【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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最終部 ファウナ・デル・フォレスタ

第207話 魔女っ娘ファウナと暗黒のゼファンナ

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 黒服のゼファンナ・ガン・イルッゾVs蒼服のファウナ・デル・フォレスタ。
 これ迄も現人神レヴァーラ御使いみつかいと生きる軍の最高機密なる立場さらして幾度いくど美麗びれいな火花散らした間柄あいだがら

 然し最終決戦が正に互いの命賭けた舞台。
 踊り子であったマムの意志を引継ぎ二人の主人公ヒロイン

 からだ尊厳そんげんも投げ捨て黒服姿に転じた強者つわもの過ぎるその振る舞い、黒礼服スーツである服装が、世界中を敵と為しても決して揺るがぬ闇堕ち決めた修道女シスターの如き危うさ帯びる。

 溺愛できあいしたレヴァーラの如く、暗い面をさらけけ出しても『クスリッ』と冷笑出来る自分に泥酔でいすいした分を力に転じ戦うさま

 神とは人間が縋るすがる存在なれど、神自身は咎人とがびと善人ぜんにんさえも裁くさばく容赦なき者。黒服のゼファンナ、唯一のかたきに成れた幸せを噛みかみ締め、口がけるほど口角上げる。

 一方、蒼服のファウナ・デル・フォレスタは、想像以上の苦戦をいられてる。

 自分は黒服より劣るおとる存在。既に無関心な事実……然しこれ程劣勢れっせいに追いやられるは想像以上。不甲斐ふがいなき自分に取りかれるすんでのきわまで追い詰められた。

 ──な、何て気持ち良いのッ!

 そんな闇に包まれた蒼服ファウナを乗せた白狼、チェーン・マニシングが荒れた大地を悠々自在ゆうゆうじざいに駆ける。

 蒼服の少女に立ち込めた暗闇の雲が風と共に晴れ渡り、長い金髪が真横に荒れ狂う状況を、意にもかいせず心地良い気分に全て預ける。

 18年の人生に於いて蓄積ちくせきされた様々な嫌悪感けんおかんを全て洗い流してくれる

 が教えてくれた幸福。蒼服ファウナ、偽りの姉黒服ゼファンナとは真逆の解き放たれた自分を謳歌おうかするさま

「拾ってくれて有難うチェーン──自由ってこんなにも気持ち良いのね」

「ガゥ? 魔法使えるくせにそんな事も知らなかったのか?」

 自由の象徴たるチェーンは、蒼服の事を偽りなき存在だと信じ切る馬鹿正直。軍人……自由と正反対の人生しか見知らぬ少女の真実をまるで知り得ようとしない。

 ──妹と母が命投げてまで守りたい。今なら私にも心底判るわ。

「チェーンッ! 私の脚に成って貰うわッ、Allright良いわね!」

 遊園地で燥ぐはしゃぐ子供の様な蒼服のファウナ。歓喜かんき迸るほとばしる顔色のまま、己がに笑顔のむちを入れる。

「おぅ! 何か良く判んねぇけどようやく吹っ切れたらしいなッ! 行くぜッ!」

 ワォォォォンッ!!

 えて跳躍ちょうやくするチェーン。

 反重力装置?
 ホバリング? 

 そんな無粋ぶすいな物、巨大で自由過ぎる狼には不要。蒼服ファウナ、抱きかかえてくれる王子様は不在。だが白馬に乗る御姫様の気分。

 そんな想いが通じたのか、白狼チェーンの背に突然生える白き翼。これでは白狼でなくペガサスを幻想げんそうさせる。構いやしない、彼女はあくまで自由。神話にすら出番ない新たな生き物を造り往く。

「──『森の爆炎ラデスタ・フィアンマ』!!」

 宙で優雅ゆうが気取るきどる黒服のゼファンナより高く飛ぶ。

 飛び切りの笑顔で両手を振り、見知らぬ呪文スペルを繰り出す蒼服のファウナ。絵本を飛び出した明るさと元気振舞う魔法少女の体現たいげん

 森の刃ラデスタを木枯らしの如く黒服のゼファンナの周囲に巻き撒き散らす。それを火種に無量大数の爆発を巻き起こす。ちっとも魔女っ娘。

「何コレぇッ!? キャァァァッ!!」

 これには黒い女神レヴァーラ継承者けいしょうしゃゼファンナも茫然自失ぼうぜんじっしつ。びしょ濡れにされた黒いスーツを、今度は渦巻く爆炎で酷く焦がされる灼熱地獄しゃくねつじごく。流石にな顔など出来ない。

 ──ぐぅ! ──『ロペラ』!

