30 / 491
3
29.少女の謎~sideギディアス1
しおりを挟む
「くくっ、ふっ、ふふふ····」
「····ギディアス殿下」
「す、すまない、っくふっ」
隣の呆れた目をした宰相に咎められたが、なかなか笑いが止まらない。
グレインビル一家が目立つだけ目立って去って行った。
まるで嵐のようだ。
広く知れ渡っているようにグレインビル家は実力派魔術師家系だが、ぶっちゃけ剣術だって騎士顔負けなのだ。
かつては魔獣蔓延る辺境の土地、そしてそれが落ち着けば隣国との紛争地帯となった土地だ。
そんな土地を代々治め、今のように栄えある領土と呼べる土地にしてきた実力は伊達ではない。
だからこそあの神殿の監督管理も一任されていた。
レイヤードの落雷の魔法も普通なら即死レベルだったが、同時に高難度の上級治癒魔法を使って瞬時に軽症まで治した。
彼の父兄を除けば後ろに控える王宮魔術師団団長くらいしか気付いていないだろう。
当然宰相も気付いていない。
恐らくやられた本人すらわかっていないはずだ。
いくら学園の生徒であっても一国の王子に使う魔法ではないが、すでに証拠は失われている。
昨年のお茶会の時のブルグル家に対してもそうだったが、あの養女が絡むと彼等は本当に容赦がない。
私も怖くておいそれとちょっかいなどかけられない。
あぁ、あの王子の護衛は気付いていたかな。
全く顔色は変わっていなかったが、軽症にしか見えなかったにも関わらずレイヤードと同じ上級治癒魔法をかけようとしていた。
長身で細身だが鍛えた体をした青銀髪に同色の目が印象的だ。
一見人属のような外見の彼は獣人だろう。
にしてもあの靄は何なのか。
今日は何度か競技場を挟んで貴賓席の前の保護者席にいたバルトスの方をつい見てしまっていたのだが、あの時少女の呟きを読唇術で拾ってしまった。
"んー····黒い靄····あぁ、そっか····"
養女になる前の素性も、あり得ない程の高度な知識を有しているだろう事も、今日のあの呟きも、謎が多すぎる。
あの父兄を知る私からすれば、ある意味では彼女もグレインビルらしい。
家族である彼らはそんな義妹の秘密を知っているようだが、絶対に口を割らない。
これまで秘密裏に何度も調べようとしたが全く掴めなかった。
それにしても魔力が無くても靄が見えるのには驚いたが、それをあの王子が気付き、行動に移してしまったのには頭が痛くなる。
年齢なりの好奇心と行動力だろうが今回の言動は王族らしからぬ浅はかとしか言えない行動だ。
しかしそれほど靄が重要な存在でもあるように見えた。
仮にもあの王子は数年以内には隣国の王太子として立太子すると噂に聞いている。
愚かしいとは思うが、彼の祖国の現状を知る身としてはただの愚か者とも考え難くなる。
どちらにしてもレイヤードがさっさと棄権したのは注意を自分に引き付ける意味もあったのだろう。
父兄も彼らを追ってすぐに姿を消した。
レイヤードのあの雷撃は一国の王子を使った周囲への警告でもある。
彼等の義妹に手を出せば間違いなく誰であろうが痛手を負わせるという。
今回うちの可愛い弟は隙あらば少女に会おうと画策していただけにさぞ残念だろうが、しばらく彼女は自領から出てこないだろうな。
余談だがこのせいでまたド直球に妹が欲しいアピールしないか心配だ。
私達の両親ではあるが、あの2人は仮にも一国の国王と王妃なのだ。
まぁ父上はまんざらでも無さそうな顔をしていたが、やはり母上の年齢的な負担は考えるべきだろう。
話は戻るが昔からグレインビルの男達は懐に入れた子女を過保護なまでに庇護しようとするのだ。
少なくとも彼らの祖父も妻や息女にはそうだったと父上から聞いているが、グレインビルの女は血縁関係なく短命が多いからかもしれない。
あの兄弟と血の繋がった生後半年程だった妹も母親もそうだった。
血縁関係はないあの銀髪の義妹も病弱で何度か生死の境をさ迷っているが、果たしてどこまで生きられるのだろうか。
私としては何年も側近の誘いをかけ続けては断られるあの友の為にも末永く、願わくば健やかに長生きしてもらいたいものだ。
