171 / 171
第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第80話『Freedom&Justice(奔放なる正義)』 B Part
しおりを挟む
元ヴァロウズNo10のレイ──。
俺が法だと豪語するのを決して辞めなかった女。敗北の末路。
16歳ロイドまさかの反抗と力を寄越したFortezaの英雄ローダ・ロットレンとその娘ヒビキ。
陽が暮れ人が移り変わる黄昏刻──。
絶対的正義を求めこれ迄ずっと日々の天候が如く移ろいでいたレイ。揺るがぬ正義は自分の内なる価値だと漸く知れた。
「──Daddy, fuiste justo hasta el momento de tu muerte(父さん、アンタ死ぬ間際まで正義だったよ)」
同刻──。
これまで自分の気持ちを裏切り続けた者達へ泣きながら送る懺悔。
皆それぞれ正義の形が在るのを気づく──否、正義の探究者であるレイは知りながらも離別の哀しみを認め切れず総てを否定し続けたのだ。
「Mum……gracias por criarme(母さん……私を育ててくれて有難う)」
太陽が落ちた後も次は星々とこれ迄の人生を重ねて捧ぎ注いだ。
総ての者共がそれぞれの正義を抱えながら誰にも頼れぬ強さがあった。
唯一愛を貫いた同僚の刑事バラッドが不倫相手の女性を護り死んだのは、女が警察の組織と貧民街が裏側で繋がる汚職を知り得た存在だった顛末。
だから殺す訳にはゆかなかった──同僚殺しの罪を着せられた当時のエメリア。
組織のボスから牢獄に囚われた後、聞いた真実。捕縛されたまま臨月を迎え死産以外の道を選べなかった。
皆、戦い貫く理由を知り尽くしていた。
さりとて余りにも寂しさ募る結末だらけ。こんな悲しみしか残らないのなら、全部悪意だと切って捨てた。
語らぬ星に問い掛けるレイ、今更なる葬送。心に直接語り返す仲間達の調べが聞えた。
「──おぃ、英雄野郎。約束だ、何でも手前の云う事を聞く。俺は何をすれば良いか早く教えな」
過去へ謝り尽くし涙の枯れたレイが戻した口のあくどさ。ロイド少年の方を見ながらその向こうに見えるローダへの問い掛け。
『それこそ語る迄もない。貴女は知っているのに敢えて聞くのだな。──今度こそ真実の自由を貫け。俺の望みはそれだけだよ』
俺はレイ──。
存在自体を以て法を成せ。やはり冷たいローダの語り口。心の声音がレイに無情を届けた。
「ふふっ…英雄様は残酷なんだな」
散々負かしておきながら突き放すローダの言い草。残酷だと苦笑を重ねたレイ。『俺に着いて来い』余程救われる欲求を満たしてはくれなかった。
されどレイが思い描いた通りの返答である事に違いなかった。
「──『森の美女達の息吹』」
痛むレイの両手首を優しみ込め触れながらベランドナが唱えた呪文。彼女が契約している護りの女神の術式。
森の樹々が枝葉を伸ばしロイドに折られたレイの手首に触れゆく。森に棲む美女の姿をした精霊ドリュエルの集めた精気を人間へ注ぎ込む逆流の御業。
「耳長ぁ? 俺の怪我、態々治してくれんのかよ?」
「ベランドナです。私に負けた訳じゃないですが覚えて貰いますよ」
──ベランドナ…か。
骨折した痛み和らぐ最中、心の内側で刻んでみたレイ。旧語だが美しい存在を示す言葉。戦い終えてなお、金色の髪を流した名前に違わぬ女だと今さら知り得る。
「ふふっ……流石に覚えた。──あっ、それからな。俺様の正義がお前達は敵じゃねえってよ」
地面に落としたLeythemendの代わりのつもりか。治癒して貰った人差し指で造った銃口をベランドナの眉間に微笑みと共に添えた。
レイに取って本気で殺り合ってみたい相手には違いなかった。『今ので殺った』そんな処か。
「そう願いたいもの……ん?」
レイを強者だと認めた上で『2度は要らない』伏せた表情を使ったベランドナの念押しが淀んだ。
ドゥーウェン譲りのスマホが鳴らす着信音。未だ争いの空気漂う場所に流れた似合わぬ音調。
ピッ。
「はい……。やはりロイドさんの力は貴方達でしたか」
スマホの着信を受ける人間を越えたハイエルフ──大層奇妙な絵面。
新人類ヒビキの特殊能力など用いなくとも、ただ語り合うだけなら寂れた通信用人工衛星の恩恵が得られる。尤も先程の様なひりつく戦闘中なら別の話だ。
スマートフォンの向こう側に居るのはローダとヒビキ、必然の組合せ。
今回の争いを裏で操りレイを負かせた張本人が何故ロイドを媒介にしたのか。今となっては割と如何でもいい話を語り聞かせた。
心の扉を開け放ったままであるヒビキの能力を使い父ローダと繋げ、ロイドに本来在り得ぬ力を注いだ訳だがそれが最も楽に熟せそうなのがロイドだった。
ベランドナの事はヒビキも歳の離れ過ぎた友人として知り抜いている。
ならばベランドナこそ適格者と思いきや彼女は自我が強固過ぎた。ローダを入り込ませる余地がなかった。
ジェリド・アルベェラータの部下──短剣使いのファグナレンをヒビキが知り得たのは今回が初。見知らぬ男へ接触を試みる女子の苦悩は想像に容易い。
ならばロイドはどうか?
歳の近しいリイナから聞き及んだ恋バナの登場人物。16歳のヒビキが最も興味惹かれた存在。然も己の無力を恥じらい力を欲していた。
「そんな具合だ。ロイド君に済まなかったと謝ってくれると助かる。──あ、それからこんなやり方でなければレイに対する勝ち目を見出せなかった。これは伝えなくとも判る」
この辺り、扉を拓いた割にローダの妙な意固地を感じる。自分で一言告げれば済む話なのだがそれにはベランドナ、特段触れなかった。それより気になる点があるのだ。
「判りました。──ですがひとつ腑に落ちないです。私が意地っ張り?」
電話口の向こう側──FortezaのHOTELに住まうローダとヒビキがべランドナの呈する疑問に互いの顔を見合わせた。
──そ、そういう処なんだが……。
思わず「貸して」とパッパにスマホをねだるヒビキ。自分の声──同性の友人として直接言いたいらしい仕草。
「──あのねベランドナさん、そういう処だよ。何でも独りで背負い込み過ぎなんだよ」
「えっ……?」
ヒビキの口から発した心の奥底からベランドナへ伝えたい思い。
スマホを握りしめ独り固まるベランドナの驚き。
スマホのスピーカーから漏れ溢れたたヒビキの助言。
この場に居る誰もが伝えたかった代弁を聞き遂げ笑い袋の緒が切れたファグナレン。遠慮せず吹いた。
──だ、駄目だ。笑っちゃいけない……。
顔を背け身体震わすロイド少年の引き嗤い。全く以て隠せてなかった。
「ぶっ! い、今のが一番響いた!」
正義の在り処を見直す渦中のレイ。腹を抱え、責任感が人一倍強い悠久の森人を笑い飛ばした。
顔を朱に染め周囲のドタバタを見渡すベランドナの羞恥心。
仕事を頼めば自己犠牲の塊と化す。自分を顧みない責任感を以て依頼者を『Master』と呼ぶ仕事人の鏡が如き彼女。
レイにしてみれば正義を全面に押し出した女に思えた。だから本気で相手したい想いに駆られた裏腹。判り易いと正直感じた。
だが裏を返せばベランドナの様な存在が正義の名の元、大切な命を失い兼ねない最大手。
これは皆の総意──。
