秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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36.隣国の王子

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「失礼致します。
グレインビル侯爵とご令嬢をお連れ致しました」

 義父様と2人で登城するとすぐに侍女長が迎えに来た。
お茶会以来だけど、いつ来ても王城は敷地が物凄く広い。
僕達は賓客用の離宮へ馬車で案内される。
他に王宮、後宮、王太子宮、王子宮がある。
騎士や魔術師や使用人達の寮は離宮の敷地にあるらしい。
そして離宮に入って歩くこと15分、やっと目的地に到着。
侍女長が声をかけ、入室する。

「よく来てくれた、グレインビル侯爵、アリアチェリーナ嬢」

 ギディアス様が椅子から立ち上がり、続いてゼストゥウェル王子がそれに習う。
表向きは大会での彼の言動に対する謝罪を兼ねたお茶会だ。

 ギディアス様の今日の護衛はアン様と他4名の近衛騎士。
王子の護衛は1人。
青みがかった銀の髪と目に、長身で細身だけど鍛えている体躯。
アン様より少し大きいかな。
外見は人属なんだけど、獣人さん?
うーん、やっぱり彼をどこかで····。

「ザルハード国第一王子ゼストゥウェル=ザルハードだ。
先日は不躾にも侯爵にあのような言動を取り、不快な思いをさせて申し訳なかった。
アリアチェリーナ嬢も怖がらせたこと、謝罪する」

 ザルハード王族の正装だと思うけど、紺の布地に袖や裾、詰襟には国花であるスリミリアという、百合に似た花の葉が模様のように銀の糸で刺繍されている。
ちなみに国王と王太子だけは金の糸で花と葉を刺繍するらしい。

 小麦色の肌、焦茶の髪に暗緑色の目をした王子は僕達の前に立つと頭を下げた。
本来王族とは頭を下げたりはしないものなんだけど、非公式だからかな。
僕的には王族だろうと王でない限り、悪いものは悪いで頭くらい下げれてナンボだとは思うけど。

「頭を上げられよ。
今後あのような事が無い限り、グレインビル侯爵家としては問題ない」

 義父様ってば、言外に何かしたらただじゃおかないって言ってるよ。
謝罪も受け取り拒否してるね。

「私ももう気にしておりません。
謝罪も頂戴致します。
魔力のない者などそうそうおりませんもの。
王子殿下というお立場であっても、つい気になられたのは仕方ありませんわ」

 言外に王子のくせに器が小さいね、と言ってみる。
ギディアス様の面子もあるし面倒になると困るから謝罪は受け取るけど、僕は好意を持たれたくはないのだ。

「すまない、感謝する」

 顔を上げれば凛々しいお顔が苦笑とも自嘲とも取れる表情だ。
うん、ちゃんと伝わったみたいで良かった。

 にしても、今日はあの指輪をしていない。
目の下に薄く隈ができている。
やはり何かあったのかな。

「謝罪も済んだことだし、皆お茶にしないかい?」

 僕の隣に歩み寄ったギディアス様が皆へ声をかけながら僕に手を差し出した。
僕は手を軽く重ねてエスコートしてもらう。
他の2人もテーブルについて、最後にエスコートしてくれたギディアス様が座ると侍女達がすぐにお茶を出してくれた。

 僕は会話を男性陣に任せてテーブルに出されているスイーツを片っ端から給仕のお兄さんに取り分けてもらう。
あのお茶会から1年ぶりだけど、やっぱりお城のスイーツは絶品!

「ふふ、ちゃんと食欲は戻ったみたいで良かったよ。
去年うちのパティシエ達がアリアチェリーナ嬢が美味しそうに食べてくれてたのを喜んでたよ。
パーティーでは皆あまり食べてくれないから嘆いてたんだって」
「それは光栄です。
お話しする機会がありましたら、今日のお菓子もとっても美味しいって皆さんにお伝え下さい」
「もちろんだよ」

 ここのスイーツは神!
神の食べ物を食べないなんて罰があたっちゃうよ。

 時々僕にも誰かしら話はふってくるけど、食べるのを楽しむ10才の子供を邪魔しないように男達は世間話で場を繋ぐ。
ゼストゥウェル王子が話しかけたそうな気配を出すけど、それとなくタイミングを外してかわす。
僕は仲良くなる必要性を感じてないからね。

「アリアチェリーナ嬢のお腹も満足したみたいだし、離宮にも王宮の薔薇の庭園とは違う趣の庭園があるんだ。
せっかくだからゼストゥウェル王子と行って来たらどうかな?
私と侯爵はここで少し話をしてるから」
「それは是非とも一緒したい。
····どうだろうか?」

 うん、そっちからの提案ならスイーツのお礼に受け入れるよ。

「はい、参ります」

 僕はにっこりお返事する。
あれ、義父様はどうして涼しい顔して不機嫌オーラ?
打ち合わせ通りだよ?
あっちの2人が何かびびってるよ?

「····えっと····アリアチェリーナ嬢、行きましょうか」

 うん、そりゃ戸惑うよね。
13才の少年にはちょっとしんどいオーラだよね。
それでもエスコートする君は偉いよ。
もちろん僕はポーカーフェイスだけど。

 庭園に向かう僕達の後ろをアン様と王子の護衛さんがついてきた。
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