【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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最終部 ファウナ・デル・フォレスタ

第204話 森の女神に於ける御意思の在処

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 殺戮さつりくの女神カーリーと刺し違える事に成功したアル・ガ・デラロサ異能空挺部隊。
 神聖術士しんせいじゅつしパルメラ・ジオ・スケイルが失意を胸に、血みどろの息子を涙ながらに抱える終幕。

 これでようやくマーダと相対あいたいするMeteonellaメテオネラ。ファウナとゼファンナ姉妹の加勢かせいが出来る。機体は殆どほとんど喪失そうしつ、だが関係ない。命ささげても森の女神ファウナを必ず守り抜く。

 事態は瞬くまたたく間に急変。
 正に風雲急ふううんきゅうを告げる状況。人間の知能では神の御心みこころに届かない。届きようが無い。

 森の魔導を極めたゼファンナ・ルゼ・フォレスタを躰毎からだごと、総て奪ったマーダが最後の敵という残酷なる真実。

 ただ……この場に居る誰もがに落ちない。

 アレが『ゼファンナ・ルゼ・フォレスタ』と自ら名乗りを挙げてる現状。

 何とも不謹慎ふきんしんだがアレが嘗てかつて自分達を散々コケにしたゼファンナであるなら、争うにしてもまだがあるというもの。

 けれども森の女神、ファウナ・デル・フォレスタにしか見えない、感じられない

「──『重力解放ヴァレディステラ』」

 爆炎上がるMeteonellaメテオネラの中から、浮いて出現した金髪の魔法少女。失われたフォレスタ邸から飛び出した姿形の少女が、すすけた顔を拭いぬぐい空を舞うのが確かに見えた。

「フフッ……やはり生きていたのね

 黒服のゼファンナがさもやらしい顔で妹の全身を上から下までくまなく目線で楽しむ。

 ──ふぁ……ファウナッ!?

「こっちが本物だってのか!? じゃあ黒服の方が姉貴?」

 黒服と対峙たいじする少女を体力わずかな怪しい視界で如何どうにかとらえたフィルニア。ファウナの、チェーンも宙で静止している二人の少女を見比べる。

 ファウナ……とおぼしき存在が黒服を一瞥いちべつした上、重傷者であるフィルニアの元にフワリッと降りる。

「フィルニア、待たせてごめんなさい──『森の美女達の息吹レクプレーノ』」
「うっ……!」

 ファウナが直接フィルニアの肩に触れ、森の美女ドリュエルの精気を急速に流し込む。全身の深い傷が急速に修復する故、フィルニアの痛覚が過敏かびんに反応した。

 片腕をいっしたラディアンヌも再生させた術式。フィルニア全身の傷が完璧にえた。

「あくまで傷が治っただけ。無理しないで。もう二度とあんな無茶しないでよ」

 命投げ出す勢いで太陽神だった頃のマーダとたった独りで対峙たいじしたフィルニアへ一応忠告するファウナ。言い終えると小さな背中を見せる。

 ──やはりファウナにしては身長が高過ぎやしないか。

 口調は穏やかなファウナそのもの。然し幾らいくら双子と言えど、身体の姿ボディラインまで隠せやしない。姿形に気が回る女性ならば尚更なおさら

「さあ、マーダッ! ──いえ今はゼファンナ姉さんの身体と意識を使っているわね。私のマムのみならず姉さんゼファンナまで取り込んだ罪ッ! 万死ばんしに値するわッ、覚悟なさいッ!」

 ファウナ、未だ宙に浮き森の女神勢を馬鹿にした嗤いわらいを浮かべるマーダゼファンナ凛々りりしい宣戦布告せんせんふこく

 ガシリッ。

「お、お前本当にファウナなのか!?」

 長女肌のオルティスタがファウナを語る少女の肩を掴みつかみ問い質すただす

 ファウナの意識を感覚で知れるラディアンヌ以外の皆も半信半疑はんしんはんぎ。とはいえ、祈る思いも多分にある。この少女が真実のファウナであるなら、自分達は存分本気が出せる。

 ズサッ!

