Wind Geister 『風を纏った少女』日常の生活の中に非日常(小説家)は潜んでる

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第1部 風の担い手

第3話 百"見"は一"乗り"にしかず

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「き、綺麗………わ、私のDU◇Eデュークが?」

 わ、判ってる。風祭かざまつり君は、あくまで私のバイクをめているって。

 で、でも何だろ………この胸の高鳴りは………。

「僕さオレンジって色、結構好きなんだ。黒にも白にも負けない割に、赤程どぎつくないんだよね」

 風祭君がゆるんだ顔で私のDU◇EとK◇Mのサイトをスマホで交互に眺めながら語り掛けてくる。

「わ、判るっ! そぅ、そうなんだよっ! お陽さまみたいで私も大好きっ!」

 ど、どうしたのだろう………私ったら。何だか焦りで食い気味になっちゃうのを抑えきれない。

「それにしてもこの大きさ、やっぱり目立つな………」

 ───あっ………。そ、そうか。うんっ、そう、だよね。駐輪場に停車している他のスクーターの2倍位あるから驚いてるんだ。

「あ、朝はごめんねぇ………私このバイクのこととなると直ぐムキになっちゃって。原付2種って言われても訳判んないよね」

 すかさず両手を合わせて頭を下げる。引きった笑顔を作って。

 ───恥ずかしい。バイクのこと、何も知らない人にしてみたら、このフルサイズ※の125DU◇Eは、どう贔屓目ひいきめに見たって普通のバイクなのに。

 ※通常のバイクと同様のサイズであるバイク全般を指す。原付は車格が小さいものが多いので、原付で在りながら通常のバイクと同じ車格の場合、使う事が多い。

「あ、もうそれは良いよ。原付2種………排気量51ccから125ccまでを2種って言うんだね。全然知らなかったよ」

「………えっ、どうしてそんなに」
「あ、いやあ………ちょっと訳《・》でさ。気になったことは、真っ先にで調べるくせがあるだけなんだ。」

 少しどもった感じでコレスマホの画面を見せながら応じてくれた。

 でも決して眼鏡の中の視線を合わせて貰えず、猫背で地面の方伏目ばかり見ているがちだ

 此処で私の中の悪戯心いたずらごころが「やっちゃえよ」と後押ししてきた。たまらず一度だけ息を飲んだ。

 黒いヘルメットを持って風祭君の目の前に突き付けてしまう。でも、どうしてだろう………。普段の私なら、こんな積極的じゃない筈なのに。

「えっ………」
「百にしかず………ってね。どう? 乗ってみる?」

 ───乗せたいっ、風を切ることを知らないこの男子が驚く顔を見たくて仕方がないっ!

 このDU◇Eをめてくれた可愛い彼のを独り占めしたい欲求が抑えられない。

 風祭君の目があからさまに泳いでいるのが良く判る。だけどようやく私の方を向いてくれた。結構可愛い奥二重おくぶたえ……そんな気がした。

「け、今朝暑くってさ。普段は使ってない方のメットを被って来たんだよ。本当はこっちのフルフェイス※なんだ」

 ※顔全体をおおうように出来ているヘルメット。窮屈きゅうくつだが一番安全性が高い。対してジェットタイプは、顎下あごしたを守る所が存在しない分、比較的開放感がある。

 ───そう………。朝被ってたのはジェットタイプ………って、そういうのは問題じゃない!

 男子とタンデム二人乗りだなんて私だって初めてなのに………。

「………そ、その、じゃあお言葉に甘えて………」

 ちょっと弱り気味の顔色をしていたから断られると思いきや、何と受け入れられてしまった。

 ───此処まで来ちゃったら、もう後退の二文字はないよねっ!

 覚悟を決めてタンデム向けのステップ足の置き場を初めて引き出す。

「さ、乗って……」
「い、いや、ど、何処に? どうやって?」

 慣れない手つきで風祭君がメットの紐を通し終えると、この後どうしたら良いのか途方に暮れた声色で聞いてくる。

「此処っ! 私の座ってる後ろのこの出っ張り跳ね上がった所! 捕まる所は………えっとぉ………もぅってして良いからっ!」

「えっ………」

 ───私の方から誘ったんだ。あくまでただの二人乗りタンデム、何にもすることないっ!

「じゃ、じゃあ………」

 如何にも危なっかしい動きで風祭君が革靴ローファーを履いた右足をタンデムステップの上に乗せ、自分もまたがると、とても申し訳なさそうに控え目に私の腰へ両手を回す。

 キュルルルッ! ブオォォンッ! ドドドドドッ…………。

 エンジンに火を入れる。排気量125cc、15ps馬力とは思えない力強い音が駐輪場に、多分場違いな音を伝える。

 此処までは普段通り、だけどこれからは、私に取っても初体験の緊張ドキドキの時間がやってくる。

「さっ、じゃあ行くよっ! なるべくゆっくり発進するから、その時に地面を踏んでる右足もステップを踏んでねっ! あと、本当ホントは要らないからっ!」

「う、うんっ……うっわ!?」

 普段より意識を込めて緩やかにクラッチを繋ぎ、アクセルの方はほとんど回さず走り始める。けれど後ろから悲鳴に似た声が聞こえて、ひかえ目だったに力がこもる。

 ドクンッ!

 どうしようなく高鳴る私の心臓の鼓動こどう。まるでDU◇Eのエンジン回転数と繋がってシンクロしているみたい。

 そして思っていたより硬くてごつい後ろの胸板からも、心なしか鼓動が伝導してる気がしてきた。

 ───私の鼓動と彼の鼓動……差し詰め2気筒エンジンっていった処かしら? ヤダ……何考えてる? 道路公道に出るよ、集中、集中! それにDU◇Eは単気筒!

 ───って、うっわ………どうしてこの学校の出口はこんなにきっつい下り坂なの? 後ろのが余計に迫ってくるんだけどっ!
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