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9.突然の旅立ち~カインside
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「うわあああああ!!!!」
気を失って、自分の叫び声で目覚めたら夜。
いつの間にか焚火が焚かれ、何かの肉が串に刺さって焼かれていた。
多分普通の兎肉。
ラビットベアはもっと柔らかい肉質だ。
夢だと思ったが、腹回りが切り裂かれてボロボロになった服を見てあの激痛と死への絶望感は現実だったと恐怖する。
その後はデカイ蜘蛛に溶解液を吐きかけられて糸でぐるぐる巻きにされた。
魔狼の狩りの練習台になったかのようななぶられ方をした挙げ句、手足に食いつかれて肉を引き裂かれる痛みに泣き叫び、悶え苦しんだ。
他にも魔獣によって何かしら攻撃され、苦しんだ末に何回か死んだ。
死んで目を覚ます度に無傷の状態になり、武器を1つずつ増やされた。
後で知ったが、それは少女の情けだったらしい。
いや、何の情けにもなってなかったぞ。
そうして地獄のような一晩を過ごし、翌日の日の出を見た時だ。
それまで昼夜問わず四六時中抱いていたあの公爵家への恨みや憎しみを忘れ、ただ生きている事に涙した。
俺はきっとあの恐怖と恥辱の夜を、そしてただ生きている事に感謝した朝を忘れる事はない。
そして日の出を眺めて涙した俺は直後にサラマンダーに襲われた。
ぶっちゃけ、もう勘弁して欲しかった。
心から。
だが間一髪、俺は何者かに蹴り飛ばされて吹き上げられた炎の餌食から逃れた。
その後サラマンダーの頭に短刀をぶっ刺して一撃で討伐したのは当時9才のミルティアだ。
もちろん俺を蹴り飛ばした犯人もコイツだ。
「夜が明けたから帰ろう、お兄さん。
次から女性の胸ぐらは掴んじゃだめだよ。
マナー違反はメッ、なのよ?」
ニコニコと微笑む美幼女の顔は悪魔に見えた。
・・・・はい。
心の中で素直に返事をして、気絶した。
俺はその後の辺境生活で自分のあの発言がいかに的外れだったのか、それを嫌というほど痛感した。
はっきり言って甘やかされてなかった。
一家揃って怖すぎるだろ、ここの辺境伯爵家。
そうして数年の月日が流れた。
「私、あなたが好きみたい」
「そうか、俺はお前をそんな風に思っていない」
「でしょうね」
言うだけ言って気が済んだかのように立ち去るミルティア。
いつからか繰り返すこのやり取り。
初めはあった申し訳ない断りの気持ちも、この頃には皆無となっていた。
見た目だけは幼く可憐な少女が少しずつ大人に成長していく様を見ても、俺はコイツを色恋の目で見られなかった。
俺達は5才差で、成人して数年の俺からすればその差はでかい。
それもあった。
ミルティアはまだまだ成人前の子供なんだから、しょうがないじゃないかと何度も思った。
だが何よりも大きな理由。
はっきり言ってミルティアが強すぎる。
14才でこの家に引き取られた俺は辺境領主だからこそ持つ事が許される私兵団に入団し、体を鍛え始めた。
元々筋は良かったらしく、めきめきと頭角を現し今ではミルティアの兄達と肩を並べるほどに成長した。
にも関わらず、俺はミルティアに勝てた試しがない。
畏敬の念を抱けても、次元が違う強さが過ぎてそんな対象には見られなかった。
人外だ。
やる事は合理的で人間味が常人の半分ほど欠落した魔王だ。
どうやって女として見るんだよ。
いや、顔は可愛らしいけどな。
それに事ある毎に呈する苦言が痛すぎて余計に彼女を女として受け入れられなかった。
だが何も間違っていないし、全ては俺を案じての発言だ。
素直になれなかったのは、俺のちっぽけなプライドとひねくれた性格のせいだ。
だからだろう。
ある日突然ミルティアは俺に見向きもしなくなった。
己の研鑽に集中し始め、ふらりといなくなっては夕食に戻ってまたいなくなる。
汚れや時々小さいが傷を作って帰ってくる生活が1年ほど続いていた。
この頃から俺はミルティアがいつかいなくなるんじゃないかと内心気が気ではなくなっていた。
女として意識し始めたのもこの頃だ。
無意識に彼女は自分の側からいなくならないとたかをくくっていた事を恥じた。
この辺境伯爵家の兄弟達に色々助言をもらって自分から話しかけてもみた。
だが大丈夫としか言わず、ただ強くなろうとしているだけだと返され、あまりしつこくするとあの森に放り込まれた。
流石にこの頃には余裕で生還できるようになっていたから問題はなかったが。
きっともう俺は、男として見限られたんだろう。
そうしてミルティアが成人となった日の14才の朝、何の前ぶれもなく邸からいなくなった。
朝、用意していたプレゼントを持って部屋に行ったがもぬけの殻だった。
始めはいつも通り夕食には帰ってくるだろうと考えていた。
だが1日経っても、3日経っても帰って来なかった。
部屋を探ってみれば、私物のほとんどは処分されていた。
ミルティアは家を出たのだ。
慌てておじさん達に話せば、両親にだけはちゃんと伝えていた。
恐らく年単位から一生帰らないと。
なんだよ、それ。
幅がありすぎるだろう。
