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41.要らなくなんてならないよ!
しおりを挟むツィリムにお姫様だっこされたまま来た時に乗っていたのと同じような馬車に飛び乗った。
横の建物から出てきた御者らしい人に何か少し言っただけで走り出す。
座席の方にツィリムが戻って来ないことを考えると、担当の御者さんじゃなくてツィリムが運転してるのかな?
魔導馬車は動かしてるのを見たことあるけど普通の馬車も乗れたんだなぁ、なんて気楽に考えていたらあっという間に家に着いた。
「イズミ、乱暴になってごめん」
ちょっとしょんぼりしているツィリムに抱っこされて、リビングのソファに座る。
「いや、全然!急がないといけなくなったのはツィリムのせいなんかじゃないし。
むしろ、私とエスサーシャさんが調子に乗っちゃって建物壊しちゃったから……」
「イズミは悪くない。悪いのは加減を間違えたセラルシオ」
「うーん、まぁそうかもね。というか、何でこんなに急いでたの?」
あれよあれよという間に家に帰らされてしまったから聞くタイミングが無かったんだけど、ずっと気になってたのだ。
「うーん……」
考え込むような素振りのツィリムだけど、その瞳はこちらを向いてくれない。
今までの経験上、この仕草をしてる時は何か言いたくないことがあるんだと思う。
普段の些細な会話なら特に聞かずに流すんだけど、今回はそうも言ってられないから、ツィリムが言う気になってくれるまで待つ。
「イズミにはあまり実感がないかもしれないけど、本来魔素がない人が魔術を使えるということはかなり異常。
セラルシオみたいな人が他人の魔素を使って魔術を使うのは、出来ないわけじゃないけどかなり威力が減るのが普通だけど、今回はそうじゃなかった」
「あんなに強い魔術になるはずじゃなかったってこと?」
「そう。
おれ達はイズミがちょっと変わってるってことを知ってるけど、あの場に居たら誰かが来て、益々話が難しくなる」
「ふーん、そうなんだねぇ。
自分の事を知る為にも、魔法の事をちゃんと勉強したいな」
「おれが知ってることは、何でも教えるよ」
「ツィリムはそんなにエスサーシャさんのこと嫌いなの?」
言い出しづらいことなのか、しばらく考え混んでいたけれど渋々といった雰囲気で口を開いてくれた。
「だって……
おれの良いところって、魔術回路が凄く精密で、魔術が沢山使えることだから。
セラルシオは魔素が無いから魔術が使えなかったけど、イズミが居れば今日みたいに大きな魔術も使える。
そうしたら、おれは、要らなくなる」
「えっ!?何でそんな事考えちゃってたの!?」
ただひたすらに驚いた。
ツィリムが、私が仲良くする相手をそんなに深刻に見ていたなんて、全然気づかなかったから。
「……」
ふい、とそっぽを向いて立ち去ろうとするツィリムのローブの裾を咄嗟に握った。
「お願い、待って。ツィリムがそんなに心配してるの、本当に知らなかったから、話を聞いて欲しい」
正直、私はめちゃくちゃ焦っていた。
ツィリムのこと大好きなのに、伝わってなかったし不安にさせてたってことじゃない!
これは絶対良くないしたぶん私のせいだよねぇ!
「ごめんね、ごめん。
ツィリムのこと大好きだし、とっても大切にしたいと思ってるよ。
でも、思ってるだけじゃなくてちゃんと言葉で伝えないといけなかったね。
不安にさせて、ごめん」
「イズミが謝る事じゃない!!」
びっくりするほど強い否定。
「おれが、勝手に不安に思ってるだけ。
おれにはイズミしか居ないのに、って」
「うん、ありがとう。
ツィリムが私のこと大好きでいてくれてるのは充分分かってるよ。
それに、同じくらい、私はツィリムのことが大好きだから。
この先何があっても、誰か他の人とも結婚しても、それは絶対変わらないよ」
ぎゅうーっと抱きしめて頭をなでなでする。
しばらくそうしていたら落ち着いてきたみたいでよかった。
「イズミ、ありがと」
ぽそりと呟いた言葉だったけど、私の想いが伝わったんだって思えて嬉しくなった。
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