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第一部 春
35 トイレでおしゃべり
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「おしっこいくぞ! マリリン、ルナルナ」
親指を立てたベニーが、グイッと誘ってきた。
「んもう、ベニーったらはしたない。お花摘みと言ってよねっ」
わたしはツッコミを入れて表現を変えてやってから、「ルナもいきましょう」と誘った。しかし、ルナは国語の教科書に目をとおしていた。次の授業のため、予習をしたいのだろう。天然キャラのくせに、意外と真面目なのね、ルナ。
「わたしはいいわ」ルナは軽く手を振った。
「あら、そう……」
わたしはちょっと残念そうに肩を落とす、演技をした。なぜなら、イベントを発生させるためだ。わたし女優になれるかも、うふふ。
「もれそうだぞぉぉぉぉ!」
ベニーはいきなりダッシュして、教室から出ていった。ひゅう、あれじゃあ、とうぶん彼氏はできないわね、ベニー・ヴィルタン。もし、この場にメルちゃんがいたら、さぞ苦笑しているだろうなあ、と思いながら、わたしも廊下に出た。走る、後ろ姿のベニーは、もうトイレに入るところだった。
廊下を走るなってば、はしたない。
さて、と……。
わたしもトイレに着いたので、個室に入る。ようをたそうとスカートの裾をつかむ。それでも、スカートの丈が長いから、まくり上げるのに手こずった。んもう、なんでわたしのスカートだけ長いの? 公式ファンブックによると、マリエンヌは、このセクシーすぎる美脚を隠すため、わざとスカートの丈を長くしている、らしい。
「スケバンのコスプレかよっ!」
ああっ、面倒くさい。わたしもスカートが短いほうがいいな。そのほうが、日本の女子高生のときから慣れてるし、動きやすいし、かわいいもん。
「ふう……」
じゃー、と水を出して流す。個室を出た。手を洗い、ポケットからハンカチを取り出して濡れた手を拭く。ふと、横にいるベニーを見ると、濡れた手をスカートの裾で拭こうとしていた。おいおい!
「ちょっと! これを使いなさい」
わたしはベニーにハンカチを差し出す。ベニーは、ありがとう、と言って笑ったあと、つづけた。
「ねぇ、ルナルナの声ってすごくない?」
「え? 声?」
「だって、騒がしかった教室が、ルナルナの、はい! ていう返事で静かになったぞっ」
「そうね、あの現象は興味深いわね」
「よし! 決めたぞぉぉぉ!」
「どうしたの?」
ベニーはハンカチをわたしの手もとに返すと、拳を作って虚空に掲げると叫んだ。
「ベニーはルナルナを演劇部に入れるぞっ!」
「……あ、そういうことね」
「なあ、マリリンどう思う?」
「いいと思う。賛成するわ。もし実現したら……」
「なに?」
「未来は、美しく光り輝くことになるでしょう」
「急にどうした、マリリン? 詩人っぽいぞ、お腹でもすいた?」
ベニーはそう言って、わたしのお腹を触ってきた。おまけに、こちょこちょっとくすぐってくるから、いやんっ、たまんない。
「ちょっと、やめてっ、ベニー!」
「きゃはは! マリリンは笑ってたほうがかわいいぞ、理屈っぽいと彼氏できないぞぉ」
「ちょっ……あんたに言われたくないわっ!」
きゃはは、ベニーは笑いながら教室に戻っていく。
ふう、彼氏か……。
わたしは廊下を歩きながら黙考する。そもそも、モブのわたしが彼氏なんて作っていいのだろうか? 変な色恋に巻きこまれて、ゲームのシナリオに影響しないといいが……。
杞憂な乙女心が、わたしの心に影を落としていた。
親指を立てたベニーが、グイッと誘ってきた。
「んもう、ベニーったらはしたない。お花摘みと言ってよねっ」
わたしはツッコミを入れて表現を変えてやってから、「ルナもいきましょう」と誘った。しかし、ルナは国語の教科書に目をとおしていた。次の授業のため、予習をしたいのだろう。天然キャラのくせに、意外と真面目なのね、ルナ。
「わたしはいいわ」ルナは軽く手を振った。
「あら、そう……」
わたしはちょっと残念そうに肩を落とす、演技をした。なぜなら、イベントを発生させるためだ。わたし女優になれるかも、うふふ。
「もれそうだぞぉぉぉぉ!」
ベニーはいきなりダッシュして、教室から出ていった。ひゅう、あれじゃあ、とうぶん彼氏はできないわね、ベニー・ヴィルタン。もし、この場にメルちゃんがいたら、さぞ苦笑しているだろうなあ、と思いながら、わたしも廊下に出た。走る、後ろ姿のベニーは、もうトイレに入るところだった。
廊下を走るなってば、はしたない。
さて、と……。
わたしもトイレに着いたので、個室に入る。ようをたそうとスカートの裾をつかむ。それでも、スカートの丈が長いから、まくり上げるのに手こずった。んもう、なんでわたしのスカートだけ長いの? 公式ファンブックによると、マリエンヌは、このセクシーすぎる美脚を隠すため、わざとスカートの丈を長くしている、らしい。
「スケバンのコスプレかよっ!」
ああっ、面倒くさい。わたしもスカートが短いほうがいいな。そのほうが、日本の女子高生のときから慣れてるし、動きやすいし、かわいいもん。
「ふう……」
じゃー、と水を出して流す。個室を出た。手を洗い、ポケットからハンカチを取り出して濡れた手を拭く。ふと、横にいるベニーを見ると、濡れた手をスカートの裾で拭こうとしていた。おいおい!
「ちょっと! これを使いなさい」
わたしはベニーにハンカチを差し出す。ベニーは、ありがとう、と言って笑ったあと、つづけた。
「ねぇ、ルナルナの声ってすごくない?」
「え? 声?」
「だって、騒がしかった教室が、ルナルナの、はい! ていう返事で静かになったぞっ」
「そうね、あの現象は興味深いわね」
「よし! 決めたぞぉぉぉ!」
「どうしたの?」
ベニーはハンカチをわたしの手もとに返すと、拳を作って虚空に掲げると叫んだ。
「ベニーはルナルナを演劇部に入れるぞっ!」
「……あ、そういうことね」
「なあ、マリリンどう思う?」
「いいと思う。賛成するわ。もし実現したら……」
「なに?」
「未来は、美しく光り輝くことになるでしょう」
「急にどうした、マリリン? 詩人っぽいぞ、お腹でもすいた?」
ベニーはそう言って、わたしのお腹を触ってきた。おまけに、こちょこちょっとくすぐってくるから、いやんっ、たまんない。
「ちょっと、やめてっ、ベニー!」
「きゃはは! マリリンは笑ってたほうがかわいいぞ、理屈っぽいと彼氏できないぞぉ」
「ちょっ……あんたに言われたくないわっ!」
きゃはは、ベニーは笑いながら教室に戻っていく。
ふう、彼氏か……。
わたしは廊下を歩きながら黙考する。そもそも、モブのわたしが彼氏なんて作っていいのだろうか? 変な色恋に巻きこまれて、ゲームのシナリオに影響しないといいが……。
杞憂な乙女心が、わたしの心に影を落としていた。
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