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第一部 春
30 ブレックファースト
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わたしとベニーは、ささっとタオルドライしてから制服に着替えた。朝から何も食べてない。お腹はぺこぺこだった。食堂によって朝食を摂ることにする。
わくわくしながら厨房をのぞくと、目当てのイケメン料理長リオン・オセアンを見つけた。わたしとベニーは顔を合わせて、にっこり笑った。朝からイケメンを拝めるとテンションあがっちゃう。
リオンさんは真剣な表情で、切り刻んだ野菜や果物などの食材を計量すると、それらをきちんと感のあるパックに詰めていた。料理の下処理なのだろう。
つづいて、肉をさばき始めた。
包丁の切れ味が素晴らしい。一流料理人の腕前を感じさせる。灰色の瞳が鋭い光りを宿していた。
ヤダ、かっこいい。
おはようございます、と挨拶したいけど、とても気楽に話しかける雰囲気ではない。
そう、彼は仕事ちゅう。
忘れてはダメよ、マリ・フローレンス。
学生のわたしたちと彼とは、住む世界が違う。リオンさんは大人の男性だ。ああん、ワイシャツをまくった腕、なんてセクシーなのだろう。
ピー!
わたしは心のなかで笛を鳴らす。女子生徒を誘惑した反則で、一枚目のイエローカードを提示するわ、リオンさん。
「腕の筋肉がヤバっ……」
ベニーは思わず心の声が漏れていた。
「うん、触ってみたいわ……」
わたしも激しく同意せざるを得ない。
「ガブってかぶりつきたいぞ!」
「え? ベニーって猟奇的ね」
「きゃはは! でもそんなことしたらオコだよね、きっと」
「わかんないわよ。ちょっとやってみたら?」
「ムリムリムリ!」
首を横にぶんぶん振るベニーは、さっさとトレーにパン、スクランブルエッグ、ウィンナー、そして、。サラダをこれでもかってほど、てんこ盛りにすると席について、
「いただきまーす!」
と叫んで食べ始めた。
ちょっと、ベニー! 朝からその食事量はヤバいって、おえ……。
わたしはクロワッサンにバターをつけて食べるのが好きなので、それらとベーコンエッグ、サラダはトマトを多めに盛った。赤い宝石みたいなトマトにはリコピンが豊富に含まれていて、食べると血液をサラサラにしてくれる効果がある。あと、お肌にもよきよき。
「いただきます」
わたしは合掌してから指を絡めて、アーメン、なんて祈りを捧げると食べはじめた。料理はやっぱり美味しくて、ベーコンエッグの塩加減なんて絶妙。ハーブソルトがふりかけてあるみたい。バジルの風味がした。リオンさんってハーブの知識もありそうね。こんどお話ししてみよう。
そうそう、教授からもらった種のことを思い出した。それは、ハーブの種だった。レレリーという植物で外国で咲いていたらしい。教授にはなにかと権限があるから、まあ、密輸みたいな感じで手に入れたわけね。
それでも、そんな危険な草をもらっちゃうわたしもどうかと思うけど、植物を研究する愛情は止められない。
朝食を食べ終えたわたしは紅茶を飲んでいた。
ベニーはいまだに食事ちゅうだった。それでもかまわず、わたしはベニーに話しかけていた。今日から三年生か~、あと一年で卒業とか実感わかないわね~とか、担任の先生どんな人かな~とか、旬な話題性のあるトレンドワードを連呼したけど、ベニーは食べまくっていて、適当な相槌しか打ってくれない。
んもう、ベニーとじゃあ話にならないわ。
やがて、ぞくぞくと食堂に女子生徒たちが入ってきた。彼女たちはベニーの姿を見ると、ぱっと花が咲いたように笑顔になった。
ベニーは人気者で、おはようございます、と声をかけられることが、しばしばある。そのたびに、ベニーが満面の笑みで、おっはーだぞっ、と返すと、女子生徒たちは、きゃきゃっと喜んでいた。
まもなく、ルナスタシアとメルキュールが食堂に入ってきた。
彼女たちは制服を着ていた。
料理を盛っているときに、メルちゃんの腕の長さでは届きにくい料理なんかをルナが取ってあげていた。心の優しいルナスタシアの一面が見えて、なんとも微笑ましい。新しい友達ができてよかったね、メル。
さあ、今日から新学期。
乙女ゲームの物語は始まったばかりだ。
まず、わたしにはやることがあった。この世界に入った原因を調査しようと思っている。それと同時に、向こうからコンタクトを取ってくるはずだとも踏んでいた。なぜなら、ここは乙女ゲームの世界。きっとどこかに開発者、創造主、またはプログラマーのような存在がいるに決まっている。
よーし、かならず見つけ出してやるわ……。
わたしはティーカップをテーブルに置くと、ささやくように言った。
「ベニー、そろそろいくわよ」
ベニーは顔を上げた。
口のなかをいっぱいにして、もぐもぐ咀嚼している。
え? まだ食事ちゅうだったの? そんなに食べると太るわよ、ベニー!
わたしが呆れていると、ルナとメルちゃんが、近くのテーブルの椅子を引いて座った。
「いただきます」
仲良くそう言ってから二人は食べはじめた。わたしはぬるくなった紅茶を飲みほすと、お先に、とみんなに告げて部屋に戻った。
わくわくしながら厨房をのぞくと、目当てのイケメン料理長リオン・オセアンを見つけた。わたしとベニーは顔を合わせて、にっこり笑った。朝からイケメンを拝めるとテンションあがっちゃう。
リオンさんは真剣な表情で、切り刻んだ野菜や果物などの食材を計量すると、それらをきちんと感のあるパックに詰めていた。料理の下処理なのだろう。
つづいて、肉をさばき始めた。
包丁の切れ味が素晴らしい。一流料理人の腕前を感じさせる。灰色の瞳が鋭い光りを宿していた。
ヤダ、かっこいい。
おはようございます、と挨拶したいけど、とても気楽に話しかける雰囲気ではない。
そう、彼は仕事ちゅう。
忘れてはダメよ、マリ・フローレンス。
学生のわたしたちと彼とは、住む世界が違う。リオンさんは大人の男性だ。ああん、ワイシャツをまくった腕、なんてセクシーなのだろう。
ピー!
わたしは心のなかで笛を鳴らす。女子生徒を誘惑した反則で、一枚目のイエローカードを提示するわ、リオンさん。
「腕の筋肉がヤバっ……」
ベニーは思わず心の声が漏れていた。
「うん、触ってみたいわ……」
わたしも激しく同意せざるを得ない。
「ガブってかぶりつきたいぞ!」
「え? ベニーって猟奇的ね」
「きゃはは! でもそんなことしたらオコだよね、きっと」
「わかんないわよ。ちょっとやってみたら?」
「ムリムリムリ!」
首を横にぶんぶん振るベニーは、さっさとトレーにパン、スクランブルエッグ、ウィンナー、そして、。サラダをこれでもかってほど、てんこ盛りにすると席について、
「いただきまーす!」
と叫んで食べ始めた。
ちょっと、ベニー! 朝からその食事量はヤバいって、おえ……。
わたしはクロワッサンにバターをつけて食べるのが好きなので、それらとベーコンエッグ、サラダはトマトを多めに盛った。赤い宝石みたいなトマトにはリコピンが豊富に含まれていて、食べると血液をサラサラにしてくれる効果がある。あと、お肌にもよきよき。
「いただきます」
わたしは合掌してから指を絡めて、アーメン、なんて祈りを捧げると食べはじめた。料理はやっぱり美味しくて、ベーコンエッグの塩加減なんて絶妙。ハーブソルトがふりかけてあるみたい。バジルの風味がした。リオンさんってハーブの知識もありそうね。こんどお話ししてみよう。
そうそう、教授からもらった種のことを思い出した。それは、ハーブの種だった。レレリーという植物で外国で咲いていたらしい。教授にはなにかと権限があるから、まあ、密輸みたいな感じで手に入れたわけね。
それでも、そんな危険な草をもらっちゃうわたしもどうかと思うけど、植物を研究する愛情は止められない。
朝食を食べ終えたわたしは紅茶を飲んでいた。
ベニーはいまだに食事ちゅうだった。それでもかまわず、わたしはベニーに話しかけていた。今日から三年生か~、あと一年で卒業とか実感わかないわね~とか、担任の先生どんな人かな~とか、旬な話題性のあるトレンドワードを連呼したけど、ベニーは食べまくっていて、適当な相槌しか打ってくれない。
んもう、ベニーとじゃあ話にならないわ。
やがて、ぞくぞくと食堂に女子生徒たちが入ってきた。彼女たちはベニーの姿を見ると、ぱっと花が咲いたように笑顔になった。
ベニーは人気者で、おはようございます、と声をかけられることが、しばしばある。そのたびに、ベニーが満面の笑みで、おっはーだぞっ、と返すと、女子生徒たちは、きゃきゃっと喜んでいた。
まもなく、ルナスタシアとメルキュールが食堂に入ってきた。
彼女たちは制服を着ていた。
料理を盛っているときに、メルちゃんの腕の長さでは届きにくい料理なんかをルナが取ってあげていた。心の優しいルナスタシアの一面が見えて、なんとも微笑ましい。新しい友達ができてよかったね、メル。
さあ、今日から新学期。
乙女ゲームの物語は始まったばかりだ。
まず、わたしにはやることがあった。この世界に入った原因を調査しようと思っている。それと同時に、向こうからコンタクトを取ってくるはずだとも踏んでいた。なぜなら、ここは乙女ゲームの世界。きっとどこかに開発者、創造主、またはプログラマーのような存在がいるに決まっている。
よーし、かならず見つけ出してやるわ……。
わたしはティーカップをテーブルに置くと、ささやくように言った。
「ベニー、そろそろいくわよ」
ベニーは顔を上げた。
口のなかをいっぱいにして、もぐもぐ咀嚼している。
え? まだ食事ちゅうだったの? そんなに食べると太るわよ、ベニー!
わたしが呆れていると、ルナとメルちゃんが、近くのテーブルの椅子を引いて座った。
「いただきます」
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