小夜の狐神〜天に届くまで〜

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その御身、夜に化ける

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梓弓をしならせ、鋭利な矢を射った。

八咫烏――天照大御神の使いか。すでに私の居所は最高神にはお見通しのようだ。
黒い羽毛に覆われた腹に、矢尻が突き刺さる。天で羽を羽ばたかせていた烏は、そのまま地に落ちた。

黒狐が木の幹に爪を突き刺し駆け上がる。地を歩く狐が、空を飛ぶ烏を噛み殺した。その黒い肉に、鋭い牙が突き刺さる。ぶるぶると首を振って投げ飛ばす。

「不味い……梓、今宵――其方を食わせろ」

主に向ける言葉だとは到底思えないが、傲慢で言葉を選ぶことが出来ないこの黒狐が――玄だ。あの日、私を助けてくれたあの玄。

「……食い殺すの?その牙で……」

「阿呆なのか?我はいつまでも其方と共に在る」

玄の言葉が訳がわからず、首を傾げる。私の血肉を食らって、私を"玄の一部"にするということだろうか。

数羽の八咫烏を射落とし、木々の隙間を走り抜ける。「遅い」と言われ、玄の背中に乗って、木漏れ日が落ちる森を駆け抜けた。


ぽつぽつと珠が頬に当たり始めて、薄鈍色にくすんだ空を見上げる。玄の、漆黒の絹のような毛が濡れてしまう。羽織りを脱ぎ、ピンと立った耳が隠れぬよう被せて抱きつく。

玄は洞穴に滑り込み、私を降ろしてぶるぶると震える。水飛沫が全て私にかかった。睨むでもなく、ただジーッと玄を見つめた。

「何をしておる。濡れた服を脱げ」

洞穴の端と端に杭を打ち、麻紐で繋ぐ。そこに服を脱いで掛けた。枯葉や枯草を集め、火を熾す。枝などを焚べていくと、洞穴内が照らされ、雨で濡れて冷えた身体が温まっていく。

火の前に膝を抱えて腕を擦る私の背に、濡鴉のような黒が寄り添った。私の腰を包むように横になり、薄目で私を見上げ閉じる。

そんな玄の懐で丸まって目を閉じた。私よりも温かい体温を感じながら、ゆっくりと微睡みに落ちていった。


違和感を感じて少しずつ覚醒していく。玄の腕の中で、身体の温度が上がっていく。耳に牙が刺さり、艶めかしい声が漏れた。

玄の腕……ふわふわとした柔らかさが感じられない。目を開け、玄を見上げる。でもそこにいたのは、玄ではなかった。

翡翠の瞳は玄と同じ……だが、白い肌に艶々と流れる黒髪。頭には玄と同じ大きな耳。腰には確かに、玄の柔らかい毛の感触がある。

「起きたか。ならば――其方の純潔を我に捧げよ」

スーッと通った鼻筋に、大きな犬歯が覗く薄い唇。

「……誰?」

「……何故わからない」

むすっと軽く唇を尖らせ、目を背ける。白い頬に指を這わせ、その顔を見つめた。声も瞳も、包む温かさも知っている。

「玄……?」

すぐに視線は戻り、薄く笑みを浮かべながら近付いてくる、怖いほどに整った顔。逃げることも出来ずに固まっていると、少し湿った唇が柔らかく重なった。


肌を張った玄の指は細く長い。肩から首筋を這い、顎を引かれる。開いた唇を割いて、熱い舌が私のそれに触れた。

絡んで離れて、口内の隅々まで奪い尽くす。玄から甘い香りがする。私の全てを甘く溶かして暴く玄に身を委ねた。

艶めかしく光る糸を引きながら離れた唇の端が僅かに上がり、鋭い犬歯を覗かせる。

「我の妖力を其方の肉叢の中で浄化し、我に戻すのだ。我には其方の清く澄んだ霊力が不可欠……」

「ま、まって……玄の妖力って……私には無理じゃないかな……そんな量、出来ない……」

緩く首を振った玄は私に覆い被さり、襦袢の合わせを開く。

「悪いようにはせん。其方にも悦い思いをさせてやる。
……ようやっと、変化を成せた。梓の全てを愛したい」

変化……そうか。玄は1000年生きたのね。胸の中心に指を這わせ、「悦んでおるな」と笑う。千里眼すらもその手に修めた玄は、上機嫌に肩を震わせた。

「今宵、其方は我に――神だった我に、奥底まで愛される」

「……あっ……玄…待って。お願い……私、こういうこと、知らない……」

突起に掠った指がゆっくりとその周りを撫で始める。何周かすると、揶揄うように落ちていった指が、帯を解いた。 


パチパチと枝が燃える音が洞穴内に響き、影がゆらゆらと揺れる。高い位置で束ねられた髪がはらりと落ちてくる。長い横髪も私の肌を擽った。

柔く乳房を持ち上げ、繊細な手つきで揉みしだく。長い指が突起を掠め、その度に私は身体をビクッと跳ねさせた。淫猥に乱されていく。

「く、ろ……や……ん、あ……」

「"嫌よ嫌よも好きのうち"、であろう?其方のココは硬くなって、悦んでおる。
……艶めかしい声も、もっと我に聞かせよ」

僅かな微笑みに隠された静かな熱が、翡翠の瞳に宿っている。青白く光るその瞳はまるで、高熱の青い炎__

「獣の姿では、梓を愛することも出来なかった。我の妖力は、妖の血肉を食らう度、穢れてゆく」

ほんの少し眉を寄せた玄の姿が、私の胸を締め付ける。この玄狐は、私の為に神であることを辞めた。ならば私も、全てを捧げねば割に合わぬことなど、とうに知っている。

突起に口を寄せ、舌が這う。硬くなった突起を転がすように舐め、時には吸い付く。腹の奥が疼く……玄に犯されたい。人と妖――ましてや、巫女の身体と妖狐が交わるなど……。

