🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』

第80話『Freedom&Justice(奔放なる正義)』 B Part

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 ヴァロウズNo10のレイ──。
 俺がLeyだと豪語ごうごするのを決して辞めなかった女。敗北の末路。
 16歳ロイドまさかの反抗と力を寄越したFortezaフォルテザの英雄ローダ・ロットレンとその娘ヒビキ。

 陽がれ人が移り変わる黄昏刻たそがれどき──。
 絶対的正義を求めこれ迄ずっと日々の天候がごとうつろいでいたレイ。揺るがぬ正義は自分の内なる価値だとようやく知れた。

「──Daddy, fuiste justo hasta el momento de tu muerte(父さん、アンタ死ぬ間際まで正義だったよ)」

 同刻慟哭──。
 これまで自分の気持ちを裏切り続けた者達へ泣きながら送る懺悔葬送曲

 皆それぞれ正義の形が在るのを気づく──否、正義の探究者であるレイは知りながらも離別りべつの哀しみを認め切れず総てを否定し続けたのだ。

「Mum……gracias por criarme(母さん……私を育ててくれて有難う)」

 太陽が落ちた後も次は星々とこれ迄の人生出逢いを重ねてささそそいだ。
 総ての者共がそれぞれの正義をかかえながら誰にも頼れぬ語れぬ強さがあった。

 唯一愛をつらぬいた同僚どうりょうの刑事バラッドが不倫ふりん相手の女性を護り死んだのは、女が警察の組織と貧民街スラムが裏側で繋がる汚職おしょくを知り得た存在だった顛末てんまつ

 だから殺す訳にはゆかなかった──同僚殺しの罪を着せられた当時のエメリア。
 組織のボスから牢獄ろうごくとらわれたのち、聞いた真実。捕縛ほばくされたまま臨月りんげつを迎え死産以外の道を選べなかった。

 皆、戦いつらぬく理由を知り尽くしていた。
 さりとて余りにもさびしさつのる結末だらけ。こんな悲しみしか残らないのなら、全部悪意だと切って捨てた。

 語らぬに問い掛けるレイ、今更なる葬送そうそう。心に直接語り返す仲間達の調べ末期の声が聞えた。

「──おぃ、。約束だ、何でも手前テメェの云う事を聞く。俺は何をすれば良いか早く教えな」

 過去へ謝り尽くし涙のれたレイが戻した口のあくどさ。ロイド少年の方を見ながらその向こうにローダへの問い掛け。

『それこそ語る迄もない。貴女は知っているのに敢えて聞くのだな。──今度こそ真実の自由正義つらぬけ。俺の望みはそれだけだよ』

 俺は──。
 存在自体を以て法を成せ。やはり冷たいローダの語り口。心の声音こわねがレイにを届けた。

「ふふっ…英雄様は残酷なんだな」

 散々負かしておきながら突き放すローダの言い草。残酷だと苦笑を重ねたレイ。『俺に着いて来い』余程救われる欲求を満たしてはくれなかった。

 されどレイが思い描いた通りの返答である事に違いなかった。
 
「──『森の美女達の息吹レクプレーノ』」

 痛むレイの両手首を優しみ込め触れながらベランドナがとなえた呪文スペル。彼女が契約している護りの女神ファウナ神の術式。

 森の樹々が枝葉を伸ばしロイドに折られたレイの手首に触れゆく。森にむ美女の姿をした精霊ドリュエルの集めた精気を人間へ注ぎ込む逆流回復御業みわざ

「耳長ぁ? 俺の怪我、態々わざわざ治してくれんのかよ?」
「ベランドナです。私に負けた訳じゃないですが覚えて貰いますよ」

 ──ベランドナ…か。
 骨折した痛みやわらぐ最中、心の内側で刻んで語ってみたレイ。旧語だが美しい存在を示す言葉。戦い終えてなお、金色の髪を流した名前にたがわぬ女だと今さら知り得る。

