【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部 世界の片隅で起きる戦争に見向きもしない人々

第47話 引かせたくない最期のトリガー

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 此方は再びNo2ディスラドが住まうエドル神殿前の

 美女達が次々と火種ひだねにされるのを黙って見ていられず、先陣切ってグレイアードと共に戦闘を開始したアル・ガ・デラロサ。
 しかしだからと言って、ただ突っ込むだけのおかさない。

「──そこだろ? 手前テメェみてえなクソ野郎は一番天辺てっぺんで、見下ろすのが好きって相場そうばが決まってんだ」

 ──馬鹿と煙は何とやらって奴だ。

 長い銃身ロングバレルに改造した超電磁砲レールランチャーを、あたかも相手が見えているかの如く構える。勿論実際には何も見えないし、センサー類にもディスラドらしき反応はない。

「FIREッ!!」

 それでも何の躊躇ちゅうちょもなく超電磁砲レールランチャーを撃ち込んだ。狙うは神殿前の中央にそびえ立つ石塁せきるい

 スガーーンッ!!

「ククッ、やってくれたなァァッ、下衆ゲスッ!」

 超電磁砲レールランチャーで石塁を粉砕ふんさいされ、止む無く外へ飛び出すディスラド。よりにもよってやったのは下衆、しかもまあまあの中年野郎だ。

 無論自分が殺られる勘定かんじょうなど、この自信家ディスラドにある訳がない。ただ仮定するのであれば絶世の美女に引導を渡されたいものである。

「ア"ッ!? 手前テメェも見てから回避余裕の口かよぉ! どいつも此奴もどうかしてやがんだろッ!」

 超電磁砲レールランチャーの軌道を見ながらける生身の人間。その理不尽振りふじんぶりにキレるデラロサ。他のヴァロウズのやからといい、魔法少女ファウナといい、確かに人の範疇はんちゅうを超越している。

 しかしこれで有視界戦闘が出来るというものだ。照準スコープを目に被せて敵の動きを捜索そうさくする。

「──我々も前に出ます、良いですねNo0リディーナ?」

「そそ、そろそろ暴れないと活躍のタイミングを逃しちゃう!」

 マリアンダ・アルケスタの駆る人型兵器のコクピットハッチを勝手に開き、No7フィルニアNo8ディーネが跳び出して往く。

 そんな2人を笑顔で「お気をつけて」と見送るリディーナ。元々筋書きシナリオ通りなのだ。初めは向こうの散々さんざんたるやり口を大いに流してLIVEして世界中の非難ひなんを集める。

 その非道なる相手を踊り子様レヴァーラに連なる者共が、どうにか抑え込んで喝采かっさいを浴びる。

 ──って、あの馬鹿ディスラド相手で、そんな簡単に運べば良いけど……。

 白狼チェーンの上でリディーナが肘を付く。まだ誰も相手と挨拶武器を交わしてなどいない。真なる争いはこれからなのだ。

「良いですか? チェーン・マニシング?」

「チッ──命令されんのはしゃくだけど彼奴ディスラドでぇっ嫌いだかんなァァッ!」

 自由を好むNo6チェーンだがNo2ディスラドのそれは目に余る。進軍して来る女共火種の周囲をリディーナを載せたまま、ド派手にグルグル走り回る。

 当然舞い散る砂埃すなぼこり

 これでNo2の視界から彼女達は一時的だが消え失せたに違いない。相手は芸術の結果をおもんじる故、見えない爆弾に着火するのはきょうがれる事だろう。

 最悪、構う事なく発破はっぱされようとも、もうリディーナはそちらの惨劇さんげきらないし、爆音すら流しもしない。

 この御時世ごじせい撮りながら編集位情報操作なんてどうとでもなるのだ。

 ドォンッ!

 神殿に近い方で比較的軽い爆発が木霊こだました。

 ──なっ……何故、そこに居るっ!?

 右目でスコープ、左目でメインカメラの映像を追っていたデラロサが驚愕きょうがくした。あの金髪野郎ディスラドが飛び出した石塁跡から2km以上はあった筈。

 それはまぎれもなくあのディスラドであった。

 大写しの鋭い青目が右側に映り込み、左側には人の脚らしきものを見せつけニヤリッとわらい此方をのぞき込んでいた。

「下衆には剣など勿体無いわッ! コレをくれてやるからとくと味わえッ!」

 ディスラドが握っていたそれは火薬の脚だ。さっき神殿付近で起こした爆風に自らを乗せ、一挙に距離を縮めたらしい。それにしたってこうも瞬時に飛べるものか?