 黒服のゼファンナ、逃げおおせるべく両手を広げ、連続する発破はっぱを同時に繰り出し後退。哀れ……すす汚れ破れた黒服。なまめかしい身体が見え隠れする悔しさ。

「キャハハッ! 何コレッ、たっのしいぃ!」

 白馬白狼の上で大層跳ねて喜びを全身で表現する魔女っ娘ファウナが偽りの姉に向け舌を出すテヘペロ

 ──性格キャラ変わったぁ!?

 土壇場どたんばで夢見る魔法少女に挿げすげ変わる天然過ぎた偽りの妹。

 もっとも偽りの姉は、元々劇団黒猫切ってのだった。此方も変わり身具合は、まるで人の事言えやしない。味方からに転じたのだから余程タチ悪いのだ。

「やっちゃえジレリノ!」

 蜘蛛の糸フィディラガノ使いジレリノ、可愛げなる御指名。

 当然面食らうがやるべき事は誠実に熟すこなす仕事人の鏡。きらめく糸を絹織りきぬおりの帯が如く、黒服に伸ばし締め上げる絶技ぜつぎ

 黒服ゼファンナ、あられもない姿晒すさらす雁字搦めがんじがらめ世界SNSの向こう側、男共はさぞや盛り上がっているに違いない。

「グゥッ! こんなの効く訳ないでしょッ!」

 オルティスタから奪ったナイフに付与エンチャントした輝きの刃マディラスを用い、瞬時の内に斬り裂き力を誇示こじする。然し余りに変身し過ぎた偽りの妹へ垣間かいま見せるわずかな間隙かんげき

「次々ぃッ!」

 白狼の背を楽しげに叩く蒼服のファウナの次なる攻撃。ペガサスの様な翼広げ、宙に踏ん張り地獄の窯白い大口を開き黒光りの砲身向ける御情け無情無用

 ズギューーーンッ!!

「ひぃぃッ!? あっ──『流転アルディビラ』!!」

 迫り来る……そんな余地など在る訳ない光速の熱線ビーム。流石の黒服もこれには仰天ぎょうてん狼狽うろたえながら呪文名スペルを叫ぶ。奥の手晒すさらす流転アルディビラ

 中途で天に向けて捻じねじ曲がるチェーンの撃った荷電粒子砲かでんりゅうしほう

 魔女っ娘ファウナ、火遊び過ぎる。つい今しがた迄、黒服のゼファンナ相手に曇った目だった女子とはまるで別人。森の女神の真似事に過ぎなかった女性。気が付けば新たなる人生キャラ歩み出す。

 圧倒的だったゼファンナ・ガン・イルッゾ遂に霞むかすむ

 魔女っ娘ファウナが森の魔導の基本術。森の刃ラデスタ系譜けいふと言える新呪文を満面の笑みと共に繰り出してから一挙形勢逆転けいせいぎゃくてん

 黒服のゼファンナ、自分はあくまで敗北するべく此処に居る。

 されどこのまま負け戦で終幕すれば笑い話にもならぬ。彼女は愛する黒い女神レヴァーラの代行者、脅威きょうい悪役ヒールとして歴史に名を刻まなければレヴァの胸元へ顔向け出来ない。

 ──足掻あがいてせるッ! 最期の間際まぎわ迄ッ!

 金髪逆立ち漆黒しっこく気配オーラ立ち込める妖し過ぎる黒服のゼファンナ。彼女を中心に巻き起こる黒い渦。異次元の入口ブラックホールが如き近寄り難い存在感。

「──『斬り裂く爪達アルゲヒル』!!」

 黒い爪飾りマニキュア真横に振るう。初めて扱う危険な呪文スペルの香りと共に空を斬り裂く恐怖の爪痕つめあとが森の女神勢に襲い掛かる。

 斬り裂く爪達アルゲヒル──。

 山脈を住処すみかと為す伝説上の生物。
 空を好きに羽ばたき、地上さえも獅子ライオンからだを以って君臨くんりんするグリフォン。その爪が空気を多重に斬り裂くさまを森の女神が連想れんそう抱いた術式。

 平たく言えば真空の刃かまいたち。至って平凡な力の具現化ぐげんか
 されど受けるは避けるも危う過ぎる刃達。

「グッ!?」
「アァァァッ!!」

 血飛沫ちしぶきと悲鳴を上げる蒼服ファウナの仲間達。

 黒服は何処までも。己の化身である蒼服のファウナを態々わざわざ対象から外す。森の女神の御使いみつかい達だけを世界中へ公開処刑として見せ付ける。

 やられた者の中には、最後のEL-Galesta人型兵器駆るディーネと同乗してるフィルニアさえも含む。

 機械マシンさえもなますに斬り裂く黒服の凄味すごみ。心優しき風使いのフィルニアでは、恐らく再現出来ぬ情け無用な風の力。

 ゼファンナ・ガン・イルッゾ、その名に偽り無し。最期のきわ、恐怖の対象たり得るのだ。
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