【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第11部 デラロサ特殊空挺部隊Vs金色の特殊空挺部隊

第118話 遊びでも教科書でもない"本気"

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「──そ、それを着ないと本当に駄目なのですか!?」

 リディーナの提案した戦闘服バトルスーツの着装を心底嫌がるマリアンダ・デラロサ少尉。困惑こんわく此処にきわまれりといった風体ふうてい

 ──何故自分が21世紀に流行ったアニメのコスプレみたいな衣装を着なければならないのだ?

「あ、アル……じゃなくて、デラロサ隊長も何か一言言ってくださいッ!」

 アルの背中に隠れて縋るすがるマリアンダはやけに可愛らしい。まだ20歳前ティーンエイジャーの女の子な色を当人の思惑おもわくとは別の処で見せ付けてる。


「ア"ッ? 俺様は凄く似合うと思うが? だってお前

「ハァァッ!?」

 リディーナが少々白けしらけ顔で夫婦の痴話喧嘩ちわげんかを見やる。リイナは白い顔を赤く染め抜いてる。新婚夫婦のこの手のやり取りは、何だか異様な

 アル・ガ・デラロサが両手で立派なモノをアピールするのが、やらしさにより一層拍車はくしゃをかける。30を過ぎた男という生き物は、こうした礼儀デリカシーが激減し、より苛烈かれつさを増す。

「リディーナ、俺のも見せてくれ。──あ、やっぱ野郎の分はって感じだな」

 男アル・ガ・デラロサ32歳。
 いきなりその場美女達の前で今着ている物を勢い良く脱ぎ始める。まるで部活を終えたばかりの男子高校生。

「ちょ、ちょっと。言っときますけどそれの上から着るものですからっ! だからホラッ! キチンと更衣室で着替えてらっしゃい!」

 野郎の着替えなど微塵みじんも関心がないリディーナが大きな声で二人を促すうながす
 リイナの方は碧いあおい穢れけがれを知らぬ瞳を両手で覆うおおうの興味が、あった上での恥じらい。

 既に半裸なアルと未だ乗り気に成れないマリーの両者。アルマリーの背中を押しつつ更衣室へと足を運ぶ。

 強化服パワードスーツを着込む際、使用する更衣室。強化服パワードスーツは通常上から羽織るはおる形態なので、この部屋の利用価値は余り少ない。

 一応男女の間仕切りまじきりこそあれど、元は繋がった1つの部屋だ。アル・ガ・デラロサがする以前、は男子禁制だった為、こればかりはやむを得ない。

 ガサゴソ……。

 アルの着替える音が間仕切りを無視して届くのが必要以上の気掛かりを生む。既に夫婦な男女である為、今さら何を気に留める?

 執拗いしつこいがマリアンダ・デラロサは未だ19歳。戦場で肌を晒すさらすのとは勝手が違い過ぎる。最上の好意を抱く相手の前でこの。正直酷いと心中で羞恥しゅうちを感じている。

「た、隊長……」
「ン? どした?」

 如何どうにも踏ん切りがつかないよどんだ声のマリー。アルがさも面倒臭げに応答する。彼は既に着替えが着々と進んでいた。

「わ、は今のままでもを存分に扱えますっ。こ、こんな色物スーツに頼らず…とも」

 恥ずかしさにかまけての、らしくない言い訳。しかも『我々』という言葉でアルも身勝手に巻き込んでいるのだ。

 二人はこうなった経緯けいいを既に理解していた。これは戦闘服バトルスーツの形を成した意思伝達装置。ファウナ姉妹の扱う蜘蛛の糸フィディラガノの代替品である。

 最早世界中の人間達に眠るわずかな人工知性体ナノマシン達をこの戦闘服バトルスーツで緩やかに覚醒させることで手足操作を遥かに凌ぐしのぐ性能を引き出すのが狙いだ。

 様々なエル・ガレスタカスタムシリーズを設計量産しておきながら、リディーナ最大の売りは此処に集約してるのだ。

 マリアンダが改修チューン済エル・ガレスタの操縦席コックピットで見つけた『AUTO』と『MANUAL』表記がまさにこれだ。AUTOは思考のみで動かすモード。MANUALは手動を指している。

 ジッ。

「だからどしたあ? らしくねぇなぁ少尉」

 もうすっかり身支度を終えたアル・ガ・デラロサ。胸元のジッパーを引き上げて準備万端ばんたん

 彼が好きに生きてた傭兵時代。バルセロナ基地へ配属された正規軍人時代。

 これらの間、嫌になるほど様々な味方馬鹿共くつわを並べたものだ。中でもアルケスタが秀逸とびきりだった。ワザとキレ者だった頃の旧姓で呼ぶ煽りあおり鼓舞こぶ

「えっ……」

 未だ以ってベンチに腰掛けたままの腑抜ふぬけた女の目が開かれる。

「お前ともあろうがもっと上に行きてぇとは思わねえのか? ──俺は際限さいげんなく幾らいくらでも欲しいぜ。例えどんな搦めからめ手を使ってでもな」

「……はい」

 マリアンダは当然馬鹿ではない。
 自分の本質もアルの意地も痛い位に肌で感じている。

 本物の強さが欲しい。狙いましたとはいえ、偶々たまたま狙撃スナイプ出来た結果じゃなく、真に堂々とやり遂げたと胸張れるものを。

 されどこんな人づて頼みでそれを成し得て充足じゅうそくなのか? 考えるだけ無駄な狭間はざま彷徨いうろついている。

「大体俺達此処に来て以来、に散々遅れを取ってんだ。そろそろ彼奴等異能者達間抜け面まぬけづらおがんでみねえか?」

 トンッ。

 間仕切り向こうでうつむいてる相棒マリーの肩を叩くかの様な音。実際にはロッカーを小突いただけ。アルの底抜けに明るい笑顔が見えなくとも感じ取れた。

 バッ!

 マリアンダの迷いは完全に失せた。アルがいつも頼りにしてる凛々りりしさを以って1分も掛からず着装し終える。さっきまでのモヤモヤ甘えた女が嘘の様だ。

「行こうぜ、俺様が選んだ! AUTO遊びでもMANUAL教科書でもねぇ俺達ORIGINALを見せ付けようぜッ!」

はッCopy!」

 アルがバチンッと平手で拳を景気良く響かせる。後に続くマリーも吹っ切れた顔。勢い良く更衣室を後にした。

 カツカツカツカツ……。

 この様子を更衣室入口少し手前でうかがっていた別の二人。赤い髪したNo7フィルニアと偶然聞き及んだ内容に顔を赤らめたNo8ディーネである。

 同じくリディーナ様から格納庫に呼び付けられ『コレ着なさい』と不意打ちを喰らい、訳も判らぬまま押し付けられた。

 青天の霹靂へきれきならぬを抱えた両者。仕方なく着替えに来た処、人生の伴侶はんりょ同士の何とも尊くとうとく甘い話を一部始終拝聴はいちょうした。

「や、やっぱ凄いねあの二人……」
「だな──って言うかデラロサ、好い男過ぎるな」

 男女間に寄る恋愛が遠くに霞むかすむこの場所に在って、あの両者のやり取りは、此処の女達が忘れ掛けてたもの感情を引き摺りずり出すのに過剰かじょうが過ぎる。

 兎に角とにかくこの手の話題にはすっかり奥手おくてなディーネ。取り敢えず感な台詞を、よりも良い声で返すフィルニアの言葉じり妖しみあやしみを帯びる。

「ふぃ、っ!?」
「何だ、略奪愛りゃくだつあいの相談か?」

 フィルニアからの衝撃発言にディーネがドン引きし、突っ込みの言葉を選べずヤキモキしてる処へ、さらに後ろから飛び入り参加ニューチャレンジしたのは炎舞えんぶ使いのオルティスタ。隣には妹分ラディも付き添っている。

「い、幾ら何でも言葉が過ぎますよ……」
「いや、判る判るぞフィルニア。だってただでさえ男いねえのに此処。アイツデラロサ割とだかんな」

 ラディアンヌが引き気味に制するのを意にもかいさず、フィルニアの肩を後ろから抱く。下手な男が裸足で逃げ出す組合せシルエット

 オルティスタ姐さんはデラロサを『優良物件』と言うが、この狭い世間敷地で比較対象出来ると言えば、顔だけ超優良のレグラズ・アルブレンしかいない悲しい現実。

「私は其処そこまで言ってない褒めてない。それよりお前達もに乗れと言われたのか?」

 肩を抱かれたままの姿勢で顔色一つ変えないフィルニアである。そんな駄々事だだごとよりもファウナの御付き二人が持ってる服が気になる。

「──そう、なんですよ。私なんて。皆様の様な異能の持ち合わせが無いというのに……」

「俺だってしか能のないってのに、あの銀髪年増リディーナ、何たくらんでやがる!?」

 ラディアンヌとオルティスタの如何にもな困惑こんわく顔。これにはフィルニアとディーネが驚きの顔合わせ。

 この姉妹、ヴァロウズの異能でさえ凌ぐしのぐというのに自分達を『普通の人間』と言い張っている。

 これが皮肉でないのがまた凄い。三女の天然ぶりはこの姉妹の所為せいかも知れない。そう感じずにいられないNo揃い踏みNo7・No8コンビであった。
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