「クッソッ、めやがってェェッ!!」

 デラロサの搭乗機。グレイアードの頭部直前で起きる小爆発。

 流石にこれしきなら傷一つ付きなどしないが、パイロットデラロサ誇りプライドが大いに傷つけられた。

 グレイアードの無表情な頭部を回し、20mmバルカン砲を撃ち散らす。弾を当てたいというより、駄々だだっ子の怒りを当てようといった処か。

 言うまでもなくそんなとされるディスラドではない。

 ──冗談じゃないッ! これ以上に舐められたままでいられっかよッ!

 アル・ガ・デラロサ、黙ってやられる程、耄碌もうろくしていないのである。虎の子である超電磁砲レールランチャーを無造作に捨て、右脚部の装甲アーマーに格納されたナイフを取り出す。

 ナイフと言えば小物な武器の類であるが、人間のおよそ3倍の背丈がある乗り物が扱う物だ。人間相手じゃ超が付く大型武器と為り得るのだ。

 何しろディスラドに接近戦をいどまれている。寄って長距離兵器は百害あって一利なしだ。生身の人間相手に刃物を振り下ろすグレイアードアル・ガ・デラロサ

「遅いッ! 遅い遅い遅い遅いぞぉ! そんなものでは虫も殺せぬッ!」

 此処まで空を駆けて来たディスラドだが、黒いマントひるがえしつつかわしている。13年前、彼も飛んで浮いていた筈だ。

「ぬかせッ! そんなのこっちも判ってんだよッ!」

 デラロサの怒号どごうが響く。
 実はわずかに躊躇ちゅうちょしている。何故ならこの戦いはあくまで相手を抑え込むのが目的なのだ。殺すは法度NG、まるで人間が素手でつぶしたくない蠅叩はえたたきをする様なものだ。

「──さてと此方も仕事を始めるか」

OKオッケ、準備は出来てるよ」

 此方は大量の生きたを相手取ろうとするフィルニアとディーネの2人コンビだ。先ず涼しい顔でフィルニアが嵐を呼んだ。最早日常動作といった気軽さ。

 女共が嵐に巻き込まれ宙を舞い、一時的に一塊となった処に上から水が降りかかった。水はディーネの仕込みである。腰のポーチから取り出した水を嵐に載せ振りいたのだ。

 少しだけ湿り気を帯びた女達がバラバラに吹き飛んで地面に落ちる。此処からが水使いディーネの本領発揮ターンだ。

 ディスラドの女達、しもが降りたかの様に白く氷結してゆく。何十人もの美麗びれいなる氷像が出来上がった。

「こんな上辺うわべだけ凍らせた処で、爆弾として機能しないか怪しいもんだけどね」

「──やらんよりはマシ……といった処か」

 ディーネがそんな氷像の1体を軽く叩きながら苦笑い。フィルニアとて同じ気分だ。彼女達が今すぐにも爆発し、自分達を殺しに掛かる可能性は充分にある。

 しかしそんな不意討ちじみた行為を、あのNo2ディスラドがやるとはちょっと思えない。

 ──恐らくNo2ディスラドが火薬にする原料は細胞や血。いっそのこと分子レベルで機能停止完全氷結させれば爆弾には出来ない。

 これはその様子を遠巻きに見ていたリディーナの思考である。

 No8ディーネが彼女達に直接触れれば容易よういに出来るが、それは凍結死させることを意味する。だから簡単には踏み切れないのだ。

『──ミス・リディーナ、私は一体どうすれば良いのでしょう?』

 無線でアルケスタからの通信が入って来た。独りと1機、後方で置いてきぼりにされた感が声ににじみ出ている。

「あ、貴女はそこで荷電粒子砲ビームランチャーを構えて待機してて下さい。最悪の場合、私達も含めする立派な役目があるのですから」

『え……了解COPY

 明らかに動揺どうようしながら無線を切るマリアンダ。ただの19歳である少女マリーの苦悩が見え隠れする。

 ──無理もないわね。る意味一番酷い役目なのだから……。

 無線の声を聞いた上でリディーナは、複雑な顔で目をつぶる。あの子マリーには現時点で最強の武装をある。

 もしあの馬鹿ディスラドが全てを吹っ切った際、全てを終わらせるべく引き金トリガーを引かせるのだから、その心労しんろうたるや計り知れないのだ。
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