既に見捨てられたのだ。神などとうに私にはいない。在るとすれば…この妖の身でこんなにも神々しい彼だけだろう。

玄の長い指がゆっくりと下りていく。襦袢を掻き分け、秘められた蕾をその指が捉えた。胸から離れ、私の顔をジーッと見つめながら水音を響かせ始める。

「ん、んんっ……あ、や……くろぉ……」

玄の指が擦れて熱い。身体の奥まで熱くなって、何かが込み上げてくる。

「苦しいのだろう?達してしまえ」

陰核を擦る指が激しくなり、嬌声を上げる。背を反らせて、腰が浮いた。打ち上げられた魚のように跳ねて、目の前がチカチカと光る。恥ずかしい姿を見せてしまったことに顔が熱くなり、咄嗟に隠した。


「愛いな……その顔を我によく見せろ」

腕を掴まれて引かれる。玄の顔が見れず、顔を逸らしてぎゅっと目を瞑る。こんな恥ずかしいことを、大人たちはしてるんだろうか。

「……我の言葉が聞けぬのか」

そろりと視線だけを玄に向けると、少し眉間に皺を寄せ、軽く唇を尖らせている。玄って、こんなに表情豊かなんだ……確かに普通の人よりは僅かな違いかもしれないが、狐の時よりもわかりやすい。

視線が交わり、途端に柔らかくなる顔。玄は指を滑らせ、淫らな穴にゆっくり沈めていく。少し指を動かす度に水音が鳴り、蜜が溢れているのがわかる。

「ひゃ…!あ……そこ、や……」

「ココが善いのか?ナカで気をやってみよ。
……いじらしい梓よ」

私が反応したところばかりを執拗に攻め、嬉しそうに表情を崩した。髪を優しく撫でながら、私の内側を攻める指は容赦なく私を追い詰める。

少し抜けた指が質量を増して、もう一度ナカに入ってきた。肉壁を掻き分けるように押し進み、先程の善いところを軽く撫でる。

「痛くないか?」

コクコクと頷くと激しくなる指に、昇り詰めた熱が弾ける。玄の前で果てることに既に羞恥心は消え、荒く呼吸をし、熱を逃がした。


膝を持って開かれた股に、玄の身体が捩じ込まれる。漆黒の衣を掻き分け、露わにした男根は、息を呑むほど立派にそそり立っている。

本当にあんなモノが……怖くなり、膝を閉じる。それでも玄の手によって、無理やり開かれた。

「我を怖がるな。悦い思いをさせると言ったであろう」

頬を撫でられ、入り口に熱いモノが触れる。無意識に息を止め、引き裂かれるような痛みに耐えた。ミシミシと音が鳴りそうなほど、隙間なく押し込められる。

「はっ、ぁ……くっ、ろぉ……いた、あ…壊れる……」

「っ……壊れん。梓は我を受け入れられる。
……はぁ……ほら、全て飲み込んだ」

僅かに汗を浮かべ、眉を寄せながら微笑する。そのあまりの妖艶さにクラクラする。神々しさを讃えながらも、玄狐であることを思い知らされた。人を騙す妖しさ……それでも玄は私の身体で、蕩けている。

「……梓…動いてよいか……?」

息を乱し、私のナカで震えている。「いいよ」と腰を掴む玄の手に触れると、指を絡めて握られた。満ち足りた笑みを浮かべ、玄をゆっくりと動き始めた。


「ぁ……んあっ!玄、もう……ひうっ…ぁあっ!!」

洞穴内に淫猥な音が響き、追い詰められた私は、玄の衣を握り果てた。喉仏が上がり、低く唸る。吐息とも取れる息を吐き出して、律動を止めた。

「っ、は……思ったよりもクるな……
梓、大丈夫か?」

遠くなる意識の中、僅かに答える。少し呼吸が落ち着くと玄は、私の腰を持って反転させた。軽々と腰を持ち上げられ、そのまま獣のように激しく打ち付けられる。

玄がこの行為に夢中になっていることがわかった。何度私が果ててももう、止まることはない。始めは感じていた玄の妖力すらもわからなくなり、洞穴の中で淫らに乱れる。

「はっ、ぁ……梓、あず、さっ……!我を、受け止めよ!……っ、んっ!」

最奥に放たれた熱いモノは、どろどろと私を支配していく。それでも私の中の霊力は、勝手にそれを打ち消していた。

汗や涙が溢れ、汚れた顔すらも、整えることが出来ずに微睡む。その中で聞こえた玄の言葉は、よくわからず、受け取ることが出来なかった。

「……其方は我のもの。愛おしい梓よ」
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