【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第11部 デラロサ特殊空挺部隊Vs金色の特殊空挺部隊

第131話 It's an easy job!!

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『──な、何だありゃ!? 雷が空へ昇りやがったッ!?』

 此方は追加人員として浮島へ向かう最中のレヴァーラ達4人組。

 天変地異か? はたまた雷竜が天へと飛翔ひしょうしているさまか? 傭兵として戦場で数多あまた惨状さんじょうの当たりにしてるジレリノが青いポニテを揺らして叫ぶ。

『そんな訳ない。あんな馬鹿な真似出来るのは、のファウナに決まってる』

 少々呆れ声を交えたアノニモが毎度御馴染おなじみな独特の口調で応答する。

『──アレは……。この力はファウナ・デル・フォレスタ本人だ。この私が言うのだから間違いない』

 下駄戦闘機の操縦かん握るレヴァーラ・ガン・イルッゾが喜びと脅威きょういを織り交ぜた声で断定する。この戦闘機、基本操作はAIだ。

 ──私が世界で最も森の女神のことを把握している。女神の真似事をした魔女偽物の行為ではない。

 ──これ程まで美しい光景を創造出来得るのは、ただ独りだ。

 レヴァーらの翠眼すいがんが雷の光で金色こんじきに染まる。同時に自分の中に渦巻く漆黒しっこく企みたくらみさえも浄化される思いだ。

 既に森の女神だと認め、最初の信者と化した彼女。我が神の行いは自分のものだという強欲。

『──ジレリノ、間もなく作戦行動に移行する。即刻音消しを頼む』

『ア"ア"ッ? もうとっくにやってんだよ黒の女神様レヴァーラ。後は仕掛けを張るだけだぜぇ』

 レヴァーラがさも首謀者面しゅぼうしゃづらした声を張るが、無駄な指示だと今さら気付く。何しろ戦闘機のジェットエンジンが聞こえないのだ。これは苦笑を禁じ得ない。

 しかしその笑いとは裏腹なる情緒じょうちょ。実際の処、未だ不安は拭えずぬぐえずにいる。せめて我々が辿り着くまで持ちこたえて欲しい。けれど着いた処で何が出来よう?

 我ながら、らしくない不安を抱え込んでしまっている。ジレリノの音消しさえも気付けなかった。冷汗が操縦服パイロットスーツの中で這うはう不快。

 応答するジレリノの声は御機嫌ごきげんそのもの。

 巨大人型兵器を自分の意志で操れる奇跡ミラクル。こんな心弾むこころはずむではないが。人生に於いてそうめぐってくるものではない。

 ◇◇

「「──『森の刃ラデスタ』!」」

 またしても金色のEL97式改エル・ガレスタ同士の熾烈しれつなる魔法戦へと返る双子の姉妹。
 ゼファンナが巨大な鉄の物を幾重も落としたと思えば、ファウナは地上から舞い上がる鋼ので迎え撃つ。

「「──『爆炎フィアンマ』!」」

 森の刃ラデスタの次は互いの超電磁銃レールガンから爆炎魔法を撃ち合うも互角。ファウナは自機の超電磁銃レールガンを失っていたが、行動不能のディーネ機から奪っていた。

 先程は互いに輝きの刃マディラスによる鍔迫り合い超近接戦闘を繰り広げていた両者。次は一転、魔法による遠距離を活かす戦法に移行している。

 とはいえお互い全力稼働といったていではなさそうだ。あれだけえた割に未だ様子見を続けられる冷静さを失っていない。

 ガシンッ!

「──ッ!?」
「ファウナッ! チャンネル5728だ」

 そんなファウナに意外なる横槍。アル・ガ・デラロサ隊長がアンカー付きワイヤーを飛ばし、無線回線に頼らぬ声を不意に届ける。

 パチンッパチンッ。

『何なの? ファウナ・デル・フォレスタ絶賛戦闘中で!』

 さも面倒と言わんばかりの態度を返すファウナ。もう誰相手でも継承略けいしょうりゃくだ。但しわざとらしく『』などと返す余裕も見せる。

『おぅっ、誰にも真似出来ねぇ魔法戦、大層御苦労なこった。秘策──って言うには大袈裟おおげさ過ぎんが、ちょいとばかし隊長の血ぃ、さわいだって訳よ』

 音声SoundのみOnlyなのにデラロサがニヤリッとしながら自身のこめかみを指差す。『俺様の頭が面白ぇことを思いついた』という合図。

 これには争いに昂るたかぶるファウナでさえも、脳の1割ぐらい割いても良いかという興味を抱く。

 ニタリッ……。

『──中々面白そうじゃない、乗るわその話。流石は隊長、伊達だてじゃないわね』

 ファウナ──姉との戦いの最中さなか、冷笑をその可愛らしい顔にたたえる。

『ヘッ! 俺様、あの散々な負けっぷりから嫌んなるほど学んだ。ただそれだけの事だ。じゃ回線切るぜ!』

 アル・ガ・デラロサ率いる初代、連合軍第一特殊空挺部隊は、このファウナを始めとした生身の人間達にこっぴどくやられたものだ。言わば消せるものなら消したい黒歴史。

 されど歳を重ねてゆくと『消せぬなら、いっそ大いに鳴かせてしまえ、我が記憶の断片だんぺん』とでもいった感じで、忘却する為の力を、経験値に換金かんきん出来る余裕が生まれるというものだ。

 ▷▷フィルニア、まだ残ってる雷雲から雨雲を呼んで! 

 またしてもファウナから風の言の葉を聞くフィルニア。しかし言うこと欠いて『出来るわよね?』とは流石に片腹痛い。それ処か総てすべてを察した。

「──風よ! 唸るうなる程の雨を此処に呼べ!」

 ザァーッ!!

 凄まじき局地的ゲリラ豪雨。機体というが無くてはさぞ痛かろうと思ったマリアンダが未だ気を失っているチェーン小さな少女覆いおおいかぶさる優しさを見せる。

 ブンッ!

『クッ! あの辻斬りつじぎり野郎天斬機、息を吹き返しやがった!』

 どうやら予備の操作補助アンテナとやらの再設定が終わったらしい。再び瞳孔を単眼カメラに宿し、つかだけに成りかけてた蒼き刃も復活した。それをさも悔しがるデラロサの

「──地に染み渡りし水達よ。束縛そくばくの姿へ変えよ!」

 何時の間にやらの水使いディーネが、濡れた地面を気にせず座り、水の精霊達へ呼び掛けているではないか。

 大破しハッチが余り開かぬ自機から、身体をつぶして如何どうにか抜け出していた。女性特有の出てる処が豊満な大きいのは、かなり手こずる羽目に陥るおちいる。しかし『私もよね』とおどけてみるのが彼女らしい。

 地面に染み渡る水を束縛の姿とは中々詩的してきあふれる素敵すてきな物言い。要は凍結させるという意味だ。黒海の浮島が一挙、北極に浮かぶ氷山の如き景色へ転じた。

 ──しかし真の意味で出来る存在など果たしてあるものだろうか。

 自分の魔術で空を舞えるゼファンナ機は勿論、天斬機、エルドラ機も表面だけ凍らせた処で夏タイヤを履く自動車の如く、行動不能におちいったりなどしない。

「い、いかん。今直ぐ天斬に地面を氷解させろ!」

 急に平常心を失う軍司令官。声を荒げて管制官に指示を飛ばす。

「──はっ?」

「えぇぃ、急げと言っている! 天斬機の蒼き刃は高熱を帯びている! これは星の屑封じだ、そんな事も判らんのか!」

 まるで意味を解せぬ無能な管制官に対し、如何にも軍の上官らしい理不尽なを飛ばした。

 エルドラ・フィス・スケイル、それにパルメラ・ジオ・アリスタもこよなく愛した星の屑という物体。

 実は地球上の何処にも存在し得る物質であり、宇宙から降りつけるものでない。普段は火山灰の様に地面に降り積もっている存在である。

 寄って浮島の地表を凍らせる行為は、まさに足り得るたりうるのだ。例えエルドラと言えども、墜としたい地表の屑を動かせないでは如何にもならぬ。

 焦りつつ天斬機をホバリング全開で空へ上げた瞬間だった。

 ズバッ!

 これはどうした事だ。空へ上がった天斬機の両腕が見えぬ何かに切断され、溢れ出る漏電ろうでんを発しながら浮島へ堕ちおち往く。

 ズルッ。

「ば、馬鹿なッ!!」

 妖怪眼鏡拭ようかいめがねふきの眼鏡が、驚きゆがんだ顔のせいで、位置を維持出来ずにずり落ちる。

『嗚呼……何てこった。何て

 ヴァロウズの末席にして、上の9人誰もが成し得ないが出来る女トラップ使い。

 音消しのジレリノの悪癖あくへき。この素晴らしき心地良さ。恍惚こうこつ過ぎる故、我慢がまん出来ず心の声を漏らさずにはいられなかった。
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