そして決して転がしてはならぬ賽の目だと想い案ずる切望であった。
俺が法だと豪語するのを決して辞めなかった女。敗北の末路。
16歳ロイドまさかの反抗と力を寄越したFortezaの英雄ローダ・ロットレンとその娘ヒビキ。
陽が暮れ人が移り変わる黄昏刻──。
絶対的正義を求めこれ迄ずっと日々の天候が如く移ろいでいたレイ。揺るがぬ正義は自分の内なる価値だと漸く知れた。
「──Daddy, fuiste justo hasta el momento de tu muerte(父さん、アンタ死ぬ間際まで正義だったよ)」
同刻──。
これまで自分の気持ちを裏切り続けた者達へ泣きながら送る懺悔。
皆それぞれ正義の形が在るのを気づく──否、正義の探究者であるレイは知りながらも離別の哀しみを認め切れず総てを否定し続けたのだ。
「Mum……gracias por criarme(母さん……私を育ててくれて有難う)」
太陽が落ちた後も次は星々とこれ迄の人生を重ねて捧ぎ注いだ。
総ての者共がそれぞれの正義を抱えながら誰にも頼れぬ強さがあった。
唯一愛を貫いた同僚の刑事バラッドが不倫相手の女性を護り死んだのは、女が警察の組織と貧民街が裏側で繋がる汚職を知り得た存在だった顛末。
だから殺す訳にはゆかなかった──同僚殺しの罪を着せられた当時のエメリア。
組織のボスから牢獄に囚われた後、聞いた真実。捕縛されたまま臨月を迎え死産以外の道を選べなかった。
皆、戦い貫く理由を知り尽くしていた。
さりとて余りにも寂しさ募る結末だらけ。こんな悲しみしか残らないのなら、全部悪意だと切って捨てた。
語らぬ星に問い掛けるレイ、今更なる葬送。心に直接語り返す仲間達の調べが聞えた。
「──おぃ、英雄野郎。約束だ、何でも手前の云う事を聞く。俺は何をすれば良いか早く教えな」
過去へ謝り尽くし涙の枯れたレイが戻した口のあくどさ。ロイド少年の方を見ながらその向こうに見えるローダへの問い掛け。
『それこそ語る迄もない。貴女は知っているのに敢えて聞くのだな。──今度こそ真実の自由を貫け。俺の望みはそれだけだよ』
俺はレイ──。
存在自体を以て法を成せ。やはり冷たいローダの語り口。心の声音がレイに無情を届けた。
「ふふっ…英雄様は残酷なんだな」
散々負かしておきながら突き放すローダの言い草。残酷だと苦笑を重ねたレイ。『俺に着いて来い』余程救われる欲求を満たしてはくれなかった。
されどレイが思い描いた通りの返答である事に違いなかった。
「──『森の美女達の息吹』」
痛むレイの両手首を優しみ込め触れながらベランドナが唱えた呪文。彼女が契約している護りの女神の術式。
森の樹々が枝葉を伸ばしロイドに折られたレイの手首に触れゆく。森に棲む美女の姿をした精霊ドリュエルの集めた精気を人間へ注ぎ込む逆流の御業。
「耳長ぁ? 俺の怪我、態々治してくれんのかよ?」
「ベランドナです。私に負けた訳じゃないですが覚えて貰いますよ」
──ベランドナ…か。
骨折した痛み和らぐ最中、心の内側で刻んでみたレイ。旧語だが美しい存在を示す言葉。戦い終えてなお、金色の髪を流した名前に違わぬ女だと今さら知り得る。
「ふふっ……流石に覚えた。──あっ、それからな。俺様の正義がお前達は敵じゃねえってよ」
地面に落としたLeythemendの代わりのつもりか。治癒して貰った人差し指で造った銃口をベランドナの眉間に微笑みと共に添えた。
レイに取って本気で殺り合ってみたい相手には違いなかった。『今ので殺った』そんな処か。
「そう願いたいもの……ん?」
