いつか賢者になる僕は、追放された勇者パーティから溺愛をうけていた!?〜ごめん、女神様とパーティーを組んでるから戻れません〜

花野りら

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   第二章  火の女神リクシスの加護

  23  サキュバスの巣 ③

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 空気が震えている。
 薄暗い部屋、ゆらぐ竜槍の灯火、横たわる半裸の男たち……。
 冷たい風が吹き、ガタガタと社を揺らす。
 祭壇に祀られたクリスタルの裏から、ぬっと黒い人影が顔をだした。
 
「あら……バレてたの?」

 甘ったるい声が響く。
 黒髪の白い肌を露出した女。漆黒のレースの下着だけをつけ、背中には黒い翼、ヒップからは細長い尻尾が踊っている。この女が魔族のサキュバスなのだろうか。右手で握っているのは男の首。女はニヤリと笑い、
 
「サキュバスの巣に女が入ってくるなんて前代未聞ね……おや? あなた?」
「はい。女は女でも私は人間の女ではありません。ましてや魔界の女でもないです」
「……ま、まさか……女神?」
「御名答です。現在、少年の願いを叶えるためパーティを組んでいます」
「ハア?……人間とパーティを?」
「はい。したがって……」

 言葉を切ったリクシスさんは、キリッと竜槍をサキュバスに向けると言い放つ。
 
「サキュバスさん、あなたを駆逐しますっ!」

 っひ! と悲鳴をあげたサキュバスは男の首を離した。
 ドサリ、と鈍い音をあげて男が床に転がる。
 顔をよく見ると、ヒゲだった。
 僕はおもわず口を手で覆い、叫び声を抑える。
 ヒゲは穏やかな表情で目を閉じていた。
 死んでないといいが……。
 やはり、ヒゲの股間からもネバついた白い液体が、ダラダラと流れていた。
 本当にこれはいったいなんだ?
 どうやったらこんな白い液体が体内から放出されるのだろう。
 もしかて魔法か? いや、特殊な能力スキルかもしれない。
 男たちの股間から吐き出されている白い液体の正体はなんなのか? 
 期待と不安で頭がいっぱいの僕は、思い切ってリクシスさんに質問を投げかけた。
 
「リクシスさん、男たちから放出されている白い液体ってなんですか?」
「……ん? あれが精液ですよ、ラクトくん」
「セイエキ……サキュバスはこれを狙っていたのですね」
「御名答です」
「悪いやつだ……あ、そう言えば、さっきリクシスさんは駆逐と言いましたが、このサキュバスを殺すのですか?」

 チラッと僕のことを見つめたリクシスさん。
 
「はい。秒で焼き払うことができますが。ラクトくんが宣言通り、やっていただけますか?」
「え? 僕にできますか? もしも負けてしまい、僕もセイエキを搾取されたら……やだな……」
「安心してください。私がすぐそばで加護を与えてあげますから……ラクトくんの童貞は死守します」
 
 わかった、と僕はうなずいた。
 すると、サキュバスは翼を広げた。腰を曲げ体制を低くしている。
 
「バカバカしい! 女神に勝てるわけないじゃない。もう付き合ってらんないわっ」

 そう言うと、翼を羽ばたかせて突風を巻き起こした。
 その風のなかに鋭い黒い刃が混ざっているように見える。当たれば即死だろう。
 どうしよう。
 シールドをかけようと詠唱を始めるとリクシスさんが、
 
「ラクトくん。入ってください」

 と、言いながら、ブゥンと虚空から円盾を生みだした。
 肉薄してくるリクシスさんは、ぎゅっと僕の肩を抱き寄せ、耳もとでささやく。
 
「ウインドカッターですか……小賢しいことをするサキュバスさんですね。デブが死んでしまったじゃないですか……」

 その通りのことが起きた。
 ドシャ、とデブが膝から崩れ落ちる。
 身体には無数の黒い羽が刺さっており、デブはそのままぴくりともしない。ただ、白い目を天井に向けているだけの骸と化した。無残な光景を見つめるサキュバスは高飛車に笑う。
 