「ふふっ……流石に覚えた。──あっ、それからな。俺様の正義がお前達は敵じゃねえってよ」

 地面に落としたLeyレイthemendジメンドの代わりのつもりか。治癒ちゆして貰った人差し指で造った銃口をベランドナの眉間みけんに微笑みと共にえた。

 レイに取って本気で殺り合ってみたい相手には違いなかった。『今ので』そんな遊びか。

「そう願いたいもの……ん?」

 レイを強者だと認めた上で『2度は要らない』せた表情を使ったベランドナの念押しがよどんだ。
 ドゥーウェンゆずりのスマホが鳴らす着信音。未だ争いの空気ただよう場所に流れた似合わぬ音調。

 ピッ。

「はい……。やはりロイドさんの力は貴方達でしたか」

 スマホの着信を受ける人間を越えたハイエルフ──大層奇妙な絵面えづら

 新人類ヒビキの特殊能力など用いなくとも、ただ語り合うだけならさびれた通信用人工衛星の恩恵おんけいが得られる。もっとも先程の様なひりつく戦闘中なら別の話だ。

 スマートフォンの向こう側に居るのはローダとヒビキ、必然の組合せ。
 今回の争いを裏で操りレイを負かせた張本人が何故ロイドを媒介ばいかいにしたのか。今となっては割と如何どうでもいい話を語り聞かせた。

 心の扉を開け放ったままであるヒビキの能力を使い父ローダと繋げ、ロイドに本来在り得ぬ力を注いだ訳だがそれが最も楽に熟せそうなのがロイドだった。

 ベランドナの事はヒビキも歳の離れ過ぎた友人として知り抜いている。
 ならばベランドナこそ適格者てきかくしゃと思いきや彼女は自我じが強固きょうこ過ぎた。ローダを入り込ませる余地がなかった。

 ジェリド・アルベェラータの部下──短剣使いのファグナレンをヒビキが知り得たのは今回が初。見知らぬ男へを試みるの苦悩は想像に容易たやすい。

 ならばロイドはどうか? 
 歳の近しいリイナから聞き及んだ登場人物恋人候補16歳性徴期のヒビキが最も興味かれた存在。然も己の無力をじらい力を欲していた。

「そんな具合だ。ロイド君に済まなかったと謝ってくれると助かる。──あ、それからこんなやり方でなければレイに対する勝ち目を見出みいだせなかった。これは伝えなくとも判る」

 この辺り、扉を拓いた開いた割にローダの妙な意固地いこじを感じる。自分で一言告げれば済む話なのだがそれにはベランドナ、特段触れなかった。それより気になる点があるのだ。

「判りました。──ですがひとつに落ちないです。私が意地っ張りいじっぱり?」

 電話口の向こう側──FortezaフォルテザのHOTELに住まうローダとヒビキがべランドナの呈する疑問強い口調に互いの顔を見合わせた。

 ──そ、そういう処なんだがなのよ……。

 思わず「貸して」とパッパにスマホをねだるヒビキ。自分の声──同性の友人として直接言いたいらしい仕草。

「──あのねベランドナさん、そういうトコだよ。何でも独りで背負せおい込み過ぎなんだよ」
「えっ……?」

 ヒビキの口から発した心の奥底からベランドナへ伝えたい思い願い
 スマホを握りしめ独り固まるベランドナの驚き。

 スマホのスピーカーから漏れあふれたたヒビキの助言。
 この場に居る誰もが伝えたかった代弁を聞きげ笑い袋のが切れたファグナレン。遠慮えんりょせず吹いた。
 
 ──だ、駄目だ。笑っちゃいけない……。

 顔をそむけ身体ふるわすロイド少年の引きわらい。全く以て隠せてなかった。

「ぶっ! い、今のが一番!」

 正義の在り処ありかを見直す渦中かちゅうのレイ。腹を抱え、責任感が人一倍強い悠久の森人ハイエルフを笑い飛ばした。

 顔をしゅに染め周囲のドタバタを見渡すベランドナの羞恥心しゅうちしん
 仕事を頼めば自己犠牲のかたまりと化す。自分をかえりみない責任感を以て依頼者を『Master』と呼ぶ仕事人の鏡がごとき彼女。

 レイにしてみれば正義を全面に押し出した女に思えた。だから本気マジで相手したい想いに駆られた判り易い羨ましいと正直感じた。

 だが裏を返せばベランドナの様な存在が正義の名の元、大切な命を失いねない最大手。

 これは皆の総意──。
 そして決して転がしてはならぬ賽の目さいのめだと想い案ずる切望せつぼうであった。
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