 当人が応じる前、この少女を人一倍うたぐっているラディアンヌが駆け込み、膝を付いて恭順きょうじゅんの姿勢を示す。顔を上げ、少女の蒼い瞳を真っ直ぐ見つめる迷い無き翠眼すいがん

様、御無事で何よりでございます。このラディアンヌ、必ずや最後まで御役目果たして御覧にいれます」

 これは森の女神勢、誰しもが驚き目を見張った。
 真実のファウナを見抜ける誰よりも説得力ある存在が、自ら味方を買って出る姿を周囲に示す。

 改めて忠誠を勝ち得たファウナ自身もこれには驚きを隠せない。うたがわしき当人が『私がファウナよ』と真顔で言うより絶対的効果があるに決まっている。

 そんな様子を訝しげいぶかしげに見てたもう一人の姉貴分もファウナの前で深々と頭を下げた。

「済まない、許してくれ。太陽神の次はカーリー……。戦闘が余りに激し過ぎて疲労が頭に回っちまったらしい。長年付き合いのあるお前を見間違える訳がねえ」

 語るまでもなくオルティスタ姉貴である。荒れた金髪を前にらすと決して頭を挙げようしない構え。己が主から『良いよ』と認められる迄止める気を微塵みじんも見せない。

「や、止めてよ二人共。い、今さらこんなの恥ずかしいわ」

 でなく本気で困る御主人様。顔赤らめて手を振り、目をらす仕草。杖と魔導書握る白い手に手汗をかかかずにいられない。

に過ちさえないのを知れればこのラディアンヌ。従うだけでございます」

 未だ恭順の姿勢を崩さないラディアンヌから気になる言い回しが発せられる。
 これに目が覚めた感覚の一同。

 ──そうか、確かにそうだな。
 ──何迷ってたの僕。

 血縁でないフォレスタ三姉妹を中心に次々広がる声なき声。発言するのも馬鹿げてると思い直す各々おのおの

「そうだな……。大体私は元々レヴァーラ・ガン・イルッゾに忠誠ちゅうせいを誓った身。レヴァーラを奪われたばかりか娘も取られたとあってはウィニゲスタ家の沽券こけんに関わる」

 森の美女達の息吹レクプレーノによる治癒ちゆを受けたばかりで『無理しないで』と森の女神から直々じきじき言われたばかりのフィルニア。珍しく家の尊厳そんげんを引き合いに出す。

『確かにそうね。僕だってヴァロウズのNo8。──ってこれじゃ随分偉そうだね。Meteonellaメテオネラが吹き飛んだの見て正直ビビっちゃった』

 未だ自分の専用機EL-Galestaが現存してるディーネが『誇り高きヴァロウズ』などとこれまで一度たりとも口にした事無き台詞。
 然しEL-Galestaエル・ガレスタより明らかに上位のMeteonellaメテオネラが落ちた本音も口にする。

「僕は元々やる気満々ッ! とっととあの偽物をやっちまおうぜッ!」

 身体も地声も巨大なNo6チェーン・マニシングがくすぶってる連中をさらに焚きたき付ける。彼女は常に直球、裏腹変化球などハナから持たない。

「機体はもう動かないけど、元よりこんな物無くても問題ない

 Battery電源切れの自機を捨てたNo9、黒い暗殺者アサシンアノニモは元より殺る気だ。他に手順を知らない。

「小難しいのは抜きパス。殺るか殺られるか、戦場にまだ敵が居やがる。だったら殺るしかねぇんだよ」

 蒼いポニテを結いゆい直したNo10ジレリノが煙草を燻らせくゆらせニヤリッと笑う。敵が襲って来る以上、殺るか逃げるか至って簡単シンプル

 元軍人組連中は姿を見せない。然し決して逃走した訳ではないと信ずる。機体を失った以上、代替えを探しているに違いない。

 ファウナと思しき少女──。

 瓦礫がれき転がる地面へ目を落として歯を食い縛るしばる。怒りの感情がさせた事ではない。自分を信じ、命失うかも知れない戦いへ笑顔で応じる鹿仲間達。

 ──こ、此奴等こいつら馬鹿よッ! 大馬鹿だわッ! こんな連中まとめてたとか意味判んないッ!

 このファウナ、涙と嗚咽おえつらさぬ様、必死にえているのだ。

 此処にとらわれるまで知らなかった無償を貫く仲間の存在。以前共に戦場へ繰り出した連中は、報酬ほうしゅう代償だいしょう。何より彼女の守り求める随分奴等であった。

「──『爆炎フィアンマ』!」

 ズガーンッ!

 地響き上げて崩れた街をさらに灰燼かいじんと化す黒服姿な。ライターでも投げ込む位な手軽さを見せ付ける。

「ねぇ、長いお喋り終わったかしら? 私抜きで勝手に盛り上がっちゃてさぁ……そろそろ殺りましょう」

 椅子も無いのに宙で腰掛け長い脚を組んでる烏色からすいろのファウナ。ネクタイすら黒色。地上の連中を生きたまま葬送そうそうするがさも楽し気に氷の笑いを浮かべた。
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