穴にも父ローダの意志を垂れ流したヒビキ天性の力。
今やレイ最大の敵は目の前に居る3名ではなく、数百Km離れた街Fortezaにて精神のみ取り扱い、身体は一切張らぬロットレン父娘。
加えてこの両者が半ば無理矢理引き出したレイ過去の歴史──彼女本来の正義感なのだ。
◇◇
旧スペイン領──獲られた他国を再侵略。スペイン大航海時代の繁栄を欲し名付けられた『レコンキスタ』生まれのレイ。
Leyと云う名前は今時分の名付け。当時はエメリアと云う如何にも女性らしさ溢れる本名であった。
貧民街で生まれ育った彼女の父親は警察官。任務の最中、不幸にも命を落とす殉職に果てた。
『馬鹿みたい……。護った処で一銭にもならない貧乏人を助ける為、死ぬだなんて』
少女──もとい処女の内に失われたエメリアの父性。その後、一刻も早く大人になりたかった件は既に語った通り。
なれど血は争えぬもの也──。
母は足りぬ生活費を稼ぐべく売女へ身を費やす。一番身近に居る者が犯罪に近しい……。そんな様子を普段から取り巻けば他の道が見えなかったのだ。
もうひとつ──エメリアだった頃の彼女が信頼寄せた物。それは銃器。
正義の在り処が常に揺らぐ他人──引き金は当てさえすれば決して自分を裏切らない。だから合法的にも銃を人へ向けられる警官を望んだ。
エメリアの拳銃に対する愛が成した御業か──。
或いは犯罪が一向に減らぬ貧民街に依る必然なのか。
警察官──。法に殉じたエメリアは侘しき出世街道を直向きに昇りつめ、ただの警官が刑事まで駆け上がる。
エメリア──気がつけば決して創らぬと決めていた子供を仕事の出来る同僚『バラッド』と成し、あろうことか籍まで入れた。
けれどもこのバラッド『捜査だ』と偽り出掛け、身籠り色欲満たせぬエメリアの代わりを外に設けた。
またしても身内からの裏切り、見限られたエメリアの正義。
泥棒猫を撃ち自身も果てようと決めた矢先。バラッドが身を挺してその猫を救う皮肉を呼んだ。
以来エメリアは、祖国も身籠った我が子も死産の別れ。
己の名前すら投げ捨て『好きに生きる』を貫いた──つもりでいたのだ。
生きて神を名乗るマーダの傘下に入り『何しろ神──次こそ絶対』とどのつまり、生き方を変えられずアドノス島にて自由を嘯き生き長らえた。
◇◇
──Maldito bastardo(クッソ野郎)! 何が英雄だッ! 絶対の正義なんか何処にもありゃしねえッ!
結局の処、Leythemendと自信を法と吼える以外に彼女の正義に対する疼きを治める術はないと定めた。
ローダなんて未だケツの青そうな若者から『レイ──お前の正義は何処に在る?』腹立たしき塵に等しい質問を魂へ投じられた屈辱。
加えてそれを目の前で体現しながら借り物の正義を振り翳す若過ぎるロイド少年。
手首を折られた激痛──。
レイの中で揺られ続ける正義の在り方──。
そんなものが折り重なり彼女は空間転移なんて類稀なる異能を扱えぬ底辺に堕ちた。
「親ぁッ! 愛ぃッ! 仕事の同僚ぉッ! そして神ッ! 総てに裏切られたんだ俺はァァッ!」
例えローダの力を借りたとはいえ子供に近しい少年相手。もぅ忘れ去りたい警棒がまさかな最後の綱。
天上から振り下ろされたロイドのメイスと交えながらもジリジリと押され始める。悔し涙が血涙へ転じた。最早心の声を咆哮へ乗せたレイ。
「何故だッ! 私は正義が欲しかっただけなのにぃッ! おぃ英雄気取り野郎ォォッ! 手前なら──お前に就けば絶対に辿り着けるのかァッ!」
ローダとヒビキが加勢した途端、命危うかったベランドナやファグナレンでさえレイの堕天ぶりを見ていられぬ気分に落ちた。
『いや、それはない。──レイ、お前の正義は自分の中に在る。それこそ世界唯一の絶対だ』
レイの余りに痛々しき訴えを冷静な言葉ひとつで片付けるローダ節。
『もし俺がお前に正義を強要すれば、それはマーダと同じだ』
「──ッ!」
レイの魂だけに響き渡るローダの発言。
