殺戮人形産のおいしい野菜はいかがですか?〜最強美少女はふつうの農家を目指してるけど、やっぱり最強だったみたい〜

ことりとりとん

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33.買い取り不可能

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「なっ、これはどうしたんだ!?」

ギルドへ着くなりドルクを呼び出すと、開口一番驚きの声を上げた。

「倒したのよ。肉はうちのダンが食べるから欲しいんだけど、後は適当にして」

「倒した? 氷結狼アイスダスト・ウルフをか?」

「ええ、そうよ。大きかったけど、そこまで強かったかしら?」

「充分すぎるほどに強いと思うが」

打ち出される氷の礫、襲いかかる牙、周りを固める水狼の群れ。
全てにおいて強力だから、脅威だと分かっていても討伐まで行けなかった大物だ。

今回のザンザたちも、水狼を数匹倒して、群れが肥大し過ぎないようにコントロールするだけが目的だったのに、運悪く氷結狼アイスダスト・ウルフが出てきてしまったのだ。

「じゃあ、あとはよろしくね。私、ご飯食べてくるわ」

家ではダンがご飯を作って勝手に食べているだろうが、帰ってもあるのはあのトマトスープだけ。
せっかくこちらまで来たのだから違うものを食べたい。

あくまでも欲望に忠実なティーファにため息をつかれているが、彼女はそんなこと構いやしない。

美味しいものが欲しい、それだけだ。

「あら、美味しそうじゃないの。ひとつちょうだい」

「嬢ちゃんお目が高いねえ! あいよっ!」

二軒あるパン屋のうち、惣菜パンが豊富な方の店で見つけたカルツォーネ。
見た目は地味だが中身は絶品。

はふはふしながら食べるととっても美味しかった。

「これの中身は嬢ちゃんが作ってくれたもんだからな! いつもありがとうよ!」

「そうなのね。美味しくしてくれて、こちらこそありがとう」

自分の作った野菜がこんなに美味しくなっているなんて、ティーファとしても嬉しい限りだ。

そうして食べ終わってギルドへ戻ると、精算やその後の諸々の処理は終わっていたが、問題がひとつ。

「ティーファ、この魔石、どうする?」

「どうする、って?」

「水狼の方は一般枠で買取額が決まってるから問題無いんだが、氷結狼アイスダスト・ウルフの魔石は大きすぎて値段が付けられないんだ」

ただでさえ魔力に満ちていて強力な魔物になりやすい魔境の地の魔石は高い値段がつく。
その中でも討伐不可能と言われていた氷結狼アイスダスト・ウルフの魔石など、滅多に見ることも出来ないような品だ。

「ここには現金が少ないから払い出しも難しいし、中央に送ってオークションに掛けるか……?」

「ギルドじゃ扱いに困るってことよね? じゃあ、私がそのまま貰ってしまってもいい?」

「俺としてはありがたいが、それでいいのか?」

魔石はそのままではただの綺麗な石でしかない。
それを上手く加工することによって便利な魔道具になるが、専門の知識と技術が必要だから誰にでも出来ることではない。

「誰かと共有するとかそういうのじゃないんでしょう? なら、私が勝手にしてもいいのよね」

「ああ、ならそのまま渡すぞ」

「うふふ。綺麗ないい石じゃないの。これなら喜んで貰えそうだわ」

手のひらほどもある大きな原石を覗き込む少女は年相応に見えてとても可愛らしい。
周りで見ている男たちも癒される気分になったが、彼女の脳内はそんなに可愛らしいものではなかった。

傀儡師マリオネットに送ればどれだけ強力な大量破壊兵器となる傀儡に仕立ててくれるだろうか、とそれを楽しみにしているのだから。




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