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19.(閑話)麻婆豆腐を買った人たち
しおりを挟む「おいっ! これを見ろ!」
王国最強の名を欲しいままにする戦闘クラン『夕嵐の双翼』のサブマスにして裏方担当・カストルは信じられないものを見た。
かつてはクランマスターとして最前線で剣を振るい、左足を失う大怪我をしてマスターの座を引退してからもクラン内で強い権力を持ってきた男が、こんなに狼狽えることもそうはない。
「どうしたんだ?」
現クラマスの弟ポルックスが興味津々といった風情で近づいてくる。
「ちょっと待っとけ!」
見ろと言った癖に待てという兄を横目にしばらく他のことをしていると。
「よっしゃあ! これで《鳳凰フラカン》討伐に行けるぞ!」
雄叫びを上げる兄を胡乱な目で見つめる弟。
「あいつを討伐するのは人間には無理だ、って結論になっただろ。
これ以上犠牲者を増やしてどうするんだ」
《鳳凰フラカン》は王都から見える位置にあるルビー火山の中ほどにあるダンジョンの主だ。
派手な火炎放射が特徴のボスモンスターで、高レベルの戦闘職でも火傷による継続ダメージを受けてしまう。
何度もアタックしてその度に犠牲者や怪我人を出し続け、討伐は絶望的だという結論が出たモンスターだ。
しかし。
「炎耐性+15のアイテムが手に入ったんだ!」
「耐性15だと!?」
耐性アイテムというものは普通+3~5程度、高くても+7程だ。★★のアイテムであれば。
「そんなに効果の高いアイテム、★★★だろう!?」
「ああ、★★★だな」
「一体いくらしたんだよ!」
夕嵐の双翼は最強と名高く、金回りももちろん良い。
けれど★★★アイテムでかつ炎耐性なんていう
有用な効果のものはとんでもない値段が付くから、そうそう買えるものではない。
「それが、たった3万キラだ!
料理アイテムだから効果は永続ではないだろうが、その分沢山出品されている。
20個買えたから、全員に耐性を付けた状態でアタックできるぞ!」
「20個だと!? そんなにあれば、前衛に2個配ることも出来るじゃないか!
それがたった3万キラだなんて、何故だ?
素材の代金だけでも相当なものだろうに」
「わからん。出品者も『アカリ』という全く聞いた事のない人だが、効果について詐欺は出来ないからな。
とにかく一旦メッセージを送ってみるさ」
「もし《鳳凰フラカン》が討伐出来たら、王都はより安全になるし、人々が住める範囲も増えるだろう。
よし、とにかくいつもの連中を集めて作戦会議だ!
兄貴はその出品者と連絡取っといてくれよな!」
高レベルになりすぎてここから更にレベルが上がる可能性が低くなり、頭打ちの感覚が出てきた最強クランに、新しい可能性が生まれた。
彼らが真のトップになり数多くのダンジョンボスを倒すのもそう遠くない話だろう。
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