疲れ果て、下げた銀髪に埋もれていたレイの細い目が一挙見開き、陽が落ち始めた夕暮れ刻の暗がり、希望をみつけた光を放つ。
『レイ……。俺はお前が正直羨ましかった。俺の兄貴へ堂々云った言葉『俺が法だ』──好いじゃないか最後まで貫けよ。アレこそ本物の正義だ』
冷たかったローダの言葉に温かみが入り混じるのを確実に感じ取ったレイ、肩の震えが始まるのを止められない恥辱。
俺が法──。
アレは単なる強がりと好きに在りたい己への言い訳に過ぎなかった。
「──ローダさんでしたか。僕はもうこの人を殴れません。僕が信じる正義に従います」
「なん…ですってぇ」
借り物の声ではないロイド自身が起こした行動。
弱り切った敵の女性を攻め続ける事──それは聖職者であった両親から習った正義に反すると云うロイドの主張。
そして何を置いても自分の力じゃないものに縋って勝敗を決める。ロイド──漢の意地が赦さなかった。
ドサッ……。
膝から崩れ落ちたレイの敗北。正直ローダの言葉よりも俄然届いたロイドが説いた正義の理。
レイ──。
血の滲んだ涙が透明で清らかなものへと生まれ変わった。
ロイドのメイスに依って叩き落とされた両手首へ走る激痛。実の処、ベランドナと同様。彼女の方も折れていた。
だが──そんな痛みすら吹き飛ばしたレイへ侵入果たした意識の波風。
実に甘っちょろい英雄と女傑に思えたローダとルシアの存在。その片割れ成す男の心がレイの中に潜む正義の魂を大いに揺さぶる。
ガシャンッ!
「な、何故手前が此処に居やがる!」
「──ッ?」
落とした拳銃を拾うことも異空間へ飛ばす操舵何れも間に合わぬと咄嗟に判断下したレイは、銀色のコートの裏側に隠し持った護身用の警棒を振り出す。
ロイドが本来持つ力を遥かに凌駕した振り下ろすメイスの一閃を如何にか凌いだ。
折られても未だ繋がり迄は失ってなかった手首がいよいよ引き千切られたと感じたレイの錯覚。歯を喰い縛り痛みに抗う。
されど相対するロイドやベランドナ、ファグナレンの注意を引いたのはレイの吐いた台詞だ。『何故此処に居る?』とはどうした事か。
ロイドへこの力を無利息で貸した相手は語る迄もないローダ・ロットレンの想像を創造へ転化成せる具現。
嘗てローダはレイと共同戦線を張った折、彼女の異能を測って覚えておいた。
即ちローダはあの時の経験値から、対レイ戦に於ける対抗策を見出せる存在。その経験則を今だけロイドへ余す処なく注ぎ込んだ。
この大層便利でかつ大変親切な金貸しをロイド少年へ紹介して振込先を繋いだ巨大銀行──力を欲しがる世界中に五万はおろか巨万でも足りぬ存在の意識を顧客にするヒビキに他ならぬ。
さらにローダから借りた力を以て負債抱えた脆弱な穴にも父ローダの意志を垂れ流したヒビキ天性の力。
今やレイ最大の敵は目の前に居る3名ではなく、数百Km離れた街Fortezaにて精神のみ取り扱い、身体は一切張らぬロットレン父娘。
加えてこの両者が半ば無理矢理引き出したレイ過去の歴史──彼女本来の正義感なのだ。
◇◇
旧スペイン領──獲られた他国を再侵略。スペイン大航海時代の繁栄を欲し名付けられた『レコンキスタ』生まれのレイ。
Leyと云う名前は今時分の名付け。当時はエメリアと云う如何にも女性らしさ溢れる本名であった。
貧民街で生まれ育った彼女の父親は警察官。任務の最中、不幸にも命を落とす殉職に果てた。
『馬鹿みたい……。護った処で一銭にもならない貧乏人を助ける為、死ぬだなんて』
少女──もとい処女の内に失われたエメリアの父性。その後、一刻も早く大人になりたかった件は既に語った通り。
なれど血は争えぬもの也──。
母は足りぬ生活費を稼ぐべく売女へ身を費やす。一番身近に居る者が犯罪に近しい……。そんな様子を普段から取り巻けば他の道が見えなかったのだ。
もうひとつ──エメリアだった頃の彼女が信頼寄せた物。それは銃器。
