旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん

文字の大きさ
57 / 69

57.出来ること

しおりを挟む


「僕の知る女性は実家の母と妹ですが、二人とも特に仕事はありませんでした。父の一人が家政を担っていて、二人の世話もしていましたね。
そういうものだと思っていましたが、イズミルはそれを求めてはいないのですね」

エルの言葉にうなずく。

「うん。産まれた時からの人生ずっとそうだったらいいのかもしれないけど、私はそうじゃない。
大学へ行って勉強して、バイトとはいえ働いて、そうやって稼いだお金で友達と遊びに行く。
そういう普通の暮らしをしてたのよ」

そう言うと、三人とも目を見開いて驚いた。

「外で働いていたのか!?」

カイルが叫ぶようにそう聞く。

「うん。家の近くのスーパーと、大学の図書館で」

「家業でもないのでしょう? それなのに掛け持ちしてまで働くとは……。
僕らはイズミルのことを活動的で可愛らしい女の子だと思っていましたが、考えをもっと変えないといけませんね」

私の過去の話はほとんどしてこなかったけれど、育った環境を知ってもらったら、少しは理解してもらえるかもしれない。
そう思ってもっと話をしようと思ったら、重ねるようにツィリムが口を開く。

「分かった。魔術師団で仕事を探してくる」

「はっ? ツィリム、正気か!?」

ツィリムに分かってもらえた、と思う間もなくカイルが反対する。

「家のことはイフレートがする。それなら外の仕事をすればいい。
師団なら仕事はある。俺も依頼したいことがあるから」

端的なツィリムの言葉がこれほど嬉しかったこともそうはない。

「ツィリム、何故、そんなことを言うんだ……! イズミルに負担をかけたいのか!!」

カイルもエルも私を守ろうとしてくれていて、でもそれは私の望みとは違って。
それが苦しいんだ。

「カヤッタエラでは、家のことは女性の仕事。この国みたいに、家事をする男はいない。
外出はしないが、家が職場のようなものだ」

「……そうなのか。そんなこと、聞いた事も無かった」

「カヤッタエラは、貧しい。女の人でも少しは仕事をしないと、生きていけない」

ツィリムの発言を聞いて、カイルが考え込む。

「国が違うだけで、俺とツィリムの常識は違う。イズミルと違って、当たり前か。
泣いてしまうほど追い詰めていて、申し訳なかった」

カイルに深々と頭を下げられて、ぎゅっと心が詰まる。私のことを理解しようと頑張ってくれたことが、たまらなく嬉しい。

「カイル、ありがとう。泣いちゃってごめん。カイルのせいじゃないの。ほんとに。
ワガママだと思うけど、私のしたいこともさせてほしいの」

「僕らの考えを押し付けて、イズミルが満足していると思い込んでいました。
こうしてきちんと話してくれて良かったです」

「俺は、自分ならどう思うか、という視点ではイズミルのことを考えていなかった。
イズミルがしっかりと自分を持っている所が好きなのに」

「そうですね。僕も反省しています。
最近イズミルの元気がないような気がしていましたが、ラスキス殿下との話し合いでストレスを感じているからだと思っていました。
それだけでなく、僕らにも原因があったのですね」

「ううん。みんなが悪いんじゃないの。私のワガママもあると思う。
でも、今までのままじゃ、耐えられなくなりそうだから。
分かってくれて、本当に嬉しいよ。ありがとう」

喧嘩みたいになっちゃったけど、分かってもらえて良かった。
世界が違うんだから感覚も常識も全然違うけれど、過ごしやすいように努力していきたいな。



そのあとは、私が温めて器によそうだけの簡単な夕食準備をしているのを、みんなが見つめていた。

「そんなに見られたら逆にやりづらいよ~」

「いや、やりたいと言うだけあって慣れているのだな、と感心していたんだ。
きっと俺の妹は、やり方自体を知らないと思う」

「そういう国で育ってきたんだから、それが普通だし良いんでしょ?
でも、私は出来るからやりたいの。
もうすぐだから座っててくれる?」

手早く盛り付けて、スプーンとフォークも並べる。
それだけの事なのに、ツィリムはなんだか嬉しそうだ。

「カヤッタエラに、帰ったみたい。
おれは、母さんがご飯の支度をしてくれるの、好きだった」

懐かしい故郷を重ねて見ているようで、ツィリムの瞳は少し潤んでいる。

「料理全部を出来るかは分からないし、イフレートにも来て欲しいけど、皆が帰ってきてからの支度はやるからね」

「確かに、誰かがご飯の準備をしてくれるというのは、いいものかもしれないな。
今は申し訳なさの方を強く感じてしまうが……」

「すぐに感覚を変えることなんて、出来ないよね。
少しずつでも慣れてくれたら嬉しいな。そうやって私もこの国に慣れてきたから」

「おれも、そうだった。違う国で生きるのは、大変だから」

穏やかな笑顔で見つめてくれるツィリムが頼もしい。
異国で暮らしているのは、私だけじゃないって思えるだけで、元気になれると思うんだ。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

新連載 

「壊れゆく聖女と影の少年~神の加護は心を癒してはくれないから、俺が先生を守ってあげたい~」

投稿しております。

心温まるようなハッピーエンド作品で、完結まで予約投稿済です。
どうぞご一読くださいますよう、よろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

男女比バグった世界で美女チート無双〜それでも私は冒険がしたい!〜

具なっしー
恋愛
日本で暮らしていた23歳喪女だった女の子が交通事故で死んで、神様にチートを貰い、獣人の世界に転生させられた!!気づいたらそこは森の中で体は15歳くらいの女の子だった!ステータスを開いてみるとなんと白鳥兎獣人という幻の種族で、白いふわふわのウサ耳と、神秘的な白鳥の羽が生えていた。そしてなんとなんと、そこは男女比が10:1の偏った世界で、一妻多夫が普通の世界!そんな世界で、せっかく転生したんだし、旅をする!と決意した主人公は絶世の美女で…だんだん彼女を囲う男達が増えていく話。 主人公は見た目に反してめちゃくちゃ強いand地球の知識があるのでチートしまくります。 みたいなはなし ※表紙はAIです

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。

具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。 ※表紙はAI画像です

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

処理中です...