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55.家事の手伝い
しおりを挟むラスキスと会った日からしばらくして。
早めに会う機会を作るとは言っていたけれど、こちらの旦那さん3人とラスキスのスケジュールを合わせるのはなかなか大変なようで、まだ話は進んでいないらしい。
で、私はと言えば。
「ダメだ、ヒマすぎる~!!」
超絶暇を持て余していた。
仕事が欲しいとか色々言い続けているけれど、特に変化なしの現状は中々につらいものがある。
引越してからしばらくの間は物珍しさも手伝って何とかメンタルを維持できていたけれど、そろそろ限界。
ってことで、出来ることからやってみたいので、手始めにイフレートの仕事を見学することにした。
気分はバイトの研修期間だ!
……きっと、イフレートには教える気は無いだろうけど。
今の私に出来ることは、イフレートのポジションだと思うからね。
昼前に来たイフレートの周りをうろちょろしていたら、ちょっと不審そうな顔をされた。
「イズミ様、どうされましたか?」
「何してるのかな、って気になるだけ。見ててもいい?」
「もちろんよろしいですよ。私の仕事に興味を持って貰えるのは嬉しいことですから」
穏やかな笑顔で快諾してくれたので、話をしながら見てることにする。
大まかな流れはいつも見ているから知っているけれど、細かな手順も見て私が出来るところを探す。
せっかくツィリムが魔法の使えない私でも扱える道具を作ってくれたのに、現状全く活用出来ていない。
少しでも出来ることが欲しいんだ。
イフレートは昼前に家に来て私と二人分のお昼ご飯を準備してくれ、一緒に食べる。
食べ終わったら片付けて、洗濯物を機械に入れてからお掃除。
ちなみに洗濯機は乾燥まで一括でやってくれる優れもの。乾燥機に移し替える手間すらないって凄いよね。
ただ、その分時間は結構かかるけれど、放ったらかしで出来るのはすごい。
洗濯が終わったら畳んで片付け、買い物に出かけて行く。この時、私はお留守番なのでどこに行っているのかは知らない。
さすがにひとりで買い物には行かせて貰えなさそうなのでそこは諦めるしかないかな。
いつか、イフレートと一緒なら行ってもいい、って妥協してくれる日が来ることを願って。
買い物から帰ってきたら晩御飯の準備をして空いた時間に掃除の続きをし、夕方5時くらいに帰って行く。
うーん、隙がない。
お仕事なんだから当然だけど、ちゃんと忙しく働いているので私と遊んでくれる時間はないんだよね。
刺繍の図案を一緒に考えたり、雑談しながら編み物したり、そういう家庭科部時代のような楽しみをしたいな~とか思うけど、今のままでは難しそう。
数日イフレートの仕事を横で眺めていて、話もしてくれるのでめちゃくちゃ暇だと思う瞬間はかなり減った。
けれど、私は完全にイフレートの仕事の邪魔をしているだけだ。手伝わせて貰おうとすると笑ってやんわり遠ざけられるので、中々思うようにいかない。
でも、皆が出勤してからイフレートが来るまでの間は私ひとりきり。
その間に掃除と洗濯を終わらせておけば、私はヒマしないし、イフレートの手が空くので遊ぶ時間ができるかも。
ってことで、今日はみんなが仕事に行ったら私も自分の仕事をしよう!
とりあえず洗濯物を洗濯機に放り込み、掃除へ。
毎日掃除してくれているのでそこまで汚れてはいないけれど、毎日の積み重ねだからね。
階段周りを軽く拭き掃除して、3階の使ってない部屋の風通しをしに行く。
この部屋達、使ってないのがちょっと勿体ないよね。将来的に旦那様や子供が増えたら使うのだろうけれど、今は人が少ないんだから、誰かが使えばいいのに。
例えば、ツィリムの部屋はすっごく散らかっているけれど、あれは片付け出来ないせいだけじゃなく、根本的に部屋のサイズに対して物が多すぎるのも原因だと思うの。
物置か、魔法部屋として分けたらもう少しマシにならないかな。
あっ、魔法部屋を作ってくれたら、そこに本を置いてくれるのでは!?