正義の在り処が常に揺らぐ他人──引き金は当てさえすれば決して自分を裏切らない。だから合法的にも銃を人へ向けられる警官を望んだ。
エメリアの拳銃に対する愛が成した御業か──。
或いは犯罪が一向に減らぬ貧民街に依る必然なのか。
警察官──。法に殉じたエメリアは侘しき出世街道を直向きに昇りつめ、ただの警官が刑事まで駆け上がる。
エメリア──気がつけば決して創らぬと決めていた子供を仕事の出来る同僚『バラッド』と成し、あろうことか籍まで入れた。
けれどもこのバラッド『捜査だ』と偽り出掛け、身籠り色欲満たせぬエメリアの代わりを外に設けた。
またしても身内からの裏切り、見限られたエメリアの正義。
泥棒猫を撃ち自身も果てようと決めた矢先。バラッドが身を挺してその猫を救う皮肉を呼んだ。
以来エメリアは、祖国も身籠った我が子も死産の別れ。
己の名前すら投げ捨て『好きに生きる』を貫いた──つもりでいたのだ。
生きて神を名乗るマーダの傘下に入り『何しろ神──次こそ絶対』とどのつまり、生き方を変えられずアドノス島にて自由を嘯き生き長らえた。
◇◇
──Maldito bastardo(クッソ野郎)! 何が英雄だッ! 絶対の正義なんか何処にもありゃしねえッ!
結局の処、Leythemendと自信を法と吼える以外に彼女の正義に対する疼きを治める術はないと定めた。
ローダなんて未だケツの青そうな若者から『レイ──お前の正義は何処に在る?』腹立たしき塵に等しい質問を魂へ投じられた屈辱。
加えてそれを目の前で体現しながら借り物の正義を振り翳す若過ぎるロイド少年。
手首を折られた激痛──。
レイの中で揺られ続ける正義の在り方──。
そんなものが折り重なり彼女は空間転移なんて類稀なる異能を扱えぬ底辺に堕ちた。
「親ぁッ! 愛ぃッ! 仕事の同僚ぉッ! そして神ッ! 総てに裏切られたんだ俺はァァッ!」
例えローダの力を借りたとはいえ子供に近しい少年相手。もぅ忘れ去りたい警棒がまさかな最後の綱。
天上から振り下ろされたロイドのメイスと交えながらもジリジリと押され始める。悔し涙が血涙へ転じた。最早心の声を咆哮へ乗せたレイ。
「何故だッ! 私は正義が欲しかっただけなのにぃッ! おぃ英雄気取り野郎ォォッ! 手前なら──お前に就けば絶対に辿り着けるのかァッ!」
ローダとヒビキが加勢した途端、命危うかったベランドナやファグナレンでさえレイの堕天ぶりを見ていられぬ気分に落ちた。
『いや、それはない。──レイ、お前の正義は自分の中に在る。それこそ世界唯一の絶対だ』
レイの余りに痛々しき訴えを冷静な言葉ひとつで片付けるローダ節。
『もし俺がお前に正義を強要すれば、それはマーダと同じだ』
「──ッ!」
レイの魂だけに響き渡るローダの発言。
疲れ果て、下げた銀髪に埋もれていたレイの細い目が一挙見開き、陽が落ち始めた夕暮れ刻の暗がり、希望をみつけた光を放つ。
『レイ……。俺はお前が正直羨ましかった。俺の兄貴へ堂々云った言葉『俺が法だ』──好いじゃないか最後まで貫けよ。アレこそ本物の正義だ』
冷たかったローダの言葉に温かみが入り混じるのを確実に感じ取ったレイ、肩の震えが始まるのを止められない恥辱。
俺が法──。
アレは単なる強がりと好きに在りたい己への言い訳に過ぎなかった。
「──ローダさんでしたか。僕はもうこの人を殴れません。僕が信じる正義に従います」
「なん…ですってぇ」
借り物の声ではないロイド自身が起こした行動。
弱り切った敵の女性を攻め続ける事──それは聖職者であった両親から習った正義に反すると云うロイドの主張。
そして何を置いても自分の力じゃないものに縋って勝敗を決める。ロイド──漢の意地が赦さなかった。
ドサッ……。
膝から崩れ落ちたレイの敗北。正直ローダの言葉よりも俄然届いたロイドが説いた正義の理。
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