LIFE-5万年の残光 それでも生きるということ

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1.北方の半獣使い

ヤーナとゲルト

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今朝は快晴だ。そのせいか空気は猛烈に冷たい。身を切るようだ。まだ初秋だがこれからこんな日が増えるだろう。

だがゲルト(Gert)が一番好きなのはそんな朝だ。見晴らしも良くて仕事が捗る。何より、清冽な空気はそれだけで気分がいい。
彼の相棒の半獣も動きがいい。よく言うことを聞く。これには気分的なものだけじゃなく、取り込む空気の温度が低いほうが
こいつの冷却効率が上がるという純粋にメカ的な要因でもあるが。

ぶうぉんぶぅおん

半獣が軽く唸った。何かを見つけたようだ。口を開け、ヒレを広げ、速度を少し落とす。触覚が左前方を指す。南東。

ゲルトの肉眼にはまだ見えないが半獣にはいつもと違う何かが見えているようだ。
ゲルトは仕方なくヘルメットのバイザーを下ろす。フィルターの波長は赤外線域に合わせてある。

ふむ、何かいるね。ヒト、機械、早く動く。木陰、岩陰を進んでいるがこの高度からバイザー越しに見ると丸見えだ。
熱源のシルエットからしてインテリどもの機械ではないな。ただ武器は持ってそうだ。

ハンターにしては熱源丸出しで間抜けだ。行商隊にしては規模が小さいし、これから雪も降るという季節に彼らはめったに来ない。
何より、動きが早い。確固たる意志を持った訓練されたパーティーだ。


やれやれ、仕事だ。


ゲルトは引き綱を引き、高度を上げつつ半獣の向きを変える。
ゲルトの意思を感じ取った半獣がぶるりと身を揺るがす。運動モードが巡航から高機動に切り替わった。
太陽を背にする方向から静かに近づく。いつものやりかただ。

何しに来たか知らないが、友好的な連中ならいいな…

半獣も軽く唸る。同じ気持ちのようだ。

---------------------------

半獣とライダーのゲルトからの報告では、南方からの小規模なパーティーが近づいているとのことだった。

歩行機械のようなものとそのドライバー、2人の歩行者、みんなサイボーグ。
大荷物を抱え旅行者のようでもあるが、この手の任務に適した高機能な機材や手足の装具に武器、
統率された行動と無駄のない身のこなしはただ者ではないと。

ただヤーナ(Jaana)は、半日、高空から観察していたゲルトの次の言葉が気になった。
何でも彼らは「子ネコを連れている しかもどうやら純生体の」と。

はい?子ネコを連れた戦闘部隊とかないよな…
しかも生体のネコなんて戦闘では何の役にも立たん…

何しに来たんだ?

まあ少なくとも闘いを挑みに来たわけではなさそうか…
単に戦闘部隊をリタイヤした集団が商売を始めた…といった話かもしれん。

となるとかれらの商材も気になるな
このあたりでは珍しいオチモノの道具や知識も持っているかもしれん。

ただし用心は必要だ
ゲルトには引き続きこのパーティーの警戒をさせつつ南方の境界にも誰か送ろう。
別働隊がいるかもしれん

で、私はゲルトに合流して可能ならこのパーティーに接触してその目的を質してみるか…

いや、ほら、ぜひ子ネコにも会いたいじゃない。
この辺にはもういないんだからさ...

---------------------------

ヤーナもゲルトと合流するため半獣と共に南へ向けて飛び立った。
現地でも身軽に動けるように、ジェットパックを装備している。
半獣はスラスターをめいっぱい吹かしついてくる。

ゲルト曰く積極的な戦闘部隊ではなさそうなので、相手を刺激する大掛かりな武器は携行せず、護身用のハンドレーザーガンだけを腰につけている。
どのみち空へ逃げることができるし半獣の腹側の装甲板はかなり厚い。

歴史を紐解くと、南方からの使者は1世紀ぶりぐらい。
あの時は幾つかのクラスターが集まり、インテリの群をさらに北方に追いやるべく一緒に戦ったと聞く。

はたして今回もそういった共闘の申し込みか?
でもなんのために?

この北の地はその後は特に大きな戦闘はない。
野生の半獣や、はぐれインテリ、盗賊団との小競り合い程度。
もちろん警戒は怠ってないが。

豊かな資源と水力発電のおかげで特に不自由はない。
夏には訪れる隊商も増え、生体のヒトこそいないもののこの地のヒト人口は増えつつある。

あるとしたら南方のかれらの方でこちらへの要望があるのやもしれん。

なんか赤道のある残骸シティで攻防戦があったとか言うしなあ…
昔の恩があるとはいえ…

あのへん、暑いんだよなあ…
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