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序章
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今から10年前――
とある大社は神を失い、一族は滅んだ。
神和住家――代々、玄野大社の祭祀を担う一族。
宮司の娘の私はこの時、8歳だった。
真っ赤に染まる大社からは、鼻にこびり付く、鉄の匂いが充満していた。天から降り注いだ幾つもの矢。眩く光を放つそれは、私の家族を突き刺していく。
母は数多の矢を受けながら、私を大社の地下に隠した。漆黒の狐の像が濃い影を浮かせる。
「かあ、さま……ねぇ、かあさま……なにがあったの…?」
「最、高神……天照大御神の怒りに、触れた……私たちが何をしたと言うのか……
お前だけは、何があっても生き延びるのです。
玄野様はきっと、お前を守って…くれる……」
「……かあさま?……かあさま!!」
冷たい床にひれ伏し、動かなくなった母を何度も揺すった。だけどもう、返事はなく、ピクリとも動かなかった。
真っ暗な地下を青白く淡い光が包み込む。
血に染まった母の姿が、はっきりとこの目に映った。私の身体も赤く染まり、悲惨さを際立たせる。母が守ってくれていた私の身体からは、1滴も血が流れていなかった。
光を灯す背後を恐る恐る振り返る。
そこに立っていたのは――大きな黒い狐だった。
「我が主、梓。
この時を持って――我は其方の盾となり、矛となろう。
玄狐・玄だ」
青白い光を纏った黒狐は、その存在が妖だとわかるのに、何故かとても……神秘的だった。こんなにも真っ暗な場所でその漆黒の身体は、確かに存在感を放っている。
「……く、ろのさま…?」
「玄だ」
「くろ……?」
玄は長い鼻を私に近付け、まるで涙を拭うように頬を舐め上げる。固まったままの私を器用に背中に乗せ、地下を出ていく。
ぎゅっと玄にしがみつくと、降り注ぐ矢の雨を潜り抜け、大社の裏の木々の群れへと飛び込んだ。
玄は止まらず走り続ける。ずっと遠くへ私を誘うように__。
とある大社は神を失い、一族は滅んだ。
神和住家――代々、玄野大社の祭祀を担う一族。
宮司の娘の私はこの時、8歳だった。
真っ赤に染まる大社からは、鼻にこびり付く、鉄の匂いが充満していた。天から降り注いだ幾つもの矢。眩く光を放つそれは、私の家族を突き刺していく。
母は数多の矢を受けながら、私を大社の地下に隠した。漆黒の狐の像が濃い影を浮かせる。
「かあ、さま……ねぇ、かあさま……なにがあったの…?」
「最、高神……天照大御神の怒りに、触れた……私たちが何をしたと言うのか……
お前だけは、何があっても生き延びるのです。
玄野様はきっと、お前を守って…くれる……」
「……かあさま?……かあさま!!」
冷たい床にひれ伏し、動かなくなった母を何度も揺すった。だけどもう、返事はなく、ピクリとも動かなかった。
真っ暗な地下を青白く淡い光が包み込む。
血に染まった母の姿が、はっきりとこの目に映った。私の身体も赤く染まり、悲惨さを際立たせる。母が守ってくれていた私の身体からは、1滴も血が流れていなかった。
光を灯す背後を恐る恐る振り返る。
そこに立っていたのは――大きな黒い狐だった。
「我が主、梓。
この時を持って――我は其方の盾となり、矛となろう。
玄狐・玄だ」
青白い光を纏った黒狐は、その存在が妖だとわかるのに、何故かとても……神秘的だった。こんなにも真っ暗な場所でその漆黒の身体は、確かに存在感を放っている。
「……く、ろのさま…?」
「玄だ」
「くろ……?」
玄は長い鼻を私に近付け、まるで涙を拭うように頬を舐め上げる。固まったままの私を器用に背中に乗せ、地下を出ていく。
ぎゅっと玄にしがみつくと、降り注ぐ矢の雨を潜り抜け、大社の裏の木々の群れへと飛び込んだ。
玄は止まらず走り続ける。ずっと遠くへ私を誘うように__。
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