そしたら私も読めるし一石二鳥だよね!
みんなが帰って来たら提案してみようかな。
やっぱり自分でやると色々考えも浮かびやすくていいね~!
そうこうしているうちに洗濯機が止まったのでお片付け。
畳んでそれぞれの物を分類していく。
いつもリビングに積まれているものを各自部屋へ持って行ってくれているので、いつものように置いておく。
その後は玄関周りの掃除でもしようかと思って1階に降りたら、地下室のことを思い出した。
魔素チャージのために何度か行っているけれど、薄暗くてホコリっぽいのよね。
風通しのためにドアを開けてみるけれど、窓も無いし地下なのであまり効果は無さそう……。
でもやらないよりはマシだと思うので掃除をしているうちにイフレートが来たような音がしたのでリビングへ戻る。
そこには、真っ青な顔色で俯き、絶望したイフレートが居た。
「えっ、イフレート!? どうしたの、体調悪い?」
「いえ、体調には全く問題ありません。
ただ……。ここ数日、私のことを見ていらっしゃったのは、ご不満があるからだったのですね。
大変申し訳ございません」
「何が?」
凄い勢いで謝られて、何が何だか分からない。
「私の仕事ぶりが至らないばかりに、イズミ様のお手を煩わせてしまいました。
申し訳ありませんが、どこがご不満なのか、教えて頂けませんでしょうか」
「あっ、そういうこと!? 違うちがう、そうじゃないのよ!」
「違う、とおっしゃいますと?」
「イフレートの仕事に不満があるから私がやったんじゃなくて、私がヒマだから私がやったの」
お互いに相手のことが理解出来ないのは、私がこの世界に来てから何度も経験しているけれど、中々慣れないよね。
「ヒマだから???」
私の言いたいことが、イフレートは理解し難いらしい。
「だって、私は朝から晩まで何もやることがない訳よ。
ずーっとぼーっとしてるだけじゃあ全然時間が進まなくて。
やることが欲しいから最近イフレートの仕事を見てて、出来そうなことをやってみようと思ってしてみたの」
「ふーむ、なるほど……」
この国の常識からしたら、私はかなり変なことをしていると思う。
でも、そんな私の行動を理解しようと考えてくれることが嬉しい。
「イズミ様が私の考える女性と大きく違うことを、忘れておりました。
確かに、私自身、待機時間はとても長く感じます。反対に、時間が無くて急いでいる時には驚くほどあっという間に過ぎていきます」
「そうよね!」
「イズミ様は活動的ですから、この国の女性と同じ生活をするのはむしろ負担が激しいのかもしれませんね」
「そう!本当に!
だから、出来ることはやりたいのよ。それに、私がイフレートの仕事を代わりにしたら、空いた時間で私と遊んでくれるかな、っていう期待もある」
「なるほど。確かに私の仕事は減りましたからね。その分、仕事をしてくれたイズミ様のご希望に沿うのは良いと思いますよ」
笑って私のことを理解してくれたイフレートのことを、有難いと思う。
文化が違っても、私が自分で叶えられそうなことを考えきちんと説明したら分かって貰えるんだな。
「ですが、カイルセル様やエルドルト様、ツィリム様がどう思われるかは分かりません。
私はイズミ様の望むようにしたいと思いますので、カイルセル様にもきちんと説明しておきますが、出来ればイズミ様からもご説明頂ければと思います」
「確かに。私に働かせた、ってイフレートが怒られそうね。
私からも説明しておくから、大丈夫よ」
「よろしくお願いします」
その日はイフレートと一緒に刺繍の図案を考えたりして、いつもより楽しい時間を過ごせた。午前中も充実している感じがあったし、良かったと思う。
みんなに『やらせて!』って自分の言いたいことをただ言うだけじゃなくて、自分の出来ることを考えて行動していくのが大事だと気づけた。
楽しいしイフレートも楽になるし、早くやればよかったな!
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