腐っても貴族令嬢じゃないのかよ。
そういうところは相変わらず一家そろって適当だな。
気を失って、自分の叫び声で目覚めたら夜。
いつの間にか焚火が焚かれ、何かの肉が串に刺さって焼かれていた。
多分普通の兎肉。
ラビットベアはもっと柔らかい肉質だ。
夢だと思ったが、腹回りが切り裂かれてボロボロになった服を見てあの激痛と死への絶望感は現実だったと恐怖する。
その後はデカイ蜘蛛に溶解液を吐きかけられて糸でぐるぐる巻きにされた。
魔狼の狩りの練習台になったかのようななぶられ方をした挙げ句、手足に食いつかれて肉を引き裂かれる痛みに泣き叫び、悶え苦しんだ。
他にも魔獣によって何かしら攻撃され、苦しんだ末に何回か死んだ。
死んで目を覚ます度に無傷の状態になり、武器を1つずつ増やされた。
後で知ったが、それは少女の情けだったらしい。
いや、何の情けにもなってなかったぞ。
そうして地獄のような一晩を過ごし、翌日の日の出を見た時だ。
それまで昼夜問わず四六時中抱いていたあの公爵家への恨みや憎しみを忘れ、ただ生きている事に涙した。
俺はきっとあの恐怖と恥辱の夜を、そしてただ生きている事に感謝した朝を忘れる事はない。
そして日の出を眺めて涙した俺は直後にサラマンダーに襲われた。
ぶっちゃけ、もう勘弁して欲しかった。
心から。
だが間一髪、俺は何者かに蹴り飛ばされて吹き上げられた炎の餌食から逃れた。
その後サラマンダーの頭に短刀をぶっ刺して一撃で討伐したのは当時9才のミルティアだ。
もちろん俺を蹴り飛ばした犯人もコイツだ。
「夜が明けたから帰ろう、お兄さん。
次から女性の胸ぐらは掴んじゃだめだよ。
マナー違反はメッ、なのよ?」
ニコニコと微笑む美幼女の顔は悪魔に見えた。
・・・・はい。
心の中で素直に返事をして、気絶した。
俺はその後の辺境生活で自分のあの発言がいかに的外れだったのか、それを嫌というほど痛感した。
はっきり言って甘やかされてなかった。
一家揃って怖すぎるだろ、ここの辺境伯爵家。
そうして数年の月日が流れた。
「私、あなたが好きみたい」
「そうか、俺はお前をそんな風に思っていない」
「でしょうね」
言うだけ言って気が済んだかのように立ち去るミルティア。
いつからか繰り返すこのやり取り。
初めはあった申し訳ない断りの気持ちも、この頃には皆無となっていた。
見た目だけは幼く可憐な少女が少しずつ大人に成長していく様を見ても、俺はコイツを色恋の目で見られなかった。
俺達は5才差で、成人して数年の俺からすればその差はでかい。
それもあった。
ミルティアはまだまだ成人前の子供なんだから、しょうがないじゃないかと何度も思った。
だが何よりも大きな理由。
はっきり言ってミルティアが強すぎる。
14才でこの家に引き取られた俺は辺境領主だからこそ持つ事が許される私兵団に入団し、体を鍛え始めた。
元々筋は良かったらしく、めきめきと頭角を現し今ではミルティアの兄達と肩を並べるほどに成長した。
にも関わらず、俺はミルティアに勝てた試しがない。
畏敬の念を抱けても、次元が違う強さが過ぎてそんな対象には見られなかった。
人外だ。
やる事は合理的で人間味が常人の半分ほど欠落した魔王だ。
どうやって女として見るんだよ。
いや、顔は可愛らしいけどな。
それに事ある毎に呈する苦言が痛すぎて余計に彼女を女として受け入れられなかった。
だが何も間違っていないし、全ては俺を案じての発言だ。
素直になれなかったのは、俺のちっぽけなプライドとひねくれた性格のせいだ。
だからだろう。
ある日突然ミルティアは俺に見向きもしなくなった。
己の研鑽に集中し始め、ふらりといなくなっては夕食に戻ってまたいなくなる。
汚れや時々小さいが傷を作って帰ってくる生活が1年ほど続いていた。
この頃から俺はミルティアがいつかいなくなるんじゃないかと内心気が気ではなくなっていた。
女として意識し始めたのもこの頃だ。
無意識に彼女は自分の側からいなくならないとたかをくくっていた事を恥じた。
この辺境伯爵家の兄弟達に色々助言をもらって自分から話しかけてもみた。
だが大丈夫としか言わず、ただ強くなろうとしているだけだと返され、あまりしつこくするとあの森に放り込まれた。
流石にこの頃には余裕で生還できるようになっていたから問題はなかったが。
きっともう俺は、男として見限られたんだろう。
そうしてミルティアが成人となった日の14才の朝、何の前ぶれもなく邸からいなくなった。
朝、用意していたプレゼントを持って部屋に行ったがもぬけの殻だった。
始めはいつも通り夕食には帰ってくるだろうと考えていた。
だが1日経っても、3日経っても帰って来なかった。
部屋を探ってみれば、私物のほとんどは処分されていた。
ミルティアは家を出たのだ。
慌てておじさん達に話せば、両親にだけはちゃんと伝えていた。
恐らく年単位から一生帰らないと。
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腐っても貴族令嬢じゃないのかよ。
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