レイを強者だと認めた上で『2度は要らない』伏せた表情を使ったベランドナの念押しが淀んだ。
ドゥーウェン譲りのスマホが鳴らす着信音。未だ争いの空気漂う場所に流れた似合わぬ音調。
ピッ。
「はい……。やはりロイドさんの力は貴方達でしたか」
スマホの着信を受ける人間を越えたハイエルフ──大層奇妙な絵面。
新人類ヒビキの特殊能力など用いなくとも、ただ語り合うだけなら寂れた通信用人工衛星の恩恵が得られる。尤も先程の様なひりつく戦闘中なら別の話だ。
スマートフォンの向こう側に居るのはローダとヒビキ、必然の組合せ。
今回の争いを裏で操りレイを負かせた張本人が何故ロイドを媒介にしたのか。今となっては割と如何でもいい話を語り聞かせた。
心の扉を開け放ったままであるヒビキの能力を使い父ローダと繋げ、ロイドに本来在り得ぬ力を注いだ訳だがそれが最も楽に熟せそうなのがロイドだった。
ベランドナの事はヒビキも歳の離れ過ぎた友人として知り抜いている。
ならばベランドナこそ適格者と思いきや彼女は自我が強固過ぎた。ローダを入り込ませる余地がなかった。
ジェリド・アルベェラータの部下──短剣使いのファグナレンをヒビキが知り得たのは今回が初。見知らぬ男へ接触を試みる女子の苦悩は想像に容易い。
ならばロイドはどうか?
歳の近しいリイナから聞き及んだ恋バナの登場人物。16歳のヒビキが最も興味惹かれた存在。然も己の無力を恥じらい力を欲していた。
「そんな具合だ。ロイド君に済まなかったと謝ってくれると助かる。──あ、それからこんなやり方でなければレイに対する勝ち目を見出せなかった。これは伝えなくとも判る」
この辺り、扉を拓いた割にローダの妙な意固地を感じる。自分で一言告げれば済む話なのだがそれにはベランドナ、特段触れなかった。それより気になる点があるのだ。
「判りました。──ですがひとつ腑に落ちないです。私が意地っ張り?」
電話口の向こう側──FortezaのHOTELに住まうローダとヒビキがべランドナの呈する疑問に互いの顔を見合わせた。
──そ、そういう処なんだが……。
思わず「貸して」とパッパにスマホをねだるヒビキ。自分の声──同性の友人として直接言いたいらしい仕草。
「──あのねベランドナさん、そういう処だよ。何でも独りで背負い込み過ぎなんだよ」
「えっ……?」
ヒビキの口から発した心の奥底からベランドナへ伝えたい思い。
スマホを握りしめ独り固まるベランドナの驚き。
スマホのスピーカーから漏れ溢れたたヒビキの助言。
この場に居る誰もが伝えたかった代弁を聞き遂げ笑い袋の緒が切れたファグナレン。遠慮せず吹いた。
──だ、駄目だ。笑っちゃいけない……。
顔を背け身体震わすロイド少年の引き嗤い。全く以て隠せてなかった。
「ぶっ! い、今のが一番響いた!」
正義の在り処を見直す渦中のレイ。腹を抱え、責任感が人一倍強い悠久の森人を笑い飛ばした。
顔を朱に染め周囲のドタバタを見渡すベランドナの羞恥心。
仕事を頼めば自己犠牲の塊と化す。自分を顧みない責任感を以て依頼者を『Master』と呼ぶ仕事人の鏡が如き彼女。
レイにしてみれば正義を全面に押し出した女に思えた。だから本気で相手したい想いに駆られた裏腹。判り易いと正直感じた。
だが裏を返せばベランドナの様な存在が正義の名の元、大切な命を失い兼ねない最大手。
これは皆の総意──。
そして決して転がしてはならぬ賽の目だと想い案ずる切望であった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる