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第11部 デラロサ特殊空挺部隊Vs金色の特殊空挺部隊
第131話 It's an easy job!!
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『──な、何だありゃ!? 雷が空へ昇りやがったッ!?』
此方は追加人員として浮島へ向かう最中のレヴァーラ達4人組。
天変地異か? はたまた雷竜が天へと飛翔している様か? 傭兵として戦場で数多の惨状を目の当たりにしてるジレリノが青いポニテを揺らして叫ぶ。
『そんな訳ないね。あんな馬鹿な真似出来るのは、どちらかのファウナに決まってる』
少々呆れ声を交えたアノニモが毎度御馴染な独特の口調で応答する。
『──アレは……。この力はファウナ・デル・フォレスタ本人だ。この私が言うのだから間違いない』
下駄の操縦桿を一応握るレヴァーラ・ガン・イルッゾが喜びと脅威を織り交ぜた声で断定する。この戦闘機、基本操作はAIだ。
──私が世界で最も森の女神のことを把握している。女神の真似事をした魔女の行為ではない。
──これ程まで美しい光景を創造出来得るのは、私のファウナただ独りだ。
レヴァーらの翠眼が雷の光で金色に染まる。同時に自分の中に渦巻く漆黒の企みさえも浄化される思いだ。
既に森の女神だと認め、最初の信者と化した彼女。我が神の行いは自分のものだという強欲。
『──ジレリノ、間もなく作戦行動に移行する。即刻音消しを頼む』
『ア"ア"ッ? もうとっくにやってんだよ黒の女神様。後は仕掛けを張るだけだぜぇ』
レヴァーラがさも首謀者面した声を張るが、無駄な指示だと今さら気付く。何しろ戦闘機のジェットエンジンが聞こえないのだ。これは苦笑を禁じ得ない。
しかしその笑いとは裏腹なる情緒。実際の処、未だ不安は拭えずにいる。せめて我々が辿り着くまで持ち堪えて欲しい。けれど着いた処で何が出来よう?
我ながら、らしくない不安を抱え込んでしまっている。ジレリノの音消しさえも気付けなかった。冷汗が操縦服の中で這う不快。
応答するジレリノの声は御機嫌そのもの。
巨大人型兵器を自分の意志で操れる奇跡。こんな心弾む楽ではないが楽しい仕事。人生に於いてそう巡ってくるものではない。
◇◇
「「──『森の刃』!」」
またしても金色のEL97式改同士の熾烈なる魔法戦へと返る双子の姉妹。
ゼファンナが巨大な鉄の葉物を幾重も落としたと思えば、ファウナは地上から舞い上がる鋼の葉で迎え撃つ。
「「──『爆炎』!」」
森の刃の次は互いの超電磁銃から爆炎魔法を撃ち合うも互角。ファウナは自機の超電磁銃を失っていたが、行動不能のディーネ機から奪っていた。
先程は互いに輝きの刃による鍔迫り合いを繰り広げていた両者。次は一転、魔法による遠距離を活かす戦法に移行している。
とはいえお互い全力稼働といった体ではなさそうだ。あれだけ吼えた割に未だ様子見を続けられる冷静さを失っていない。
ガシンッ!
「──ッ!?」
「ファウナッ! チャンネル5728だ」
そんなファウナに意外なる横槍。アル・ガ・デラロサ隊長がアンカー付きワイヤーを飛ばし、無線回線に頼らぬ声を不意に届ける。
パチンッパチンッ。
『何なのデラロサ? ファウナ・デル・フォレスタ絶賛戦闘中であります!』
さも面倒と言わんばかりの態度を返すファウナ。もう誰相手でも継承略だ。但しわざとらしく『あります』などと返す余裕も見せる。
『おぅっ、誰にも真似出来ねぇ魔法戦、大層御苦労なこった。秘策──って言うには大袈裟過ぎんが、ちょいとばかし隊長の血ぃ、騒いだって訳よ』
音声のみなのにデラロサがニヤリッとしながら自身のこめかみを指差す。『俺様の頭が面白ぇことを思いついた』という合図。
これには争いに昂るファウナでさえも、脳の1割ぐらい割いても良いかという興味を抱く。
ニタリッ……。
『──中々面白そうじゃない、乗るわその話。流石は隊長、伊達じゃないわね』
ファウナ──姉との戦いの最中、冷笑をその可愛らしい顔に湛える。
『ヘッ! 俺様、あの散々な負けっぷりから嫌んなるほど学んだ。ただそれだけの事だ。じゃ回線切るぜ!』
アル・ガ・デラロサ率いる初代、連合軍第一特殊空挺部隊は、このファウナを始めとした生身の人間達にこっぴどくやられたものだ。言わば消せるものなら消したい黒歴史。
されど歳を重ねてゆくと『消せぬなら、いっそ大いに鳴かせてしまえ、我が記憶の断片』とでもいった感じで、忘却する為の力を、経験値に換金出来る余裕が生まれるというものだ。
▷▷フィルニア、まだ残ってる雷雲から雨雲を呼んで! 出来るわよね?
またしてもファウナから風の言の葉を聞くフィルニア。しかし言うこと欠いて『出来るわよね?』とは流石に片腹痛い。それ処か総てを察した。
「──風よ! 唸る程の雨を此処に呼べ!」
ザァーッ!!
凄まじき局地的豪雨。機体という傘が無くてはさぞ痛かろうと思ったマリアンダが未だ気を失っているチェーンに覆い被さる優しさを見せる。
ブンッ!
『クッ! あの辻斬り野郎、息を吹き返しやがった!』
どうやら予備の操作補助とやらの再設定が終わったらしい。再び瞳孔を単眼カメラに宿し、柄だけに成りかけてた蒼き刃も復活した。それをさも悔しがるデラロサの大根役者。
「──地に染み渡りし水達よ。束縛の姿へ変えよ!」
何時の間にやらの水使いディーネそのものが、濡れた地面を気にせず座り、水の精霊達へ呼び掛けているではないか。
大破しハッチが余り開かぬ自機から、身体を潰して如何にか抜け出していた。女性特有の出てる処が豊満なのは、かなり手こずる羽目に陥る。しかし『私もまあまあよね』とおどけてみるのが彼女らしい。
地面に染み渡る水を束縛の姿とは中々詩的溢れる素敵な物言い。要は凍結させるという意味だ。黒海の浮島が一挙、北極に浮かぶ氷山の如き景色へ転じた。
──しかし真の意味で束縛出来る存在など果たしてあるものだろうか。
自分の魔術で空を舞えるゼファンナ機は勿論、天斬機、エルドラ機も表面だけ凍らせた処で夏タイヤを履く自動車の如く、行動不能に陥ったりなどしない。
「い、いかん。今直ぐ天斬に地面を氷解させろ!」
急に平常心を失う軍司令官。声を荒げて管制官に指示を飛ばす。
「──はっ?」
「えぇぃ、急げと言っている! 天斬機の蒼き刃は高熱を帯びている! これは星の屑封じだ、そんな事も判らんのか!」
まるで意味を解せぬ無能な管制官に対し、如何にも軍の上官らしい理不尽な檄を飛ばした。
エルドラ・フィス・スケイル、それにパルメラ・ジオ・アリスタもこよなく愛した星の屑という物体。
実は地球上の何処にも存在し得る物質であり、空から降りつけるものでない。普段は火山灰の様に地面に降り積もっている存在である。
寄って浮島の地表を凍らせる行為は、まさに束縛足り得るのだ。例えエルドラと言えども、墜としたい地表の屑を動かせないでは如何にもならぬ。
焦りつつ天斬機をホバリング全開で空へ上げた瞬間だった。
ズバッ!
これはどうした事だ。空へ上がった天斬機の両腕が見えぬ何かに切断され、溢れ出る漏電を発しながら浮島へ堕ち往く。
ズルッ。
「ば、馬鹿なッ!!」
妖怪眼鏡拭きの眼鏡が、驚き歪んだ顔のせいで、位置を維持出来ずにずり落ちる。
『嗚呼……何てこった。何て楽な仕事だ』
ヴァロウズの末席にして、上の9人誰もが成し得ない楽な仕事が出来る女罠使い。
音消しのジレリノの悪癖。この素晴らしき心地良さ。恍惚過ぎる故、我慢出来ず心の声を漏らさずにはいられなかった。
此方は追加人員として浮島へ向かう最中のレヴァーラ達4人組。
天変地異か? はたまた雷竜が天へと飛翔している様か? 傭兵として戦場で数多の惨状を目の当たりにしてるジレリノが青いポニテを揺らして叫ぶ。
『そんな訳ないね。あんな馬鹿な真似出来るのは、どちらかのファウナに決まってる』
少々呆れ声を交えたアノニモが毎度御馴染な独特の口調で応答する。
『──アレは……。この力はファウナ・デル・フォレスタ本人だ。この私が言うのだから間違いない』
下駄の操縦桿を一応握るレヴァーラ・ガン・イルッゾが喜びと脅威を織り交ぜた声で断定する。この戦闘機、基本操作はAIだ。
──私が世界で最も森の女神のことを把握している。女神の真似事をした魔女の行為ではない。
──これ程まで美しい光景を創造出来得るのは、私のファウナただ独りだ。
レヴァーらの翠眼が雷の光で金色に染まる。同時に自分の中に渦巻く漆黒の企みさえも浄化される思いだ。
既に森の女神だと認め、最初の信者と化した彼女。我が神の行いは自分のものだという強欲。
『──ジレリノ、間もなく作戦行動に移行する。即刻音消しを頼む』
『ア"ア"ッ? もうとっくにやってんだよ黒の女神様。後は仕掛けを張るだけだぜぇ』
レヴァーラがさも首謀者面した声を張るが、無駄な指示だと今さら気付く。何しろ戦闘機のジェットエンジンが聞こえないのだ。これは苦笑を禁じ得ない。
しかしその笑いとは裏腹なる情緒。実際の処、未だ不安は拭えずにいる。せめて我々が辿り着くまで持ち堪えて欲しい。けれど着いた処で何が出来よう?
我ながら、らしくない不安を抱え込んでしまっている。ジレリノの音消しさえも気付けなかった。冷汗が操縦服の中で這う不快。
応答するジレリノの声は御機嫌そのもの。
巨大人型兵器を自分の意志で操れる奇跡。こんな心弾む楽ではないが楽しい仕事。人生に於いてそう巡ってくるものではない。
◇◇
「「──『森の刃』!」」
またしても金色のEL97式改同士の熾烈なる魔法戦へと返る双子の姉妹。
ゼファンナが巨大な鉄の葉物を幾重も落としたと思えば、ファウナは地上から舞い上がる鋼の葉で迎え撃つ。
「「──『爆炎』!」」
森の刃の次は互いの超電磁銃から爆炎魔法を撃ち合うも互角。ファウナは自機の超電磁銃を失っていたが、行動不能のディーネ機から奪っていた。
先程は互いに輝きの刃による鍔迫り合いを繰り広げていた両者。次は一転、魔法による遠距離を活かす戦法に移行している。
とはいえお互い全力稼働といった体ではなさそうだ。あれだけ吼えた割に未だ様子見を続けられる冷静さを失っていない。
ガシンッ!
「──ッ!?」
「ファウナッ! チャンネル5728だ」
そんなファウナに意外なる横槍。アル・ガ・デラロサ隊長がアンカー付きワイヤーを飛ばし、無線回線に頼らぬ声を不意に届ける。
パチンッパチンッ。
『何なのデラロサ? ファウナ・デル・フォレスタ絶賛戦闘中であります!』
さも面倒と言わんばかりの態度を返すファウナ。もう誰相手でも継承略だ。但しわざとらしく『あります』などと返す余裕も見せる。
『おぅっ、誰にも真似出来ねぇ魔法戦、大層御苦労なこった。秘策──って言うには大袈裟過ぎんが、ちょいとばかし隊長の血ぃ、騒いだって訳よ』
音声のみなのにデラロサがニヤリッとしながら自身のこめかみを指差す。『俺様の頭が面白ぇことを思いついた』という合図。
これには争いに昂るファウナでさえも、脳の1割ぐらい割いても良いかという興味を抱く。
ニタリッ……。
『──中々面白そうじゃない、乗るわその話。流石は隊長、伊達じゃないわね』
ファウナ──姉との戦いの最中、冷笑をその可愛らしい顔に湛える。
『ヘッ! 俺様、あの散々な負けっぷりから嫌んなるほど学んだ。ただそれだけの事だ。じゃ回線切るぜ!』
アル・ガ・デラロサ率いる初代、連合軍第一特殊空挺部隊は、このファウナを始めとした生身の人間達にこっぴどくやられたものだ。言わば消せるものなら消したい黒歴史。
されど歳を重ねてゆくと『消せぬなら、いっそ大いに鳴かせてしまえ、我が記憶の断片』とでもいった感じで、忘却する為の力を、経験値に換金出来る余裕が生まれるというものだ。
▷▷フィルニア、まだ残ってる雷雲から雨雲を呼んで! 出来るわよね?
またしてもファウナから風の言の葉を聞くフィルニア。しかし言うこと欠いて『出来るわよね?』とは流石に片腹痛い。それ処か総てを察した。
「──風よ! 唸る程の雨を此処に呼べ!」
ザァーッ!!
凄まじき局地的豪雨。機体という傘が無くてはさぞ痛かろうと思ったマリアンダが未だ気を失っているチェーンに覆い被さる優しさを見せる。
ブンッ!
『クッ! あの辻斬り野郎、息を吹き返しやがった!』
どうやら予備の操作補助とやらの再設定が終わったらしい。再び瞳孔を単眼カメラに宿し、柄だけに成りかけてた蒼き刃も復活した。それをさも悔しがるデラロサの大根役者。
「──地に染み渡りし水達よ。束縛の姿へ変えよ!」
何時の間にやらの水使いディーネそのものが、濡れた地面を気にせず座り、水の精霊達へ呼び掛けているではないか。
大破しハッチが余り開かぬ自機から、身体を潰して如何にか抜け出していた。女性特有の出てる処が豊満なのは、かなり手こずる羽目に陥る。しかし『私もまあまあよね』とおどけてみるのが彼女らしい。
地面に染み渡る水を束縛の姿とは中々詩的溢れる素敵な物言い。要は凍結させるという意味だ。黒海の浮島が一挙、北極に浮かぶ氷山の如き景色へ転じた。
──しかし真の意味で束縛出来る存在など果たしてあるものだろうか。
自分の魔術で空を舞えるゼファンナ機は勿論、天斬機、エルドラ機も表面だけ凍らせた処で夏タイヤを履く自動車の如く、行動不能に陥ったりなどしない。
「い、いかん。今直ぐ天斬に地面を氷解させろ!」
急に平常心を失う軍司令官。声を荒げて管制官に指示を飛ばす。
「──はっ?」
「えぇぃ、急げと言っている! 天斬機の蒼き刃は高熱を帯びている! これは星の屑封じだ、そんな事も判らんのか!」
まるで意味を解せぬ無能な管制官に対し、如何にも軍の上官らしい理不尽な檄を飛ばした。
エルドラ・フィス・スケイル、それにパルメラ・ジオ・アリスタもこよなく愛した星の屑という物体。
実は地球上の何処にも存在し得る物質であり、空から降りつけるものでない。普段は火山灰の様に地面に降り積もっている存在である。
寄って浮島の地表を凍らせる行為は、まさに束縛足り得るのだ。例えエルドラと言えども、墜としたい地表の屑を動かせないでは如何にもならぬ。
焦りつつ天斬機をホバリング全開で空へ上げた瞬間だった。
ズバッ!
これはどうした事だ。空へ上がった天斬機の両腕が見えぬ何かに切断され、溢れ出る漏電を発しながら浮島へ堕ち往く。
ズルッ。
「ば、馬鹿なッ!!」
妖怪眼鏡拭きの眼鏡が、驚き歪んだ顔のせいで、位置を維持出来ずにずり落ちる。
『嗚呼……何てこった。何て楽な仕事だ』
ヴァロウズの末席にして、上の9人誰もが成し得ない楽な仕事が出来る女罠使い。
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