「きゃははは! よく聞け……」

 翼を羽を大きく広げたサキュバスは、ぐんと飛びあがり、
 
「人間界はいずれ我が魔族のものになるだろう。きゃははははっ!」

 と、言葉を放ち、社の出口に飛んでいく。
 
「じゃあなっ、女神のバーカっ!」

 そう言われ、イラッとしたリクシスさんは腕を伸ばし、虚空で手のひらを開いた。その瞬間、サキュバスのまわりに鉄の棒がいくつも現れ、あっという間に牢屋ができあがった。

「ぎゃぁぁ! なにこれぇぇ」

 ふん、と鼻で笑ったリクシスさんは答えた。

「サキュバスさん、あなたを捕縛します」
「ハア? 私を捕縛してどうするつもりよ?」

 さぁ、と言葉を濁し肩をすくめたリクシスさんは、燃えるような瞳で、サキュバスを見つめた。

「何かの役にたつかもしれませんし」
「嘘でしょぉぉ! だせ~! ここからだせ~!」
「とりあえず、天界に送っておきますね。神官たちには自分から詳細を言っておいてください」
「なんだそれ? ちょ、まてまて、天界って……」
「はい。イケメンの神官たちがいっぱい可愛がってくれますから、お楽しみに」
「いやぁぁぁぁ! 私はMではないんだぁぁぁ! 攻める側のどSなのに、くそぉぉぉ、やめろぉぉぉ」

 サキュバスの悲鳴に対して、「うるさいですね……SはMになりやすいと聞きますが……」と言って眉をひそめたリクシスさんは、パチンと指をはじく。すると、鉄の牢屋は煙のように、一瞬にして消えた。

「……サキュバスをどうするつもりですか?」
「ん~、まあ誰かさんを懲らしめるときに使えるかなと思って」
「え? 誰を懲らしめるんですか?」

 うふふ、さて誰でしょう、と曖昧な返事をしたリクシスさんは微笑んだ。それでも、僕はサキュバスの残していった言葉が不安でしかたがなくなって、ついリクシスさんに尋ねた。

「魔族が……人間界を支配しようとしているのですか?」
「そうみたいですね。まあ、いつかは牙を向くことはわかってましたが……まったく、懲りない魔王です」
「リクシスさんは魔王を知っているのですか?」
「もちろん。かつて私がお灸をすえた相手ですから」
「え! そうなんですか」
「はい。千年前、魔王は人間の女たちが綺麗なことに気づきました。そこで支配してやろうと企んだのです。たしかに、人間の女は素晴らしいですからね。ほら、見ての通り、私の肉体もベースは人間の女です。ほら、すごいでしょ? このおっぱいにくびれ、艶かしいヒップ、まあ、プロポーションを維持するのには苦労しますが……やれやれ」
「……じゃあ、魔族たちは人間の女を狙って……その……」
「そうです。ラクトくんの好きな女の子やお母さんだって危険なんですよ。残忍な魔族の力を侮ってはいけません」
「ううう、マジか……」

 僕は急に不安になって、ガグブルに身体が震えた。
 すると、リクシスさんは優しく微笑み、僕の身体を、ぎゅっと抱きしめてささやく。
 
「大丈夫。ラクトくんが悲しまないように、私が全力で君に加護を与えます。だって……」

 にっこりと笑い。
 
「友達になるんですから、私たち……」
 
 うん、と僕はうなずいた。
 もう僕はリクシスさんのことを友達以上だと思っているんだけどな、という思いは胸に秘めて。




  

  * おまけ コーナー*

   あら、こんばんわ。
   リクシスです。火の神殿へようこそ!
   そして、ここまで読んで頂きありがとうございます。
   私とラクトくんの冒険はいかがでしたでしょうか?
   まだ序盤ですが、楽しめてくれたのなら光栄です。
   よかったら感想など、心からお待ちしてます。
   
    おもしろい
 
    つまらない

    スカッとする

    気持ち悪い

    バカみたい

    エロい

    変態……

    などなど、どんな内容でもかまいません。
    あなたの感想が今後の展開に影響を及ぼすかも?笑
    作者の【花野りら】さんもがんばって執筆してます。
    ぜひ応援のほどを、よろしくお願いします。
    それでは、物語のラストまでお付き合いしてください♡
   
   
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