「····ギディアス殿下」
「す、すまない、っくふっ」
隣の呆れた目をした宰相に咎められたが、なかなか笑いが止まらない。
グレインビル一家が目立つだけ目立って去って行った。
まるで嵐のようだ。
広く知れ渡っているようにグレインビル家は実力派魔術師家系だが、ぶっちゃけ剣術だって騎士顔負けなのだ。
かつては魔獣蔓延る辺境の土地、そしてそれが落ち着けば隣国との紛争地帯となった土地だ。
そんな土地を代々治め、今のように栄えある領土と呼べる土地にしてきた実力は伊達ではない。
だからこそあの神殿の監督管理も一任されていた。
レイヤードの落雷の魔法も普通なら即死レベルだったが、同時に高難度の上級治癒魔法を使って瞬時に軽症まで治した。
彼の父兄を除けば後ろに控える王宮魔術師団団長くらいしか気付いていないだろう。
当然宰相も気付いていない。
恐らくやられた本人すらわかっていないはずだ。
いくら学園の生徒であっても一国の王子に使う魔法ではないが、すでに証拠は失われている。
昨年のお茶会の時のブルグル家に対してもそうだったが、あの養女が絡むと彼等は本当に容赦がない。
私も怖くておいそれとちょっかいなどかけられない。
あぁ、あの王子の護衛は気付いていたかな。
全く顔色は変わっていなかったが、軽症にしか見えなかったにも関わらずレイヤードと同じ上級治癒魔法をかけようとしていた。
長身で細身だが鍛えた体をした青銀髪に同色の目が印象的だ。
一見人属のような外見の彼は獣人だろう。
にしてもあの靄は何なのか。
今日は何度か競技場を挟んで貴賓席の前の保護者席にいたバルトスの方をつい見てしまっていたのだが、あの時少女の呟きを読唇術で拾ってしまった。
"んー····黒い靄····あぁ、そっか····"
養女になる前の素性も、あり得ない程の高度な知識を有しているだろう事も、今日のあの呟きも、謎が多すぎる。
あの父兄を知る私からすれば、ある意味では彼女もグレインビルらしい。
家族である彼らはそんな義妹の秘密を知っているようだが、絶対に口を割らない。
これまで秘密裏に何度も調べようとしたが全く掴めなかった。
それにしても魔力が無くても靄が見えるのには驚いたが、それをあの王子が気付き、行動に移してしまったのには頭が痛くなる。
年齢なりの好奇心と行動力だろうが今回の言動は王族らしからぬ浅はかとしか言えない行動だ。
しかしそれほど靄が重要な存在でもあるように見えた。
仮にもあの王子は数年以内には隣国の王太子として立太子すると噂に聞いている。
愚かしいとは思うが、彼の祖国の現状を知る身としてはただの愚か者とも考え難くなる。
どちらにしてもレイヤードがさっさと棄権したのは注意を自分に引き付ける意味もあったのだろう。
父兄も彼らを追ってすぐに姿を消した。
レイヤードのあの雷撃は一国の王子を使った周囲への警告でもある。
彼等の義妹に手を出せば間違いなく誰であろうが痛手を負わせるという。
今回うちの可愛い弟は隙あらば少女に会おうと画策していただけにさぞ残念だろうが、しばらく彼女は自領から出てこないだろうな。
余談だがこのせいでまたド直球に妹が欲しいアピールしないか心配だ。
私達の両親ではあるが、あの2人は仮にも一国の国王と王妃なのだ。
まぁ父上はまんざらでも無さそうな顔をしていたが、やはり母上の年齢的な負担は考えるべきだろう。
話は戻るが昔からグレインビルの男達は懐に入れた子女を過保護なまでに庇護しようとするのだ。
少なくとも彼らの祖父も妻や息女にはそうだったと父上から聞いているが、グレインビルの女は血縁関係なく短命が多いからかもしれない。
あの兄弟と血の繋がった生後半年程だった妹も母親もそうだった。
血縁関係はないあの銀髪の義妹も病弱で何度か生死の境をさ迷っているが、果たしてどこまで生きられるのだろうか。
私としては何年も側近の誘いをかけ続けては断られるあの友の為にも末永く、願わくば健やかに長生きしてもらいたいものだ。
11
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる